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#80

米ロ関係の行方は!?駐日ロシア大使生出演第3弾

米国とロシアの間での、関係修復動の動きなのでしょうか。今月に入り、トランプ大統領とプーチン大統領が電話会談、さらに、ポンぺオ米国務長官がモスクワに訪れました。日ソ平和条約締結交渉にあたり、在日米軍を脅威としてきたロシア。2019年5月19日のBS朝日『日曜スクープ』は、来月G20での、プーチン大統領の訪日を前に、ガルージン・駐日ロシア大使が生出演しました。

丸山議員“戦争”発言「ロシア内で怒り」

山口

今日のゲストの方々をご紹介していきます。この番組3回目のご出演となります、ミハイル・ガルージン、駐日ロシア大使です。どうぞよろしくお願い致します。

ガルージン大使

こんばんは、宜しくお願い致します。

山口

もうおひとりです。ロシアの軍事事情を研究している東京大学先端科学技術研究センター特任助教の小泉悠さんです。

小泉

どうぞよろしくお願い致します。

山口

きょうは2人に色々話を伺っていこうと思っているのですが、まずはこの発言の問題から見ていきます。丸山穂高・衆院議員が11日、ビザなし交流で国後島を訪問中に元島民に対して「戦争しないとどうしようもなくないですか?」などと発言しました。この件で17日、日本維新の会の片山虎之助・共同代表がロシア大使館を訪れましてガルージン駐日ロシア大使に陳謝したということです。大変恐縮なのですが、差し支えのない範囲で維新の片山さんたちからどんなお話があったのでしょうか。

ガルージン大使

片山先生ご自身は大使館を訪問された後、取材に応じたと伺っていますけれども、片山先生はあの発言の当時、日本維新の会の党員であった議員の発言についてお詫びをしました。そういう経緯でした。

山口

ガルージンさんはどのように受け止められましたか?

ガルージン大使

私の方からは議員のいわゆる戦争発言が到底我々にとって受け入れられないという風にお答えしました。そして、大変不愉快な発言であり、今、この場で付け加えたいのは、ロシア世論、ロシア国民、ロシア政界の中で怒りを起こした発言であるとしか言わざるを得ません。戦争という表現は、酒に酔っている人が口にすることはできるでしょうけれども、あの議員はそれだけでなく、あたかもロシアを混乱させたいというような発言もしました。それは、酒に酔っている人の発言よりも、冷静に掘り下げた形で、政治的な計算を行った上で使われる用語ですね、混乱という用語は。もし議員の頭の中に、真剣にロシアを混乱させる政治的な計算があるならば、それは問題だと私は思っています。

山口

本当に私たちとしてもあり得ない発言だと、本当に思いますけれども、本国にその陳謝については報告をされたのですか。

ガルージン大使

もちろんしました。

山口

本国の反応はどうでしたか?

ガルージン大使

それはロシア外交当局者との間の話ですから公に申し上げることを差し控えたいと思います。

山口

本当に丸山議員の発言は納得できないという、当然日本人の中でも多くの方が思っていると思います。

月末にも日ロ外相会談 交渉の進捗は?

日ロの外相会談が進んでいます。今月10日モスクワで日ロ外相会談が行われました。会談後の会見で河野外務大臣が「70年間未解決の問題なので、そう簡単ではないというのは、お互い認識している」とした上で、「交渉をしっかり前へ進めていきたい」と語りました。ラブロフ外相は「両国の立場の隔たりは大きい」として「日本が第二次大戦の結果を認めるべきだ」とも語りました。日本としては、今回の会談を受けまして、交渉の長期化を予想する報道がされている訳ですけれども、平和条約交渉における両国の動き非常に頻繁になっています。

大木

11月の首脳会談で日ソ共同宣言を基礎に協議を加速させることで合意してからの動きです。半年余りで4回も外相会談だけでも行われているという状況です。そして、今月30日にはラブロフ外相が来日し、協議が予定されています。大使、これだけやっぱりロシアにとっては日ロ平和条約交渉の重要度は高いと考えていいのでしょうか。

