番組表

広告

スペシャルアーカイブ一覧

#113

新型コロナ“拡大”中国「首都防衛」と日本経済への影響

猛威をふるう新型コロナウイルス。2020年2月16日の『BS朝日 日曜スクープ』は、中国の「首都防衛」を特集し、習近平政権の危機感、そして、日本や世界経済への影響を議論しました。

■加藤厚労大臣「患者増加を想定した対策を」

山口

中国国内の感染状況と、そこから起こりうる日本経済への影響を考えていこうと思います。では、ゲストの方々をご紹介します。まずは、先週に続いてのご出演、朝日新聞国際報道部記者で、近著に『潜入中国 厳戒現場に迫った特派員の2000日』を出版されました、峯村健司(みねむら・けんじ)さんです。よろしくお願い致します。

峯村

よろしくお願いします。

山口

元日本銀行の政策委員会審議委員で、野村総合研究所エグゼクティブエコノミストの木内登英(きうち・たかひで)さんです。よろしくお願い致します。

木内

よろしくお願いします。

山口

そして、白鷗大学教授の岡田晴恵さんにも解説をお願い致します。

山口

新しい情報が入ってきました。ちょうど政府の専門家会議が行われていたのですが、加藤厚生労働大臣の会見が入ってきました。ご覧ください。

加藤勝信・厚生労働大臣 2月16日

「感染経路を特定できない可能性のある症例が複数認められる状況であり、患者が増加する局面を想定した対策を今から取っていくことが必要」

山口

加藤勝信・厚生労働大臣の発言ですが、まさに、先ほど岡田さんがおっしゃっていたように、もう、このように感染経路を特定できないという前提に立って対策を取るべきだということなりますか?

岡田

入院ベッドを確保する、検査する、発熱外来などを作るという方向に注力するほうが国民が救われます。

山口

それではお話を続けていきます。この新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために日本政府は中国からの入国を拒否する地域を広げています。

大木

こちらのパネルをご覧いただきましょう。2月12日、日本政府は、湖北省に続き、過去14日以内に浙江省に滞在した外国人や、浙江省発行の中国旅券を所持する外国人の入国を拒否することを明らかにしました。そして、中国在留邦人の日本への早期一時帰国と、中国への渡航検討者への渡航延期を至急検討と表現を強めました。さらに、2月14日、武漢市と非常に行き来が多い浙江省の温州市を渡航中止勧告に引き上げました。中国の感染状況地図をご覧いただきましょう。日本の外務省が人口一万人あたりの感染者数をまとめた地図です。よく見てみますと、2月14日現在で湖北省が一番多く、人口一万人あたり8786人という感染者数になっています。それに次いで多いのは、新たにこちら、入国が拒否された浙江省で、人口一万人あたり0.201人になります。以下、湖北省に隣接する江西省や北京、重慶といった都市が並んでいます。

山口

峯村さんは先週の放送でも、結局武漢がある湖北省以外での感染拡大を懸念されていましたよね?例えば、広東省では大規模病院の建設が進んでいるというお話がありました。そういうことを踏まえた時に、今の日本政府の入国措置が適当なのかどうか、どのようにお考えですか?

峯村

私は、タイミングとして遅く、規模も小さい措置だというのが正直な印象です。やはり、先週の番組で申し上げた通り、広東省は実際感染者数で言うと、浙江省より多く、すでに非常事態状況下に置かれています。なぜ浙江省だけなのか?という釈然とした説明が無いですし、実際、今、アメリカだけではなく、他のアジア諸国、たとえばベトナムやフィリピンも中国全土からの入国を拒否している状況なので、日本だけが一番ゆるい水際対策を取っているのが現状なのです。

日本政府は3月9日から、中国と韓国からの入国者に対し、2週間、自宅や滞在先のホテルなどに待機し、公共交通機関を使わないよう求める要請を始めました。

■中国「首都防衛」の緊迫 「10日クライシス」

山口

そして気になるのが首都・北京の様子です。

大木

改めて先ほどの地図をご覧いただきましょう。これを見ますと、1万人あたりの感染者が比較的多い省というのは、湖北省の周辺に集中してはいるのですが、先ほどお伝えした通り、北京、湖北省と離れていても、数値が高いことがわかります。人口1万人あたり0.173人となっていて、日本が入国禁止にした浙江省の数に迫る勢いとなっているのです(2月14日現在)。

山口

北京の状況が気になるのですが、峯村さんはどう分析されますか?

