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#114

再生可能エネルギーを主力電源化へ!!日本の挑戦

北海道胆振東部地震による全道ブラックアウト、去年の台風被害。近年、自然災害による大規模停電が相次いでいます。2020年2月23日の『BS朝日 日曜スクープ』は、東日本大震災から9年を迎えるのを前に、再生可能エネルギーを主力電源化とする、日本の将来に関わる試み、挑戦を特集しました。

■低下が進む再生可能エネルギーのコスト

山口

実は今、再生可能エネルギーのコストは世界で急激に低下しています。再生可能エネルギーを活用することは、温暖化対策や災害対策に加えコストの低下によって、経済的にも地域の再生を促し、ひいては国を豊かにする可能性もあります。今日は純国産エネルギーである再生可能エネルギーと日本の未来について考えていきます。それではゲストをご紹介します。「資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長の松山泰浩(まつやま・やすひろ)さんです。松山さんは再生可能エネルギーの主力電源化に向け、最前線で様々な政策に取り組んでいます。よろしくお願いします。

松山

宜しくお願い致します。今ありましたように、再生可能エネルギーは、いま世界的に大きなうねりを見せて来ています。日本政府もこれを主力電源化していくということを閣議で決めました。これは単にエネルギー政策ということだけではなくて、ビジネスにとっても地域にとっても次の時代を切り開く大きな挑戦でありチャンスだと思っています。今日はいろいろな話が出来ればと思っております。

山口

そしてもう一方、東京大学未来ビジョン研究センター教授 高村ゆかり(たかむら・ゆかり)さんです。高村さんは、温暖化問題の対策を研究し、その中で世界や日本の再エネの動向、政策に対する研究にも取り組んでいます。よろしくお願いします。

高村

宜しくお願い致します。

山口

日本政府が再生可能エネルギーの主力電源化を目指しているというのは、どういうことなのか、2018年に閣議決定したエネルギー基本計画を確認します。再生可能エネルギーの導入を積極的に推進するとし、「2030年のエネルギーミックスにおける電源構成比率の実現とともに、確実な主力電源化への布石としての取組を早期に進める。」としています。

大木

そしてこちらが、目標とする2030年度、10年後の日本の電力エネルギー構成です。火力発電の割合を引き下げ、原子力発電は東日本大震災前に近い水準に、そして、再生可能エネルギーの比率を大幅に引き上げるとしています。中でも、水力以外の再生可能エネルギー、太陽光発電や風力発電、間伐材などを燃料とするバイオマス発電や、地熱発電をどこまで推進できるかが目標達成に不可欠です。

山口

再生可能エネルギーは、これまでコストが問題になってきました。しかし、今、時代が大きく動きつつあります。こちらをご覧ください。東日本大震災前は1キロワットあたり40円だった太陽光発電が 急激に下がっています。欧州では2019年に7円にまで下がっていますが、日本もコストダウンしており、2019年の時点で13円、国は2025年には7円にすることを目標にしています。松山さん、再生可能エネルギーの主力電源化を目指すとしたのはこうしたコストダウンが大きな背景ととらえていいのでしょうか。

松山

おっしゃる通りですね。エネルギー導入の鍵はまず何よりもコストであります。よくエネルギーの導入の数字は国が決めるとか、エネルギー構成は政府が決めている、決めるべきという話がありますこれは一面正しいんですけど、正確に申し上げると、決めていくのはビジネスでありマーケットであることは間違いないわけです。安くて安定的なエネルギーが選ばれる、これを作り出していかなければいけない。政府としましては実現するための制度設計を行っていて導入促進を図るわけですけども再生可能エネルギーの場合、この10年、グローバルにコストダウンが進んでまいりました。こうなるとエネルギーの供給の一翼を担う存在になってきた。日本でも同じ事が起こり始めているわけなんです。そうなりますと経済的な側面もそうですし、電力としての役割、責任という面で見ましても一人前の電源、責任ある電源へと育っていくフェーズに今、入ってきた。これが、主力電源化を目指すと国が決めている背景にあります。

