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#156

「自分の愛する人、家族のために感染抑制を」日本病院会・相澤会長が訴え

2021年に入り、政府は首都圏の1都3県に緊急事態宣言を発出。さらに、大阪府や愛知県など7府県も対象地域に加えました。かねてからGoToトラベルの即時停止など、国の対応を求めてきた日本病院会の相澤孝夫会長は2020年12月20日『BS朝日 日曜スクープ』に生出演。相澤会長は「社会的、制度的な制限を課さないと、危機感が生まれない」「自分の愛する人、家族を守るために、感染抑制を」と訴えました。

■「このままでは病院は限界」「経済も共倒れに」

山口

感染拡大が止まりません。そして人の動きも、減っていません。年末年始をどのような形で迎えるのか?詳しく考えていきます。では、本日のゲストをご紹介します。まずは、2500の病院が加盟する、日本最大の病院団体、日本病院会会長の相澤孝夫さんです。よろしくお願いします。

相澤

よろしくお願いします。

山口

そしてもう一方です。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバー、東京財団政策研究所・研究主幹、小林慶一郎(こばやし・けいいちろう)さんです。どうぞよろしくお願いします。

小林

よろしくお願い致します。

山口

まずは世界の感染状況から確認します。世界最大の感染国と言えば、アメリカです。累計の感染者1700万人を超えています。そしてインドも1000万人を超えました。世界全体の感染者数は7623万人を超えました。死者は168万人です。

では、どのくらいのスピードで今、感染者が世界で増えているのか、日別の感染者数の推移ですが、やはり増えてきています。17日は過去最多となる1日だけで73万人以上が感染したことになります。

この世界の中で、注目するのは韓国です。K防疫とも言われたんですが、抑えきれません。1日の感染者数が1097人と、5日連続で1000人を超えています。こうした状況から韓国政府は、防疫措置レベルを最高の第3段階へ引き上げるか注目されています。第3段階になると、映画館やネットカフェの営業禁止、食堂などが持ち帰りのみとなり、203万か所が対象となるため、経済への打撃が懸念されています。現在、韓国では危篤・重症者が246人と今月に入って2.5倍となっています。病床がかなりひっ迫していて、首都圏の入院可能な重症病床が4床に、さらに15日、入院を待っていた60代男性が亡くなりました。

相澤さん、病床がひっ迫している日本もこうしたことが起きないか、懸念がありますね。

相澤

日本の場合は、病院が非常に一生懸命、頑張って、何とか持ちこたえているという状況であると思います。ただし、この重症者、あるいは感染者が今のスピードで増えていったのでは、そのうちに限界に達するというところだと思います。まだ、限界の少し手前というところですが、もう今が限度、というところではないかと思います。そうしますと、韓国と同じ状況に日本もなっていってしまう、ということではないかと思います。

山口

つまり、今が踏ん張り時だということですよね。

相澤

そうです。

山口

ここで今、何をするかが大事になると思います。そして韓国政府はこのような判断に踏み切っているんです。

上山

韓国メディアによりますと、韓国政府は重症者病床不足のため、上級総合病院、国立大学病院を対象に全病床のおよそ1%を新型コロナ重症病床として確保するよう、行政命令を下しました。法律のもとに行われる行政命令ですが、対象となった病院からは「事前に準備したら、できたかもしれないが、この状況では容易ではない」という声が上がっているということです。

相澤さん、強制力があろうとなかろうと感染拡大した状況だと、病院はもう動くことができないということですが、いかがですか。

相澤

1つはですね、病床と治療する機械さえあれば治療ができるか、と言えば違うんですね。どうしてもそこには働く医師と看護師ら、患者さんを診療し、かつ機械を動かす人たちがいないと機能しないわけです。そういう人たちを急に育てられるかと言うと、育てられないんですね。ですから、ベッドがあり、機材があっても、人という制限がありますと、それを急激に拡大することはできないというところがあります。ただ、韓国と日本おそらく違うのは、日本は韓国ほど大病院がすべてを担うのではなくて、かなりたくさんの病院がある。これはOECDから言わせると、日本は病院が多すぎて効率が悪いんじゃないかと言われているんですが、むしろ今、こういう状況になると、色々な病院があるということが日本にとっては、少し幸いに働いていると思うんですね。1床、2床なら増やせるけど、一挙に10床増やせと言われても困ると。これが、日本は沢山、病院がありますから、病院で2床ずつ増やしていけば、10病院があれば20床がカバーできると。こういうことで日本は今、何とか頑張っているというところだと思います。

