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#150

米大統領選後の米中覇権争い 「体制間競争」の時代

歴史的大接戦となった2020年の米大統領選挙。トランプ大統領は敗北宣言を拒んでいるものの、バイデン氏が勝利宣言しました。2020年11月8日の『BS朝日 日曜スクープ』は、米朝覇権争いの今後を分析。「体制間競争」の時代に向き合いました。

■「中国は米国との長期戦を覚悟」

山口

トランプ政権で激しさを増していた米中覇権争い、体制を賭けた戦いになっていた、という指摘もあります。バイデン氏の勝利確実で、転機を迎えるのか?日米関係の今後も合わせて見ていきます。ゲストは朝日新聞編集委員で北海道大学公共政策学研究センター研究員の峯村健司さんです。上智大学総合グローバル学部教授・前嶋和弘さんですよろしくお願いします。

峯村・前嶋

よろしくお願いします。

山口

まだバイデン氏の勝利確実に対して、まだ中国から正式なコメントは出ていませんが、投票日後のコメントです。

上山

中国外務省の楽玉成次官は5日、「アメリカの次期政権が中国に歩み寄り、衝突せず、対抗せず、相互に尊重し協力の精神を持つことを望んでいる」と述べました。

山口

この中国外務省のコメントは、激戦州のミシガン、ウィスコンシンでバイデンさんが優勢になってから出てきたものだということなんですが、峯村さんはまずどういう風にご覧になってますか。

峯村

一言でいうと、とりあえずトランプ政権が終わるかもしれないというホッとした感じがにじみ出ている気がします。トランプ政権の4年間は、中国が揺さぶられ続けた4年間だったと、私は見ています。トランプ氏は当初、アメリカの貿易赤字を減らすためのディールをしようと中国に持ちかけました。中国側は米側の要求を受け入れたものの、そのたびに約束を反故にされることを繰り返してきたわけです。そして、トランプ政権は特に今年に入ると、強硬姿勢をより強め、ポンペオ国務長官ら高官が共産党批判とか、習近平国家主席を名指しして批判するというような、これまでなかったような強いトーンで批判を強めていました。もういい加減そろそろ勘弁してくれという、本音が出た発言なのかなという気がしています。

山口

ということは、中国から見るとトランプさんとバイデンさんどっちが汲みしやすいのか、色んな見方があると思うんですが、峯村さんは、バイデンさんになったらちょっと楽になるんじゃないかという見方ですか。

峯村

これは私も何人も中国の当局者にインタビューをしたんですけども、かなり割れています。それをまとめると短期的に見るとバイデン候補の方が中国にとって有利であると見ているんですけども、中長期的に見るとトランプさんの方がいいだろうというのが彼らの見方です。要は、どっちもどっちというのが彼らの本音なのかなという気がしてます。

山口

どっちに転んでも対決モードになっているのは、変わらないということはありますよね。

峯村

そうですね。先日シカゴ大学のミアシャイマー教授という現実主義の大家の国際政治学者にインタビューしました。その方が訪中したときに中国の外務省の幹部にインタビューをしたそうです。そうしたら「どちらにしても我々は大統領選に興味ない。なぜならトランプが来ようがバイデンが来ようが、我々に銃を突きつけてくるのは変わらない」と言ったということはですね、中国としては、アメリカとの戦いというのは長期戦になるんだという覚悟が出来てるのかなと見ています。

前嶋

峯村さんにお聞きしたいのは、なぜ「短期的にはバイデンさんの方が良くて長期的にはトランプさんの方が中国にとって良い」という点です。それはどういう意味でいらっしゃいますか。

峯村

やはりトランプさんはあまりにも予測不可能であるという点と、トランプ政権の中国叩きっていうのは相当本格化していることが喫緊の問題とみています。例えばワシントンにいる中国の大使館人間なんかも、誰にもアメリカ側にアクセス出来ない。例えばホワイトハウスの人間、議会の議員や秘書にアクセスできず、ほとんど機能していない状況が続いています。そういう意味では、やはり対話ができるバイデンさんの方が当面はいいというのが彼らの見方なんです。ところが、中長期的に見ると、トランプさんみたいに国際協調や同盟関係をあまり重視せず、世界的な覇権やリーダーシップにあまり興味のない人の方が、中国の方がリーダーとして振る舞えることができるという意味で、中長期的にはトランプさんの方が中国にとってはいいねというふうに見ている節が伺えます。

■習近平国家主席と9年前から会談・・・バイデン氏の対中政策は!?

