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#204

受診せず自宅療養も!? 新型コロナ「第6波」止まらない感染拡大

新型コロナウイルスの「第6波」は、急激な拡大が続き、2022年2月3日には、新規感染者数が全国で10万人を超えました。1月23日の『BS朝日 日曜スクープ』は、どうすれば感染状況を制御しつつ、医療や重要インフラの維持を図ることができるのか、専門家の提言をもとに議論しました。

■「重症化率が低くても…さらに対策の進化を」

菅原

感染者の拡大が止まりません。かつてない「オミクロン株」の拡大が私たちの生活にどのような影響があるのか、具体的に見ていきます。本日のゲストを紹介します。自民党・医療系議員団・新型コロナ対策本部 幹事長として様々な対策を提言しています。医師で衆院議員の今枝宗一郎さんです。よろしくお願いします。

今枝

よろしくお願いします。

菅原

そしてもう一方、別室から政府の専門家会議や厚生労働省のアドバイザリーボードで新型コロナ対策に当たってきた東邦大学・舘田一博教授です。よろしくお願いします。

舘田

よろしくお願いします。

菅原

まずは、お伝えしていますように、新規感染者数が全国で5万人を超えています。第5波のピークの約2倍という規模になってきているんです。では、きょう午後6時段階の全国の新規感染者、東京が9468人でした。そして、この赤い地域のところが過去最多を更新したところで、9の県できょうは過去最多を更新しています。重症者は430人。1日の全国の新規感染者数は、現在のところ、4万5848人となっております。なかでも昨日、1万人を超えました東京都、小池都知事は危機感をこのように話しています。「いつ自分が感染してもおかしくないという意識を皆さんと共有し、何としてでも抑え込んでいくということ」。厳しい表情で話していました。今枝さん、この1週間で、東京は2倍となる数以上、全国で5万人を超えてきました。まずはこの政府・与党内の受け止め、危機感は今どうなっているんでしょうか?

今枝

もちろん、非常に早いと思っています。今回のオミクロンは、いわゆる人から人に伝播するこのタイムラグ、これを専門的には世代時間というんですが、これがデルタ株に比べても約2.5倍速いということがわかっているので、感染の拡大の具合が、スピードが速く、立ち上がりが急に増えますので、非常にこれはリスクだと思っています。一方、重症化率がどれだけかは、まだ色々な議論がありますけれども、重症化率が低いということはわかっております。ただ、この重症化率が低いからといっても感染が爆発していけば、自然とまた重症者も増えていきますので、決して油断はできません。しっかり対策をしないといけないというふうに思っております。

菅原

そういったオミクロン株の特徴を踏まえて、後ほど詳しく伺っていきますが、政府の今の対策のままでいいのか、もしくは変える必要があると思っていらっしゃるのか、いかがでしょうか?

今枝

対策はさらにさらに進化をさせていかないといけないと思います。オミクロンは、先ほど言ったように重症化率が低いことは間違いないので、それに合わせた形で、どのようにしたら社会活動と命を守るということを両立できるのかということを考えて、どんどん対策を改善してかないといけないと思っています。

新型コロナの新規感染者は2月3日、全国で10万4466人に達しました。この日、東京は2万679人と、2日連続で2万人を超える感染者を確認しました。

■「全国で10万人、東京では2万人ぐらい、おかしくない」

菅原

この感染者がどこまで増えるのか?全国の新規感染者のピークですが、専門家の提言では、早ければ2週間後に感染がピークになる、早くて2月頭がピークだとしています。さらに東京の感染者も推計されていまして、1月27日、1日あたり1万8266人になるとしています。

ではこれがどれくらいの規模なのか、改めて東京都の感染者数をカレンダーで見ていきますが、きょう9468人、そして昨日22日が過去最多となる1万1221人となりました。ここまでの4日間、黄色くなっていますけれども、4日連続で過去最多を更新しました。

ここで1万1200人台ということですが、専門家の提言では、ここから4日後、27日木曜日に1万8200人台、これぐらいになるんじゃないか。さらに提言では、さらにその1週間後、2月の2日3日4日、このあたりがピークになるんじゃないか、こういった話が出てきているわけです。舘田さん、早くて2週間後がピークだとして全国で何人くらいまで新規感染者が増えると推測していますか?