峯村

まさに首都防衛のフェーズに入っていると考えています。今、中国の企業や政府関係者の間では「10日クライシス」「10日危機」という言葉が使われています。これ春節休みを延長していた工場や会社が2月10日の月曜日に再開しました。それに伴って、それまで地方に帰省していた労働者とか会社員が、北京などの大都市に戻る時に感染が拡大することが懸念されていました。

山口

SARSの時も同じようなことがあったのですか?

峯村

そうです。まさに、SARSは大陸の最南端の広東省で起きたにもかかわらず、次に被害が拡大したのが、北へ2000キロ以上も離れた北京だったのです。おそらくこの教訓から、経済復興よりも北京を防衛することを優先させた判断だと理解していいと思います。

山口

なるほど。2003年SARS感染者の推移のグラフにあるように、SARSのときも、北京での患者数が)途中から伸びているということですね。

峯村

そうですね、このグラフを見て頂くと分かる通り、北京が少し時差を置いて感染者が一気に伸びているということが分かると思います。

■14日間の観察を義務付けた北京

大木

『首都防衛』中国政府の動きを見ていきましょう。まず2月9日、経済官庁の幹部が、「感染者の集中する湖北省以外の30省(直轄市、自治区を含む)は企業や工場の再開に取り組んでいる」と記者会見で語りました。翌10日には、企業の休業規制が、湖北省など一部地域を除き解除されました。この日で春節から延長されていた休暇が終わり、地方から北京などに人が戻ることになります。そして、習近平国家主席は、2月12日、常務委員会で、「疫病に対する人民戦争 総力戦に勝利し 今年の経済社会発展の目標実現に努力すべき」「疫病対策の極端なやり方は直ちに正し 生産や生活への影響をできるだけ抑えるべき」と語りました。

大木

その一方で、2月14日、北京市当局は、帰省者に14日間の観察を義務づけることを発表しました。対象は、旅行や帰省先から北京に戻る市民全員です。措置に従わなければ厳罰、ということです。峯村さん、中国は2月10日に企業の休業規制を解除したにもかかわらずその4日後、北京では、14日間の観察期間を義務付けると発表しました。少し矛盾も感じるのですが、どう分析されますか?

峯村

まさにご指摘の通りで、中国政府の混乱ぶりがよくあらわれた措置だと言っていいでしょう。もともと工場を2月10日に再開しようとしたのも、中国共産党が掲げる経済目標を実現させることを優先したためです。ところが、どんどん北京で感染者数が伸びたために、これはマズいとなって観察措置に踏み切ったわけです。ただ、この空白の4日間の間に、相当の地方の人が北京に帰って来て、感染者がどんどん増えてしまいました。非常にこの対応は後手、後手に出ているなという印象を受けます。

山口

木内さんにもお話を伺いたいのですが、今の中国政府の経済への方針、一方で、この感染防止対策があるわけですが、どのように分析されますか?

木内

当初は感染拡大防止に注力するしかないと思いますね。習主席は経済にも配慮とおっしゃっていましたけども、優先順位からすると、感染拡大防止。ただ、いわゆる感染拡大防止の政策自体が経済を悪化させている面が強いわけですね。工場を止めたり、人の移動を止めたり。それは何を優先させるかといえば、仕方のない話で、現状、中国が出来ている景気対策は、ある意味金融緩和だけですね。金融緩和によって金融市場を落ち着かせる。それによって、経済への悪影響を防いでいると。当面それしかない。例えば、せっかく人の流れとか抑えているところに、公共投資を拡大させますと言ったら、感染拡大してしまいますから。それは、中国だけではなく、他の国でも同じだと思いますけれども、初期対応としては、景気悪化はある程度犠牲にして、感染対策を優先するというのは、仕方がない話ですね。

山口

今はまだそういう局面だということですね?川村さん、このあたりどう分析されますか?

川村

おっしゃる通りだと思います。日本も、日産とかホンダとか、工場の再開を延期したわけですよね。今後どうなるか分からないということでいえば、例えば、アメリカがとっているように、早め早めでチャーター機を手配したり、日本人の方も、武漢だけではなく、湖北省あるいは他の地域の人達も、希望する人はみんな帰国させるというような動きがあってもいいのではないかと思いますけどね。

山口

岡田さんにも確認したいんですけれども日本政府は、入国拒否の地域を、湖北省と浙江省と限定しています。これはどう分析されますか?