山口

主力電源化というのは国を支えていくわけですから、いわゆる安全保障の観点から見ても歴史的にも意義がありますし、重要なことだと思うんですが、いかがですか。

松山

その通りですね。再生可能エネルギー、最近だと非常に話題になるようになりました。FIT(固定価格買い取り制度)という制度によって導入拡大したわけですけども、実は歴史は大変長いんです。恐らく転換期になりましたのは1973年のオイルショックなんだと思うんですけども、世界中にオイルがなくなる恐怖で、石油以外のエネルギーを開発しなければならないと、世界中が競争する様になったわけなんですね。日本でもその翌年1974年にサンシャイン計画という、堺屋太一さん、亡くなられた私の(役所の)先輩になるわけなんですけども、彼の時代に作った国家計画です。要は自然エネルギーで国をもしくは社会を賄って行く事はできないか、いうことの挑戦が始まったわけですが、ようやく技術的な開発、マーケットの広がりで、かつて夢のように語られていたものが現実のものになってきた。そしてこれはエネルギー安定供給という我々国、社会が守らなければならないものを確保するために、いま大きな意義深い進歩が出ているのではないかと考えています。

■「再エネが火力発電と競争可能に」

山口

日本の再生可能エネルギーのコストが安くなっていることを確認してきましたが、ここからは世界と比較してみたいと思います。

大木

気になる発電コストを見ていきます。こちらです。世界のエネルギー動向を分析しているブルームバーグNEFが各国の発電施設を金融機関からの資金の流れなどから分析して算出したものです。日本、ドイツとアメリカの発電コストを提供していただきました。日本は現在、石炭火力発電が最も安い電力となっています。一方、隣のドイツですが、これまでは欧米でも石炭やガスなどの火力発電がエネルギーの中心となってきましたが、ドイツ、アメリカでは再エネの方がコストは安くなっています。

ブルームバーグNEFのアナリスト黒﨑美穂さんによりますと、「今後も日本の事業用太陽光の発電コストはどんどん下がってくる。2025年に日本が目標としている7円は可能で、ブルームバーグNEFの分析では6.7円になると見込んでいる」とのことです。

こちら、各国 再生可能エネルギーの導入状況のグラフですが、2017年の時点でドイツ33.4%、スペイン32.4%、と日本の16%の倍以上の導入率と高くなっています。

山口

ドイツとアメリカでは、すでに再生可能エネルギーは最も安いエネルギーとなっていますが、高村さん、アメリカやヨーロッパでは何が起こっているのでしょうか?

高村

欧米でも再生可能エネルギーの買い取り支援などで大量に導入が進んだことでコストが下がると。規模の経済が働くと言っていますけども、この結果、先ほどご紹介あったように、火力発電と同じような競争が出来るような電気になってきたということが言えます。純国産で環境性に優れている訳ですから需要家、マーケットが選択をするということが起こって、さらに導入が進んでコストが下がるという好循環が生まれているというのが現状だと思います。

山口

このタイミングで対応を誤ると、日本企業の経済活動にも影響がでるのでしょうか?

高村

いま企業の競争力というのはエネルギーコストが非常に大事だと思います。先ほどご紹介があったように、再生可能エネルギーがある意味、エネルギーコストを下げる役割を果たしているということが一つ重要だと思います。日本のコストを下げた再生可能エネルギーの導入というものを追求していく必要があると思います。同時にここ数年、2015年のパリ協定の後、温暖化対策の動向が変わってきたという点を忘れてはいけないと思います。それは、パリ協定は今世紀後半の脱炭素社会の実現を目指しているわけですけども現在、金融機関や投資家が、本当にそういう脱炭素社会に向かって企業が上手く変わって行けるかどうか、そういうビジネスを作って行けるかどうか、ということを情報開示して分析をして投資家に金融機関に示してくれと、それに応じて投資をするまさにESG投資(ESG=環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))、これの一環ですけど、この大きなお金が企業さんに流れる様に、あるいは流れようとしているということです。そういう意味で企業さんが排出をしないで事業を出来る、そういうエネルギーとして再生可能エネルギーが非常に重要な役割を持っていますし、だからこそ拡大をしていくということが、いま重要になっているというふうに思います。

山口

きょうは、この再生可能エネルギーの可能性についてお伝えしているんですが、非常にこのコストも安くなってきているということで、川村さんここまでご覧になっていかがですか?

