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#115

新型コロナと闘う!!PCR検査“保険適用”現場発のチャート図

医師が要望しても、新型コロナウイルスに感染しているのか確認する、PCR検査が受けられないという報告が相次いでいます。2020年3月1日の『BS朝日 日曜スクープ』は、PCR検査の保険適用に先立ち、医療の現場から提案のあった、検査のフローチャートをご紹介しました。

■「これまでは行政検査」「救命のための検査に」

山口

では本日のゲストを紹介します。元国立感染症研究所研究員、白鷗大学教授、岡田晴恵(おかだ・はるえ)さんです。よろしくお願いします。

そして、呼吸器学会の専門医で池袋大谷クリニック院長、大谷義夫(おおたに・よしお)さんです。よろしくお願いします。

そしてもう一方、総務大臣、鳥取県知事を歴任してきた早稲田大学教授、片山善博(かたやま・よしひろ)さんです。よろしくお願いします。

日本でもこの1週間、宮城県や新潟県で初の感染者が確認されました。国内で確認された感染者はこれまで217人、クルーズ船が705人、チャーター便での帰国者が15人です。片山さん、もう全国どこにでも感染者はいると考えた方がよさそうですね。

片山

その通りだと思います。ただ濃淡がありますので、まだ(感染者が)出てないところもあります。特に深刻なところですが、検査態勢を充実しなければいけない。今までは発生初期の段階の対応なんです。行政が必要なための検査をやっている。その枠組みを延長してきている。発生の可能性、感染者が増える可能性が高いところは、もっと違ったコンセプトで、大谷先生たちが患者さんを救う、治療のための検査というコンセプトに変えていかなければいけない。そのために保険を適用する。こういうことにしなければならないと思います。ちょっと遅いと思いますね。

山口

必要な人が検査できていないと医療現場から指摘のあった検査の問題、詳しく見ていきます。これまで厚生労働省は1日でおよそ3800件の検査ができるとしていました。しかし2月18日から23日を見ると、最大で1594件、20日には656件しか行われていませんでした。検査能力の半分も使っていなかったわけです。集団感染が深刻な韓国と比較してみると、最大で1日におよそ1万3千件行われています。これほど検査態勢に違いがあるのか、驚きました。安倍総理は昨日の会見で…めくり「現時点で1日あたり4000件を超える検査能力があります。現在も地方にある民間検査機関、大学に試薬などを提供し、一層の検査能力の拡大に努めてまいります」と説明しました。岡田さん。色んな問題があるのですが、この検査能力自体については、どうご覧になりますか?

岡田

発想を転換するべきだと思う。片山先生がおっしゃいましたが、行政検査はもう止めましょう。もう初期じゃないんだから。これから患者が増えるわけです。だからもうここで、治療のための検査ということにして民間を入れて、肺炎の患者さんをより治療に結び付けるため、そこに一点に絞ってですね。救命のための検査をやるという発想転換をするべきだと、私は思っています。そうすれば莫大に(検査の)件数は上がります。まずは新型コロナ感染の疑いの肺炎患者を検査することです。

山口

それが出来なかった実情があるわけですから、それを変えなければいけないというわけですよね。

岡田

行政検査じゃないんだと。もう治療でしょ。ということなんじゃないかと思います。でなければ、今、コロナに使えるかもしれない薬も見えてきましたが、確定診断がつかなければ、使えない。助けられない。重症化の前の段階で検査をして、治療開始して、人工呼吸器をつけるような状況に陥らせない努力を最大限にしないといけない。

山口

この感染拡大ですが、日本も大変な状況になってきました。川村さんは、現状をどう捉えていますか?

川村

ダイヤモンド・プリンセスに関して、最初に政府、厚生労働省、審議官が、はっきりと3700人全員の検査をすることはできない、しないと。ある意味ではキャパシティ問題もあったんでしょうが、最初にそれを言ってしまったがために、なるべく症状の重い人から検査をしていくことにしてしまった。本来は症状がある程度なくても、岡田先生がよく言われるように、ある程度動いていても、その人が感染していればもっとお年寄りとかに感染していくわけですから。そういう意味では、すべての人を対象にした検査をするという、ある種の姿勢を一番早く見せなければいけなかった。アメリカなどの一部のメディアも日本はダイヤモンド・プリンセスの隔離政策においては失敗してしまったと。ダイヤモンド・プリンセスを感染培養船、感染培養器にしてしまったとか、色々言われていますけど、その点、最初の出だしがつまずいたというのが大きいと思いますね。

