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#121

「PCR検査センターを」東京都医師会の取り組み

新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、PCR検査が不十分とされる問題です。2020年4月12日の『BS朝日 日曜スクープ』は、東京都医師会が独自にPCR検査センターを立ち上げ、検査の拡充を図る取り組みをご紹介しました。東京都医師会のPCR検査センターは、民間の検査会社を活用して、帰国者・接触者外来や保健所に負担をかけず、検査の拡充を図ります。

■「“外来から入院”で滞っている」

山口

現状の検査体制ですが、症状が出た人が帰国者・接触者相談センターに電話。そこで必要と判断された人は帰国者・接触者外来を受診します。他にもかかりつけ医が新型コロナを強く疑った場合、帰国者・接触者外来を紹介することができます。このように「帰国者・接触者外来」はいわば「新型コロナ」の医療の入り口なんです。ただ都内に77か所ある、「帰国者・接触者外来」が感染拡大によってもうパンク寸前だというんです。東京都医師会によると、帰国者・接触者外来が、かかりつけ医からの紹介を断るケースが出ているそうです。東京都の感染状況をさらに詳しくみてみます。上山さんお願いします。

上山

東京の地域別の感染状況ということなんですが。こちら注目したいのは23区と多摩地区の感染者の数です。23区は1266人、そして多摩地区はおよそ140人と、約9対1という23区が非常に多いという状況になっています。これはつまり23区の外来に負担がかかっていることも、ここから読み取れます。東京都医師会の副会長の角田徹さんに伺います。帰国者・接触者外来は「検査の窓口」でもあります。帰国者・接触者外来のひっ迫は、検査数が増えないことにも関係しているのでしょうか?

角田

そうですね。23区は人口比でいうと1対2で多摩地区の2倍はあります。またそういった外来の数も多いので、陽性となる患者さんの発見率も高いと思います。ただやはり基本的には、感染者数の率が変わってくると思います。それで、外来自体じゃなくて、外来から入院に持ってくところのフローが滞ってしまう。そうすると、結局は感染してもなかなか収容する場所がないというところが、現状になっています。

上山

流れが大事っていうことですね。

山口

そして、このような問題もあります。帰国者・接触者相談センターなど検査の必要性を判断する保健所。ここで、このようなことがありました。さいたま市保健所の所長が、「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と軽症や無症状の患者で病床が埋まるのを懸念し、検査対象を絞っていたということです。受け入れられる病床から逆算した検査、岡田さんは、このあたりの現状をどうご覧になりますか。

岡田

これはあったと考えています。実際にコロナ患者の診療をしている感染症病院の先生からも聞いていますし、保健所の所長の方も話されていますよね。これは理由があって、感染症の指定病院等、コロナの患者さんを受け入れている病院の入院ベッドの数、それが足りない。コロナの入院患者を受け入れて、臨床的に良くなって退院させたいとなっても、2回、陰性になるまで出せない。その、いわゆる軽症者でピンピンしている人がまだPCR検査で2回、陰性にならないがために病院のベッドを使っている。それで、本当に今、入院治療が必要な患者、中等、重症の患者が入院させられない。また、ベッドも対応用に空けておくことも必要だけれど、それも難しい。入院対応に支障が出る。そういうことを回避するために絞っていたというような状況があったのが現実だったと思います。今もあるのかもしれませんが。今はそれがホテル等の宿泊施設に移せることになりました。しかし、それもすぐにいっぱいになる。また、ホテルに移せば医療より療養になるので、急変などの緊急事態に再入院に円滑につなげるのか。市中感染がいっている状況だと、さまざまな問題がやってきます。今後はそれを打開していくっていうことが大事なことだと思います。PCRを絞り、漏れた感染者が市中で、水面下でウイルスを広めて、今、医療対応ができなくなって、本末転倒な状況になっているということに危機感を感じています。