川村

以前には考えられなかった再生エネルギーの可能性が追求されてきているということなんですけど、日本の場合はやはり、何よりも先ほども話が出ました、1973年のオイルショック以降、原子力発電が推進されてきたわけですね。原発政策。この中でもっともっと再生可能エネルギーが脚光を浴びても良かったんですが、これまでの政権を含めまして、日本は原発輸出大国を目指してきたわけです。それが福島第一原発の事故によって、ようやく今原点に戻りつつあると。そういう意味では何よりも、これから主力電源ということであれば、政府関係者の人も言っているんですが言葉で言うだけではなく、基本的にはヨーロッパ並みの30%以上を目指さないと、主力電源とは言えないんだと言う人もいますので、そういう目標数値を設定していくことができるのかどうか。未だにやっぱり原発に頼っている。そのことはある意味、小泉純一郎さんじゃありませんけれど、政治の意志がきちっと決断できるかどうかってことが非常に大きいと言わざるを得ません。

山口

そういう中でコストがこれだけ下がってきているわけですから、必然的に再生可能エネルギーがさらに普及すれば、また、この将来像も、随分変わってくるんだなと。

川村

その分ビジネスチャンスが増えているわけですから、しかしながら、そのビジネスチャンスにおける、一つの規制とか、そういうものも未だにあるわけです。それを突破することが民間だけではできないので、そこがこれからの課題だと思います。

■分散型自家消費が広げる可能性

山口

太陽光発電に代表されているこの再生可能エネルギーの発電コストが急速に安くなってきました。そこで、これまでの固定価格買い取り制度に頼らない、新しい動きも出てきているんです。それが自家消費なんですね。大木さんお願いします。

大木

大手ショッッピングセンターのイオンは店舗の屋根に太陽光パネルを設置、発電した電気を店舗で使っています。ソニーは静岡県の製品倉庫の屋根で太陽光発電を行い発電した電気を倉庫で使う、自家消費を行っています。さらに、余った電気は近くの自社施設に送って使用しています。そして、このグラフは、事業用太陽光発電の買い取価格と電気料金の推移です。買い取価格は徐々に下がり、電気料金と同じ水準になってきたことがわかります。高村さん、こうした電気を自分で作って自分で使う動き、自家消費についてどのようにご覧になりますか?

高村

今、大木さんがご紹介されたように、電気料金と同じ水準に太陽光の発電コストがなってきています。そうすると発電をしたものを売るよりは、自分で使った方が、使う分は確実に使った方がお得という、そういう世界になりつつあるという風に思います。そういう意味では発電コストが下がってきたことで、自家消費型に移っていくというのは、当然の道筋だという風に思います。もうひとつは、やはり日本の場合災害が非常に多くて、この間も、電気、ライフラインが切れてしまうということが起こりましたけれども、事業用、あるいは住宅用の太陽光が少なくとも、その非常時に使える発電設備として使うことができる。さらにそれが蓄電池と一緒になっていれば、あるいは、EVと一緒になっていると、かなり通常の生活と同じような水準で生活ができる。そういう意味では災害時対応としての重要性ということもあると思います。

山口

実際に停電になった時にも自立運転モードに切り替えれば、その時電気を使えたお宅も千葉でもたくさんあったんですよね。そういう中で松山さん、今後を考えていきますと、太陽光発電もっともっと広がればいいなと思うんですが、どうしてもその日本って平らな土地が限られてきますよね。そうすると、この後やっぱり家庭の屋根とか工場の屋根とか、こういうところを使うことがすごく大事だと思うんです。いかがでしょうか。