ガルージン大使

マスコミの皆さんは日ロ関係についてのお話を始めますと、すぐ平和条約の問題を取り上げるという、一つの慣例となっていますが、平和条約が無いということを強調すると、あたかも日ロ間に平和がないという間違ったシグナルを世論に送りかねないと思います。日ロ間には1956年の共同宣言でもって平和が回復されたということをまず申し上げたいと思います。国交もきちんと存在していまして、色んな分野において大規模の協力が行われているということをまず断っておきたいと思います。例えば、先ほどおっしゃったように首脳対話、外務大臣対話が定期的に行われていますし、例えば、先週だけの動きを見ますと、外務大臣協議のほかにモスクワで日ロ知事会議が行われまして、大変突っ込んだ地域交流のさらなる進化についての話が行われましたし、そして東京で、ロシアの与党であります統一ロシア党の幹事長のトルチャク連邦会議副議長が来まして安倍総裁・総理、そして二階幹事長、衆参両院議長とも会談を行いました。つまり、日ロの対話は多岐にわたるものであります。経済協力もそうです。貿易高も増えていますし、そしてこの番組で既に言いましたように、ロシアが日本のエネルギー安全保障を強化する上で、大きな役割を果たしています。例えば、日本で消費されますLNGのおそらく8%ぐらいはロシア産のLNGであるなど、お互いに関係の重要度が高いと思います。平和条約の交渉含めてロシアもそうですし、日本もそうだと思います。ロシアは日本以上に関係を進めることに関心を持っているという言い方は、もしあるとすれば間違っています。お互いに同等程度で関心を有していると私は思っております。

山口

小泉さんにも伺いたいのですが今月30日に外相会談だけではなくて、2+2つまり外務・防衛閣僚会談も行われますよね。この防衛が入っているところ、ポイントだと思いますがいかがでしょうか。

小泉

日本はアメリカとずっと2+2をやってきていて、最近オーストラリアともやっていますよね。これと日ロの2+2とは若干性格が違うと思うんですね。日本の場合、アメリカとは同盟関係にあって関係が緊密なので2+2をやっていて、最近オーストラリアとも関係が緊密化してきた。他方でロシアがやっている2+2は、どちらかというと関係が緊密だからやるというよりは、これから関係を緊密化したい国と2+2をやるっていう傾向が強いと思うんですね。例えば最近はエジプトとも2+2をやっていますね、ロシアは。ですから2+2の使い方が若干違っていて、その意味では大使がおっしゃったように、ロシアとしても日本と関係を緊密化したいと意図があって日本と2+2、防衛を含めた部分をやっていると思うんですね。他方で我々としては安全保障の基軸は日米同盟に置かなければいけないので、今、この米ロ関係がものすごく悪い中で、防衛も含めてロシアと協力するという事をどういう風に捉えるか。これは結構、政治的にセンシティブな問題だと思います。

川村

河野外務大臣が10日にモスクワに行って話して、わざわざ30日にラブロフ外相は来るのですから、それにも関わらず河野外務大臣が行ったということですね。そこで何が話し合われたか。私もその前から外務省の関係者とも話していますけれども、キーワードが一つあったと。それはまだ公表できない。それともう一つは、2+2に向けてのきちんとしたお膳立てもしたかったということなんですけれども、一番大きいのはやっぱり経済開発の特区については、今、残念ながらきちんとした合意のもとに進んでいるという事ではないですね。大使の方が詳しいのでしょうけど、色丹島に関しては、ロシア政府が11億円程度の開発を進めていくと決めていることもあって、それに日本側がどういう風に関わっていくのかということも含めてですね、かなりの溝がまだあるということで、ラブロフ外相が言っている言葉と河野外務大臣が言っている言葉が多少やっぱり温度差もある。それをこれから2+2の中でも詰めていかなきゃいけないと。さらには、プーチン大統領が来た時にアメリカのトランプ大統領も来る訳ですね。G20の中で様々な首脳会談が行われる。この時にどこまで日ロの交渉が進むのか、あるいは、進ませたいという要求がかなり広がってくればいいなっていう感じですよね。