山口

なるほど。そこをしっかりと維持して、これ以上危機に陥らないように繋げて頂きたいと思うんですが、小林さん、韓国を見てくると、重症病床がほとんど無くなってきている中で、この防疫措置レベルを最高に引き上げるのかどうか。それを引き上げるとなると、やはり経済に影響が出る。こう考えてくると、やはり日本と重なってくるところもありますよね。いかがですか。

小林

やはり病床をどうやって増やしていくか、後で話しますが、そういう手立てを緊急に考えなきゃいけないということと、経済に一時的に負荷をかけても一回感染者を減らさないと、やはり経済も共倒れになってしまいますので、タイミングを見てレベルを上げるということは必要なんだろうと思いますね。

■「ワクチン打っても感染なくならない」

山口

新型コロナに関して、気になるニュースが入ってきています。イギリスがロンドンなど一部の地域で事実上のロックダウンに踏み切ることになりました。対象地域では新型コロナウイルスの「変異種」が見つかっていて、政府は感染力が70%以上高いと説明しています。「変異種」は9月半ばに出現し、ロンドンの感染の6割以上を占めるほど急拡大しているということです。重症化や死亡リスクについてはわかっていないということなんですが、相澤さんは、このロンドンでの「変異種」の確認、いかかですか。

相澤

そうですね。このウイルスは変異がどんどん起こっていくということが知られていまして、それを我々も心配をしているんですが、しかし、この発見されたというのが本当に学術的に正しいのか、様々な研究者によって容認されたものなのかと言うと、まだそこまでは行ってないんで、真実を確かめなければいけないと思うんですが、起こりうる可能性は十分にあると思います。

山口

この後の情報を見ていく必要がありますね。

相澤

そうですね。

山口

こうした中、日本でもワクチン接種に向けた動きがありました。アメリカのファイザー社のワクチンが18日、日本国内での使用に向けて厚労省に承認申請されました。この申請は通常よりも簡略な手続きである「特例承認」であるため、早ければ2月中に承認されるのではないかとみられています。いつ具体的にどういう人が接種できるのか、まずコロナ治療にあたる医療従事者が2月下旬から3月上旬、それ以外の医療従事者が3月中、高齢者が3月下旬から4月上旬、その他、基礎疾患がある人が優先となりますが、つまり私たちも、4月以降、春以降いよいよコロナワクチンが打てるかもしれないわけです。

このファイザーのワクチンですが、3週間間隔で2回接種します。発表されている有効率は95%です。ただ、すでに接種が始まっているイギリス、アメリカでは3人にアレルギー反応が出たことが報告されています。そして、カナダ、アメリカ、メキシコ、シンガポール、イギリス、バーレーン、サウジアラビアなどで緊急使用が承認されています。日本の田村厚労大臣は「関係部署に最優先で迅速に審査を進めるように再度指示した。有効性、安全性をしっかりと審査した上で、なるべく早く接種できるよう体制整備を進めていきたい」としています。相澤さんは日本でのワクチン接種に向けた動き、どうご覧になっていますか?