松山

この自家消費の時代が来るというのは、非常に大きなフェーズの転換だと思っています。先ほど川村さんから原子力と再エネって話もありましたけれども、海外のように再エネをもっともっと増やせという話もありますし、よく認識しています。他方で、自然エネルギーっていうのは国の状況、自然状況、これで大きくやっぱり違うんですね。よくグローバルに再エネがすごくコストが下がっていると、一般的に言うわけですけれども、例えば赤道直下、砂漠地帯が多い地域、テキサスでもいいですし、中国の奥地でもいいですし、中東でもいいんですけども、そういう国と日本の状況、一律には論じられない。風がビュービュー吹くドイツ北部、スコットランド、テキサスと日本も、また状況が違う。国土の狭い、山が多い国土の中で、いかに再生エネルギーを安定供給という観点で入れていくかということについて言えば、日本の国情に応じた形を求めていかないといけない。その時に、この分散型自家消費は、非常に肝になるわけですね。どういうことかと言いますと、例えば家庭、工場、ショッピングセンター、倉庫、学校で、消費と一体化した形で再エネが入って、そこで使っていくと。それもコストが下がってくれば、より密集した地域であればあるほど、日本の中に導入が進んでく可能性があるわけです。先ほどFITで導入が進んだって話がありましたけども、すでに今17%まで数字は伸びましたけれども、同時に国民負担は2.4兆円まで来ています。各ご家庭でも、電気料金の請求書の中に再エネ賦課金っていう欄があるんですね。大体1割ぐらいこれで増えている。これどこまで増やしていくかは、家庭、工場、皆さん方の負担に基づいていくわけですね。

この自家消費が進んでいけば、こういうものに頼らずに、系統(=大手10電力の送電網)もいらない、自分で使っていけばいい。そっちの方が得になるじゃないか、となりますと、どんどん自走する形で再エネが入ってくる。これは大きな転換期だと思って期待しています。

■「災害に強い電力網 再エネ活用で」

山口

結局、賦課金が増えて、皆さん電気料金が高くなって、思っている方が多いと思うんですけど、でもその先に、純国産の安いエネルギーが手に入る時代が見えてきた、というところはすごく大きいと思うんですね。一方でこの分散型のエネルギーというのはもう一つ大きなメリットがある。それが災害対応なんです。分散型と災害をテーマに見ていきたいと思うんです。再生可能エネルギーを活用することで災害に強い電力網が見えてくるんです。

大木

近年発生した災害による大規模な停電についてです。おととし7月の西日本豪雨では、延べ25万4000戸が停電。9月の台風21号では、電柱などの送配電設備が多数損壊し関西電力管内で225万戸が停電しました。おなじ月の北海道胆振(いぶり)東部地震では、未曾有の全道ブラックアウト、295万戸が停電しました。そして最大瞬間風速毎秒57.5メートルを観測した去年9月の台風15号では、関東全域で最大93万戸が停電。とくに千葉県では全面復旧までに2週間以上も要した場所もありました。

山口

というような災害が多いわけですが、この分散型にするとどういう利点があるのか、これまでは、遠くにある大規模な発電所から電力が送られてくるという一方的なものでした。分散型とは、大規模発電所ともつながっているのですが、地域の中で発電し、自分たちで使い、余った電力を売ることもできます。そして、災害などで停電が起こった場合、大規模発電所から切り離し、自分たちで発電した電力だけに切り替えることができるというものです。

実際、松山さんどうでしょうか、最前線の現場にいらっしゃって、2018年の北海道胆振東部地震の際は、相当悔しい思いをされたと聞いています。いかがですか?

松山

胆振東部の地震の時も、昨年の千葉の大停電の時も、私は停電対応で一生懸命頑張っていたわけなんですが、その時に、例えば、北海道の十勝地域。酪農の盛んな地域なんですね。牛や豚の糞尿を使った、バイオマス発電というものが非常に熱心に、たくさん導入が進んでいる。ただブラックアウトになった時に、目の前に発電所があるのに地域に送れない。そういう仕組みになっていない。これは、元々大規模発電所があって、効率的に安く全道に供給するというネットワークの仕組み、これは効率的にいいですし、従来その姿を考えていたわけなんですが、こういういざという時の緊急融通、緊急供給の仕組みがない。これで搾乳機が使えずに、乳が絞れずに苦しむ乳牛をどうしてくれるんだ、という地元の声は本当に痛切に何度も聞きました。なんとかしなきゃいけないという意味で、この地域に分散して存在する再エネをいざという時、災害の時に供給できるメカニズムを作る。ここに分散のもう一つの、再エネの分散としてのもう一つの意義があるんだと思っておりますし、これを何とか推進したいと思っております。