※東京都の新規感染者数は1月27日は1万6538人でした。2月2日に過去最高の2万1576人、3日2万679人、4日1万9798人を確認しました。

舘田

これは欧米の感染爆発、それが同じように日本で起きたとすると、人口当たり、日本全国で10万人、東京では2万人ぐらいの感染者が出てもおかしくないと考えられていますけれども、実際にどうなってくるのか、ここから1週間、2週間が非常に大事な時期だと思います。

菅原

ピークになったらすぐにピークアウトするのか、高止まりのような状況が続くのか、ここはどうお考えですか。

舘田

これもなかなか難しいですけども、オミクロン株の特徴として潜伏期間が3日、あるいは世代時間が2日という形で、かなり従来株に比べると短いということ。だから、それが一つの理由で急激に増加しますけども、急激に減少するような可能性もある。ただ、予測できない因子として、また新たな変異株が出てくると、それがよくわからない状況になってくるということがあります。

■「家庭内感染を防ぐには…」 「新規感染者数は重要な指標」

菅原

常に新たな変異株の脅威という可能性は、念頭に置いておいた方がいいですね。その上で、東京都の新規感染者のグラフですが、第5波に比べて、第6波は既に倍の高さになっています。この、かつてないほどの新規感染者はどこで感染しているのか?こちらが年代別の感染経路です。特徴としては、10代以下は教育施設が多い、20代は会食が多い、そして60から70代は家庭内感染が最も多い、さらに80代以上になると高齢者施設が最も多いということで、ハイリスクの60代、70代は家庭内感染をどう防ぐか、80代以上の方は高齢者施設内での感染をどう防ぐか、これが「オミクロン株」の感染リスクを下げるポイントです。そこでカギとなるのが、家庭内感染の予防です、上山さん。

上山

東京都は1月20日(木)、自宅療養のときの家族の注意点を公表したのですが、これが家庭内感染の予防でも参考になりそうなんです。例えばこの「タオルや食器など身の回りの物を一緒につかっていませんか?」。日々使うものを別々にするだけでリスクが下げられます。さらに「手でよくさわる場所は掃除・消毒しましょう」と、ドアノブ、照明のスイッチ、リモコンなどを挙げています。さらに「こまめに換気しましょう。レンジフードも効果的」。換気扇を回しておくというのも効果的だとしています。舘田さん、防ぐのが難しいと言われる家庭内感染ですが、家の中の行動を少し変えることで予防策を取り入れることもできるということですか。

舘田

そうですね。今、挙げていただいたようなところは、非常に大事なポイントになりますけれども、特にこの新型コロナウイルス感染症では、やっぱり飛沫感染、あるいはエアロゾル感染、マイクロ飛沫感染、そういうところが大事になりますから、換気、そしてマスク、これを家庭内でどういうふうに使っていくのかということに注意していく必要があるかと思います。

上山

60代、70代の方は家庭内の感染が多いということだったんですけど、家庭内にどのようにウイルスが持ち込まれてきたのか、この辺りの経路は明らかになっているのでしょうか。

舘田

そうですね。いろんなパターンがあるかと思いますけども、先ほどの資料の中で、やはり若い人たち20代は、外の会食の中で感染を受けてしまって、オミクロン株になって、症状があまり出ないですから、軽い症状のまま家庭内に持ち込んでしまって、知らず知らずの間に家庭の中で広がってしまう、そういったことが起きているんじゃないかなと思います。