「米国の準備が整っていないと感じる」

山口

トランプ大統領のロシア疑惑、最終報告書が出されまして、一旦この問題が山を越えたとされています。そうした中で、アメリカとロシアが関係修復の模索を始めたのではないかとも見られています。これが日ロ平和条約交渉にどんな影響を与えていくのかということを伺って行こうと思いますが、まず3日にプーチン大統領とトランプ大統領、首脳同士が電話会談を行いました。大木さんお願いします。

大木

3日のトランプ大統領、プーチン大統領の電話会談は、1時間を超える異例の長時間となりました。本当に中身も多岐に渡りました。北朝鮮の非核化、そしてベネズエラの混乱など。その中でも注目したいのがこちらです。中距離核戦力INF全廃条約です。8月に失効する見通しで、会談では中国も加えた新たな枠組みの構想を協議したということです。さらに、今月の14日にはプーチン大統領とアメリカのポンペオ国務長官が会談。プーチン大統領は、両国の関係について、「ロシアとしてもアメリカとの関係を修復したいと繰り返し話している。両国関係の完全な回復を望んでいて、その条件は整いつつある」と強調しました。大使、ロシアとアメリカの関係というのは、良い方向に向かっていると捉えてよろしいでしょうか。

ガルージン大使

どちらかというと、良い方向に向かってほしいと言った方がいいのではないかと思います。例えば、モラー報告が発表されて、そもそも我々がずっと前から言っていた通り、トランプ氏とのロシア側との間に共謀がなかったということが最終的に明らかになりましたね。この報告書が発表された後、確かにアメリカの政権は、ロシアとの関係の修復を希望して動き始めているということを我々は感じています。大木さんがおっしゃったように、プーチン大統領とトランプ大統領との間の電話会談とか、ポンペオ国務長官のロシア訪問とか、プーチン大統領との会談、ラブロフ外相との交渉などがありました。それは確かに良い動きでありまして、もし最終的に関係の修復につながるならば、それをもちろん歓迎すべきところでありますけれども、同時に関係がどの段階で修復できるかと申しますと、それはアメリカが以下の三つの原則に則ってロシアに対応してからであります。それはどういう原則であるかと言いますと、まず同等の対話、同等の関係。そして、お互いに正当な利益を尊重すること。そして、内政干渉をしないということです。その三つともについて最終的にはアメリカの準備が整っていないのではないかと私は感じています。例えば、ポンペオ長官がロシアを訪問した2日後、アメリカが新しい対ロ制裁を発表しました。今度はロシア親衛隊の即応展開部隊「テレク」という反テロ部隊に対しての制裁であります。「テレク」の皆さんは自分の命を脅威にまでさらしてテロリストとの闘いを進めています。その「テレク」に対して制裁が発動されました。アメリカがテロと戦う人に協力するか、あるいはテロリストに協力するか、わからない態度です。ロ米対話が修復しているのはとってもいいことです、我々はずっと前から主張していたことです。アメリカは、ロシアとの関係を修復したいという言葉をやっぱり実際の行動で裏付けるべきだと思います。

山口

まだそこには、大使から見ると溝があるのではないかという言葉ですけど、一方でこの電話会談の中でも出てきたのですがINF・中距離核戦力の全廃条約の話です。今のままで行くと8月に失効するということになります。アメリカとロシアの電話会談の中で、中国を入れたこの新たな枠組み、つまり、多国間の新たな枠組みを作るべきではないかという構想が出てきました。改めて確認ですが、このINF全廃条約というのは冷戦当時1987年アメリカとソ連が結んだ条約。地上発射方式の射程500~5500kmのミサイルを全廃して恒久的に放棄する取り決めです。しかし、トランプ大統領は2月に離脱を宣言しました。実は、ロシアとアメリカがこのINFを結んでいた30年あまりの間に中国でかなりこの中距離弾道ミサイルが増えてきたという現状があるわけですね。大木さんお願いします。

