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#104

「桜を見る会」公文書管理&ジャパンライフ 2つの疑惑に見る問題の本質

国会で大きな問題となった、安倍総理主催の「桜を見る会」。2019年12月1日の『BS朝日 日曜スクープ』は、公文書管理のあり方と、ジャパンライフ会長(当時)への招待状、2つの疑惑を検証しつつ、問題の本質を特集しました。

■資料請求の当日にシュレッダーで廃棄

山口

次々と疑惑が浮上している安倍総理主催の桜を見る会。招待者名簿をシュレッダーにかけた真相は何なんでしょうか?そして行政指導されたジャパンライフ元会長への招待状が総理枠だったのかどうか。この二つの疑惑から、見落とされている問題の本質に迫っていこうと思います。それでは今日のゲストの方々をご紹介いたします。まずは、政治ジャーナリストの角谷浩一(かくたに・こういち)さんです。

角谷

よろしくお願い致します。

山口

そして、政治資金の問題に詳しい日本大学法学部岩井奉信(いわい・ともあき)教授です。

岩井

よろしくお願い致します。

山口

そして、元総務大臣で早稲田大学教授片山善博(かたやま・よしひろ)さんです。

片山

よろしくお願い致します。

山口

それではパネルを使ってお話を進めてまいります。まずは、証拠隠滅疑惑です。招待者名簿を内閣府がシュレッダーにかけてしまったということですが、これが証拠隠滅に当たるのではないかということで、野党が追及を強めています。ポイントは今年(2019年)5月9日、この1日にいったい何が起きていたのか。ここをしっかりと検証してまいります。桜を見る会は、4月13日に行われました。桜を見る会のあり方に疑問を抱いていた共産党の宮本徹(みやもと・とおる)衆議院議員が、5月9日の正午頃、招待者の名簿を提出してほしいと内閣府に電話をかけました。電話を受けたのは、国会内にある内閣官房の控室で、つまり、出先機関として対応に当たったということで、内閣府の合同庁舎、9階の総務課に電話が行きました。そして、数人が対応したということです。この時、問題の名簿はどこにあったのかといいますと、同じ9階フロアにある人事課にあったのです。実は、この段階で総務課が連絡を受けたんですが、総務課から人事課に連絡がいっていないとされているのです。何で連絡がいかなかったのか。総務課は理由を、「総務課の資料で説明できると判断した」ということなんです。もしこの時に連絡がいっていれば、名簿は人事課で保管され、こうした問題が長引くことはなかったと思うのです。ところが、総務課から人事課に連絡がいきませんでした。こうしている間に招待者名簿は、隣の建物、内閣府本庁地下一階のシュレッダー室に運び込まれてしまいました。これが午後1時頃だったということで、宮本議員の電話から、わずか1時間後に運び出され、午後1時20分~午後2時45分の間に、シュレッダーにかけられ廃棄されたことになるわけです。宮本議員の電話から、わずか1時間20分でシュレッダーにかけているわけですから、慌てて廃棄したのではないかと野党は追及しています。これに対し内閣府側は、4月22日にシュレッダーを予約し、5月9日しか空きがなかったと言っているのです。本当に5月9日しか空きがなかったのでしょうか。この疑惑に対し提出されたものがあります。それがこちら、『大型シュレッダー貸し出し使用者記録表』というものです。使用者記録表について、野党が厳しく追及しました。

立憲民主党・蓮舫参議院議員と内閣府のやり取り

・立憲民主党 蓮舫副代表
「予約は、4月25日は午後1時~2時半、5月7日は丸々午前中が空いていたり、その説明通じません。」
・内閣府 酒田元洋大臣官房総務課長
「予約を入れて その記録がどれくらいのものか 実際にかかったのはこの時間であると
予約をどのくらいの幅でとって実際にかかった時間ですから多少の前後というか伸び縮みがあって
4月25日午後1時から午後2時半空いているが予約をした時間との関係で空いているのかもしれない。
ちょっと書きミスかもしれないし、そこはすみません」
・立憲民主党 蓮舫副代表
「4月22日に予約したのにたまさか資料要求(宮本議員の連絡)の1時間5分後にシュレッダーにかけたのは
説得力があると思うか? 」
・内閣府 酒田元洋総務課長
「説得力があるかというか、そこは私の判断するところではないかと思いますが、
私どもの説明は4月22日に予約を入れ短時間勤務の方であるとか若干時間がかかると勘案して
もっともはやい日が5月9日であったということです」

山口

その後の流れを確認します。おととい(2019年11月29日)の夜、『大型シュレッダー予約メール』が公開されました。公開されたメールですが、4月22日付になっています。5月9日の13~15時シュレッダー室を予約しましたというようなメールではありますが、ほとんど黒塗りばかりです。どんな資料を処理したのか全く分かりません。片山さん、野党が要求したことに対して、政府側、内閣府が出したもの。非常に動きも遅いし、かなり限定的ですよね。いかがですか?

