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#57

稲田朋美議員が語る入管法改正案

国会で与野党が激しく攻防した入管法改正案。実は2016年、自民党の政務調査会は、外国人労働者受け入れに向けた提言を取りまとめていた。11月25日のBS朝日『日曜スクープ』では、当時の政調会長、稲田朋美・自民党筆頭副幹事長が生出演。提言を取りまとめた意図、そして、克服すべき課題を語った。元鳥取県知事で総務大臣の経験もある片山善博氏もゲスト出演、法案の内容を分析し、外国人政策のあり方を語った。

政調会長時代に外国人労働者受け入れを提言 稲田朋美議員が語る入管法改正案

山口
入管法改正案をめぐって今国会が大きく荒れています。その要因の1つをまずはここで確認しておきます。法務省による、技能実習生の失踪してしまった人に聴取したデータの計上ミスがありましたよね、覚えている方多いと思います。というのは、もともと最初はこの失踪した理由につきまして、「より高い賃金を求めて」というのが86.9%だったという説明だったのですが、実は、そもそもこういう項目はなくて、最も多かった理由は「低賃金に関連した3つの項目」、これが67.2%。つまり「高い賃金を求めて」というのと「低賃金なんだよ」というのはだいぶこれ印象が違いますよね。これで審議も一時混乱しているわけですが、稲田さん、こういうミスはよろしくないですよね?

稲田
そうですね。今回の国会の中でも最重要法案。しかも外国人労働者を受け入れる新たな在留資格を創設するという極めて重要な法案の審議にあたって、法務省の計上ミスというのはあってはならないことですし、非常に反省しなければならないと思います。

大木
どうしてこういうミスが出てきたと考えられていますか?

稲田
法務省の説明によると、単純なエクセルの操作のミスであるとか、単純に足してしまって重複しているところがあったということなんですけれども、それにしてもあまりにもずさんな集計の仕方だったなと思います。

山口
そうなんですよね。まさに大事な法案なだけにこういうミスがあると国民の信頼がだいぶ下がってしまうというのもあると思います。

稲田
もっと緊張感を持って、こういう法律は、出してからもですね、やらないとダメだと思います。

山口
ここでもう1つ確認しておきたいのがこちらになります。そもそも、この外国人労働者の受け入れの上限の設定ですね、上限はあるのかないのか、ということなんですが、政府はもともと外国人労働者の受け入れの上限を5年間で最大34万人としていました。

山口
この34万人という数字につきまして安倍総理大臣は「受け入れ数の上限として運用する」と。つまり上限があるという発言をされていました。ところがその後、山下法務大臣はこういう発言をしています。「これは法律ができた後、基本方針ができて、その後、分野別の運用方針ができて、記載される数字ですから、この34万という数字自体は上限じゃないんです」と。ということは結局、上限はないのかなというふうに聞こえてくるわけで、これでまた1つ混乱を招いているわけですが、稲田さんはそもそもこの受け入れ人数の上限に対して上限は必要だとお考えですか?

稲田
はい、そうです。大変人手不足が進んで、そして、そこはいろんな改革をしても、また女性や高齢者の人たち、それから生産性を改革したとしても足らない分野、そして14業種についてどれだけ不足しているかということの、見込みの数を足し合わせたものが34万5150人でありますので、総理がおっしゃるようにそれを上限として運用するということはまさしく上限だということだと思います。法務大臣がおっしゃったのは、実際には年末までに策定する分野別の受け入れ方針ですね、そこで決めていくということをそういう表現をされたのかなと私は思いますが、私個人としてはやはり上限というのは必要だと思っています。

山口
上限が必要だというのはやはり日本国内での雇用への影響などを考えてということですか?

稲田
そうですね。いろんな意味があっての人手不足の数というかですね、そういうものを決めているわけですから。いろんな影響を考えて上限として運用すると総理もおっしゃっていますので、それは上限というふうに考えるべきじゃないでしょうか。

山口
片山さんはこの受け入れの上限についてはどのようにお考えでしょうか?