上山

そうしますと、高齢の方と若い方が一緒に住んでいる空間では、少し生活空間を分ける、こういった気遣いも必要になってくるんでしょうかね。

舘田

そうですね。これだけ市中感染が増えている状況ですから、いつどこで自分が感染して、無症状のまま持ち込んでしまう、そういうリスクが高いということをしっかりと認識して、家庭内に持ち込まないという対策をとっていくことが大事になると思います。

上山

木内さん、新型コロナ感染拡大が起きている中で、どのような観点から、社会活動への影響、経済への影響を見ていらっしゃいますか。

木内

個人とか企業にとっては、まん延防止かどうかというよりも、やはり新規感染者数が重要なんだと思うんです。やはり新規感染者数が、自分が感染するリスクを測る一番重要な指標、確率がどの程度かということになりますので。仮に重症化リスクが高くないとしても、一旦感染してしまいますと働けなくなるとか、業務から離脱しなきゃならなくなるわけですね。それは個人とっては、社会的に大きな打撃になりますし、それが増えれば企業にとって働き手がいなくなるということになってしまって、また経営にも打撃が出てくるということになります。まん延防止か緊急事態宣言かというのは、主に医療のひっ迫度合いで判断されているような感じがしますけど、個人・企業にとっては新規感染者数がやはり重要なんだと思うんですね。それが増えてきたら、政府の規制はともかくとして、自制するという動きは既に相当出ているんだろうと思います。

■インフラ維持に危機感 濃厚接触者の待期期間を見直し

菅原

今の話にありましたように、「重症化リスクが低い」とされるオミクロン株ですが、全国の知事は非常に強い危機感を示しています。これまであまり指摘されなかった問題が挙げられています。北海道の鈴木知事「このまま新規感染者数の急速な増加が続いた場合『医療のひっ迫』プラス『社会機能の維持』に影響が生じる、こういった状況になる恐れがある」。社会的機能の維持に影響が出る恐れがあるというのです。海外では、ニューヨークでは運転士の14%が欠勤し地下鉄の一部運休、デトロイトでは公共バスの4分の1が運航できず、さらにイギリス、チェルムフォード市では3分の1以上が欠勤し、ごみ収集が3日間停止、さらにロンドンでは消防隊員の15%が欠勤し、消防車の3分の1が使用不可能になるという事態が起きました。

日本でも、ごみの収集や交通といった社会機能、インフラが止まる、そんなことが起こる可能性があります。医療機関だけの問題ではなく、感染者が増えると、物流などにも影響してくる。だから新規感染者を減らさないといけない、オミクロン株では、こうした新たな問題が出てきています。政府も対応に動いています、上山さんお願いします。

上山

感染者とともに問題になっているのが「濃厚接触者」です。政府は濃厚接触者の待機期間について、一般の人は14日から10日、エッセンシャルワーカーは6日目の検査で陰性なら勤務可能にする、などと変更しました。岸田総理はおととい(1月21日)、濃厚接触者の待機時間についての質問に対し「社会活動の維持のため、科学的知見の集約を急ぎ、オミクロン株の特性を踏まえたメリハリのある対応を検討していきたい」と、さらなる短縮に前向きな姿勢を示しました。今枝さん、さらに短縮する必要はあるとお考えですか。

今枝

まずですね、今回、いわゆる濃厚接触者の方々の待機期間を短くしたというのは、ただ単純に社会的に維持ができなくなるからどうこうだけではなくて、この感染力のあるウイルスを体外に排出する期間が、オミクロンの場合は短かったというのが、エビデンスとして出てきているということが大きな要因になっています。ですので、さらに短縮するということは、こういったエビデンスを見ながら、そして同時に社会活動をどういうふうに維持していくのかというベネフィットというか、利益としっかりと評価をしながら判断をしていくべきと思っています。