山口

高村さんにも是非お話を伺いたいんですけれども、高村さんがまとめていただいた、この自然災害による、被害額というのがあるんですよね。

大木

高村さんのまとめたデータでは、台風の被害金額は、とんでもないことになっているんです。去年の台風19号は世界で最も大きな被害が出ています。同じ年の台風15号と合わせると250億ドル, 2兆7000億円。おととしの西日本豪雨と台風21号が230億ドル、2兆5000億円。高村さん、温暖化で、台風をはじめとする災害は益々、激しくなるとみられるだけに対策が急がれますね。

高村

随分、温暖化に関する科学が進んできまして、気象研究所の研究員の方々などが、もうすでに論文を出されているんですけれども、これらの気象関連の自然災害というものが、温暖化に起因しているということを示されています。今私たちは、世界の平均気温で一度気温が上昇した世界に生きているわけですけれども、1.5°になると、さらにこうした温暖化の影響リスク大きくなる。2度になると、さらに大きくなるということも予測をされています。そういう意味では分散型の再生可能エネルギーをうまく使って、命を守る、そういう私たちの対応とともに、それを支える分散型のエネルギーシステムというものをやはり作っていくということが災害対応としても非常に大事だと思います。

山口

高村さんの研究によると、結局この中で払われた保険の額って半分強ぐらいしかないそうですね。ですから、やはり社会がしっかり考えていかなくてはいけない時代に来ているということになるわけです。

■再生可能エネルギー大国・・・日本の潜在力

山口

再生可能エネルギーなのですが、実は皆さん、日本が再エネ大国だということをご存知でしょうか?いろんな所を取材してきまして、日本にはエネルギーに関しては、実は私、未来明るいのではないかと思っているのですね。というのは、まずこちらの地図を見て頂きたいのです。

これはですね、日本の再エネの潜在力を示しているのですね。青い部分が再エネの潜在力、供給力の方が多い地域、つまりたくさん再エネが眠っている場所です。ご覧のように地方に非常に多いのです。全体で見ると、日本の全電力需要の1.8倍の再エネの潜在力があると、これは環境省が推定しているのです。では日本にどんな再エネがあるのか、こちら次の図で確認していきたいのですが、ご存知のように太陽光、これは緯度が低いですから、日射量はヨーロッパより豊富です。そして洋上風力発電、日本は海に囲まれていますから法整備が進んでいまして、本格始動が今年から始まろうとしています。さらに水力、雨が多く山が多い既存のダムが実は発電機がついていない所が、たくさんあります。そういう所、小水力発電なんていろんな沢でできます。地熱、実は世界第3位の地熱資源量を持っているのですが、まだまだ使いきれていない所があります。そして私が一番気になるのはこのバイオマスです。日本の7割は森林で、そのうちの4割は実は人工林、今手が入れられずに荒れています。そういう森を手入れすれば、そこから0円のエネルギーが生まれてくるということもあるわけです。しかし今現状を見てください。2018年度ですが、日本全体で見てみるとエネルギー自給率が11.8%、化石燃料に85.5%も依存していて、ほとんどが輸入ですから19兆円、2018年度は海外に流れてしまいました。この19兆円の一部でも日本の地方に眠っている再エネに回せば、地方が元気になって、日本全体が豊かになるんじゃないかなと私は取材を通して思っているのですが、高村さんいかがでしょうか?