相澤

皆さま方の考え方で、ワクチンを打てば感染症は無くなると勘違いされている方がいらっしゃるんですね。ワクチンを打ったから感染が無くなるわけではなくて、たとえ感染しても症状が軽くて済む、あるいは重症化しないというところになります。ワクチンを打っていれば感染しても大丈夫だというところが大事であって、コロナウイルスそのものは無くならないわけですし、感染は蔓延しているんだということを是非ご理解いただいた上で、じゃあ自分はワクチンに対してどういう風に対応してこうかと、個々人で考えていくことが極めて大事だと思います。

山口

インフルエンザでも確かにワクチン打っても、やっぱりかかることありますよね。ただ軽症で済むと。それと似ていますよね。

相澤

そういうことです。おっしゃる通りです。

山口

このワクチンについてなんですが、一方で副反応がどうなのか、ここは気になりますよね。打ちたいという方と、いやちょっと慎重にいたいという方と、色んな意見があると思うんですが、この辺りはどんな風にご覧になってますか。

相澤

まだ副反応がどれくらいあるのかということが分かっていないことが第1点。それと、これまでの経験で、外国製のワクチンが日本に入ってきた場合に、日本という民族の中でどういう副反応が出るか。外国ではそんなに無かったのに日本で打ち始めたら急に出た、という例もありますので、やはりある程度、日本で臨床試験をして、そしてある程度、副反応をしっかりと確かめてから私は始めた方がいいのではないかな。私の個人的な考えですが、そういう風に思っております。

山口

慎重さも求められるということですね。

相澤

はい。

山口

それでは他のワクチンの動きも見ておきたいと思うんです。モデルナ社のワクチンについて、アメリカFDAが有効性94.1%と報告、18日に緊急使用を承認しました。さらに国内のワクチンも塩野義製薬がワクチンの治験開始を発表。2021年末までに3000万人分以上の生産体制の整備を目標としています。木内さんはこの辺りのワクチン開発の動きはどのようにご覧になっていますか。

木内

やはり相澤会長がおっしゃったように、ここで気を抜いてはいけないという感じがまずしますよね。効果についても、問題点についてもまだまだ明らかではないですし、接種を慎重に考える人も依然として日本でも多いということなので、まだまだ戦わなくちゃいけない時間というのは非常に長いわけですから、気を抜かずに個々人も感染回避の行動もしなくちゃいけないし、政府も引き続き対策をしっかりやんなくちゃいけないということなので、光明であることは確かなんですが、逆に悪い方向に行ってしまったら困るなという気がします。

山口

なるほど。小林さん、この辺りのワクチン開発についてはどうご覧になりますか。

小林

皆さんがおっしゃる通りだと思います。必ずしもこれでコロナが解決するわけではないので、やはりコロナと共存しながら、症状を弱めるという効果ぐらいだと考えながら、やや慎重に対応していった方がいいかなという気がします。

■「危機感ない」「社会的、制度的な制限を」

山口

日本全体の感染状況がどうなっているのか、まず木曜日(12月17日)なんですが、過去最多1日で3200人以上の感染者が確認されました。こちらは昨日(12月19日)の1日の感染者数を表しています。昨日も多かったんですね。1日で3017人の感染者が確認されました。重症者が598人となっています。

こちらは全国の昨日の感染者数になるわけですが、赤で塗られているのは、この1週間で過去最多を更新した都道府県です。東北でもそういう場所が沢山ありますし、やっぱり首都圏が多いんです。特に東京は木曜日、過去最多の822人でした。昨日も736人。きょう(12月20日)も日曜日で過去最多を更新したわけです。それから愛知、京都、岡山、広島、高知と、こういうところでもこの1週間で過去最多を更新しています。それではきょう、ここまで分かっている感染者の状況です。上山さんからです。

上山

はい。きょう(12月20日)の全国の感染者数です。まず北海道が135でした。東京では日曜日では過去最多556。そして大阪は251。そして岡山がこの赤字、これまでの過去最多なんですけれども、これは分かっていた工場でのクラスターがさらに拡大したということなんです。ただ一方で、長崎もきょう過去最多だったんですが、これについては特にクラスターがあって増えたというような状況ではないとのことです。相澤さん、お話伺いたいんですけれども、この感染の広がり、やはり都市部だけではなくて地方にも拡大していると思うのですけれども、地方の病院では今、どういった状況があるのでしょうか。

相澤

地方の一番の問題点は、医療資源が少ないということです。ですから、感染症に対する医療提供体制が脆弱、弱いところがありまして、そこに感染症が爆発的に増えますと、もうそこの地域だけではどうしても抑えることはできないんですね。そうしますと、そうでない地域といかに連携をするのか、あるいは場合によっては患者さんに、他の地域に移って頂くというようなことをしながら、今、必死になって対応しているというのが現状だと聞いております。