■現場発の提案・・・検査フローチャート

山口

これまでの検査態勢は、このように、受診した病院から保健所に連絡。保健所は都道府県の感染症担当部署と相談、必要を認めれば、検査機関で検査を行う、こういう流れでした。しかし、保健所や都道府県の感染症担当部署との相談の所で検査が不要と判断されるケースが多々あったそうです。保健所が抱える事情として、人手不足があると言います、詳しく大木さん、お願いします

大木

保健所の数ですが1992年に852か所あったのですが、それが2019年には472か所におよそ半減しまいた。職員の数は全国平均で1か所あたり38人。これで食品衛生、生活衛生、精神保健対策、そして感染症対策を行っています。2009年の豚インフルエンザでは、93%の保健所が土日出勤で連日対応するような状況だったといいます。元愛知県設楽(したら)保健所長の浜松医科大学の尾島俊之教授によると 「人手が足りず業務が十分にできない」ということなんです。

山口

保険適用となると、患者を診察した診療所などの医師が「検査が必要」と判断した場合、患者の方は、原則として帰国者・接触者相談センターに電話し、センターから案内された専門外来か、同等の機能がある医療機関の医師判断も踏まえ、検査することになります。これまでは医師が必要と判断しても、保健所が「条件を認めない」と判断することがありました。さらに15分程度で検査できる簡易検査機器の開発も進めていると言います。大谷さん、これで問題が解決できるのでしょうか?

大谷

ひとつは、短時間で検出できる簡易検査がうまくできればいいのですが、現在のPCRとの整合性をとらなければいけない。もう一つは実際に現場から検査機関に依頼したいのですが、私たちも定期通院の患者さんがおりますので、1日数名程度しか肺炎疑いの患者さんを拝見できないと思います。ここ数日、肺炎が心配だという患者さんが急増して、私も毎日、昼休みをつぶしてとか、診療後とか時間帯を変えて診療しております。PCR検査は、私たちのところでできないですけど、マイコプラズマとか肺炎球菌の他の微生物を除外するんですね。マイコプラズマの検査をするのには、同じように喉から検体をとるわけです。そういう時には普通のマスクではなくて、N95という高性能マスクを使わなくてはいけない。ただでさえマスク不足、N95はもっと足りない。実は2週間前までは、私も少しは備蓄があったが、この2週間で沢山の患者さんが来て、私も在庫がだいぶなくなったし、私の仲間の呼吸器内科、または内科の先生方でも肺炎の方を一生懸命、診てくれている先生方は、あとN95が何個あるだろう。という深刻なN95高性能マスクの不足状態になってきています。私たちは時間帯を変えて、院内感染をなくすために通常の患者さんと違う時間帯に診察しようとしていますけど、それでも限界があり、さらにマスクも足りなくなってきました。

大谷

そこで一つ提案なんですが、私の大学時代の先輩が北陸の方の某医師会の理事をやっているのですが昨日、送ってくださって・・・。(新型コロナウイルスに対して)私たち医師がどう考えるか。また患者さんへのヒントになると思うんですが、風邪症状があった場合、37.5℃未満か、37.5℃以上か、37.5℃以上でしたらインフルエンザの可能性を考えながらチェックさせて頂きます。(インフルエンザの)陽性だったら治療しますが、陰性だった場合、他の原因を考えて、つまり肺炎があるかどうか考えて、レントゲン、マイコプラズマ、肺炎球菌とか、血液検査とか他の検査をできるだけやります。もう一つ、少し微熱でしたら必要に応じて風邪の治療だったり、または必要に応じてレントゲン、肺炎を除外する検査を致します。そこで一つ、ウイルス性の肺炎なのか、細菌性の肺炎なのか。つまり細菌性の肺炎だったら抗生物質が効くわけです。細菌性の肺炎でしたらPCR検査をする必要はなくなるわけです。

大木

それはそのWBC(白血球)って書いた検査で分かるんですか?