片山

さっきお役人(酒田総務課長)が一生懸命、四苦八苦しながら説明されていましたけど、私のよく知る方も映っていたのですが、とても真面目な人で、その人の表情なんかを見ますと、およその事が見当つきますよね。なんで私たちがこんなくだらないことで追及され、変な答弁をしなければならないのか。ちゃんと責任のある人がやってくれよと。やっぱり表情に書いてありますよ。

山口

岩井さん、内閣府担当者の対応どのように思われますか?

岩井

そもそもの前提として、この名簿は翌年の参考にするはずだから、すぐ廃棄するなんてことが常識として考えられないですよね。そう考えると、常識で考えられないことが、こんなに重なるのかと。

山口

角谷さんはいかがですか?出てくるものも黒塗りばかり、どのようにご覧になりますか?

角谷

この役所は、誰に対しての仕事をしているのかということが、本当は問われなければいけないですね。

大木

川村さん、この状況なんですが・・・。

川村

政治ないしは官邸に対して忖度をせざるを得ないような状況が、こういうことを生み出しているとすれば、今の政治がよく言われるように、おごりすぎ、やりすぎ、ということが、結果として出てきているのではないか、と思う方が多いのではないでしょうか。

■電子データの復元ができない“理由”

山口

結局、納得できないのが、仮に紙がないとしても、電子データ。当然どの会社でも今は残しますよね。そこの問題に移りたいと思います。電子データの消去にまつわる疑問。おととい(2019年11月29日)菅官房長官は、「5月9日の前後で電子データも廃棄したと聞いています」と説明しています。復元について問われると、「詳細については承知していないが、復元することはできないと聞いている」と、電子データも復元できないと述べています。こうした実情につきまして、公文書管理法の作成に参加し、2018年まで公文書管理委員会の委員を務められ、公文書に詳しい三宅弘(みやけひろし)弁護士はこう話しています。「通常、省庁では文書を作成するとき、『記録用』『個人用』『検討中』『組織参考資料』という4つのフォルダーのどれかで作業される」ということです。これは行政文書の管理ルールで定められているということです。そして、削除する方法は2つあるそうです。まず1つ目は、一般的な『ゴミ箱フォルダーなどで普通に削除』する。2つ目は、『特殊なソフトで削除』するという方法があるそうです。削除したデータは復元できるのかどうかについて、AOSデータ株式会社の春山洋(はるやま・ひろし)社長に伺いました。まず、ひとつ目、普通のゴミ箱フォルダーなどに削除した場合は、「復元ソフトを使えば、サーバーから削除されたデータを探し復元することが可能」だそうです。ところが、ふたつ目、特殊なソフトで削除すると、「世の中の復元技術を使っても、ほとんど復元は出来なくなる」ということです。これに対して三宅さんは、「絶対に復元できないようにしたなら、これは『意図的な廃棄』であり問題」と指摘しているのです。確かに、そうであれば相当、意志が強く、消してしまおうということになってくるわけで、岩井さんどうでしょうか?

岩井

サーバーで多分やっているんだけれども、おそらく過去の、例えばPKOの問題の時、あれを見ても色々なコンピューターに残っているんですね。実際、サーバーで我々も仕事をしますけれども、サーバーから直でやるとやりにくいんですね。一回、自分のところ(ローカルデスクトップ)に落として書き換えたり、色々なことをして戻すというのはある。ということは、コンピューターの中に(データが)大体残っていると思うのですが。サーバーだけではなくて、どこかのコンピューターの中に必ずある。過去を見てみると、やっぱり安倍政権の公文書の問題というのは、必ず都合が悪くなると、『削除』、『書き換え』、『無い』という話に。でも、よく探してみると出てくる。どこかから、デスクトップの中にありましたという形で出てくるのではないかなと思いますね。

