番組表

バックナンバー

#143

悠久の名所を支える匠の技SP

平安京が開かれてから1200年。古都・京都が刻んできた悠久の歴史は、今も人々の心を震わせ続けています。しかし、国宝や重要文化財がその姿を保ち続けている裏側には、人知れず技術を振るう「匠」たちの存在がありました。今回の物語は、都の美を未来へとつなぐ職人たちの驚異の現場を巡る、美と執念の記録です。
最初に訪れるのは西本願寺。浄土真宗の宗祖・親鸞像を安置する「御影堂」や国宝の「書院」には、400年前の至宝が眠っています。しかし、長い年月は確実にその姿を蝕み、障壁画には痛々しい亀裂が走っていました。この危機に挑むのは老舗表具店の匠。わずか0.2ミリの極薄ヘラを操り、1ミリ以下の細部まで糊を差し込む繊細な手仕事はまさに神業です。未来の修復も見据えた伝統の技が、歴史の美を蘇らせる瞬間を追います。

続いて、日本仏教の母山・比叡山延暦寺では、15年という歳月をかけた国宝「根本中堂」の大改修が進行しています。特別に許可を得た修復現場では、7万6千枚もの銅板をすべて手作業で葺き直す宮大工たちの姿がありました。鉄釘を使わず、サビに強い「竹釘」を一打ずつ打ち込む伝統工法。棟梁自らが彫り上げる「鬼面」に込められた、国宝を守り抜くという覚悟。そこには、数百年先を見据える職人たちの、気の遠くなるような積み重ねがありました。
さらに、大徳寺では90年ぶりの修復作業中に、現役の畳の裏から390年前の元号が発見されました。この伝説的な畳を直せるのは、今や日本でただ一人の職人のみ。藁を一本ずつ吟味し、伝統の「掛け縫い」で厚みを均一にしていく唯一無二の技術で、歴史を支える「芯材」としての誇りを蘇らせます。
最後に、二条城で半世紀以上続く障壁画の模写プロジェクト。国宝建築を飾る3600面もの貴重な障壁画を未来に残すため、現代の絵師たちが挑むのは、制作から100年経過した状態に戻す「古色復元模写」です。一画に数ヶ月を費やし、さらに20年は続くとされる途方もない挑戦は、まさに精神の継承。
1200年の物語を終わらせないために――。未来へバトンをつなぐ匠たちの、知られざる営みの記録です。