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#235

熊谷6人殺害“警察の対応を問う”控訴審開始 遺族の決意と争点

2015年9月、埼玉県熊谷市で起きた連続殺人、熊谷6人殺害事件の遺族、加藤裕希さんは、当時の埼玉県警の注意喚起は不十分だったと、国家賠償請求訴訟を起こしています。2022年10月30日の『BS朝日 日曜スクープ』は、東京高裁で始まった控訴審を特集しました。加藤さんは、「裁判官は市民目線で判断して欲しい」と訴えています。法廷での加藤さんの陳述書、さらに、控訴審に向けて提出した橋本大二郎さんの意見書も、合わせて全文を掲載します。

⇒ 「これ以上、遺族を見捨てないでください」熊谷6人殺害事件の遺族、加藤裕希さんの意見陳述全文
⇒ 「地域の安全と安心を守るために… 問われる“ものの見方”」熊谷6人殺害・国賠訴訟控訴審 橋本大二郎さん意見書全文
 

 

10月23日の放送内容は動画でもご覧になっていただけます。

⇒ 【日曜スクープ】熊谷6人殺害〝国賠訴訟の控訴審〟開始 遺族が抱く決意と争点
テレ朝news
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裁判の継続する加藤さんへの募金、支援を募るホームページはこちらです。

⇒ 熊谷6人連続殺人事件 国賠訴訟…目指す逆転勝訴
 

これまでの「熊谷6人殺害その後」の特集は、ページの最後でご案内しています。

■法廷で響き渡った加藤さんの言葉

上山

ここからは「熊谷6人殺害事件のその後」です。妻と2人の娘の命を奪われた加藤裕希さんは、19日当時の警察の対応を問う裁判の控訴審に臨みました。東京高裁での意見陳述の内容、その一部がこちらです。

「まさかその日の朝まで一緒に過ごした家族3人の命が、一瞬のうちに奪われるとは思っていませんでした。仕事を終えて帰宅すると、家族の中で生きているのは私1人だけでした。

眠れない日々を過ごし、葬儀を終えてひと段落したときに、熊谷署から犯人が逃げ出していたこと、他の民家に不法侵入していたことを初めて知り、驚きと同時に怒りがこみ上げてきました。警察は地域住民に対し、もっと効率的な注意喚起をなぜ行ってくれなかったのか。せめて『こういう人物が逃げている可能性がある』とお伝えしていただければ、私の家族も対応のしようがあったと思います」。加藤さんの言葉が法廷で響き渡りました。

■「とにかく絶対勝つという気持ちで」

妻と2人の娘の命を奪われた加藤裕希さん(49)

「なかなか発言できる場面はないとは思うんですけど、とにかく絶対勝つという気持ちできょうを迎えたいと思います」加藤さんが逆転勝訴を目指す、国家賠償請求訴訟の控訴審が10月19日に東京高裁で始まりました。

家族の仲睦まじい姿。

美和子さん

「ハッピバースデートゥーユー、ハッピバースデーディアみーちゃん、ハッピバースデートゥーユー 1回写真撮りますよ、待ってください 1・2の3ハイッ」

加藤さん

「いいよ、撮ってるから、うん、吹きな!」

美咲さん

「いい?」

美和子さん

「おめでとう!」

2015年9月に埼玉県熊谷市の住宅街で起こった連続殺人事件。家族の幸せな日常は突然断ち切られました。

犯人はペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン受刑者、当時30歳。死刑判決が取り消されて、無期懲役が確定しています。

妻と2人の娘の命を奪われた加藤裕希さん

「被告人にも心を殺されて、さらに今回、司法にも心を殺されました。(被告を)死刑にすることしか、父親として、家族3人のために、それしかできなかったので本当に今回は悔しいです」

2015年9月13日、民家の敷地に侵入したとして熊谷警察署で聴取されていたジョナタン受刑者が逃走。翌日14日に50歳代の夫婦が殺害され、16日には84歳の女性の遺体が発見。さらに加藤さんの妻・美和子さん、長女の美咲さん、次女の春花さんが相次いで犠牲となりました。

■加藤さんの訴え棄却…一審判決の論理に憤り

加藤さんが問題にしているのは、加藤さん宅での事件が起きる前の埼玉県警の対応です。ジョナタン受刑者は熊谷署から逃走した後、住居侵入を繰り返し、埼玉県警は15日には、最初の殺人事件の「参考人」として全国に手配していました。しかし、県警は加藤さんの家族が犠牲になるまでジョナタン受刑者の逃走を明らかにしませんでした。

妻と2人の娘の命を奪われた加藤裕希さん

「衣類についた血痕から見たところ、妻も娘たちも恐怖と痛みの中で戦って亡くなっていったんだなと思うと、悲しみがすごく湧いてきて、言葉にならないくらい切なく思いました」

加藤さんは、最初の殺人事件後、「警察が事件や事情を知るとみられる外国人の逃走を周辺の住民に知らせていれば被害を防げる可能性が高かった」として、埼玉県を相手取り、国家賠償請求の形で裁判を起こしました。

しかし、今年4月の一審判決は、加藤さんの訴えを退けました。加藤さんの自宅に、襲撃の危険が切迫していたとは認められず、埼玉県警の対応には問題がなかったと判断したのです。

加藤さん側は、控訴審で一審判決の論理に反論しました。

加藤裕希さんの代理人・上谷さくら弁護士

「私たちから見ればかなり被告(埼玉県警)側の主張、裁判所の判断は非常識です/そもそも、無差別殺人で加藤さんが殺されることの予見可能性なんかあるわけがないですよね。ストーカー事件じゃないんですよ。」