片山
もともと、この法律を作ろうとされた動機・きっかけ・背景は、やっぱり国内の労働力の不足ですよね。稲田さんが言われたように今、労働力が大体どれぐらい足りないのか、それこそ一億総活躍じゃありませんけれども、高齢者の皆さんの再就職とか女性のみなさんがまた仕事されるとか、いろんなことで埋めていってもいくら足らないと。その分、外国の労働者に頼りますかというところが発端ですよね。そうしますと必要最小限でいくらか、何人かというのは当然最初にあるはずなんです。必要最小限で何人かということが上限だと思いますよね。だから最初に立法しようとするときにあらかじめ上限数は正確ではないかもしれないけれども、ある程度固まっているべきはずだと思います。

山口
つまりこういう法案を出す前にどのぐらい必要なのか、その数字をしっかり固めてから出すべきじゃないかということでしょうか?

片山
いや、そもそもなんのためにこの法律を作ろうとしているのかというと、足らない労働力を満たすためですから、どんどんとにかく外国人を入れるのがいいかという前提で法律作っているはずじゃないわけですから。だから最初にまず立法事実として、どれぐらい必要なのかというところから始まっているべきだと思いますね。

山口
そういう意味では今回の混乱についてはどうお感じになっていますか?

片山
法務大臣の答弁を直接伺っていませんけれども、法律ができてこれから運営方針なんかが決まっていったら大体このぐらいなりますというのもあるかもしれませんけれども、やってみたらものすごい増えちゃったと言うのでは困るんですよね。だからやっぱりそこは政府の中ですり合せをして、見解を統一しておいて頂かないと困ると思います。

山口
そうですよね。国民の方も混乱してくるわけで、川村さんはこのあたりの議論をどうお感じになりますか?

川村
今の段階で国会の審議を見ていますと、基本的にこの法律の中身はどういうものなのか、つまり上限を含めてどれだけの業種にどれだけの人材が不足しているとか、そういうことを踏まえたうえで、例えば報酬の水準はどうなるのかと、そういう具体的なルールがまだまだ固まっていないんですよ。
これは自民党の中のそれぞれの部会でも、これまでどこまで積み上げてきたのかっていうことで言いますと、どうも今の法律の中身についてはとりあえず法案を通したらあとでそれぞれの省庁で省令とか政令で上限を決めていこうとか、業種は決めていきましょうというようなことが早く成立させることが前提になっているということが混乱の原因だと。つまり中身は、例えばアンパンをつくるのに中の餡はどういうものにするのか、粒あんなのか、あるいはこしあんなのか、それはあとで詰めればいいんだという形で行政にゆだねるということで言うと委任法という言葉がよく使われるんですね。これはそれぞれの厚生労働省の省令とかすべて総理府というところで中身はあとで具体的に詰めましょうよ。ただ国会ではそうなったら立法府としての立場、立法府として国会がつくる、そのきちんとした前提がないということになりますから。それじゃあやっぱり立法府の国会議員として何をやるべきかというのは自分たちの職務が果たせないということになるんで、国民から選ばれた国会議員として、ここはやっぱりきちんと国会で詰めていかないといけないんですね。そのためには時間が必要だと思います。

山口
そこのスケジュール感を確認しておきたいんですけども、やっぱりこれは時間が足りないのかなと見えてくるんですね。安倍総理の外交日程を実は優先してかなり急いでいるんじゃないかなという指摘があるんですね。というのも明後日(11月26日)火曜日に衆議院通過を目指しています。水曜日から参議院の本会議での審議入りを目指すということなんですが、ここで大事なのは、この水曜日の段階ぐらいでこの参議院の本会議で審議入りができないと、もう30日金曜日からは安倍総理、外遊に出かけられるんですよね。実はG20以降もずっと不在でしてもう12月6日までいらっしゃらないということになるわけです(安倍総理は予定を前倒しして12月4日に帰国)。ですからこの火曜日の衆議院通過、その後の参議院本会議が本当にこのスケジュールで入れるのかどうか、このあたりもカギになってくるわけで、これがもしできないと、会期延長は避けられないという情勢なんですよね。こういうところを見ても、稲田さんどうですか、スケジュールがタイトすぎてもっと議論しなきゃいけないんじゃないかとも見えるんですがいかがでしょうか?