上山

先ほど木内さんからお話ありましたけど、やはり濃厚接触者になってしまうと、ビジネスマンとかも、会社に出勤できないとか社会活動に参加できないということで、本当に濃厚接触者になるのを何とか防がなくてはと、私も思ったりするんですけども、それも考えて今、エビデンスをもとに10日間にしたと、一般の人の場合は。これはさらに短くするような方策はあるのか、考えているのか、このあたりはいかがですか。

今枝

もちろんですね、先ほど言ったようにエビデンスを見ながらではありますけれども、もう社会が成り立たなくなってしまって、そのことによって、例えば経済的な本当に大きな打撃を受けてしまって、その方が成り立たなくなってしまう、生計が成り立たないくなってしまうとか、そういったときにもどうするんだということも、十分これは意味があることですので、それとリスク等を評価しながら判断していくことになるのかと思います。

政府は1月28日、新型コロナウイルスのオミクロン株の濃厚接触者の待機期間についてさらに短縮し、一般人は10日間から7日間、エッセンシャルワーカーについては2回の検査を組み合わせて5日目に解除する方針を発表しました。また、政府は2日、同居家族が濃厚接触者となった場合の待期期間も新たな基準を適用しました。これまでは感染者と同じ発症から10日間に加え、さらに7日間の待機を求めていました。しかし、今後は、感染者の発症日、またはマスク着用などの感染症対策を講じた日のいずれか遅いほうから7日間発症しなければ待機が解除されます。

■医療従事者の検査費用「負担軽減の流れを」

上山

濃厚接触者となった医療従事者については、毎日の検査を条件に勤務継続可能としていますが、費用が医療機関の負担になっていると聞きました。費用の問題は改善する必要があると…。

今枝

はい。この問題は私も早期から取り上げさせていただいておりまして、今、医療機関では濃厚接触者にスタッフがなった場合は、毎朝出勤に抗原定性検査というのを行って、それで陰性だったら働きましょうという形になっていますけれども、その費用が医療機関の負担になってしまっているので、これ毎日毎日やってるとかなりの負担になってしまうものですから、実は検査のキットを行政が医療機関に配布をしていこうというような流れを今、作っておりまして、その流れができてきたものですから、やはり実現していきたいと思ってます。

上山

木内さん、社会インフラの制限、経済界にも影響のある問題ですが、どのような対策が必要とお考えですか?

木内

社会の機能を止めないために、企業にも、いわゆる事業継続計画、BCPの強化が今、求められているというとこなんですが、BCPの基本はリモートワークじゃないかなと思うんですね。そういう意味では、既にほとんどの企業がやってきたという面もあるので、やはりここを徹底させるのが重要だと思うんですね。ですから、ステイホームで、リモートワークがやっぱり重要だと。ただ、もう一段階、もっと戦略的に進める余地もあるなと思ってまして、例えば、ある企業の一つの部署を3チームに分けて、自宅でのリモートワーク組と、本社への出社組と、あとBCP対応の別のオフィスへの出社と、三つに分けてですね、それぞれ絶対交わらない、接点を持たないようにして、一定期間で回していくっていう。

上山

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それぞれバブルを作るような感じ。

木内

そうですね。なので、どこかで感染者が発生しても、会社としての機能を維持できるとか、そういう形でもう一段やはり強化する余地があるんじゃないかなとは思います。

上山

企業にとっては、そういったリスクに対する対策も必要になってきますよね。

■重症化率が低くても… 2つの医療危機

菅原

そもそも、オミクロン株の前提ともなりつつある重症化リスクが低いという話ですが、3回目のワクチン接種が進まない日本でも同じく重症化リスクが低いのか、懸念がありました。それが少しずつ見えてきています。こちらは全国の重症者数の推移です。最新のデータで430人、新規感染者は第5波を超えましたが、重症者は第5波のピークの5分の1くらいです。もちろん、これから増える可能性があるので油断はできませんが、重症化の率としては抑えられています。