上山

必死になってやってらっしゃるから、今、維持できているんですね。

相澤

そうです。地方の中小都市で感染症が急激に拡大すると本当に大変な状況になるのは、例えば北海道の旭川であるとか、先日まであった広島市であるとか、そういうことが分かっておりますので、特に地方の中核的な都市での新型コロナウイルスの急速な拡大というのは、医療も急速にひっ迫させているということです。

上山

だから感染者を抑えていかなきゃいけないわけですけれども、そこで、きょうの人の動きというのも見てみたいと思います。東京都では昨日(12月19日)、1週間前と比べて銀座駅周辺で20.1%、渋谷センター街で15,3%、歌舞伎町で4.8%増加。一方で表参道では25.6%減少、六本木も11.2%減少していました。大阪では梅田駅周辺で19.7%、なんばで6.6%増加しています。

そして現在の渋谷の様子です。木内さん、なかなか人出に関しては、本当に減るどころか増えてしまっている状況があるわけですね。

木内

場所によって違うとは思いますけれども、やはり、なかなか危機感がそこまで高まっていないという感じがしますよね。緊急事態宣言が出ていた時の我々が持っていた危機感に比べると、感染者数はそれよりもずっと増えているんですけれども、なかなかそこまでの危機感が出せないということですから、仮に緊急事態宣言が出されたとしても、春のように急激に抑え込むというのはちょっともう難しいところに来ているのかな、という感じが個人的にはしています。

上山

相澤さんはこの人出が増えている状況、年末に向けて抑えたいところなんですけど、やっぱり増えてしまうこの現状はどういう風にご覧なっていますか。

相澤

危機感というものはないと思いますね。これまでのやり方がその個々人のその行動と個々人の考え方に任せてなんとか抑え込もうとしてきたと思うんですが、もうそれでは駄目だというのが今、現状だと思います。そうしますと、社会的な、あるいは制度的な制限をかけない限りは、多分、危機感は生まれてこないんだろうと思っておりまして、もう今それをやって頂かないと、医療はこれ以上持ちこたえることができないというのが現実だと思います。

山口

人出を見ていても、12月の年末に入ってやはり減るような様子がなかなか見えてこない。医療関係者の方がどういう状況なのかというのをちょっと考えていただくことも大事ですよね、いかがですか。

相澤

そうですね。私はそのこともあるんですが、4月頃は、コロナを自分の愛する人、あるいは大切なお父さんお母さん、あるいは大事なおじいさん、おばあさんにうつさないでくれ、だから感染防御するんだ、というのがあったと思うんですが、今は多分、そういう意識はもうほとんど消えてしまっていると思うんですね。私は医療のためというよりも、むしろ本当に自分の家族のために、自分の知っている人々のために、やはり抑えていくということをしなければいけないと思います。私がすごく心配しているのは、PCRの検査を大勢の方がやっておられますよね。若い方々が、僕はコロナマイナスだったから安心なんだと言って、普通に飲食をして普通に行動しているわけです。これ、PCRがマイナスでも偽陰性があるわけですね。ですから、そういうことも知ってほしい。一人一人の意識に頼ってやってきたんですが、それでは駄目だということをやはり私は訴えたいなと思いますね。

■“見えていない水面下の大きなクラスター”の懸念

山口

実際に感染者が今どういう状況になっているのか全国で見てみます。今まさにこの第3波の真っ最中で、第2波からの動きが下がりきらない中で、東京がGotoに追加された。その後、第3波がずっと増えてきたわけですね。このオレンジが重症者になります。ちょうどこのひと月前およそ11月18日の段階で2000人を超えたんですけども、今、もう3000人を超えるレベルにまできてしまっています。都道府県別の感染状況ですが、大阪は前週の比較以外はすべてステージ4の水準。東京も陽性率を除けばステージ3以上。高知、広島も厳しい状況にあるのがわかります。