大木

片山さん、菅官房長官は「わかり得る限り説明している」と話していますが、もっと政府として復元してみるとか、徹底調査する姿勢は見せられないものかと思うのですが。

片山

公文書の廃棄とかの問題は、ひと昔前は確かに、その紙の綴りを捨てるかどうか、廃棄するかどうか、消去、焼却するかどうかという判断をしたんですね。今はそうじゃなくて、電子データ、電子ファイルを削除するかどうかですよね。そりゃ紙のものもありますが、それしかないわけじゃない。電子データの復元なんかも普通できますよね。だから、企業にしても組織にしても、パソコンを廃棄、捨てるときは随分苦労しますよね。

山口

逆に言うとそうですよね。

片山

それぐらいしているわけですよ。だからかえって、これが本当だしたら、徹底的に電子データも消去したというのは、何があったんだろうかと。よっぽど具合の悪いことがあったのですねと感じてしまいますよね。

■「保存期間1年未満」への疑問

山口

公文書の保存期間が1年未満とされている問題に迫ります。今回は(2019年)4月13日に桜を見る会が行われ、わずか26日後に招待者名簿がシュレッダーにかけられ、破棄されています。この問題につきまして、内閣府酒田総務課長は、「(招待者)名簿の保存期間は、1年未満」であると話しています。そんなに短いのかと疑問がわきます。それでは、各省庁の推薦者名簿の保存期間について確認しておきましょう。実は、他の省庁の推薦者名簿というのは、ほとんど保存期間10年が多いのです。経産省は5年ですとか、内閣府の1年未満というのは、際立って短いということになります。どうしてこういうことになっているのか?内閣府の招待者名簿が、なぜ1か月弱で廃棄されたのか。実は根拠がありました。それが、『行政文書の管理に関するガイドライン』というものです。『国民に説明する責務が全うされるよう、意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡付や検証に必要となる行政文書は、原則として1年以上の保存期間を設定』すると。原則1年以上なのです。ところが、例外があり、『(保存期間)1年未満とすることができる公文書』というものがありまして、そこには、7つの項目が挙げられています。例えば1番目、「別途製本、原本が管理されている行政文書の写し」。確かに、別に原本があれば短期間で廃棄しても問題なさそうにもみえます。では今回の招待者名簿はというと、7つ目の「保存期間表において、保存期間を 1 年未満と設定することが適当なものとし て、業務単位で具体的に定められた文書」に該当しているというんです。ちょっとわかりにくいですよね?内閣府の説明で確認すると担当者の酒田総務課長は、11月13日、「(内閣府の)『保存期間表』には『関係行政機関等に協力して行う行事等の案内の発送等』を1年未満としている」と、つまり、今回の桜を見る会の招待状というのは、『行事等の案内』ということで、(保存期間)1年未満とすることができる、7番目の項目に当てはまるんだと。だから、これは1年未満で消去、廃棄ができるという説明なのです。さらに内閣府は、「関係行政機関等と協力して行う案内の発送、各省庁から集めて取りまとめたものの発送、会が終了したら不要ということで、廃棄するということで、このカテゴリーに入れている」と話しています。しかし、これに対して、行政文書の管理に関するガイドラインを作った委員を務めた三宅弁護士は、こう批判しています。「これは行事の案内ではなく招待状」「『これを持ってきてくださいね』と個人を管理するものであって、『行事等の案内』には当てはまらない」と指摘しているのです。岩井さん、三宅弁護士の指摘、どうご覧になりますか?

岩井

その通りだと思いますね。先ほどもお話しましたけれども、毎年毎年行事があるわけですよね。そして、できれば同じ人を呼ばないようにということは言われているわけですよね。だとすれば、名簿が1年以内で廃棄されてしまったら、翌年どういう風にチェックをするんですかという、そもそもの問題が出てきますから、1年で破棄するなんてことは考えられないわけですよね。だから、そもそも内閣府の言っていることは、ご都合主義でしかないとしか言いようがないですよね。