山口

この映像を見ていただきたいんですけども、オバマ政権時代の2011年、副大統領だったバイデン氏が中国を訪れた時のものですが、会談しているのは当時、国家副主席だった習近平氏です。前嶋さん、習近平氏が国家主席になることが確実になった時点から会談してきたバイデン氏ですが、今後、大統領としてどこまで中国に対して厳しい対応をとるのでしょうか?

前嶋

まず後者の話なんですけども、中国の習近平さんとバイデンさんが会った2011年、そして、今の2020年。何が違っているかというと、やっぱりアメリカの中の世論がとても悪くなっているわけですね。ですので、バイデンさんになったから中国としては、かつての「あのジョーと会うから問題ない」じゃなくて、やっぱりちょっと違う立場になっているといるのは間違いないですね。特に今年のコロナがありますし、そしてトランプ政権の遺産。トランプ政権が大きく1期目にやったのは、中国の安全保障の話は、とんでもなくアメリカにとって悪いんだと、いうことが明らかになったわけですね。貿易の関税の話は色々議論はありますが、安全保障は、中国が本当にアメリカにとって敵なんだというのが分かった段階です。これ大きいと思うんですね。敵と分かったところに果たして甘い顔ができるかと、特にオバマ政権の最初の時、環境のディールとか色々考えながら、中国に対してはかなり優しい顔をしてたんですが、今後は変わっていくかもしれませんね。でもその変化をちょっと一つ目のご質問と関係しますけど、中国側も変わっていると思いますけどね。

山口

やっぱりこの9年間で随分変わったと。やっぱり情勢の変化があるわけですよね。杉田さんは、アメリカ大統領選挙を30年間取材されたと伺っています。バイデン政権が実際スタートした場合、どういう政策になっていくと捉えていますか。

杉田

アメリカの大統領の権限というのは、内政問題において議会をまとめていかないと何もできないということがあります。今回もバイデンさん、共和党が議会でかなり善戦してますので議会は言う通りに動かせないだろうという見通しです。ところがバイデンさんは、就任した以上は何か手柄をあげなくちゃいけないと、そうすると大統領の権限で動かせる外交ということになるわけですね。これは歴代大統領ともにそういう道を歩んでまして、過去の大統領の交代時期を見てみますと、例えば冷戦が終わり湾岸戦争に勝利して世界中で大勝利をもたらしたというふうに胸を張っていたジョージ・H・W・ブッシュ氏、ブッシュさんのお父さんですけども、この人は1992年の選挙であっけなく負けて、登場したクリントン大統領、民主党の大統領、この人は世界のことなんかどうでもいいんだと、国内の経済をやるのが我々の仕事なんだと、極めて内向き、アメリカファーストに転換しました。

クリントン大統領の後に登場したブッシュ、今度は息子さんの大統領ですね、この人はクリントン大統領の業績だった北朝鮮とのジュネーブ合意を覆し、それから京都議定書を脱退し、これまたクリントンさんの業績を否定するわけです。ブッシュさんは、今度は9・11の後にイラク戦争まで行ってしまう。その後にオバマさんが登場して中東を撤退だということでこれまた180度違う外交です。