稲田
そうですね、ただ党内的には後ほどもお話しあると思いますけれども、約3年近く前、特命委員会から議論をして、そして、それに基づいて今回の法案は出来上がっております。それと同時に外交日程を優先しているんじゃないかという批判がありますけれども、外交も大事ですけれども、もちろん内政も大事です。あと政府与党の立場としては、やはり国会で提出した法案は国会の中でしっかり成立をさせるべくですね、努力もし、また野党の皆さんとも真摯な議論を積み重ねていくということだと思います。

稲田議員「外国人労働の問題に向き合って提言」

山口
稲田さんが政調会長当時にまとめた提言というのが、今回の入管法改正案につながっているということも言えると思うのですが、そのあたりを大木さん、解説してください。

大木
2016年、稲田さんが政調会長当時に設置した「労働力確保に関する特命委員会」。そこで提言されたのが、「共生の時代」に向けた外国人労働者受け入れの基本的考え方」、提言内容を一部抜粋させて頂きました。1つ目、外国人労働者の増加が続く中で今後、人口減少が進むこと。介護、農業、旅館等特に人手不足の分野があることから、外国人労働者の受け入れについて、雇用労働者としての適正な管理を行う新たな仕組みを前提に、移民政策と誤解されないように配慮しつつ、必要性がある分野については個別に精査した上で、就労目的の在留資格を付与して受け入れを進めていくべきである。さらにですね、受け入れ枠などの仕組みについて、在留期間について、地元自治体との関係を保つための施策などにもこの中で触れられていました。稲田さんこの当時、外国人労働者の必要性についてどのような思いで提言を出されたんでしょうか?

稲田
まず当時というか現行ですね、現行の外国人労働者というのは、高度の人材かそれとも、技能実習生、技能実習生は労働者ではなくて実習生なんですけども、結局実習生という名のもとで労働者のように使っている場合も非常に多い訳ですよね。そして自民党の考え方は、いわゆる単純労働の外国人労働者は入れないと言いながら、この技能実習生制度が非常にひずみがある。しかもこの高度な人材と、技能実習生の間の部分ですよね。こういった部分についてもやはり今の人材不足からすれば。特に当時はですね、新“3本の矢”で介護離職者ゼロとっていうのを掲げておりまして、介護の現場などは私も地元は福井ですけれども非常に人手不足、アベノミクスの効果で求人、有効求人倍率、福井だったら2を超えていたんですけど、そういった介護の現場の人手不足などを考えますと、やはりこの外国人労働の問題をしっかりと正面から向き合っていくことが今おられる外国人の方々の人権を守ることにも繋がるという、そういう思いで、正面から議論をしようということで、特命委員会を作りました。

山口
確かに、技能実習生をめぐる問題は様々な事があって、そこの矛盾をしっかり解きほぐして実態に沿ったものにしていかなければいけないだと、そこは稲田さんの強い思いがあったわけですね。

稲田
はい、そういう事です。

山口
共生の時代に向けた外国人労働者の受け入れの基本的考え方、これは稲田さん達が2年前にやられたことなんですが、そこでこういう指摘があったんです。『今後の外国人労働者の受け入れの議論に際してこのような「単純労働者」という用語を使っていくのは不適切』なんだと。ですから単純労働者という用語を用いずに考え方の整理をしていくべきであるとされています、この単純労働者という言葉、そもそもどういう事を指していて、これが不適切なのはなぜなのか、このあたりいかがでしょうか?