なぜこれだけ感染が広がっているのか?第3波の特徴の1つがクラスターで。1週間で発生したクラスターの件数ですが、1日から7日では187件だったのが、8日から14日では247件にまで増加しています。アドバイザリーボードの脇田座長は「潜在的なクラスターの存在ということで、なかなかリンクが追えない人が多い。見えないクラスターが感染拡大の一因になっているのでは、という議論があった」。つまり、リスクとして、感知できていない、見えないクラスターがあるんだとおっしゃっているわけですが、小林さん、クラスターが見えにくくなってきていること、どう思いますか。

小林

これは分科会の中でも、この脇田先生や押谷先生達が言われていることですけれども、この病気はですね、多くの人は他の人に感染させない、わずかな人がスーパースプレッダーとして沢山の人に感染させるという特徴があって。そうすると、小さなクラスターがあるだけだったらそれはもう自然消滅してしまうんですね、だから、これだけ感染が広がるということは、どこかに大きな見えないクラスターがあって、その大きなクラスターの見えてきたところが今、沢山の感染例として観測されていると。こういう意味で、見えてない水面下の大きなクラスターが沢山あるんじゃないかと、ということを懸念しているということですね。

山口

そういう実態が出てきているということですよね。それでは、東京の状況を確認します。東京も第3波で感染がどんどん拡大してきています。木曜日に過去最多となる822人でした。きょうも日曜としては過去最多の566人。この紫が重症者の推移になるわけですね。

検査数がどういう風に関係しているのか、そこも押さえてみたいと思うんです。検査数が増えているから増えているんじゃないかという議論もあるかもしれませんが、こういう結果なんです。東京の一週間平均ですけども、昨日(12月19日)は、新規陽性者数1週間平均で592.1人。検査人数が6999人です。1カ月前11月19日の段階ですと新規陽性者数が353.9人。検査人数は5922.6人で、もちろん検査も増えているんですが、割合で見ると陽性者の増え方の方がだいぶ大きいことが分かると思うんです。ですから、検査が増えたから陽性者が増えたというくくりにはなかなか単純にはできない。もっと陽性者が増えている全体的な流れがあることがお分かりいただけるかと思います。そして年齢別を見てみましょう。直近一週間の年齢の内訳ですが、やはりこれは10代・20代・30代、特に20代・30代が多いですよね。ただ一方で50代・60代・70代以上もそれなりを占めて、特に高齢者だけを見てみると、65歳以上の方、6日からの1週間よりも13日からの1週間の方が50人も増えています。

医療機関の状況について、東京都のモニタリング会議では「現在の増加比が継続すると12月31日には医療提供体制の深刻な機能不全や保健所業務への大きな支障の発生が危惧される」と、医療提供体制の警戒レベルを「最も深刻」に引き上げました。東京都医師会の猪口副会長は「緊急性の高い重症患者だけでなく、中等症以上の新規入院患者の入院調整も極めて難航している。医療提供体制側の余力の部分はもう全部使った。とにかく患者を減らすしかない」と、もう限界だと話しています。東京都の病床の状況を見てみると、確保病床が3000床に対して、入院者数が2134人、重症病床は確保しているのが200床に対して重症者は66人となっています。

■“重症者病床”増設の実践例

山口

小林さん、東京都の病床どうご覧になっていますか?

小林

フリップでご説明したいと思うんですけども、昨日、東京医科歯科大学の田中学長から伺った話を簡単にまとめたものなんです。例えば確保病床として今、6つの病床、ICUを用意している病院、あるいは大学病院があるとしましょう。しかし、実際に使えるのは、このうち例えば2床ぐらいしかないんだというのが田中先生がおっしゃることなんですね。どうしてなのかと言いますと、これ見ていただくと、だいたい普通の病院ではですね、ICUがあるとしても、その例えば二つは個室になっていると。残りは大部屋といいますか、空気の流れが途切れてないような状態で4つが置かれていると。そうしますと、個室はコロナの患者さんに使えるので2つは使います。