オバマさんの後はトランプさんが登場して、アメリカファーストで、パリ協定は抜ける。イラン合意は抜ける。TPPなんか知らない。こういう形で、やっぱり大統領が変わると、外交はかなり変わるっていうことを意識して、警戒しておく必要があると思うんです。今、やっぱりバイデンさんは中国の脅威をどれくらい分かっているかどうか、ちょっと疑問なんですけども、やっぱり彼は、環境の問題、あるいは習近平との個人的な関係を踏まえて、中国とのなんらかの連携をしていくんじゃないかと思って、習近平さんもバイデンさんは組みやすいということで、色んなバイデンさん好みのボールを投げてくると思うんですよね。ですので、その辺は、ちょっと要注意です。もちろん米中対立という冷戦的な対立ではあるのですが、米ソの冷戦期においてもソ連との対話か軍拡かということで、アメリカの大統領は交代するたびに揺れましたので、その辺はちょっと単一的な見方じゃなくて、懐が深い、変化がありうるという見方をしておいた方が間違いないのかなと思います。

■『体制間競争』コロナ禍で如実に

山口

歴史的大接戦の末にアメリカ大統領選はバイデン氏の勝利が確実になりました。一方の中国はアメリカとの長期対立に備えた、ともとれる、体制づくりを打ち出しています。

上山

アメリカとの対立というのを念頭に置いているんでしょうか。中国の新たな経済目標です。先月26日から29日まで、中国共産党中央委員会が開く5回目の全体会議、党大会に代わり党の重要政策を決める、5中全会が行われました。掲げられた目標としては、2021年からの5カ年計画として科学技術の自立化と内需拡大、さらに自力での安定成長を目指す、としています。習近平国家主席は2035年までに経済規模か国民の平均年収を倍増することは完全に可能だ、と語っています。

今回の中国の決定から、峯村さんはどんなことを読み取ってらっしゃいますか。

峯村

そうですね。確かに自信を感じるのですけど、一方で焦りも感じるな、という気もします。アメリカと長期的に戦っていくんだというファイティングポーズが出ていたように感じます。その準備を今、出来ているんだというメッセージがにじみ出ていたように見えました。私はこれまで何度も5中全会を取材していますが、今回はしつこいぐらい科学技術という言葉と内需拡大という言葉を使っていたのが印象的でした。特に内需拡大に関して言うと、もう外資・外需には頼らないという強いメッセージなんですね。さらに科学技術に関して言うと、トランプ政権が携帯電話のファーウェイとかに半導体を輸出しないということを検討しているので、そういうアメリカ製の半導体に頼らなくても、しっかり自国で国産化でいけるんだという方針を打ち出しているわけです。つまり中国は、アメリカとの経済のデカップリング(分離)というのを意識して、もう自分たちの、自国だけの経済で生き残るんだという、相当強いメッセージか出ていたという気がしています。

上山

そうすると、こういう目標を打ち出してきたということは、アメリカ側もやっぱり意識しますよね?強気が先に出てくるのでしょうか?

峯村

そうだと思います。やはりそれで言うと、特にコロナ禍以降、キーワードになってきているのがまさに『体制間競争』という言葉なんです。これはどういうことかと言うと、中国は共産党が一党支配をするんだけれども経済はある程度自由化しているという、このシステムが民主主義、自由主義の国よりも実は優れているんだというプロパガンダをすごく強めています。特にコロナで中国がいち早く収束させたというふうに宣伝している。アメリカはかたや23万人も犠牲者を出している、それがアメリカが民主主義のリーダーなのか、民主主義は本当に良い制度なのかというキャンペーンをやっているので、そういう意味では5中全会の目標というのは、『体制間競争』というのを非常に意識したメッセージと見ています。

山口

この『体制間競争』、本当に今の米中関係を如実に表していると思うんですけども、前嶋さんはいかがですか?アメリカを含まない経済圏を中国は作っていくんだという宣言にも見て取れるわけですよね。アメリカはこういう中国の動きをどう見ているのでしょうか?