日本医師会の中川会長は「リスクの少ない若年層にはインフルエンザに近いものと考えられます」と、若年層にはインフルエンザに近いと発言。そして大阪府の吉村知事も「全体の陽性者に占める重症者の割合が非常に低いというのは事実だと思っています」、重症者の割合は日本でも低そうだと話しています。データも出始めています、上山さんお願いします。

上山

はい、第1波から第6波、大阪での重症化率です。注目はハイリスクの60代以上。第1波では21.1%、そこから9.8%、8.8%、9.3%、ワクチンが行き届く前は10人に1人くらい重症化していました。それが、ワクチン接種が行き届くようになった第5波で4.7%、そして今回の第6波では0.4%となっています。舘田さん、高齢者でも「オミクロン株」は従来よりも重症化しにくいと見てよろしいでしょうか。

舘田

はい。非常に大事なデータが出てきたと思います。この大阪のデータに加えて、先週のアドバイザリーボードでも感染研が、また肺炎の合併症頻度ということで報告してますけども、それにおいても同じようにオミクロン株で感染症で重症化しにくいという、そういうデータが出てますから、非常に朗報なんですけども、ただ、注意しなければいけないのは、ワクチンを打ってない高齢者が10%ぐらいはいるわけですよね。そういう人たちに感染を起こしてしまうとどうなるのかということは注意して見ていかなければいけないと思います。

菅原

「重症化率がこれまでより低い」とオミクロン株ですが、医療機関がかなりひっ迫し始めているというのです。モニタリング会議のメンバー、日本医師会の猪口正孝医師は「コロナの病床から見るとそれほどでもないように見えるが、実は一般の救急病床はかなりひっ迫している。冬場は脳卒中や心筋梗塞などで患者が物凄く増え、コロナがなくても救急は大変な時期。その上でコロナのために病床を押さえているので、いま救急にかなり影響が出ている」ということなんです。脳卒中、心筋梗塞と新型コロナの両方に対応する救急医療がひっ迫しているというのです。

実際に救急搬送困難事例、救急隊が医療機関への問い合わせ4回以上、現場に滞在した時間が30分以上の事例ですが、東京では1月18日、過去最多の260件、大阪でも19日過去最多の153件、埼玉でも10日からの1週間で過去最多の727件発生しています。今、心筋梗塞や脳卒中、交通事故に巻き込まれた時、すぐに治療を受けられない恐れがあるんです。

さらに、このような医療にも影響が出ています。迫る“外来崩壊”。発熱外来など、多くの患者が押し寄せていると言います。実情として埼玉県の公平病院。年明けから発熱外来の患者が急増、患者の数はすでに第5波のピークを超えたということです。今枝さん、この冬の寒い時期、もともと脳卒中、心筋梗塞が多いんですが、この救急搬送困難事例の多さを見て、どう思いますか。

今枝

率直に言って多いなと思います。

菅原

やはり多いんですね。過去最多とありますが、これに関してはどういった対策が必要になるのかというところですよね。

今枝

これきちんとやはり対策を講じていかないといけないと思っていまして、この後いろいろとお話をさせていただけるとは思うんですけれども、外来の医療、これを強化をすることによって、しっかりとオミクロンの感染者の方々を対応していきながら、いわゆる救急医療に負荷をかけないように、できるだけしていくということも非常に大事かと思っています。

■救急ひっ迫と外来崩壊の恐れに…

菅原

まずは外来の面をしっかりとして、症状が出たコロナ患者の対応をしっかり上で、救急の余裕を持たせる、こういったところでしょうか。さらに舘田さん、自宅療養者も増えています。体調が急変した方が119番する。今後も感染者が増えると救急医療にさらに負担が増えていくことになるのでしょうか。

舘田

そうですね。これは、第5波で自宅療養中のコロナの患者さんが、全国で200人以上の方がお亡くなりになったという経験をしてしまったわけですけども、これは決してあってはいけないことですから、自宅療養の人たちをしっかり把握して、そして何か変化があった場合にはすぐに病院に移送できるような、そういったシステムを確立していく必要があるかと思います。