稲田
その時の議論では単純労働者って一体、今おっしゃったように何なんだっていう事が、定義はないし、反対に単純労働者とか単純な仕事と複雑な仕事はとか、単純な仕事と技術のいる仕事と、とかですね。そういう言い方自体がなにか仕事を差別するような言い方でもあるし、また農業とか建設とか単純労働のいわいる単純労働の典型として、例えば農業とか建設と言ったところで、もう農業も建設も色んな技術が必要となってくる時代において、単純労働者だからどうだとかいうような分け方は、もうやめましょうという事をこの提言の中でも決めたということです。

山口
日本の政府の中のずっとこれまでの考え方の中で日本の国内の労働者とが競合する恐れがあるんだと。だから単純労働者を入れる事は出来ないんだと、つまり慎重論が非常に根強くあったと思うのですが、まさにここは岩盤規制と言えるのかもしれませんし、そこをつき崩したいという稲田さん達の思いもあったんでしょうか?

稲田
そうですね、外国人労働者イコール単純労働者。そして入れないというようなですね、すごく消極的な意味合いとして使われるという事はやめようという意味です。

山口
ただ、これは国の流れの中で単純労働者はつまり日本の国内の雇用を奪うので受け入れられませんよというような、基本的な考え方を変えるというのはやっぱりそれなりの抵抗というか色んな反応があったんでしょか

稲田
でも、そういう時代じゃなくて、ホントに先ほど言いましたように、人手不足で探しても全く募集してくれる若者が居ないという状況の方がむしろ問題であるというふうに状況も変わってきている事があるんじゃないでしょうか

山口
そうですよね、ですので単純労働者という考え方ではなくて、必要な、人手不足なわけですから、だったらそこに外国人労働者で入ってきていただける方がいるんであれば、受け入れたいというこうとだと思うんです

稲田
一定の要件のもとで、そして日本の労働界、労働市場に影響を与えない、しかも移民政策と取られない、という様々な制約がありますけども、外国人労働の問題に正面から、向き合いましょうと、反対に留学生の資格外を使ったりとか技能実習生を使ったりだとかそういうことではなくてしっかりと正面から議論しましょうということです

川村
私も正面から議論するというのは大変賛成で、その事のためにも国会できちんとした論議が進められなければいけないんですけど、今の国会の審議見ていると与党の中にもどちらかと言うと、この法案を理解していない。つまり反対だというのは移民政策に繋がるからだという方が居るんですけど、なぜこういうような法案の出し方を、つまり法務委員会を中心に今法務省が管轄している役所としてこの問題に当たっていますけど、厚生労働省とか、これは地方創生にも繋がりますし、そういう意味でも総務省とか、いわば多角的なプロジェクトとして、この法案を進めていくという立場をどうして与党はとらなかったんだろうかと思うんですけどいかがですか。

稲田
やっぱり議論を、整理をしっかりとやる必要があるなというは私も感じます。例えば7000人技能実習者が逃亡している問題であったり、あと国外に住んでいる扶養の問題であったり、社会保障適用の問題であったり、これは今現在もある問題なんですよね。今ある現在の問題と今回新たにこの在留資格を認めて何が問題になるかということをしっかりと整理をして、そしてわかりやすく国民の皆さんにも、また国会の議論の場でも整理していく必要があると思います。

新たな在留資格が想定するのは・・・

山口
在留資格のところ、そこをもう一回これから考えて行きたいんですよね、改めて確認させてください。今その在留資格の特定技能の創設なんですが、5年間で最大34万人とされていますけれども、これが上限じゃないという話も出てきていますが、特定技能の1号と2号があるわけですね。1号に関しまして言いますと、条件として受け入れ分野で即戦力で活動するために必要な知識または経験を有する、この所管の官庁が定めている試験などによって確認される。通算で5年在留が可能で家族の滞在は基本的には認めていないというものですね。特定技能2号、こちらはその分野で熟練した技能を持っていて、その試験などによって確認される。こちら在留期間は更新できる、条件を満たせば永住申請も可能である。さらに家族の帯同もできるんだということなんですけども、今回出されてきた特定技能の1号2号、これは稲田さんたちが2年前に思い描いていた内容と同じなのか違うのかどうですか?