山口

そうですよね。他の省庁は保存期間10年とか、5年とかあります。内閣府がなぜ1年未満になっているのか。

岩井

他の省庁の場合、やっぱり最低3年。大体5年から10年。宮内庁に至っては30年と言われていますから、やはり、こういう名簿というのは、後々のため役所にとって大事な資料になるわけです。1年で消去して、じゃあ来年はどうするのかと。この桜を見る会、来年はないことになりましたけれど、当初は来年もやるはずだった。だとすると、去年呼んだ出席者をどのようにチェックをするのか。それ自体問題が起きるわけですから、三宅先生のおっしゃる通り、これは招待状ではなく、やはり管理すべき名簿になると思いますね。

山口

そうですよね。

川村

すでに明らかになっているように、安倍総理の昭恵夫人推薦の人が、もう4回も5回も毎年呼ばれているということは、それをチェックしようとしても、招待者名簿の保存期間が1年未満だったらできないじゃないですか。本来きちんと残っていれば、この人はどんな功労・功績があったのか、去年も出ていますよと打ち返すことができますよね。それができないということは、1年未満で破棄しているから、その人が、これまでどのくらい出ていたのかもチェックできなかったと。逆に言えば、自分たちの仕事をちゃんとしていないということになりかねないわけですから、普通そういうことを官僚がやるのかなという感じがしてなりません。

岩井

これを見ていると、内閣府ってただの発送業者ですよね。

山口

そういう風にも見えてきますよね。保存期間1年未満の公文書には、これまでも多くの問題がありました。

大木

公文書の管理をめぐっては、さまざまな問題が指摘されてきました。一つが、陸上自衛隊の南スーダンPKOに関する『日報』。そして、もう一つが加計学園・森友学園問題での『交渉記録』。これらは、『保存期間1年未満』の公文書で、いずれも真相究明段階で廃棄されたと説明されてきました。川村さん、今回もこの『保存期間1年未満』の公文書が、真相究明の前に立ちはだかっている。同じような構図になってきているんですね。

川村

そうですね、自衛隊の『日報』は後で出てきましたよね。この問題が起きる前に、実は日本記者クラブに片山先生にも来ていただいたんですけれど、福田元総理が、公文書管理法のことを非常に熱心に取り組んでいて、アメリカの国立公文書館では、本当に小さなことでも歴史的な文章は(保存されていて)、福田元総理が、自分が総理の時に知りたかった日本のこと(文書)が日本にはなかったけれど、アメリカにはあったというようなことを含めて、森友加計がそういう問題を起こしたときに、これからはやっぱり歴史に堪える記録を残さなければいけないと。日本の国立公文書館でも加藤館長が、それは我々の仕事でもあるけれど、それは各省庁でもきちんと自覚をしなければいけないと。そのことがあった直後に、こういうことが内閣府で起きる事が極めて不自然だし、何よりも、菅官房長官の発言が、このところ非常に曖昧になっているんですね。いわゆる「復元できないと聞いている」でしょ。「聞いている」って。かつて後藤田正晴官房長官が官僚の鑑として、自分たちは国家公務員として公正な立場の仕事をやっているからと、こういう問題が起きた時には、関係者を全部呼んで、「(データを)復元できません」という人がいたら、なぜ復元できないのか自分がきちっと納得できなければ、記者からの質問に対して説明できない、もう1回調べ直せということをよくやっていたそうです。菅さんも自分が不審だと思ったら、なぜ復元できないのか、ということをきちんと関係各位に聞いた上でこの答弁なのかというと、どうもその辺が曖昧になってきているなと思いますね。

■「電子データ保全の法律を」「予算超過は会計検査の対象」

山口

まさに今回、三宅弁護士も非常に怒っていて、要は、森友加計問題などがあって、公文書管理どうなんだと色々皆さんが動いて、ガイドラインを作り、それが(2019年)4月から運用されるようになった。その矢先にこういう事態になったということで、一体何だったんだと、三宅弁護士はおっしゃっています。角谷さんは、この問題どう捉えてらっしゃいますか?

角谷

まさに三宅弁護士が、ガイドラインを大事にすべきだというご指摘と、もう一つ、官房長官からでもいいし、野党からでもいいですよね。逆に電子データを完全に保全する法律を作るべきだと誰かが言うべきだと思いますね。紙は捨てちゃってもしょうがないと。だけど、データは残しますと。それによって、歴史の検証に堪えるということに対して、今、政治家じゃなくて、役所がせっせとデータを消しているかのようになってしまって、これであなたたちは、これからの歴史を堪えられるのかってことに対して、やっぱり誰か、国会議員が、こういう法律作んなきゃ日本の歴史がぐずぐずになるぞと、考えるべきだと思いますね。

山口

片山さん、やっぱりこの公文書は政治が国民とどう向き合うか、その姿勢も問われていると思うんです、いかがでしょう?