事件当時、防災無線やパトカーによる注意喚起はありませんでした。このことについて、19日の控訴審の法廷で、加藤さんは自ら訴えました。「警察が『思いつかなかった』だけで、私の家族3人を含む6人もの尊い命が奪われてしまったのです」

加藤裕希さんの代理人・髙橋正人弁護士

「(最初の殺人事件の翌日)15日の昼の段階でジョナタンという名前は出さなくてもいいから、せめて逃走した外国人が本件事件に関わっている可能性があるとして全国に手配していた。だから「みなさんどうぞ戸締まりをしっかりして注意してください」と広報すべきだったということを私たちは言ってきたわけです。/付近住民に対して危険情報を提供することによって利益こそあれ不利益を受ける人は誰もいません。」

■事件を見つめ続けた2人が意見書

控訴審には、事件を見つめ続けた2人も意見書を提出しています。

犯罪ジャーナリストの小川泰平(おがわ・たいへい)さんは、意見書で「最初の強盗殺人事件を考えても、金品目的の連続発生が予測できたはず」と指摘しています。

当時、テレビ朝日「ワイドスクランブル」の司会者として事件を報じてきた、元高知県知事の橋本大二郎(はしもと・だいじろう)さんも意見書を記しました。

橋本大二郎さん

「国家賠償法という法律の建前上、損害賠償を求めるという形にはなっていますが、加藤さんの本当の思いは同じようなことを二度と繰り返してほしくないという思いだったと思います。ですから裁判所には加藤さんの無念さ云々だけではなくて、この地域の住民の安全、安心を守るという本来の警察の、行政のあり方としてどうあるべきだったのかということをぜひこの事案を通して評価してほしいなというふうに思います。」
控訴審の次回の法廷は来年の1月18日です。

妻と2人の娘の命を奪われた・加藤裕希さん

「私も意見を言わせてもらいましたけど、裁判官の胸にどのくらい突き刺さったのかは正直わからないですけど、市民目線としてやはり、見て判断していただきたいなというのが、きょう裁判を通して思いました」

■「一審判決に疑問…本当にそれでいいのか」

上山

熊谷6人殺害事件。警察に対する国賠訴訟ですが、加藤さんがおっしゃりたいことは、最初の殺人事件、1件目の、田﨑さん夫婦殺害が発覚した時点で、地域の住民に対して、警察がもっと注意を呼びかけていれば、その後の被害は防げたのではないかということです。一審の判決は請求棄却でしたが、片山さんはどのようにお考えですか?

片山

加藤さんのおっしゃっていることと、それから先ほどの弁護士の方がおっしゃっていることは、私は全く同感です。一審判決が変だと思うのは、もしこの判決が正しいとすれば、今後加藤さんのご家族が殺された事件と同じようなことが起こったときに、それでも警察は別に地域住民に知らせる必要はないんですよと、違法でもなんでもないんですよということを認めるわけですよ。認めたわけですよね。本当にそれでいいんですかと。

やっぱり地域住民の皆さんが被害を受ける可能性があるならば、やはり警察としては、最大限の広報なり、努力をするという務めがあるんだろうと思うんです。私、警察がなかなか広報したくなかったんではないかなという推測をしているんですね。それは、自分のところで保護していた不審な男が逃走したと、そこから始まっているわけですよね。それが殺人につながっているわけで、そうすると、広報するということは自分のところから逃がしたんですよ、逃げちゃったんですよということを明らかにすることで、警察の不名誉というか

上山

そうですね、失敗を明らかにしてしまうようなところがあったと。

片山

ですから国民の、住民の命を守ることよりも、自分たちの組織を大事にしようとしたんではないかなという、そういう推測を私はしています。

上山

警察は国民を守るということに立ち返るべきだったんじゃないかというお話ですが、一方で、裁判は見方としては、司法が今回、国民の目線に立てるかどうか、ここも問われていると思うんですよね。

片山

自分でも国の裁判に関わったことがあるんですけれど、裁判官が実は法務省に出向して国の弁護をやるという仕組みがあるんですよ、訟務検事という。これは絶対やめるべきだと私は思います。

上山

控訴審の次回の法廷は来年の1月18日です。

(2022年10月23日放送)

法廷での加藤さんの陳述書、そして、控訴審に向けて提出した橋本大二郎さんの意見書の全文はこちらです。

⇒ 「これ以上、遺族を見捨てないでください」熊谷6人殺害事件の遺族、加藤裕希さんの意見陳述全文
⇒ 「地域の安全と安心を守るために… 問われる“ものの見方”」熊谷6人殺害・国賠訴訟控訴審 橋本大二郎さん意見書全文
 

10月23日の放送内容は動画でもご覧になっていただけます。

⇒ 【日曜スクープ】熊谷6人殺害〝国賠訴訟の控訴審〟開始 遺族が抱く決意と争点 
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裁判の継続する加藤さんへの募金、支援を募るホームページはこちらです。

⇒ 熊谷6人連続殺人事件 国賠訴訟…目指す逆転勝訴
 

「熊谷6人殺害その後」の特集は、こちらもご覧になっていただけます。

⇒ 2023年3月12日放送 熊谷6人連続殺害 “警察の対応を問う”遺族 控訴審が結審
⇒ 2023年1月22日放送 熊谷6人殺害その後 遺族が問う“新たな矛盾”県警幹部の法廷証言
⇒ 2022年4月17日放送 熊谷6人殺害“遺族の訴え棄却”判決の論理
⇒ 2021年5月2日放送 熊谷6人殺害「証拠品」返却 今なお訴え続ける理由
⇒ 2019年12月22日放送 熊谷6人殺害で死刑破棄 遺族が出演「司法にも心を殺されました」