稲田
基本的に同じです、ただ特定技能1号のたとえば14業種であったりですね、あとその受け入れの上限の人数であったりだとか、そういうことは最近というか今の現状に合わせて詰めていったというふうに思います。

山口
そうしますと、稲田さんの考え方他の中でもやっぱりこの特定技能2号のほうもあるんだと?

稲田
その当時提言の中で1号から2号に行ってそして家族帯同で永住権というところまでは提言の中に入ってないし、そこまでは議論はしていません。ただ特定技能1号、たとえば5年間とかですね、そういったところの基本線はほぼ同じだということです。

山口
この特定技能2号が今後どうなるかも一つ焦点になっているんですけど、たとえば一部の人からは、家族の帯同もできますし、条件を満たせば永住申請も可能ということですから、まあこれがつまり移民に繋がるんではないか?という指摘もあって、このあたりは後でまた詳しく伺いますけど稲田さんの考えとはちょっとじゃあ違うということですか?

稲田
いえいえ、現在の専門的、技術的分野、高度人材ですよね、この方たちと同じなんですよ。特定2号になったからいきなり永住権ではなくて、例えばその居住条件とか就職条件、いろんな要件が備わって初めて永住権、永住権というか、在留資格を更新できる資格がもらえる。今も高度人材については同じ事になっておりますので、それと同じくらいの技能を持った人を特定技能2号として扱っていくということなので、現在の在留制度の延長というか、それを変えるものではないというふうに思います。

山口
分かりました。たとえば、一部の人でこれは移民なんじゃないかという指摘がありまして、そこが今回の問題のいろんなところに通底しているところもあるので、その話題は後ほどまた伺うんですけど、ここで一つ確認しておきたいのが、衆議院の法務委員会で受け入れの14業種のうち何割が今ある技能実習生からの移行と見込まれるのかという質問に対しまして、ある数字が出てきたわけですよね。初年度の移行がおよそ55~59%。5年後の累計がおよそ45%だということで、つまり、今ある技能実習生が今回の特定技能1号のベースになるんだということですよね?

稲田
ベースになるというか、今も技能実習生、労働の現場で働いておられますよね。技能実習制度自体は労働者ではなくて実習生で、ここで技術を学んでもらって、そして母国に帰って貢献をしてもらうっていう、本来の制度は技能実習生度そうですよね。その中において、3年くらい経たれて、もう少し身につけた技能を日本でしっかりと労働の現場で活躍したいという外国の方には1号として残っていただくということです。

山口
今ある技能実習生の大きな枠がありますよね。これは残るということですか?

稲田
技能実習制度という名の下で、技能実習の人と労働というか労働力として使われていた方。しかし、労働力として使われている方はちゃんと外国人労働者として1号としてしっかり労働基本法も適用するし、労働者なんだという、そういうところをしっかり整理をして、技能実習制度自体は本来の国際貢献として残すということ。

山口
そこはつまりちゃんと整理するということですね?

稲田
概念もみんな整理していくということです。

山口
片山さんはこの技能実習生と今の特定技能の1号2号の話どんなようにお考えなられますか?