片山

もともと、公文書がなぜ重要かというと、役所とか政治がやったこと、決めたことが正しかったのかどうか、あとでちゃんと検証できるようにするための、とても重要な証拠なんです。説明責任を果たそうと思ったら、この通り適正にやっていますと示すことが一番です。それが公文書なんですよ。だから実は、役所とかが自分たちの身を守るための証拠品でもあるのです。それを率先して捨てるというのは、普通はありえないです。ということは、よっぽど都合が悪かったから捨てざるを得ないんだなということは明らかだと思います。

山口

そういう意味で、先ほどから出ている三宅弁護士は、「桜を見る会は予算を超過して、会計監査の対象になるものだから、1年未満で廃棄できるような話ではない」と指摘しています。どういうことかと言いますと、桜を見る会の予算と支出の推移を見ていきましょう。2014年の段階で、すでに予算を倍近く超えていますが、それがどんどん膨れ上がっていき、2019年、今年はもう5500万円。3倍にもなっているんですよね。このように、支出が予算を超えてしまっている。だから、廃棄してはだめだということなんです。片山さん、やっぱりこういうところ大事ですよね?

片山

大事です。2つ問題がありましたよね。予算を超過した支出は、どこからお金を持ってきたんですかと。普通は予算を守り、枠内でしか使えないのに、それを平気で多めに使ってしまう。それ自体も違法なんですよね。じゃあそれどこから持ってきたのかと言うと、おそらく内閣府の他の予算からもってきたと言われているんだと思いますけれどね。年度当初に、どこから持ってきたんですか?そんな何千万の余っているところがあったんですか、年度当初に?と。予算がいかにもずさんですよね。そういう問題が出てくるわけです。それから、三宅弁護士の言われていることを簡単にすれば、予算を超過していようがしていまいが、会計検査の対象になるんです。だから、全部残しとかないといけない。例えば、千何百人、これこの通りちゃんと功労なんかあった人を呼んだから、これだけ予算を使ったんですよということを示さなきゃいけない。捨ててしまったら、会計検査院の検査があったときに、本当は呼んでないんじゃないかと。300人しか呼んでいないのに、お金をどこかに回したんじゃないかと言われても、抗弁できないわけですよ。だから、自分たちの身を、首を絞めているようなものなんですね。なんでこんな愚かなことするのかなと。それをせざるを得ない事情があるんだろうなと思います。

■ジャパンライフへの招待状 番号の謎

山口

なるほど。2015年の「桜を見る会」では、招待状がジャパンライフ元会長の山口隆祥(やまぐち・たかよし)氏に届きました。ジャパンライフというはどのようなことをしていたのか。「オーナー商法」を展開し、被害者はおよそ7000人、被害額がおよそ1800億円という大きな被害を生みました。ジャパンライフは磁気治療器など高額な商品を契約者に売り、ジャパンライフがその商品をオーナーから預かり、別のユーザーに貸し出し、ユーザーからレンタル料を徴収し、その中からオーナーに6%の配当を払うと宣伝していました。しかし実際は、レンタル事業が不十分で、購入金額の返金にも応じないまま、ジャパンライフは経営破綻し、被害者が続出し大きな問題になっています。ジャパンライフが問題化した歴史を振り返ります。2014年に2度の行政指導があり、2016~17年にかけて、4度の一部業務停止命令が出され、2017年12月に経営破綻、2019年4月には、特定商取引表違反の疑いで警視庁の家宅捜索を受けています。実はこれだけではなく、知る人ぞ知る34年前、1985年12月10日には「マルチまがい」商法疑惑で衆議院の商工委員会で集中審議が行われ、参考人は「豊田商事の二の舞になるな」とまで話しています。

大木

そして元会長の山口隆祥氏についても、国会議事録を確認すると、1975年に同様の問題で国会に参考人として呼ばれています。さらに、1985年にジャパンライフの問題が取り上げられる中でも、国会で何度も名前が挙がっていました。麻生財務大臣は、2017年4月、「山口さんはマルチ(商法)が始まったころからの有名人だ。だます手口は明らか。厳正に対処すべき」(2017年4月11日参院財政金融委員会)と話していました。

山口

角谷さん、これだけ有名な人だったわけですから、ちょっと調べればすぐ分かるわけですよね?