大谷

これある程度ですけど、細菌性肺炎の特徴の一つは痰の色が黄色とか緑。さらに血液検査では白血球が上がるってことが多いですね。痰培養しながらも、抗生剤の治療をして、良くなれば細菌性肺炎の診断で患者さんも納得しやすい。私たちも安心いたします。良くならなかった場合には、やはりここ(帰国者・接触者相談センター)に相談する可能性ありますね。一方で白血球が上がらない場合には、ウイルス性肺炎の可能性も考えなくではいけない。そこでCRPっていう別の炎症反応のマーカーがあるんです。炎症反応が全く上がらなかったら一回はやっぱり風邪として治療し、そこで改善しない場合には、もう一回戻って血液検査をしたり、微熱、または肺炎が出て来てないか、数日たったところでレントゲンで再検査して肺炎が出て来てないか、というところへ戻ってまいります。さらに白血球は正常ですけれども炎症反応が高い場合、やはりここで(・全身状態不良、・強い全身倦怠感、・呼吸困難、・肺炎)肺炎の可能性を考えて、しかも普通の細菌性でない肺炎っていうことになりますから、帰国者・接触者相談センターに。ただ、ここは相談センターというよりは、もはや発熱外来という名前の方がよろしいんじゃないかなと思うんですけども、帰国者・接触者はもう関係なくなってきておりますので、そういう点では、発熱外来として機能していただければ、そこで患者さんが集まれば、例えばよく岡田先生がおっしゃるように、駐車場にテントでの施設とかで発熱外来を作っていただいていれば、そこに集まって検査ができやすいですし、院内感染のリスクも減ります。さらにN95マスクがなくなっている。患者さんもこういうフローチャートがございますと、どの段階で自分は検査すべきか、痰が黄色くなったら、やっぱり細菌性だから抗生物質でいいんじゃないかなとかですね、全員が全員PCR検査を心配だから望むのではなくて、もう少し考えられるかなと思います。

山口

それでちゃんと分類してあげることによって、たくさんの人の不安心理を緩和することができますよね。自分はこっちに行けばいいんだって流れを確認することですよね。

岡田

大事なところは、このような肺炎の疑い患者を速やかに検査して、新型コロナの人をちゃんと救い上げて、治療につなげる、ですから、このような患者さんは、確実に検査をする。大谷先生のこのフローチャートは、検査すべき患者さんの指針にもなります。こういう人を調べるべき、を明確にしています。これが大切です。全員にやれとは言っていません。

■「行政検査の前提は・・・。新たな検査の基準を」

山口

片山さんは先ほど、おっしゃいましたけど、今の日本の、検査を受けたいんだけど受けられない人が沢山いる現状について、その背景がどこにあるとお考えですか?

片山

結局ですね、まだ感染者が増えてないという前提に立たれているんだと思います。初期の段階にあるという認識ですね。その段階であれば、中国から入ってこないようにしよう、でも入ってきた人もいるので、帰国者・濃厚接触した人だけを対象にしましょう。これはですね、先ほど岡田先生も言われていましたが、行政検査と言って、行政が感染症を早くキャッチするとか、蔓延させないように情報を収集するとか、そういう観点からの調査研究のための検査なんですね。必ずしも患者さんの命を救おうとか、そういう観点ではありません。だからもっぱら保健所でやります。保健所で受けて都道府県の衛生環境研究所などで検査する。そういうスキームなんです。初期の段階はそれでいいかもしれませんが、もうあっちこっちに(感染者が)出ると対応できない。これからも増えるかもしれない。そうしたときに今のスキームですと必ずパンクします。というのは、保健所は一般の患者さんの検査をするような態勢になっていませんから。だからここで発想を切り替えて、保険適用にして、一般のお医者さん、クリニックでも、これおかしいなと思う患者さんがいたら、通常色々な検査をしますよね。血液検査とか細菌の検査とか。それと同じように、もちろんこれ、のべつ幕無しじゃなくて、ちゃんとした基準を持って、要検査と判断したら、それを民間のちゃんとした検査機関に回せるような、そういうスキームにしなければいけない。今は、医療のための保険適用じゃないんですよ。行政の必要に基づく行政検査ですから。それを、発想を変えなきゃいけない。早く変えなきゃいけない、と私は思います。

山口

そこの転換がちょっと遅れたんじゃないかという現状はあるんだと思うんですね。

片山

かなり遅れています。

山口

これから変えていかないといけない、先ほど大谷先生からあったように、やはり現場の態勢を変えていく、それによって混乱をなくすということは大事だと思います。

大谷

ある病院に心配だからPCR検査をしてほしいという患者さんが殺到したことがあったらしいんですね。そこから医師会通じてお達しを頂いたんですけど、心配だから検査してほしいと(患者が殺到すると)、病院はパンクしてしまいますので、先ほどのフローチャートのように、抗生物質で治る肺炎はクリニックで治療する。抗生物質で治らないような肺炎の方々を救いあげてPCR検査しないといけないので、その上で発熱外来があればご紹介しやすいかなと思います。また、院内感染もなくなると思います。

(2020年3月1日放送)