前嶋

もちろん警戒していますね。警戒するとともに、こういうふうに動いていくということを読んでいて、それが先ほど、峯村さんもおっしゃられていたのですが、一連のアメリカの最近の強硬な姿勢ですよね。7月のポンぺオさんの演説、あれはこちらも『体制間競争』するぞと、民主主義・自由主義が本当は勝つんだと言いたい演説ですよね。もう明らかにこちらもやるんだという感じですよね。

■「中国はトランプ再選を願っている」遠藤誉氏の指摘

山口

中国政府は非常に強い姿勢を見せているわけですが、一方で、中国の人々はアメリカの大統領選をどう見ているのでしょうか?私たちの番組で繰り返し問題提起をしてきた中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉さんの分析です。

上山

「中国はトランプ再選を願っている」と題して中国庶民の感覚を描いた、遠藤誉さんのコラムです。これは先月28日付、大統領選投票日前に書かれたものです。「一党支配体制の中で経済的繁栄を続けてきた中国だが、それでもなお一部の者は「民主主義」というものへの憧れを心ひそかに抱いていた。しかしトランプの出現によって、「民主は少しも良いものではない」という幻滅を、ほとんど全ての大陸にいる中国人に抱かせた。それは人種差別や暴力、国際社会からの離脱などによる身勝手さから「民主主義大国」の実態を知るに及んだからだが、さらに大統領選挙戦における相手候補への節操がないほどの罵倒、罵詈雑言によって「民主主義は少しも良くない」という印象を中国人民全体に巻き起こしている。」遠藤さんは、中国の人々の中にあったであろう、民主主義への憧れを、これまでのトランプ大統領の言動が打ち消してきた、さらにコラムでは、そのことは中国の指導部にとって好都合だった、とも指摘しています。峯村さんはどのようにご覧になりますか?

峯村

まさにそうだと思います。先ほどの『体制間競争』の論点からいうと、その民主主義のリーダーであるアメリカの選挙がこれだけ混乱してくれるっていうのは、非常に中国としてはもう高笑いが止まらない。もうどんどん混乱してくれというのが本音だと思います。その証拠に、中国の特に官制メディアは選挙の前、選挙が投票されるまでは、ほぼアメリカの大統領選について報じてなかった。それを中国当局者に聞いたら、これはやはり報道規制を引いていて、報道してはならないというのを中国政府が官制メディアに指示していたそうです。この原因を探ると、相当、中国人は大統領選に非常に関心が高かったんです。特に中国の普通の民衆のトランプ人気は非常に高いんですね。おそらく世論調査とかやったら8割9割とるぐらいの勢いで人気があるといっても過言ではありません。相当これが過熱して「どうなるんだ、アメリカの選挙は?」ってなってしまうと、じゃあ待てよと、なんで我が国は選挙がないんだと。我が国はなんで選べないんだっていう話になりかねないっていうのが私の見立てです。なので極力、選挙の予測とかで盛り上がらないようにしよう、ということで、習近平国家主席の演説とかを報道するように、という指示をしていたわけです。ところが面白いことに、投票日から5日を過ぎて選挙が混乱してくると、段々、報道が増えてくるんです。つまり混乱ぶりっていうところだけを強調して報じている。報道規制には非常に、中国当局の本音が表れています。こうした報道姿勢というのも『体制間競争』という一つの流れなのかなと思っています。

上山

つまり中国の共産党としては、非常に国民からの政治体制への評価っていうのを、かなり気にしているっていうことなのですかね?

峯村

ものすごく気にしていますね。特に今SNSが発達しているので、色んな反対意見というのをすごくチェックしていますし、もう気に食わないから全部消去するというのをやっています。裏を返すと、自分たちは選挙というちゃんとした儀式を通過していないという自信のなさの表れなんですね。なので、よく中国の当局者と話していると、「日本の総理は良いよな。何かスキャンダルしたり、何か重要政策を打ち出す時は、とにかく選挙で禊(みそぎ)が済んだと言えていいよな」と、よく愚痴をこぼしていました。これ笑い話ではなくて、おそらく本当に羨ましいんだろうなと思っていると思います。

上山

そういう見方があるのですね。

■「米国は、より健全な民主主義への一歩と描く」

山口

大変興味深い分析なんですけれども、杉田さんこのあたりの遠藤さんの指摘、どうご覧になっていますか?