■「PCR検査を広くして実態把握を」

山口

ああ、そうですよね。いっぱいになっちゃうから検査を絞ると。

岡田

本当はPCR検査を広くして、ちゃんと実態把握をしなきゃいけない。PCRを絞ったこと、クラスター潰しも問題でした。クラスター潰しは、そもそも検査が少ないから、クラスターとして認知できない、探知できない、漏れの感染者が数多く出るはずです。さらに無症候性(不顕性感染者)キャリアも多くいることが、早期からわかっていた。そんな見つけ難い病気がコロナ。そんな漏れた感染者からのウイルスの拡大が、今の市中感染の広がりの主因となったと思います。初期は、クラスター潰しはよくても、すぐに破綻します。ですから、クラスター探しから、PCR拡大して、隔離、治療、さらに、がダメだったっていう事だと思いますね。韓国は同じコロナウイルスのMERS(中東呼吸器症候群)の院内感染で大変な経験をしている。その経験が生かされたことから、対応が迅速かつ的確だったと思います。韓国のようにやっていれば現状のようにはならなかったがあったのかもしれません。

山口

最初からちゃんと整理できていればね。

岡田

はい、そうですね。

上山

日本のコロナ対策、今は検査の数を抑えながらやるという戦略ですが、河野さんは危機管理という観点から、危機をコントロールするという観点から、この戦略をどうご覧になっていますか?

河野

危機のコントロールというより、これはもうやっぱり医療体制の問題になってきますので、医療崩壊を避けるために、検査数をある程度、絞ったということについては、私は理解できます。ただ、これから軽症者の人は別のやり方でやるということになりますので、そしたら今後は、先ほど角田先生が言われたように、態勢を切り替えて、検査数を増やしていくと、こういうことになるし、まあそうやって欲しいなと思う。

山口

そうですよね。3月くらいまではね、クラスターを追いかけて、ある程度人数を抑えられたっていう面もあったかもしれませんが、もうこれだけ感染経路不明の患者さんが増えてくると、もうとても対応しきれないので、やっぱり戦略切り替えていくってことが必要ですよね。そしてもう一つ、懸念されているのが、ここの「かかりつけ医」なんですね。ここで地域の方を診て、必要と判断すれば検査に紹介していくということなんですが、ここがパンクする可能性も出てきています。“新型コロナ”疑いの患者が殺到する恐れがあるということですね。原則は「電話」してからという形なのですが、症状が強かったり、突然悪化するということもあります。この感染が拡大する中でかかりつけ医を頼るケースがかなり増えてくると予想されています。角田さん、これからこの「かかりつけ医」の役割が大きくなってくると思うんですが、ただパンクする恐れも出てきている、この辺りいかがでしょうか?

角田

はい。あの結局これだけ増えてきますと、地域医療の担い手であるかかりつけ医が、まず最初に診る、対処をする、ということになります。特に症状のない方、軽症者に対しては「かかりつけ医」の管理の下に様子を見る形になります。そうした場合に、全ての「かかりつけ医」がこういった形で携わらざるを得ないんですが、色んな理由で、ちょっとできないと言う「かかりつけ医」もいらっしゃいますので、そうした場合にはその地域で、(診療)できる「かかりつけ医」の先生のところに、少し患者さんを集中せざるを得ないと思います。そのための仕組み作りは各地域で作らないと、やってくれる(診療してくれる)「かかりつけ医」の先生が、やはりオーバーフロー、パンクしてしまう可能性はあると思います。

■東京都医師会が設置「PCRセンター」

山口

そうですね。その仕組み作りが大変大切になってくるということだと思います。感染拡大に伴い、負担がかかっている帰国者・接触者外来ですが、東京都医師会ではこのような準備を進めています。都内47地域の医師会ごとに1か所+αの「PCRセンター」という外来の設置を準備しているということです。その受け入れの流れですが、上山さんお願いします。

上山

入り口となるのは「かかりつけ医」です。感染が疑われる患者に対して「かかりつけ医」はまず電話で対応します。そこで診察の必要がないと判断すれば自宅安静を指示、必要があると判断すれば、他の患者との接触しない形で時間、空間を分離し診察します。新型コロナの可能性が低い場合は他の感染症の治療へ、新型コロナの可能性が高い場合は新設する「PCRセンター」へ紹介します。しかしどちらともいえない場合は肺炎の疑い、末梢血液検査などを行い、新型コロナ感染症か、別の肺炎かを分別。最後まで新型コロナ感染症が否定できなかった場合、新設する「PCRセンター」か「新型コロナ外来(帰国者・接触者外来)」へ紹介するという形です。ポイントは「かかりつけ医」が明らかに新型コロナではない患者を振るい落としていくことで検査する患者の数を減らせるというものです。角田さん、どれくらい患者の数を減らせるとお考えですか?