片山
私はこれ出てきた時からずっと思ってるんですけど、たぶん産業界というか、企業の皆さまから見て、とても合理的な仕組みだと思うんですね。やっぱりせっかく今まで2年とか3年とか働いて、事実上働いてもらってで慣れたところで本国に帰ってしまうというよりは、ご本人も希望するんならば、同じように自分のところでまた働いてもらいたいというのが多分1号の概念ですよね。そこでさらに5年働いてもらって、もうこの人欠くことのできない人材だと、わが企業には。もっと残ってもらいたい、でもその時にやっぱ家族もいないのはいくらなんでも、人道上の問題もあるから2号と。こういうストーリーだと思うんですね。この部分だけ見たらとっても合理的だと思います。その際に、さっき稲田さん言われたようにやっぱりこの際、技能実習生の方も正面からとらえて、本当にあの便法として技能実習生という名前のもとに、実質的な労働者として働いてもらっている人多いですから、そういう人たちの場合には、労働法制の方に労働者として位置付けて、正面から、この際改めて整理する。もう一つ、本当に技能実習生のニーズがあるんであれば、そこはもう純化して、本当に純化して、紛らわしくないような仕組みにして整理し直す。こういうことは、この際に改めてやられればすごくいい機会になると思いますね。

川村
そのことを、法務省の局長もある種の根拠をもって分かっているから、初年度の移行は55から59%っていう数字を出しているわけですよね。それは、それに見合った今の合理的なニーズがあるんだということの裏返しでもあるんですよ。それは、企業が今現在どういう立場で実際に今雇用しているかということ。例えば、失踪している中にも、技能実習生だけじゃなくて留学生で実際に雇用的なアルバイトをしていて、それがきちんと技能実習生の資格を持っていない人もいるわけですね。今回の流れから行くと、今、片山さんがおっしゃったように、技能実習生から技能1号、2号という形でいけば5年、5年、15年という、そこまでいくわけですね。そうするとアメリカなんかではグリーンカードという形での定住者という形の流れに行くんではないかと。それが定住者で、ある意味、衣食住の問題を含めて言うと、よくスイス人の作家の言葉で、労働力として呼んだらやってきたのは人間だったということを考えたうえで、きちんとした人権やすべての法体系、例えばの話、医療保険とか、そうこともひっくるめた制度改革が行われるのかというと、どうもそこまではいかないんではないかというのが今の国会のあり方なんですね。

山口
そこでですね、その問題点、せっかく日本にきてくれている外国人の方がうまくいけばいいんですけど、いろんな問題があってうまくいかないケースも出ています。そこのところをもう一回確認しておきたいんですね。要はピンハネの問題と言われているんですけど、外国人の方が地元の現地の企業を通して送り出し機関を通して日本にやってらっしゃいます。そして日本の監理団体を通して、これは技能実習生の場合ですが、受け入れてもらって、技能実習生として研修してもらう、という流れだったんですが、これが今回の入管法改正で、大きな流れは変わりません。ここの監理団体が新たな組織というか名前が変わりまして、登録支援機関になるとされています。ここでちょっと伺いたいんですけど、この技能実習制度においては、この監理団体、現地の外国の送り出し機関もあるんですけど、ここに悪質な業者が入ってきてここでその技能実習制度の給料をピンハネしてしまったりとか、いろんな問題が指摘されていました。今回、入管法改正案では登録支援機関になりますけども、結局、監理団体が横すべりするような形でここ(登録支援機関)が、要は公的機関じゃないわけですから、利潤を追求するここに企業が入ってくるわけで、ここの問題、ピンハネしてしまうんではないかという問題は、今回の法改正でも解消されないと思うんですね。この問題点いかがですか?

稲田
ちょっと整理すると、今問題になっている登録支援機関ですね。これはこの特定技能1号の人は、高度の専門的、技術的分野の人に比べれば日本語とか技能とかでは少し落ちるので、しっかりと支援していくことで、この登録支援機関が設けられるんですよね。そして今回、法務省から外郭団体として出入国、在留の庁ができてですね、そこでしっかりその登録ですとか、それは登録抹消も含めて、あと指導、助言、調査という枠組みがしっかりと法定されることによって、今おっしゃったような不正がないようにしっかりと管理をしていくということが可能になるのではないかと思います。

山口
ということだと思うんですけど、ただ私もちょっと他の専門家の方に伺いまして、お隣の韓国がやっぱりこの外国人労働者受け入れるにあたってさまざまな試行錯誤を重ねて、韓国は、今回の登録支援機関にあたるここがですね、国がやるんだということなんですね。つまり、国がやらないと、やっぱりここに利潤を追い求める業者がいるということはやっぱり性善説じゃなくてやっぱりここに悪い人たちが入ってくる。その問題を解決できないんで、ここを公的機関にしたそうなんですよね。日本ではこれ政府の案ではここを公的機関にしようということはならなかったんでしょうか?