杉田

私も遠藤さんの指摘はまさにその通りだと思うんですけど、今の峯村さんのお話を引き取って話すならば、結局、今回アメリカはコロナ禍の中で6500万人の郵便投票、この開票作業は大変、時間がかかっていますが、6500万人というと、おそらく日本の国政選挙の総投票数より多いと思うんですね。それをなんとか投票から1週間くらいの間で、すべての票を数えてですね、細かい数字を出してきている。そこで当然、双方の妨害などもありながらも、賢明、粛々、営々と、ほとんど徹夜に近い作業でコロナ禍の中でソーシャルディスタンスを取りながら開票作業が進んでいます。そういう中で票の積み上げでバイデンさんの当確が出たということです。このことはですね、ある意味、アメリカにおけるトランプ時代の民主主義の混乱、あるいは民主主義の危機ということを言われましたが、この選挙の開票だけを見ると、しっかりやってるなと、非常に健全に機能してるなという感じなんです。ですので、この選挙がいわゆるトランプ時代の、ちょっと異様、異常なこの4年間から、次のアメリカの、より健全な民主主義、これ簡単にはいかないと思うんですけど、そこに向かっての一歩になる可能性があるというように、そういうふうにアメリカは描くと思うんです。そうなってくると、峯村さんのお話の、アメリカの選挙が混乱すれば混乱するほど、中国共産党がにんまり笑うということではなくて、おそらく今回、ここ2、3日のあれは、アメリカしっかりしてるなという話になって、要するに中国の人は、やっぱりこれくらい一生懸命選挙をやって、混乱の中でもなんとか冷静に得票を出してきている、票を出してきているという、アメリカの民主主義に対して再び憧れみたいなものが生まれてくる可能性がある。共産党はもう一回、報道制限して開票の進展を伝えないっていう風に出るのかなって、そんな予想もしますけどね。

山口

そのあたりもアメリカの民主主義がどっちに転ぶのか非常に興味深いところなんですよね?

杉田

アメリカが抱える根本的な問題である、格差とか人種間の対立とか、そこはもう全然解決しない。だから、とりあえず選挙という手続きだけに関しては、しっかりやってるなという感じがしますけどね。

山口

ここで中国の環球時報が2日に載せた記事を確認します。

 「中国はアメリカ大統領選挙を落ち着いて自信を持って見ている」と題した記事の中で、
 「米国の政治体制と民主主義のおとぎ話は終わりを告げ、米国は分裂したプロセスに入るだろう。

トランプとバイデンが問題を解決する可能性は低い」という識者の意見を載せています。果たして本当にアメリカの民主主義が終わるのか、それとも今杉田さんがご指摘のようにこの混乱を乗り越えて、バイデンさんがまさに分断じゃない団結を目指すんだということを訴えています。アメリカの民主主義がもう一歩先へ昇華していくのか、この辺りは前嶋さんどうご覧になりますか?

前嶋

なかなか答えがないところなんですけども、「民主主義がおとぎ話だ」というのがこの環球時報の話ですけど、今、何がアメリカで起こっているのかというと民主主義の行き詰まりというよりも「分極化で妥協ができない」という状況になっているという点が大きいかと思います。保守とリベラルでちょうど数が拮抗しているから両者がなかなか妥協できないんです。それと民主主義の話は本質的に違っているかなというのが一つです。もう一つが遠藤さんのコラムを見て、「でも本音はね」っていうところがあると思うんです。それは何かと言うと、やっぱり言論の自由のない国というのはやっぱりプレッシャーがあると思うのです。本来はもっと自由にものを言いたいと、昔のソ連のような形で何か、党、上の人が言ったことを無理やり解釈していくような、先ほどの大統領選挙の報道の話がまさにそうですけど、そういう上を見ながら何を言ったらいいかを決めなないといけないという、すごく息が詰まるような状況が続いているとするならば、これはアメリカに対する憧れって戻ってくる、おそらく消えないと思うんですよ。

