放送内容

#53

イタリア料理人 落合務

東京・銀座に本店を構える、イタリア料理の名店「ラ・ベットラ ダ オチアイ」。オーナーシェフを務めるのは、日本に本格イタリアンを広めた立役者でもある落合務(75)だ。
 
中学時代、中華料理店の店主の手際の良さに感動し、料理人への憧れを抱いた。当時、洋食と言えばフランス料理だった。落合も一流のフランス料理を学ぶため、ホテルの厨房やフレンチレストランで修行を積んだ。
20代で渡仏した際、乗り継ぎの都合で数日間イタリアにも滞在した。これがイタリア料理との運命の出会いだった。豪華絢爛なフランス料理と異なり、毎日食べても飽きないイタリア料理の魅力に惹かれていった。
帰国後イタリア料理店のシェフとなった落合は、注文を受けてから麺を茹で始めるなど本格的なイタリアンを提供した。しかし、パスタという言葉さえ浸透していなかった日本で、人々の反応は厳しかった。アルデンテは「芯が残っている」と苦情が寄せられ、すぐに料理が出てこないと、お客は怒って帰ってしまう。落合はこの頃二度も胃潰瘍になったという。
それでも妥協することなく本場の味を提供し続けていたある日、イタリア政府観光局に勤めるお客が来店。その美味しさが彼の口コミから広がり、瞬く間に店は人気を博していく。さらに、ウニとクリームを掛け合わせた濃厚なパスタや、本国では生肉を使うカルパッチョを鮮魚に置き換えて提供するなど、日本人の舌に合うような工夫も凝らした。ほどなく、落合の店は日本一予約の取れないレストランと呼ばれるようになった。
 
現在日本イタリア料理界の会長を務める落合は、後進の育成やイベント出演、コラボメニューの開発など、多岐に渡り活動を続けている。イタリア料理の普及や料理界全体の未来も見据える落合の今に密着した。