菅原

ですから重症化リスクが低いということで、重症患者、中等症の患者が急増するということはなくても、このように救急のひっ迫や外来崩壊、こういったことが起きてしまう恐れが出てきているということで、もし家で倒れてしまったとき、もしくは持病で病院に行きたい、こういったときの医療が受けられないことが非常に怖いわけです。今枝さん。これまではコロナの病床を何とか確保する、人員を増やす、こういった支援をしてきましたけれども、改めてこの外来の部分、救急の部分、具体的な支援というのは、どういったことがあるんでしょうか?

今枝

はい。まさにここが非常に大切なところでありまして、オミクロンは重症化リスクが低いからそれでいいのだ、ではなくて、この外来医療で、実はこの1カ月半、いわゆる外国人の方の原則入国禁止をやったことにおいて、1カ月半、感染爆発が遅れて、これだけ感染しても重症化リスクが低いんだなと。しかし、軽症者は増えるだろうから、そのために外来医療を実は徹底してこの1カ月半強化をして、3割ぐらいはだいたい発熱外来で診ていただける、そういう医療機関を増やしてきましたし、この1週間でもさらに1割増やすとか、そういったことも徹底してやっておりますし、こういったところへの様々な財政支援も含めて外来でしっかり診ていただける。またオンライン診療でその病院に行かなくても、診療所行かなくても診ていただけるような環境を整備して、自宅療養の方々をしっかり守るということを、この1カ月半でしっかりやってきたものですから、これを実現をしていきたいと思ってます。

菅原

しっかりやってきたという部分なんですが、さらにここから倍ぐらいになっていくんじゃないかと予想もあるわけで、そういった推計も含めて対応できる体制ができているんでしょうか。

今枝

この2倍に増えた時に、果たしてどれだけこの方々が外来医療、必要かというのは、まだそこまで、2倍というのは最近出てきた話ですから、イコールではありませんけれども、ただ、先ほど言った発熱外来、自宅療養の方々を診ていただける医療機関を、3割増やしてきたというのは相当なことであります。さらにもっと増やしていかないと、追いつかないということもこれからありうるでしょうから、さらに強化をしていく、そのための財政支援をしていくということが必要ではないかと思ってます。

■「若年層は必ずしも医療機関を受診せず」の提言

菅原

感染拡大によって、救急や外来という、これまでと違う形で医療現場がひっ迫する可能性が強まってきているのですが、舘田さんも参加した専門家からの提言をめぐり、このようなことがありました。まず1月20日、提言案が公表されたのですが、そこで医療提供体制の確保について2段階の対応が書かれていました。

「今後感染者がさらに急増した場合には外来医療や検査がひっ迫する可能性がある。こうした場合には若年層の多くは感染しても、症状は軽く自宅療養で軽快していることを踏まえ、例えば検査を実施せず臨床症状のみで診断を行うことを検討する必要がある」。つまりリスクの低い若年層はPCR検査などをせず、鼻水や熱など、そういった症状だけで診断するということです。さらに状況が悪化した場合「感染が急拡大した場合には外来医療の機能不全を防止するために、患者の状態等に応じた受診・診断の具体的な在り方も検討する必要がある」。患者の症状に応じて、病院の受け入れなどを検討する必要がある、こう書いていたんです。それが翌日の提言では「このまま感染が急拡大した場合には、外来医療の機能不全を防止するために、若年層で重症化リスクの低い人については、必ずしも医療機関を受診せず、自宅での療養を可能とすることもあり得ると考える」。先ほどの「若年層は検査せずに臨床症状のみで診断」この言葉がなくなりました。代わりに、病院に来ずに自宅療養を可能とする、もう家で寝ててください、こういう対応に言及しています。舘田さん、専門家の皆さんの間では最初、提言案としては「検査を実施せず臨床症状のみで診断」、こういった話が入っていたわけですけど、なぜ抜けてしまうことになったのでしょうか。