杉田

民主主義はとにかく時間がかかるということをよく言われてますけど、それがまさにここで、実際そうなっているということです。前島さんがおっしゃった通りアメリカって主張が激しい国なので当然ぶつかると。ずっとぶつかってきたわけです、建国の前から。だからそれが今もまた主張が激しくてぶつかってると。これは表現の自由なので当たり前の現象、まさに民主主義はぶつかり合いだということなんだと思うんですよ。

山口

なるほど民主主義、そうですよね。

杉田

だからトランプさんみたいな人も出てくるし、開票時間かかるし裁判に持っていったりするということで混乱している。でも大きな民主主義のプロセスは動いているという感じなんですよね

山口

みなさんおっしゃるように、言論の自由があるから確かにぶつかることにはぶつかる。だけどそれが民主主義だってことですよね。その先へ進んでいくということだと思います。

前嶋

中国はぶつかりもない、ぶつかることもできないわけだから、国民のストレスも大きいと思うんですよね。

■尖閣周辺でも!?中国船が武器使用可能へ

山口

中国はアメリカだけでなく、日本を対象としたとも受け取れる、ある決定を行っていました。

上山

尖閣諸島に新たな危機か?全人代、中国全国人民代表大会は4日、海上警備を担う中国海警局の権限を定める海警法草案の全文を公表しました。中国周辺で監視などを行う中国海警局の任務や権限が初めて明文化されました。その内容としては外国船が中国の管轄する海域で違法に活動し海警局の停船命令などに従わない場合は、国家主権の侵害があると判断し武器の使用を認める、としています。そうした場合、尖閣諸島周辺で漁をする日本漁船や海上保安庁が対象になる可能性も指摘されています。この草案は早ければ年内にも成立する、ということです。

峯村さん、これは、尖閣諸島を意識したもの、と解釈してもいいでしょうか?

峯村

もろに尖閣を念頭だとみていいと思います。典型的な中国が得意とするサラミスライス。サラミを1枚1枚切っていく、戦術の教科書みたいな動きだと思っています。というのは、着々と彼らは一つずつ階段を上がる、サラミを一枚ずつ切っているのです。5月に最初、日本の漁船が尖閣の領海にいたのを中国の海警局の船が追いかけて侵入しました。その後後も26時間日本の領海内にずっと居座ったという事件を皆さん覚えてらっしゃると思うんですけども、その後に中国側は、「我が国の領海に入ってきた違法な外国の船を取り締まったんだ」と記者会見で非難をしているわけです。その後に、どんどん尖閣の滞留時間、侵入している時間が長くなってるんですね。さらに一番私が心配しているのは、最近、中国の監視船の船がどんどん大きくなっており1万トン級が展開されています。さらに76ミリ砲という機関砲を搭載しているんですね。これは日本の自衛隊の護衛艦とかにも載せているような、そうとう攻撃性の高いものです。片や海上保安庁の船はその10分の1の、千トンクラスの船。武器はほとんど携行していない、丸腰の状況。これは非常に現場での偶発的な事故が起こりやすい危ない状況が進んでいると。やはり、そういう意味では、サラミを切っているところで、何をやっているんだと、もっと日本政府は強い対応をしなければ、多分、どんどん止まらない状況になると思います。

上山

そういった中で、アメリカの尖閣問題に対する対応を確認してみたいと思います。実はバイデン政権が誕生した場合、国務長官の候補としてスーザン・ライス氏の名前が挙がっています。スーザン・ライス氏は、バイデン氏が副大統領を務めていたオバマ政権の、大統領補佐官だった当時、尖閣問題に対してこう発言しています。 「アメリカは主権の問題には立ち入らない」、その翌年、オバマ大統領は尖閣諸島も日米安保条約の適用対象だと明言しましたが、前嶋さん今後、バイデン政権は、尖閣諸島に関してどのような見解を出してくるでしょうか?