岡田

そこだけではなく、かなり拡がっています。それから、中国でどれだけ拡がっているのかという正確なデータは、実際に私どもは承知できない状況かと思うんです。ですから、評価は難しいのですけれども、焼け石に水にならなければいいなと思います。

山口

つまり、本当はもっとやるべきではないかということですか?

岡田

ではないかと思うんですね、許されれば。ただ、その時期も逸してしまったのではないかと。ですから、先ほど焼け石に水と言ったのは、地域がどうのということでなくて、もう国内に出ていますから、国内のことに注力をしないと、この2月を、そこに限りある人員を、やっていかないといけないんじゃないかという時期にきているのではないかと思います。

■中国・王毅外相 国際会議での発言

山口

2月15日、中国の王毅外相は、ドイツ・ミュンヘンで開催中の「ミュンヘン安全保障会議」で演説を行いました。

大木

王毅外相は中国の新型コロナウイルス対策について「世界的な規模での感染拡大を効果的に食い止めた」「勝利する決意に満ちている」とアピールしました。一方、WHOのテドロス事務局長は、「感染拡大がどんな方向に向かうのか予測できない」と演説しています。そして王毅外相は、日本の茂木外務大臣と会談を行いました。茂木外務大臣は、新型コロナウイルスによる肺炎対応を巡り、「日本としても中国政府の取り組みに全力で協力していきたい」とし、4月に予定する習近平国家主席の国賓来日に向け、緊密に連携することで一致したということです。中国の王毅外相は、感染封じ込めに成果を上げていると強調しているように感じますが、峯村さんはどう思われますか?

峯村

日本人が聞くとすごく違和感があると思うんですが、中国政府の当局者は、内部が混乱したり困ったりしている時ほど外に向かって強く言ったりする傾向があるんです。まさに今回がその典型例です。王外相の勇ましい発言は、国内外に向けたプロパガンダに近い発言だと理解していいと思います。特に対外的には、今、128カ国が中国に対し何らかの入国規制をしているので、『それは大丈夫ですよ』とメッセージを送りたいというのが一点。そして動揺と不満が広がっている国内向けにも、国際舞台の席でしっかり大国として振舞っていますよ、というメッセージを送る必要があったのだと思います。

山口

中国政府上層部は、強い中国をアピールする面があると思うんですが、その一方で、実際に中国国内の感染は拡大が続いています。岡田さん、今後の感染の拡がりというのは、どのようにお考えですか?

岡田

私、ウイルス学者ですから、このウイルスのしたたかさをすごく感じます。SRASのように、発症者だけを隔離すればどうにかなったというウイルスではございません。ですから、やはりこの場合には、日本にしろ、中国にしろ、厄介な御しがたいウイルスが拡がっているというところで対策するというのは、大変な問題ではないかなと思います。

日本政府は5日、4月にも予定していた中国の習近平国家主席の国賓来日を当面延期すると正式に発表しました。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、準備を円滑に進められないと判断したとしています。

■習近平国家主席「1月7日に指示した」

山口

さらにこんな話が飛び込んできました。中国共産党のメディアによると、習近平国家主席は、今月(2月)3日の党最高指導部会議の演説で、「私は1月7日の会議で新型コロナウイルスを防ぐよう指示した」と述べたということです。これは驚きですね。これまで、習主席の最初の指示というのは1月20日で、実際に政府の対応もそれ以降に本格化した認識だったのですが、峯村さん、いかがですか?

峯村

これもまさに先ほど申し上げた、中央政府内の矛盾と混乱ぶりが出ている発言と言えます。おそらく、国内向けに習主席自身が「早い段階から知っていて動いていたんだ」とアピールしたかったのでしょう。しかし、日本からすると、ちょっと待ってくれと言わざると得ません。もし、習主席が正式に指示を出した2週間前に対策を打っていれば、今の日本の発症は、だいぶ抑えられたのではないかなと思っています。例えば、武漢と日本の間にある一週間の25往復ある直行便を、春節休み前の、大規模移動が始まる前の1月の早い時期に運休していれば、今、拡大している日本での被害は、相当食い止められたのは間違いありません。

大木

1月12日から、湖北省で両会が開かれていますよね。習主席の立場であれば、止めることも出来たのではという批判もあるのかなと思うのですが?

