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#79

スマートな増築により農具倉庫を再生させた石岡の家

西に筑波山を望み、東には霞ヶ浦が広がる茨城県石岡市。有史以前から人々が暮らし、大化の改新では国府が置かれるなど、県内最古の都市として繁栄したこの辺りには、数多くの遺跡が残っています。
 今回訪ねたのは、そんな石岡市内にある、のどかな田園風景の広がる場所。奥さまと二人のお子さんと暮らすご主人は、この地に代々暮らすS家のご長男です。以前は家族4人で賃貸マンションに暮らしていましたが、結婚前からの希望で、実家に戻ることに。実家の敷地にはご両親の家と祖父の家、そして農具倉庫として使われていた納屋が建っていました。Sさんは当初、納屋を壊して新築に建て替えることを検討していましたが、そこに使われた木材はどれも上等なものばかり。もともと古いものが持つ味わいが好きだったSさんご夫妻は、納屋をリモデルすることにしたのです。しかし、家族4人で暮らすには、納屋だけでは広さが足りません。そこで、納屋の隣に増築することで、生活スペースを確保するプランを立てました。懐かしさに満ちた納屋に機能的な増築を施して、快適で洗練されたリモデルが実現しました。
青空と竹林を背景に、白と黒の建物が美しく並ぶS邸。かつて農具倉庫だった納屋は、外壁を焼き杉風の板で覆われ、家族が憩う茶の間とキッチンとして見事に生まれ変わりました。もともと1階は天井が低かったため、2階の床を剥がし、吹き抜けにして開放的な空間に。手斧掛けという、荒い削り跡を意匠として見せている一本松の梁の下、茶の間の畳の上を元気に子どもたちが駆け回ります。壁付けタイプのものにカウンターを取り付け、対面式にしたキッチンは、茶の間で寛ぐ家族とコミュニケーションを取りやすくするためのアイデアです。茶の間と玄関を仕切る引き戸には納屋にあったものを再利用するなど、かつての面影を随所に残しています。
古いものを上手く活かしながらリモデルされた納屋。その隣には、それと全く印象の違う、白く現代的な建物が並びます。ガルバリウムの波板で囲まれた増築部分は、寝室や水まわりなどプライベート空間の役割を担っています。黒と白の対比が際立つ二つの建物を繋ぐのは、ガラスのトンネル。二つの建物を行き来する際、一度外に出た様な感覚を与えることで、空間の違いを実感させてくれるのです。2階には、納屋の軒下にあった杉の丸太を再利用するなど、新しいものの中にも、納屋とのつながりを演出しています。
 リモデルを機に、親子4世代が同じ敷地で暮らすようになったSさんご家族。こうして家族が集い、親から子へとまたひと世代、大切なものが受け継がれていくんでしょうね。
 
設計担当:g_FACTORY建築設計事務所

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after