大木

平成30年の去年の防衛白書を元に作成しました。こちらによりますと、ICBM大陸間弾道ミサイルの数は、アメリカが400基、ロシアが313基、そして中国が60基とアメリカ・ロシアに比べて、中国、圧倒的に少ない数です。しかし、アメリカとロシアが条約を結んでいるため全く保持していない中距離、準中距離の弾道ミサイルを中国は148基、保持しているということです。

山口

INF全廃条約でアメリカとロシアが中距離核戦力を減らした間に中国が突出してきた。東アジアの情勢の中で中国のINF中距離核戦力がかなり伸びてしまったと現状がありますよね。こう考えてきますと、東アジアの情勢を安定化させるためにも中国を含めた新たな多国間の枠組みが必要なのではないか、という点が言えるのではないかと思うんですけど、大使はどんな意見をお持ちでしょうか。

ガルージン大使

東アジアの情勢を安定化させるには、場合によって、アジア各国にある米軍の活動を削減したらどうでしょうかと、逆に聞きたいと思います。念のために申し上げます。皆さんはですね、中国が問題だという形で問題を紹介しようとしていらっしゃるようですけれども、私は同感できないんですよ。先ほど申し上げましたように、東アジアの不安定化の要因はどこにあるかということについて、自分の意見を申し上げたんですね。核兵器削減をこれからどう進めたらいいかと言うと、ロシアはかねてからですね、多国間ベースでやらなきゃならないと思っておりまして、それを国際社会、いろんな多国間の場で表現しています。参加国について皆さんは、中国のみに言及していらっしゃいますけれども、ロシア・アメリカ・中国以外に、例えば、英国とフランスも核保有国ではないでしょうか。その国々にも参加して頂いてもおかしくないのではないかと私は思います。ですから、多国間の交渉について、少なくとも全ての核保有国が参加すべきだという風に思っています。無理に中国のことだけを取り上げて議論するのは、ちょっと正確ではないのではない。客観的ではないのではないかと思います。

INF全廃条約失効へ 新たな軍縮協議は

川村

そういう意味では日本の報道の仕方が、前々から私も外務省の核問題に就いている人と話し合う時に、アメリカ・中国・ロシアとこの3か国の枠組みっていうのはおかしいんじゃないかと。むしろINFというのは対ヨーロッパを睨んでの問題だったので、ヨーロッパ自身が一番今のINF条約をアメリカが破棄することに対しては懸念、不安を抱いているわけで。そういう意味では、ロシアとヨーロッパの関係というものを考えた時には、イランの核合意と非常に似ている。アメリカだけがイランの核合意は認めないと止めますね。しかし、イランの関係はヨーロッパが歴史的にも非常につながりが深い。その中で合意した核合意でヨーロッパは依然として未だにそれは良い合意だと言っているので、それと似たような関係がこのロシアとヨーロッパの関係にもあるんだということを押さえておかないと、大使のご指摘のように、これはトランプ大統領のある意味では一人芝居に終わる可能性もあるという事ですね。