舘田

これはやはり、今、これからさらに感染の増加が見込まれるような、そういった状況の中で、それこそ外来崩壊、そういったものを防ぐためにも医療機関を受診せず自宅での療養を可能とすることも在りうるという形で、それを書いたということは一歩前進です。ですから、今からさらに厳しい状況になれば、より明確に、それこそ検査もしないで自宅療養してくださいということをお願いするような、そういった状況も含めて考えているという状況ができたと思います。

菅原

若い方だったら検査をしなくてもいい、そのあたりに関してのリスクはないという考えだったのですか。

舘田

これは先ほどからありますように、オミクロン株になって若い人でリスク因子を持たない人は、多くは本当に軽症、風邪様の症状で自然に治っていくということが明らかになっていますので、そういう人たちは検査もしないで自宅で待機していただくと。風邪様の症状ですから、治るまで家にいていただくと、そういうふうな方向性も示されたと思います。

■検査能力は足りるのか!?“受診せず”の現実味

上山

日本の検査能力ですが、日本全体で1日38万6265件、東京で13万件。これでは足りなくなる、という話が出ているのでしょうか?

舘田

そうですね。少しずつ検査のキット、試薬も含めて、足りなくなりつつあるということが聞こえてきます。そんな中で、今、無症状で心配だから、不安だから検査をしてほしいという人たちも検査ができているわけですけども、だんだんだんだん厳しくなってくるこの状況を考えると、そういう人たちよりも、実際に感染して、そして重症化リスクが高いような人たち、そういう人たちがすぐに検査ができるようなそういう体制にシフトしていく。そういう時期を考えていかなければいけないと思います。

上山

最終的な提言には「必ずしも医療機関を受診せず自宅での医療を可能にすることもあり得る」とありますが、病院に行かず自宅で療養するというのは、どのくらい感染者が増えてくれば、こういう事が必要になってくるのでしょうか。

舘田

これはまさにオミクロン株による爆発的な感染、初めての経験ですから、どのようになっているのか、なかなか難しいですけれども、ただ、そういう事態も起きうるということを想定して、元気で重症化リスクの低い人は、自宅で風邪として療養してくださいという方向性も考えておくということ。具体的にいつなのかということは、なかなか難しいですけども、5万人が、それこそ10万人になる、さらにもしも超えるようなことが起きてくれば、当然そういうことも考えながら、その時その時の状況を見ながら、臨機応変に対応していくということが重要になってくると思います。

上山

感染の拡大のスピードがかなり急速であれば、こういった対策も考えていかなくてはと?

舘田

そうですね。先手先手で考えて、そして準備をしながら進めていくということが大事になると思います。

上山

今枝さんには、政治という目線でお話伺いたいと思います。外来医療が今後ひっ迫してくるということになってくれば、やっぱり病院にかかる人、お医者さんに診てもらえる人も、本当に必要な人、高いリスクがある人に限ってくる必要があるということになってくる、つまりお医者さんにかかれる人も優先順位が決まってくるというふうなことになってくると思うんですが、これについては政治の側からどのようなお考えをお持ちですか。

今枝

はい。まず私、3段階あると思ってます。一つはですね、医療機関がやるべきことをして検査、そしていわゆる低リスクの方の診療、そしてハイリスクな方の診療ということになると思いますけれども、ハイリスクな方の診療は絶対にずらしてはいけません。一方、低リスクな方の診療は、次に何とかやっていきたいわけなんですけれども、ただ、ここを、例えば健康観察ですとか、オンライン診療ですとか、そういったところに置き換えていくということは、あり得ます。一方、検査は、例えば今、PCR検査38万40万件という数字がありましたけれども、一方、濃厚接触者の方に対応するためのものでもある抗原検査のキットもあります。これは実は今、80万回、1日できるような体制を作ろうとしておりますので、これを例えば診療所に行ってやるんじゃなくって、自宅で抗原検査をやってそれを郵送するとか、そういったところで代替できるものがあれば、やはり診療の方に医療機関、より力を割いて欲しいので、検査を代替できるものは、そういった郵送とか抗原検査とか。そういったもので対応していくことで、代替していくということをやっていくというのが現実的なのかと思っております。