峯村

最初は地方の政府の責任という論調が強かったのですが、だんだん中央政府の問題になってきたと認識されるようになってきました。先週も紹介させていただいたのですが、中国外務省の報道官が、『1月3日から30回アメリカ政府には感染状況について説明していました』と認めています。つまり、中国の中央政府自体が、1月の早い段階で把握していたことを裏付ける発言だと考えていいと思います。

山口

「早く世界に発信してくださいよ」とみなさん思うと思うんです。川村さん、いかがですか?

川村

1月7日に、習近平氏がそういう指示を出していたということであればその指示そのものを全世界にきちんと発信していかないと指導体制そのものが問われるし、結果的には、地方自治体、武漢、湖北省のトップを解任しているわけですよ。そうすると、その人達の責任で、『私は1月7日に指示を出していましたよ』と地方に責任をなすり付ける口実にもなりかねない発言だなと思います。ミュンヘンの会議で、茂木外相と王毅外相が会談しましたけど、当初の予定には、王毅外相との会談はセットされていませんでした。しかし、今回、王毅外相のほうから、我々もこれだけ対策をとっていて、ほぼ抑え込んだということを、世界に対するアピールをしたいということがありますけど、それは、国内にとってみればむしろ地方政府や地方の人達は、かなり中央に対する不平不満をもっているのではないかとその表れでもあると思いますよ。

■「中国は世界の工場と言うよりも」

山口

中国は、国を挙げて感染拡大に努めているとしているわけですが、日本経済にどんな影響を与えるのか、そこを考えていきます。ここは是非、木内さんに解説いただきたいのですが、例えば、日本経済への影響として、中国から部品が入らないことによって、日産の九州工場が、2月14日と17日の2日間、生産ラインを一時的に止めるということがあります。木内さんは、中国での感染拡大が、今後の日本経済に、どのような影響を及ぼすと思われますか?

木内

3つの経路があると思います。インバウンド需要が落ちること、中国の景気が弱くなって日本からの輸出が落ちること、今お話しにあったサプライチェーンの問題ですが、私は、その3つの中では、サプライチェーンの問題が一番、軽度かなと思います。もちろん、直面している企業の方にとっては、大変なのかもしれませんけれど、

木内

中国からの部品じゃないと絶対生産できないというものが果たしてどのくらいあるかということです。例えば、日本の企業が、中国で中国企業と合弁で作っているものを輸入している、そういう物も多いと思います。そういう意味では、技術的に日本でも他の国でも代替可能だし、少し時間があれば、代替生産ができるということだと思いますし、しかも、国内での需要が落ちないのであれば、一旦生産が落ちてもキャッチアップできますので、その3つの経路の中で言うと、これは比較的小さい。一方で、中国の景気が落ちてしまう、それから、なんといってもインバウンド需要が落ちてしまう、こちらの影響の方が、相当深刻だと思います。

山口

中国が消費地としても非常に大きいという意味ですね?

木内

従来中国は、世界の工場と言われました。特に、2001年WTO加盟以降は、日本企業も現地での生産を進めたんですね。日本から部品を持って行って、現地で組み立てて、日本に逆輸入、あるいは、アメリカに輸出するということだったわけです。それが、今では市場としても非常に重要で、日本からの輸出も大きいということで、中国の需要が落ちれば、日本の輸出も2割が中国向けですので、相当影響を受けると。それから、世界経済に与える影響も、SARSの時には4%だったのが、2019年で言いますと16%強で、4倍になっている。

SARSの時と同じだけ中国経済が弱くなったとしても、当時よりも世界経済を直接的に4倍弱くすると。例えば、SARSの時には、1-3月期ですけど2%ぐらいGDPが落ちたんですね。同じことが起こると、自動的に世界のGDPを0.3%ぐらい落とします。波及効果も加えますと、もうちょっと大きいと。ですから、この十数年間で、中国の規模が世界の中で4倍になったということなので、同じような落ち込みが起こったとしても、相当影響が大きいと。例えば、中国のGDPが2%ぐらい落ちますと、日本のGDPは0.1%強ぐらい落ちると。それが、おそらくこの1-3月期にも表れていると思います。インバウンド需要の悪影響は、それよりもっと大きいということですね。多分SARSと同じくらいで、数ヶ月したらまた戻ってくるという経路だったとしても、1年間で0.15%ぐらい落とす形なので、特にこの1-3月期のGDPは、年率で言うと2%ぐらいは中国要因で落ちる。問題は、4-6月期に戻るかどうかということです。