山口

小泉さんは軍事の専門家でいらっしゃいます。このINFの問題特に東アジアの問題をどのようにご覧になっていますか。

小泉

中国あるいは多国間でという話は実はずっと昔からあるんですね。遡れば冷戦中の核軍縮についても、本当に米ソ間だけでいいのか。今まさにご指摘になったようにイギリスとフランスを入れなくていいのかというのは、ソ連側からずっと言われていたわけですよ。要するに、同じNATOの核戦力なんだから、全部ひっくるめないとバランスが良くないだろうという意見があったわけですね。1993年に結んだ通常戦力の規制条約CFE条約の場合はブロック別にやったわけです。2007年ミュンヘンでやった国際安全保障サミット。あの時プーチン大統領はこのINF条約が米ロだけなのはおかしいじゃないかと。他の国も拡散しているんだから多国間でやらないと不平等じゃないかと言っているんですね。実は米ロは共同でグローバルINF規制条約案を出しているんですが、当時ほとんど相手にされなかった。というのは、やっぱりすごくテクニカルに難しいんです。2国間だけでやるって言うのと、3か国、それが5、6か国になっていくというのは格段に難しさが増えていく。それからイスラエルみたいに誰がどう見ても持っているんだけども持っていないことになっている国があったりするので、全核保有国という話になってくると難しい。それから中国は保有数がものすごい勢いで増えているんですよ。これはやっぱり他の国とは全然性格が違う。確かにロシア・中国側から見ればアメリカこそが地域を不安定化しているという見方になる、というのも、私はロシアの専門家をやっているからわかるんですけども。他方で我々の側から見ると、中国の軍事力の伸び方、それから近代化のされ方というのが非常に速い。やっぱりこれに何らかのキャップをはめたい。あるいは、力で現状変更できるんだという誤ったメッセージを送らないようにしたい、というのをやっぱり我々としたら当然考えなきゃいけないと思います。そういう意味で、やっぱりまず当面できることは米ロなんだろうと思っています。ロシア側も中国も巻き込んでとはロシアもアメリカも言っているんですけど、おそらく中国を巻き込めるとは両方とも思ってないと思うんですね。現実にできるのは、中国にも声かけたんだけどもやっぱりダメだので、米ロで何の話をしましょうか、というところにおそらく落ち着いていくんだろうと思います。

山口

INF全廃条約に変代わる新しい枠組みが作れるのか。ガルージンさんから見ると私たちは中国を特に強調しすぎだという風に映るということですが、どうしても日本側から見ると、中国の軍事力強化がされているのは気になります。そこで伺いたいのですけれども、ロシアは中国と非常に長い歴史があり、お付き合いがありますね。ロシアから見て今の中国の軍事力が増しているという事態、その事実についてはどんな風に大使は見ていますか?

ガルージン大使

いかなる事実の後ろには必ず背景があります。山口さんがおっしゃった意見は、中国が突然、何もないところで軍事力を待ち始めたという風に受け止めています。先ほど申し上げましたように、第二次世界大戦が終わった後、日本・韓国などの国々で膨大なアメリカの軍事プレゼンスが見られています。そしてアメリカが今は中国に対して、例えば経済の面でやっていることからしますと、中国に対するアメリカの本当の意図がうかがえます。そういう状況の中で中国は自分の防衛力を強化しないのは、むしろおかしいんじゃないかと私は思っております。日本の皆さんに私が伝えたいのは東アジアの安全保障状況を広い視野に立ってより客観的にご覧になるということです。

山口

そういう意味で言いますと多国間という話になっていくと思うんですが、G20がちょうど開かれますよね。そこでの米ロでの話し合いもあるでしょうし、ある程度の話の進展というのは。

ガルージン大使

ありますか?米ロ。

山口

無いのでしょうか?