前嶋

このライスさんの発言があったので、この人が国務長官になる可能性があるため、すごく今、日本側で危惧がありますよね。「この人だけは避けてくれ」ってことになっているというのが政府の多くの方の本音だと思います。またライスさんは、別の機会に「太平洋は大きいからアメリカと中国が2つに割ってやっていきましょう」といった中国の主張する「新型大国関係」のようにこれまでの日米安保のことまったく無視したような発言をしています。この発言の時には日本の記者がすごく問題視しました。ライスさん、どうなるかです。ライスさんそのものも、この発言で学んでいるところあるかもしれませんし、そもそもライスさんが国務長官なるかどうかもわからない。というのも結構リベラル派なので、上院で決めるわけですが、上院の方がまだ共和党が多数になる可能性が結構あるわけですね。共和党が多数になったらこの人が昔のベンガジ問題の責任とかがあって、ライスさんの任命承認を阻止する可能性もあります。他の国務長官候補者もいろいろいますが、例えばカート・キャンベルさんという、ヒラリー国務長官の下でオバマ政権のときに。アジアピボット、アジアの回帰のことを動かしていった人ですので、この人あたり就任したらまったく違う見方ができるかもしれない。そうするとまだ分からないという表現が一番分かりやすいのかもしれません。いずれにしろ、ライスさんの発言は日本としては危惧すべき発言ですよね。

バイデン氏の政権移行チームは23日、国務長官の候補にアンソニー・ブリンケン氏を指名しました。ブリンケン氏は、(オバマ政権で国務副長官や副大統領補佐官を歴任し、バイデン氏の側近とされています。

■バイデン政権誕生で日米関係の今後は・・・

山口

アメリカ大統領選挙はバイデン氏の勝利が確実とされています。民主党バイデン政権の場合、日本は対中国においてどんな対応を考えておかないといけないでしょうか?前嶋さん、日本として今、一番大事なことは何だと思いますか?

前嶋

バイデン政権になってスタートとしたら、同じく強い日米関係を軸として、中国への圧力政策も続いていったとしても、ちょっと内容が変わってくると思うんです。安全保障の話の中に環境とか人権が入ってくる。このあたりに対して日本も柔軟に対応していかないといけない。

山口

峯村さん、いかがでしょうか。

峯村

やはり大統領選の混乱によってこれが長引くことによって、権力の空白みたいなのができることを非常に心配しています。先ほどのブッシュ氏とゴア氏によるフロリダ裁判で混乱した2000年が歴史の教訓になっています。この翌年の2001年4月に中国南部の海南島で、まさにアメリカの偵察機に中国の戦闘機がすごく接近して衝突して墜落する事故が起きています。中国側はアメリカの大統領選の混迷を「権力の空白」とみて強硬姿勢に出る傾向があるんですね。そういう意味では、今回もっと長引くとさらに危険が高まるのではないかということを非常に危惧しています。

山口

なるほど。権力の空白ですね。杉田さん、お願いします。

杉田

バイデン政権ができた場合、外交に予測可能性があるということですね。トランプさんみたいに予測不能ではないということ。それから同盟重視と言っていますので、そこはそういう風な動きをするのであろうと。例えば駐留米軍費の大幅な増大要求などはない。日本から今ボールを投げるべきは、カーボンニュートラル、脱炭素化、これはバイデンさん言ってます。それから菅さんもこの前おっしゃった。中国も言ってます。ヨーロッパも言ってます。ですので主要国の間で、そういう脱炭素、地球温暖化防止の一つの枠組みを日本からイニシアティブを出すべきかなと。それはバイデンさんも非常に喜ぶだろうし日本も良い政策を出してくれたいうことで今後の日米関係を前向きに動かすきっかけになると思います。

(2020年11月8日放送)