■緊急対策費153億円の中身

大木

日本政府は2月13日、総額153億円の新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策を閣議決定しました。内訳は、国内感染対策の強化に65億円、水際対策の強化に34億円、影響を受ける産業への緊急対応に6億円、帰国者などへの支援に30億円など、となっています。木内さん、今回の政府の緊急対応策をどのように評価されますか?

木内

中国、中国以外の国からのインバウンドの落ち込み。そこからしますと、この関連する産業への6億円というのは、かなり小さいなという感じはあるわけですけれども、やはり、この段階では、景気対策をするというよりは、感染症拡大の対策をするのが重要で、もし失敗したら、インバウンド需要が落ちるだけじゃなくて、国内の消費がかなり落ちてしまうので、その面で言うと、今のバランスとしては、比較的適切なのかなという感じがしますね。

山口

岡田さんはどうでしょうか?経済と感染症対策ってすごく難しいところだと思うんですがとはいえ、今、木内さんからお話あったように、今はやっぱり感染症対策を最大限やるべき段階だというとですよね?

岡田

現在は足元に火がついている段階ですから、先ほどの対策費の中に、ぜひ医療従事者、医師・看護師・薬剤師・その他療関係の人への待遇だとか、病院の拡充とかそういうところにも、ぜひ、今すぐにでも入れていただきたいお金ではないかと思います。これからは、国内医療をどうやって確保するかによって、重症者が亡くならないで済むかということを、もう一回考えて頂きたいと思います。

■新型コロナ“拡大”最優先すべきこと

山口

重症者を減らす、今、それの瀬戸際だということだと思いますよね。新型コロナウイルス対策は、水際での阻止から、国内での医療態勢の整備まで多岐に渡ります。こうした中、日本で最も急がれる対応策は何でしょうか?峯村さんから伺います。

峯村

もうこれ以上感染者数を増やさない、これ一言に尽きます。日本は今ダントツで中国を除いたら感染者数で世界第2位なのです(2月16日現在)。今後、もし被害をこれ以上食い止められないとなると、日本が、中国のような各国の入国規制の対象になるというリスクが目の前まで迫っているのです。これだけはなんとしてでも食い止めなければいけない。今、アメリカの世論とメディアの風向きもちょっと変わってきていて、日本の対応はちょっと生ぬるいんじゃないか、問題があるのではないかという批判が出てきています。ここはもう全力で対策を取らなければ、日本も中国と同じ「感染国」という認定が固まってまします。

山口

木内さんは経済の視点からいかがですか?

木内

インバウンド需要の落ち込みというのは、とりあえず目先の経済にかなり悪影響を与えるんですが、インバウンド需要というのはGDPの0.8%(程度)ですね。一方で、国内の個人消費というのは、56%ありますので、こちらに波及させないというのが、経済的な意味でもやっぱり重要だと。感染者が残念ながら拡大してきたことを、多くの人は意識していて、それにもかかわらず、重篤者、亡くなる人が多くないと、むしろ、そちらの方に重点が置かれるべきじゃないかなと思いますね。そうしますと、不幸にして感染しても、簡単に命は落としませんということであれば、過度に外出を控える、過度に消費を控えることにはならないので、そういったところに資源を配分していくことは重要かなと思います。

山口

岡田さんいかがでしょうか?

岡田

まずは、検査態勢をちゃんとする。肺炎の患者さんだけでもちゃんとチェックをして、それを保険適用にする。発熱外来、コールセンターを作る。そして、院内感染を防ぐということですね。3番目として、入院患者のベッドを確保する。ですから、クリニックから、中核病院までのコールセンターを作る。この3つの柱を厚労大臣がきっちり表明して、地域にちゃんと認知させることだと思います。

川村

基本的には、政府の方が情報をどんどんどんどん出すことが一番必要だと思いますね。

(2020年2月16日放送)