稲田
公的機関ではなくて、むしろ法務省の指導、監督の元に置くという考え方です。

山口
そこまでせっかく変えるんであればね、技能実習生が年間7千人もいなくなってしまってその問題やっぱり大変じゃないですか、お金を稼ぎに来て、日本で生活するのも大変でいなくなっちゃうっていう、そこをなんとかやっぱり私たち同じ日本人として変えてほしいと思っているんですよ。ただどうしてそこがね、横滑りになってしまったのか。例えば、ひょっとしたらこの利権を切れなかったんじゃないか。今まで監理団体で働いている方をこれ切ることになっちゃいますから。そこにメスいれられなかったんじゃないかっていう指摘もその専門家の方はしていたのですか、どうですか?

稲田
いやいや、そしてまた技能実習制度に関しても人権侵害ですとか、処遇の問題ですとかこれの改正案が一昨年から施行されているところですよね。その施行された改正案の、ちょっと状況も見ていかないんじゃないのかと思います。

川村
だから今の問題も含めて、いろんな懸念はあるんですけど、それは先ほども言ったように、この委任法という形ですから、登録の機関をたとえば地方に行って働いている人たちにとってみれば、労働基準監督署がきちんとそこの関わりまで含めて衣食住の問題できちんと人間として扱っているかどうかってことも含めた対応をしていくわけですから、その制度の設計は今の段階ではなされてないんですよ。ですからそれは今度は厚生労働省なりが含めた形であの、行政が俺たちに任せてくれって形で進行しているのが今の現実だってことなんです。

山口
なるほど

川村
国会できちっと、人権を守るって意味では国会議員が決めていかないと、それは法律の中身にきちんと詰めていかないとだめだと思いますよ。

山口
そうですよね。そのあたりについては片山さんはどんな意見をお持ちですか?

片山
私ね、さっき山口さん言われたように、今度新しく作る登録支援機関というのは、できるだけ公的な関与を強めた方がいいと思いますね。同時にですね、やっぱり今の監理団体の中にちょっと悪いのがあるんじゃないかっていうのは前から言われていますよね。この際ですね、監理団体の実情といいますかね、実態をきちっと透明化して現状を明らかにして、直すべきところを直していくと。合わせてですね、海外の送り出し機関についてもですね、いろんな噂がありますから、そこもぜひ解明をして、変な要素が入ってこないように改めるってことが今回必要だと思いますね。

稲田
とてもいい機会ですね、今回こういう法律を出すってことで、非常に今の現状も注目をされているわけですよね。いろんな社会保障の問題も含めて、いろんな歪みというものが明るみに出てきますので、この際、先生がおっしゃるようにしっかりと実態調査をして、そこにメスを入れていくことが重要だと思います。

稲田議員「移民政策は取らない」

山口
もう一つ大きなテーマに移りたいのですけど、今回の入管法改正案、実はこれ、移民なんじゃないかというふうに、単純に考えるとね、ぱっと聞いてそういう風に見えてくるところあると思うんです。ただ、自民党内では、この移民の受け入れということに対してこれまでいろいろ紆余曲折があったんですね。大木さんお願いします。

大木
はい、振り返ってみるといろんなことが見えてきます。2008年 福田康夫政権のときの「人材開国!日本型移民政策の提言~世界の若者が移住したいと憧れる国の構築に向けて」から抜粋しました。その提言の趣旨は、50年後の人口は3分の2に落ち込むという政府統計がある、少子化対策の効果が現れるとしても、それは遠い将来の話、日本の人口危機を救う効果的な治療法は、海外からの移民受け入れ以外にない、としているんです。そして2014年、第二次安倍政権になってから、内閣府は移民シミュレーションを公表。移民を「毎年20万人」受け入れれば、2110年までほぼ1億1千万人の総人口を維持できるという推計を示しました。稲田さん、もともとの自民党の提言は、移民を考慮に入れていたようですが、どこかで方向転換があったんですか?