角谷

僕が駆け出しの記者の頃、1985、6年。もうその段階で、国会招致だけじゃなくて、この問題を連載しているところに、様々な角度から、政治家やいろんな人たちから、連載を止めろとか、そういうプレッシャーをかけに来る人も沢山いて、永田町では、当時から政治銘柄として有名だというのは間違いないと思いますね。

山口

ではなぜそんな人に招待状が届いたのか。この招待状には番号が振られていました。ジャパンライフ元会長山山口氏に届いた招待状は『60-2357』という番号だったんですね。この番号が表すものは何か。60~63番は内閣府の資料にありまして、『総理・長官等の推薦者』。そういう枠なんだと明らかになっているのです。つまり、ジャパンライフの山口隆祥元会長を招待したのは、「総理・長官等」ではないかということなのです。先月(2019年11月)27日、菅官房長官に対して記者が「内閣府の過去の資料からでは、60~63が総理・長官等の推薦者となっていますが、こうした区分は存在するのか?今年まで引き継がれていたのか?」と質問しました。これに対して、菅官房長官は、「ご指摘の番号というのは、招待状の発送を効率的に行うために付しているものであり、会の終了をもって使用目的を終えることから、現時点ではこれらの情報は公表していない」と説明していました。さらに翌日、野党が内閣府を追及したのです。

共産党・田村智子参議院議員と内閣府のやり取り

・共産党 田村智子参議院議員
「60~63は総理・長官等推薦者と皆さんが書いている。それをどうして認めないのですか?」
・内閣府 酒田元洋総務課長
「仕分け区分けでありますとか、そこに割り振られている付番でありますとか、それをどういうふうに
割り振ったかは今となってはよくわからないということでございまして」
・共産党 田村智子参議院議員
「重大なことを言っていますよ 公文書に書かれたことの意味が分からないなんてことを言うわけですか」

山口

こうした状況に対し、野党4党は金曜日(2019年12月6日)の午前中審議を拒否。ただその後、60~63は総理・長官等の推薦者と記載されている文書は、内閣府の幹部が『内閣府が共産党議員に渡した資料』と認め、野党4党は午後から審議に復帰しました。角谷さん、結局「総理・長官等」の枠というところまで絞り込まれたのですが、ここまで来ると野党が攻勢を強めている与党は苦しくなってきていますよね?

角谷

金曜日(2019年12月6日)は、一日、国会空転すると思われましたけど、午後から正常化しましたね。野党はちゃんと提出すれば、ちゃんと審議に応じますよという態度を示すのと、もう一日、翌週まで引っ張るかなと与党も思いましたけど、意外とすんなりと認めたというのは、本当はこの翌週からの一週間で、日米貿易交渉さえまとめれば、この国会が閉じれば後は何とかなるという与党の思惑との駆け引きの結果が、この金曜日のいきさつかなと思いますね。

山口

岩井さんはこのあたりの流れ、どうご覧になりますか?

岩井

そもそも役所というのは前例踏襲主義ですからね。毎年毎年整理番号も違うものをつけてくるわけないわけですよ。となると、最低限のこの枠が何だったかということだけは認めようじゃないかという風に、官邸側も内閣府側もこれを認めざるを得ないと、どんどんどんどんそういった面では、答えられないという風に言いながら墓穴を掘っていて、結局出さざるを得ない、最悪の展開になっているのですよね。

■ジャパンライフ招待状の悪用 被害者の証言

山口

そして、この問題というのは、問題人物を招待してしまったということだけではなく、被害の拡大を招いている可能性があるわけです。これは中部地方に住む80代の女性なのですが、なんと7000万円相当購入してしまったのです。山を売却したり、定期預金を切り崩してお金を捻出したのですが、結局4000万は返ってきたのですが、3000万円は返ってこないということだそうです。招待状がどう使われたのか。この女性によれば、セミナーで桜を見る会の招待状を大画面に移してプレゼンしていたのだと。この影響でしょうか、桜を見る会の招待状を見て、安心して商品を再契約してしまったということなのですね。この女性、今、言いたいこと、こう話しています。「悔しい、安倍さんが招待したなら(被害者らに)お金を配ってほしいくらいだ」と。確かに3000万戻ってこないわけですからね。片山さん、信用付けに利用されてしまったということになるわけですよね?