角田

そうですね、患者の数を減らすというよりも、その検査をする人の数、やはりいくらPCR検査が拡充してもですね、限度はあるんです。ですからその他の疾患の方は、できる限り通常の治療に持っていく、つまり、このポイントは2つありまして、1つは、そのPCR等の検査を含め可能性の高い人をちゃんと絞り込んで検査に持っていくという点と、もうひとつは、そのフローの途中なんですが、肺炎等の重症化の見極め、私ども「かかりつけ医」が今までやっていた診療と同じなんです。結局、患者さんが入院が必要か、そうでないか、つまり肺炎の可能性があるか、外来で診られるか、ということをしっかり見極める、私どもができる検査で見極めた上でやりましょうということです。ですから、これはひとつの目安なので、決して強制ではありません。ただ現状のことを鑑みて、やはりこのフローでなければなかなか医療崩壊を防げないというふうに考えております。

■「検体は民間の検査会社がチェック」

上山

岡田さんは、どうご覧になりますか。

岡田

角田先生、このPCRセンターというのは、ここで検査をした検体というのは、どこでチェックをするんでしょうか。衛生研究所でしょうか。

角田

はい。これに関しては大手の検査会社3社が主にPCRをやっています。そして、その3社の方々に集まっていただいて、お話を伺い、そして、こういったフローでも、ある程度キャパシティーが、今は残っていますから、できるというふうな確約をいただいております。

岡田

ということは先生、これは民間の検査会社に依頼すると、ですから保険適応であるということですね。これは、本来の治療、診療のための検査を保険適応でやるということ、あるべき姿です。衛生研究所でやる、いわゆる行政検査ではないという本来の保険適応で、ここでやるという。そうすると数もかなりこなせるようになるんではないでしょうか。

角田

はい。おっしゃる通りこれは行政検査ではなくて、保険診療で行うことを考えています。ですから民間の会社、キャパシティーを今、増やしつつありますから、それにこれをしっかりと乗っけてもらって、検査を迅速に、結果を速やかに返してもらって、そして、その後「かかりつけ医」がまたその患者さんを管理するというのを考えています。

山口

なるほど、素晴らしいですね。今まで増えなかった行政検査で、やっぱり限界がある、ということがありましたよね。

岡田

今、東京都は現在のコロナの陽性率が高いですから、非常に深刻です。そういう中で今後もっと感染者さんが増えてくる可能性がある。それで「かかりつけ医」がやって。そして民間で、それが保険適応でやるというのは、本来目指していた形になるということですから、これは是非この東京都の医師会の事を地域がモデルケースとしてやっていただけたらなと。これは素晴らしい事だと私は思っております。

山口

なるほど、確かにね、民間の力も借りてどんどん増やしてくってことになりますよね。

岡田

それが本来の姿であったことではないかと思います。

山口

そうですよね、ようやくってことになると思うんですがただですね、一方でこのよう懸念も示されています。「まず6か所設置するが完成するのに2週間かかる。2週間何とか外出自粛の徹底などで感染者の増加を抑制してほしい」やはりこの2週間は大きな山場なわけですね?

角田

はい。すでに準備を進めているところが約6カ所ほどあります。ですからその地域に関しては、2週間はかからないかもしれません。ただやはり基本は感染者を増やさないことですから、この2週間本当に頑張っていただきたい。そして、これからPCRセンターの準備をするところもありますが、全面的に進めたいと思っております。

山口

そうですね、私たちも感染者を増やさないようにしてなんとかしのいで、この東京都医師会のようにPCRセンターができて民間で回っていけばさらにうまく回転していくということになると思います。そこまで頑張らなきゃいけないということになるわけですね。

(2020年4月12日放送)