稲田
特命委員会で詰めて議論をして、最後の提言の中にも移民政策はとらないと。そして移民の定義もこの提言の中ではですね、入国の時点で、いわゆる永住権を有する者、すなわち入国の時点で未来永劫、日本に住むということで入ってくる、そういう移民政策はとらない。そして人口減少を移民で埋めるというような政策はとらない、ということは明言をしております。

山口
その時(稲田議員が政調会長のとき)の内容ですね、『「移民」は入国の時点でいわゆる永住権を有するもの』ということなんですけど、稲田さんは個人としては移民ということには反対ですか?

稲田
移民ということには反対です。移民政策は取らないということです。特命委員会の中で議論をして整理したのは、そういう整理であります。

川村
移民というと、日本社会の、将来の問題にかかわってきますから、もっともっと深い議論が必要なんですけれども、いわゆる難民の問題も絡んでくるんですよ。つまり今の日本の難民政策というのは、難民の受け入れが非常に少ないですよね。シリア難民とか、様々な形の難民。つまり難民がきちっとそれを難民として認定するってことは、日本において永住、つまり国籍をもつっていう形になるとですね。難民が増えてくるってことは移民を目指して増えてくるんではないかと、いうことになるので。日本はそういう社会を目指さないというのが根底にあるんですけど。それとじゃあ季節労働者のような形で不景気になったら帰ってくれってということがあってはいけない、これはリーマンショックの時に日系ブラジル人が帰されたのと、そういうことにつながりかねないので、そこはやっぱり人権の問題として扱う必要があるのと思いますね。

山口
移民なのかどうなのかというところは、本当に議論が時間が足らないところなんですけど。

片山
私はね移民って言葉の定義があいまいだと思うんですね。我々日本人にとっての移民っていうのは、かつてブラジルとかハワイに移民したと、生活の本拠を向こうに移して、向こうで終世暮らすというイメージですよね。そうすると、日本に来ると言った時に入国の段階で永住権を持っている人を移民と言います、ということですよね。それは多分、国民の間にも抵抗感は強いと思いますよ。そうじゃなくって、今度の新しい法律の体系の中で、(特定技能)1号を5年間やって、さらに(特定技能)2号をちゃんとやって、その中で本当に日本の地域になじんで、安心感もあって、日本に貢献して、かえって、そういう人が永住権を持つというのは、これはあんまり抵抗感ないんじゃないでしょうか。それを移民というか言わないかちょっと別ですけど。だから移民という言葉の定義をみんなで共有したほうがいいと思うんですよ。それじゃなきゃ議論がなかなか進まないですよね。

山口
稲田さんちょっと時間が無くなってきたんですけど、1号2号を経て、ちゃんとした人はね日本に残ってもらう、そういうことも僕はひとつありなんじゃないかと思うんですけどそこはいかがですか?

稲田
もちろんそういう制度として今回も作っているんですよね。やはり、そういう外国の方にとっても住みやすい、人権も守られていて、住みやすい日本を作っていくっていうことが私は特定技能1号で5年で帰った人もそうですし、留学生もそうです、技能実習もそうですけど、日本の価値を高める。多様性を認める社会を作っていくってことが私は日本の価値を高めることにつながると思います。

山口
まさにそうですよね。ですから、そういうところでも問題がおきないようにピンハネ問題が起きないようにしっかりと制度設計をして本当は時間をかけて国会でも議論して頂きたいと思います。みなさんありがとうございました。

(2018年11月25日放送)