片山

これがもう本当であれば、まさしくそうですよね。これまでもありましたけど、有名な人が広告塔になる。(利用された)という事件がありましたよね。今回こうであるならば、まさしく桜を見る会、総理主催の桜を見る会が、広告塔になっているということですから、道義的責任はやっぱり重いと思いますよね。

山口

そして誰が招待状送ったのかということなのですが、実は安倍総理、この件について発言していたことがあるのです。

大木

去年(2018年)1月30日の衆議院予算委員会、国民民主党、当時希望の党の大西健介(おおにし・けんすけ)議員が招待状について質問しました。それに対して安倍総理は、「桜を見る会につきましては毎年1万3000人ぐらいの方々に私の名前で招待状を出しているわけでありますが、当然私自身は存じ上げる方ばかりではもちろんないわけでございます」と回答しているのです。岩井さん、そうなると総理自身は知らなかったとしても、事務所などから推薦されていたなどの可能性というのはどうお感じになりますか?

岩井

それはあるでしょうね。ここまでわかってきた桜を見る会の推薦プロセスを見てくると、全く誰でも入れるような状況ですよね。ということは、やはりこういった人たちがどんどん入ってくるのが当たり前。私に言わせるとテロリストが入ってこないだけ良かったね?という感じもありますよね。ですから、こういう会というのは、必ずと言っていいほど、そういう悪い人たちにとってみると、いろんな形で使われる、写真を撮るとか、これは芸能界でも他の分野でもそうかもしれませんけども、そういうことは、相当注意しなきゃいけない。角谷さんおっしゃるように、この方そういった曰く付きの方だったのですよね。どこかで気がついていなきゃいけないのに、それを誰も言えなかったというところが、どこかにあるのではないのかなっていう感じがしますよね。

山口

角谷さん、誰がジャパンライフの元会長の山口氏を呼んだのか、やっぱりこれだけ被害が拡大しているとすれば、ちゃんと解明しないと駄目じゃないですか?

角谷

その通りですよね。ただいずれにしろ、招待者は安倍さんの名前で招待をしているし、それから取りまとめは官房長官がやっていると分かっているわけですから、最後までうやむやにされたとしても、やはり責任はこの二人に出てきますね。同時にこの問題は、政治家のパーティーが2万円のお金を払って自分の会に来てもらう、これ逆に言えば、2万円払えば誰でも来られる。これは総理大臣があなたに招待状を出しているんですよという建前でできているものですから、逆に呼ばれた人が行くはずなのですね。呼ばれてない人は、本来は入らないはずなので、誰かが呼んでいるのではないかと。その段階でチェックしないずさんな管理に、やはり責任は及ぶだろうということになるでしょうね。

川村

だから、60~63が、総理官邸関係者の枠だということは、これはよくあることだと思いますね。これは私の経験で言っても、例えば中国大使館の国慶節の時のその招待が来て、取材も兼ねて行く時には、ちゃんと61とか、62っていうのが、我々メディア・マスコミ関係者にはその番号できて、その番号に行った時に、名刺を出してくださいと言われて、名刺を出すと、セキュリティの問題もありますから、そういう意味では、本当にそこにテロリストがいて、爆弾を投げた時に、それは誰だったか、何番の人だったのかということを含めて、チェックできるわけですけど、そのためにも記録は残しておかなきゃいけないのに、廃棄したっていうこと自体が、こういうずさんなことが起きていた責任を追及されるのが嫌だということの証明かもしれませんね。

■「予算を使ったら・・・最低限の作法」

山口

この問題を巡っては菅官房長官が、ちょっとやっぱり歯切れが悪いなと感じている方も多いのではないでしょうか。反社会勢力とのツーショット写真があるのではないかという指摘に対して、事実上認める答弁をしたかと思えば、それを翌日、会見で否定するような発言をしていまして、ちょっと歯切れの悪さが最近目立つようになっています。その菅さんですが、実は過去にこんな発言をしていたのです。きっかけは、東日本大震災で、政府が設置した震災関連の会議の議事録が複数作られていないことが判明したのです。菅さん、当時自民党は野党ですから、この時、公文書についてこういうことを言っているのです。「公文書の作成は政党の主義主張とは全く関係のない国家運営の基本です。政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録はその最も基本となる資料です。それを作成していなかったのは、明らかな法律違反であるとともに国民への背信行為です」とまでおっしゃっていたのですよね。角谷さんいかがでしょう?