高村

この再生可能エネルギーの一つの大きな副作用と言いましょうか、あの便益というのが雇用創出効果だと思います。あの2018年に日本で再生可能エネルギー関係の雇用が約30万人生まれたと、これは国際再生可能エネルギー機関のデータですけれども、特に太陽光中心であります。先ほどあったバイオマス発電に関しては、その他の再生可能エネルギーと比べても雇用創出効果が大きいというふうに言われています。特にそういう意味では農山村地域、人口減少ですとか、高齢化、雇用といったような問題を抱えている地方にこそ、こうした再生可能エネルギーを軸とした産業を作っていくことが地方の活性化にもつながってくるだろうと期待をします。

山口

まさに日本が人口減少社会で、地域が消滅するような場所がいくつもあるのですけど、そういう所で、再エネで実はそこからお金が生まれて、雇用が生まれて、元気になっている地域がいっぱい現れているのです。松山さんはどうでしょう?今の日本の再エネの課題って考えていくと、どんなことが言えると思いますか?

松山

非常に大きなポテンシャルがあると思います。まだまだ活かされてない、ただ一方でこのエネルギーというのは先ほど申し上げたようにコスト、マーケットなのですね。ボリュームがどれぐらい供給できるか、産業化していけるかどうか、ですから先ほどのバイオマスにしろ、その森林資源を提供できるメカニズムが効率的にできていけば、多分コストは下がってくる。そのためにはマーケット投資ができるような予測可能性と市場を作って行かなきゃいけない。同じように太陽光、風力も、まあなかなか海外と同じぐらいのいい場所っていうのは、そんなに多くはないです。でも、あるにはある。それは地域の方がよくご存知で、他方、乱開発をしてしまうと反発が必ず起こります。その地域がどういう未来を描いていくのか、ここの地域に再エネをどんどん入れていこうじゃないかという(計画的、協力的な)取り組みがどんどんどんどん進んでいけば、段々マーケットが広がっていく、機器も開発されてく。あとはそれを実現する事業者ですね。いろんな所に点在するような事業者が、それぞれにやっていくようだとなかなか競争力がついて行かない。非常に効率化して、大規模に開発するような事業者が責任をもって開発する。これを地域と両輪になって進めていければ、日本も世界に負けないような再エネ大国になれるのだと思います。

■SDGsの実現でも

山口

SDGs持続可能な開発目標の視点からも再エネの活用がカギを握っています。松山さん、明後日火曜日に電気事業法の改正案これが閣議決定される見通しで、これが出来ますと配電網ですよね、特定の地域で部分的にこの譲渡貸与されるなどの形で、(免許制で)新たな事業者が参入できるようになる。これがやっぱり分散型社会にも大きな基盤になってきますか?

松山

そうですね。今回、法案を準備している所でございますけれども、これら電事法の改正、FIT法の改正、諸々の環境整備は、エネルギー供給をより強くするためのものなのですけども、この配電ビジネス、配電網利用の仕組みの整備が出来れば、独立型の電力供給ができるようになる環境整備ができれば、より自立分散のメカニズムが入ってくる。分散型、再エネの導入の大きな後押しになるように、そう期待して今、検討を進めているところです。

※2月25日、電気事業法等の一部を改正する法律案が閣議決定されました。

山口

松山さん、これからの日本の再エネの未来どんなことが重要だと思いますか?

松山

やっぱりエネルギー安定供給という面で、これは長期的に考えていかなきゃいけない。これは国が考えるだけではダメなのだと思うんです。やはり分散ですので、その地域の方のリーダーシップ、大体うまくいっているところは、地域の首長さんが立派、地域の自治体の方が熱心にやってらっしゃる。企業と一緒に進められている。これが各地で実現できるかどうか、我々も精一杯の応援をして、国民の負担を減らしながら、地域に安定供給できるようなメカニズムを作っていく、これが大切なのかなと思っています。

山口

高村さんお願いします。

高村

SDGsの中にはやっぱり温暖化クリーンエネルギーといったようなものも入っていますけれども、これを進めようという時に企業さんがずいぶん変わってきたと思います。そういう意味では需要家である企業さんの変化を是非国も後押しをして頂きたいというふうに思っております。

山口

そうですよね。本当にこれからの未来なのですよね。

川村

そういう意味では、非常に環境が整いつつあるという流れの中で、やっぱり最終的には意思があるところに道が開けるのであって、政治的な意思もどんどん前に進んでいってほしいと思いますね。

山口

皆さん、どうもありがとうございました。

(2020年2月23日放送)