菅原

世田谷区で配ってたような検査キット、市民に配るということも場合によって自治体ごとに必要かもしれないと。

今枝

ありうると思っています。ただ、オミクロンは、重症化リスクが低いのでこういったことがやりやすいわけであります。なってしまって誰もが重症化するかもしれないという病気であると、感度が抗原定性検査のキットは低いので、見逃しがあるかもしれませんからリスクがありますが、オミクロンであれば、そのリスクは比較的許容しうるのかなと思っています。

■感染対策か経済か…「人数制限」発言の意図

菅原

木内さん、このオミクロン株、感染対策をとるのか経済なのか、色んな議論がありますが、今、どういった考えをお持ちでしょうか。『アンカーの眼』でお願いします。

木内

対応姿勢ということなんですけれども、「法改正は時期尚早」と書いてあります。重症化リスクが低いということが言われてまして、このオミクロン株に沿った、対応した形での対応が必要だと。柔軟な対応が必要。それはもうその通りなんだと思うんですね。どこかでやっぱり、検査だって、医療だって、キャパシティの問題が出てくるんで、そこは柔軟に見直して対応していくことが重要なんだとは思ってます。ただ、感染が拡大したから規制を緩和するとなると、本末転倒になってしまうんですよね。なので、やっぱり基本的な軸、方針はしっかり変えずに、ということだと思うんですね。その上で運用を柔軟に見直していくということが必要だと思います。オミクロン株は重症化リスクが低いかもしれませんけども、このままウイルスの毒性がどんどん下がっていくと、次の変異もまた毒性が下がっていくと限らないわけですから、次にまた毒性が高いものが出てくるリスクも十分あるわけですね。そう考えますと、例えば、今、意見が出てます感染症法の見直しは、やはり慎重にやるべきだし、今の時点では気を抜かずに、あんまり緩和というメッセージを国民に出さないような方向にした方がいいんじゃないかと思います。

菅原

そういった中でこの1週間、注目された発言がありましたね。尾身さんの「人流抑制ではなく人数制限」という話がありました。これに関して舘田さん、一体どういった意図があったのですか。

舘田

はい。人流抑制をすれば感染を抑えられる、その方向性が見えてくるということは、これはもう間違いないわけですけども、ただ今までディスカッションされたように、オミクロン株では多くは軽症で、風邪様の症状で軽快していくということがありますから、できるだけ社会経済への副作用を、ダメージを少なくですね、そして感染制御の効果を最大限、そして乗り越えるためにどうすればいいのか。そういう状況の中では、もちろん人流制限もうまく使いながらですけれども、リスクのある場所においての人数制限だったり、あるいはマスクを使うとか、あるいは時間を短くするとか換気をしっかりするとか、そういうリスクの高い場における感染対策。より焦点を当てた対策が必要であるということを、尾身先生はおっしゃろうととしたんだと思います。

菅原

この人流抑制、それからステイホームを否定したわけではなく、今、届くメッセージが人数制限だったということだと思うんですが、これに対して、今枝さんはどう思われますか。

今枝

はい。まず人流抑制の話も、一律な人流抑制ではないという話だったものですから、例えば本当に屋外で人との接触もあまりないところで、1人でジョギングしている人がリスクがあるわけじゃないので、そこを言っておられるんだというふうに思っています。一方、人数制限はやはり3密の回避として、これまでも非常に重要なキーワードでありましたので、これもこれで、やはり対応していく必要はあるのかなと思っています。

(2022年1月23日放送)