角谷

全くおっしゃる通りだと思いますね。正論を当時の菅さんがおっしゃったのだろうけれども、まさに今それがブーメランとして返ってきているわけで、破棄することだとか、調べる気がないというような発言を官房長官がこれからも言い続けると、ご自身の言っていることとやっていることが全く違うということで、また説明がつかなくなる、整合性が取れなくなる。官房長官は国会が閉じてからも、毎日会見をやらなきゃいけないお立場だということ考えると、ここらへんは早く認めるものは認める、間違っているものは間違っている、また、見つかったものは見つかったと言わないと、ちょっと取り返しがつかなくなるかなと思いますね。

大木

岩井さん、法的にというよりも、ツーショット写真とかとなってしまうと、政府が何かお墨付きを与えたようなイメージがどうしても出てしまうと思うのですよね。芸能界でもこの一年そういったものが色々ある中で、今回の問題どのように感じますか?

岩井

そうですね。だから写真を撮ってそれを利用されるとか、逃れられないのでしょうね。それは仕方がないとしても、ジャパンライフの方の問題になってくると、ちょっとそれとは違う。要するに、露骨に利用しようとしている人だし、元々そういう人物でその分野で有名人でもあるので、その人が呼ばれているということは、ちょっと別に考えなきゃいけないと思いますね。政治家も、我々もみんなそうなんですけれども、やっぱり写真とか何か撮られる過程で、今年、芸能界、特にそれで言われましたけども、そういうことについて、随分これから先、注意してかなきゃいけないということは、はっきりしたと思いますよね。

角谷

ただ今回の問題は去年の森友加計問題と違って、ほとんどが、桜を見る会に参加した人たちがネットに上げた公開情報をチェックしていって、わかっていることが多いのですね。ということになりますと、いくら官邸がいろんなところを隠そうとしても、表に出ている公開情報を丹念に調べていくと、分かってしまうということが多いってことが全く違うってことだと思いますね。

川村

これまでは、私も桜を見る会に呼ばれたと、一緒に写真撮りましたとか、そういう投稿が沢山あったのが、最近急に削除され始めているわけですよね。そういうことも、自分は2回行ったとか、3回行ったとか、芸能人の方でも連続して何回も行っている方もいますから、その辺が曖昧だなと思いますよね。

山口

片山さんはその辺りの動き、どうお感じになりますか?

片山

おっしゃる通りなのですけれど、私、ちょっと観点変わるのですけれどね。官邸は多分隠したいということが推測されますよね。ですけど、官邸に入っていない与党の公明党は、この問題についてどう考えているのか。山口代表も出ておられますけれど、内閣の一翼を担っているはずなのに、その公明党がこの問題についてどういう態度を示されるのか、私はやっぱりけじめをつけなきゃいけないと思いますよね。その点がとても興味深いです。

川村

よく与党の中である国会議員が言っていたのは、民主党政権の時もやっていたじゃないかと。鳩山政権の時、確かに桜を見る会をやって、鳩山さん自身が総理になったからという形で、自分のところに招待枠が100人来たと。今、1000人とか1200人でしょ。100人来たけれども、それでも前の麻生政権よりはグンと予算は減らしたのだと、「桜を見る会」に。他の園遊会とか色々ありますから、何かやっぱ公私混同ということが疑われてはいけないという配慮はあったと言っているのですね。

片山

今回の桜を見る会というのは、まあ言っちゃ悪いですけど、実につまらない問題なんですけど、その中に、とっても政治において重要な要素が入っているんですね。それは説明責任、ちゃんと決められた予算の範囲内で金は使う。使ったものはちゃんと説明できる。これはもう最低限の作法なんです。これすらできてないっていうのは重大問題なんです。これを、野党が今一生懸命追及していますけども、与党の中でさっき言いました公明党のみならず、自民党の中で、本当にこれでいいのですか?こんなことで皆さんの作った政権が…。そういう議論が、自民党の中で自浄作用として起きるかどうかなのですね。これがポイントだと思います。

(2019年12月1日放送)