ガルージン大使

分かりません。

川村

日程上は、米ロ首脳会談はあがってきていませんね。

ガルージン大使

我々は開かれていますけれども、米国はどうなるか分からないですね。

山口

G20の場で様々な国との話し合いを持つチャンスは出てくるわけですよね。その中で多国間の枠組みも是非、進めてほしいなと我々は思うんですけれども、いかがでしょうか。

ガルージン大使

おっしゃった意見はよくわかりました。多国間なら米ロ中だけでなく、或いはそれよりも米ロ中仏英の方が良いのではないでしょうか。我々はそういう風に思っています。

「朝鮮半島の非核化に協力したい」

川村

ロシア側が盛んに言っている事で日本はあまり今は関心ないですけども、北朝鮮の問題も関係してきているんですよ。ロシア側が6ヶ国協議をもう一度きちんと一回開いた方が良いと言っていて、それは中距離弾道ミサイルに関しても北朝鮮がこのままどんどん開発していけば、それは東アジアにとってさらなる脅威になるわけですから。一方で日本は金正恩委員長と安倍総理はとにかく無条件にでも話をしたいという事なので。一方で日ロ領土交渉の問題についても、どこまで今後G20の中で日ロ首脳会談あるいは、日米首脳会談、これが調整できるのか。一つ興味深いのは、あまり知られていないんですけど、4月21日ワシントンのホワイトハウスで日米首脳会談が行われた時に、安倍総理がトランプ大統領に対して、北方領土という言葉を使ったかわかりませんけども、今、問題となっている日ロの領土交渉の中で色丹島、歯舞はほとんど群島ですから日本に戻ってきた時に米軍の施設、基地とかそういうものを作らないという事を確約してほしいという事を迫ったのかどうか。それに対して、トランプ大統領がどういう風に応じたのかという事も、今後のG20でのプーチン大統領との会談の中できちんとそれが見えてくると言いますか、極めて、ある意味ではこの間のラブロフ外務大臣が言った言葉の中に「第二次世界大戦の結果を認めなさい」と。「これは国連憲章にもきちんと書かれていることだ」と。国連憲章の中で認められている事を日本は受け入れて国連にも入っているわけですから。53条、107条問題ですね。この問題を含めて相当やっぱり方程式としてはかなり煮詰まってきているんだけど、それをいかなる形でG20では合意ができるかと言うと、私は結論から言えば難しい状況にまでなっていると思いますね。

山口

小泉さんは、イージス・アショアの事で質問があるということですよね。

小泉

今、大使がおっしゃったことに重ねて言いますと、中国がアメリカの軍事的優位の前に自国の防衛力強化を図るのは当然だと私もそうだと思うんですよ。私も中国の軍事担当者だとしたら必ず同じ事をします。翻って日本のイージス・アショアに対して何でロシアはこんなに警戒的なのかという事が私は分からなかったですね。一昨年日本でJアラートが鳴りましたよね。Jアラートとカッコいい名前が付いていますけども要するに空襲警報なわけですよ。戦後初めて空襲警報が鳴った。ロシアの軍事史を見ていても、戦後モスクワで空襲警報が鳴った事は無いと思うんですよね。そういう状況に置かれた我が国がミサイル防衛を推進するというのはある意味当然ですし、国防、安全保障を重視するロシアであればわかってくれる事じゃないかと思うのですが、何でこんなにもイージス・アショアを問題視するんでしょうか。技術的に見るとイージス・アショアがロシアの核抑止力をどうこうする事はできないわけですよね。技術的な日ロに安全保障を本当に阻害するのかどうかと言う点に基づいて冷静な話し合いをしてもらいたいなと思っているんです。

ガルージン大使

確かに冷静な話し合いが必要ですよ。特にイージス・アショアというシステムはアメリカの地球的規模を持つ対ミサイル防衛の一環として明らかに位置づけられているからです。確かにおっしゃったように冷静な客観的な情報に基づく対話が必要です。ロシアの軍事専門家の計算によると、ヨーロッパにも東アジアにも配備されつつありますアメリカの対ミサイル防衛システムが明らかにロシアと中国の核戦力を目的にしているからです。ロシア側としては朝鮮半島の非核化にどうしても協力したいと思っておりまして、特に、この間プーチン大統領が金正恩委員長と会談したことも非核化への協力が目的の一つだったと私は思っています。ロシア側としては、北朝鮮が非核化を目指して行動をとる度に、アメリカなど国際社会がそれに対して、それに応えて段階的に制裁を解除するという趣旨のロードマップを中国のパートナーと一緒に我々は作成しまして、実際にロードマップ通りになっています。北朝鮮が一部の核プログラムを既に解体していますし、アメリカと韓国が大規模な軍事演習を停止している。その延長線上の努力をしておくべきだと思います。そして非核化が実現されればその段階で多国間の形で北東アジアにおける安全保障体制を話し合うべきだと思います。

山口

是非そこに向けて話をしっかりと進めて頂きたいと思うんですよね。東アジア情勢がなるべく緊迫することがないように安定に向かうように願いたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

(2019年5月19日放送)