しかし、残りのどこかで1床は別の病気の患者さん用に置いとかなきゃいけない。

そうしますと、他の3つがもうコロナ用に使えなくなってしまう。感染するリスクがありますから。ということで、この大部屋がそのままだと、結局2つぐらいしかコロナには使えません、こういうことになってしまうわけです。東京医科歯科で何をやったか。夏の8月にゾーニング改修工事というのをやりまして、要するに、この大部屋の中に仕切りの壁を建設して、そして、この片方の部屋は陰圧装置をつけてということでコロナに対応できるようにする。

そうしますと、他の病気の患者さん用に1床、別に用意したとしても、こっち側の2つは、コロナ用に使える。元々使える2つ合わせても倍に増やすことができた。こういうことが東京医科歯科などでやっている。東大でもそうだと。そうしますと、他の東京都内の大学病院や大規模病院で同じようなゾーニング改修をやれば、実は数十床はこれからも増やすことができて、そうすると今、確かに現在1日あたり数百人、あるいは1日あたり1000人ぐらい、新規感染者が出るなら東京の限界だろうとおっしゃっているんですけども、もしゾーニングでICUが増やせるとしたら、倍の2000人ぐらいまでは医療が持つんじゃないか。この病床、当然スタッフもついてますから、一応、人出も含めてですね、手当ができる可能性があるということも、東京医科歯科大学の例からですね、おっしゃっているので、これは是非、国の方でゾーニング工事に対して、例えば補助金を出すとか、早急にやってもらいたいと思うんですね。これは、東京医科歯科大学の例では26床全体あるうち、12床をコロナ用に改修したと。その工事に3週間の時間と1億1000万円の工事費がかかったということですから、決して大きな額ではないというか、東京全体を考えれば大きな額ではない。数十億円を使えば、だいたい数十床のICUが用意できるという可能性があるという話だと思います。

山口

これは確かに早くやった方がいいですよね。

小林

是非やった方がいいと思います。

山口

相澤さんにもぜひ伺いたいんですが、日本病院会はGoToキャンペーンの即刻停止を求める声明を出しました。医療従事者の心身の疲弊が限界なんだということを指摘されているわけです。医療現場ではやはり、医療従事者の方々の体力もメンタルもかなりこの厳しいところにきている面があると思うんですね。この辺りいかがでしょうか。

相澤

そうですね、コロナ感染の患者さんの診療や看護をするのは非常に大変です。自分が感染するのではないかという恐れの下でやらなければなりませんので、防護に関してはもう細心の注意を払ってやるんですね。その防護具の色々なものを脱ぐときも、本当に細心の注意を払ってやらなければならない。それでも家に帰って、もしかすると自分は感染してるんではないかという大変な恐れの中でいる。そうすると、そういうところで働いた職員はそのままもう家に帰れないと言うんですね。家に帰って、もし自分の大切な人にうつしたらどうするんだということで、それも心配で、今度はホテルを病院が借りて、ホテルにその職員にいてもらうというようなことまでするということで、もう体の疲労もそうなんですが、集中力と、それから心の疲労がもう今、限度に近いところまできているということがあります。

山口

そうですね。本当にそのあたりを考えて皆さんもご自身の行動で考えていただければと思います。

■相次ぐ「緊急事態宣言しかない」の声

山口

あと10日ほどで年末になるんですが、感染拡大が止まらない中、緊急事態宣言という言葉も各地で聞かれるようになってきました。まず神奈川県の黒岩知事です。「最近の患者の急増ぶりを見ていて、緊急事態宣言も視野に入れざるを得ない。そんな実感を覚えている」と話したんですね。それから東京都の幹部です。「感染者を減らせる要因があまり残っていない。もう緊急事態宣言しかないのではないか」。一方で慎重な意見も出ています。まず大阪府の吉村知事です。「現時点では緊急事態宣言にならないようにする対策をとるべき時期と思っている。暮らしを止める側面もあるので、そこは最後の手段でなければならない」。それから西村経済再生担当大臣です。「緊急事態宣言を出すような状況を避けるためにも、事業者や国民のご協力を改めてお願いしたい」と話しました。まず木内さん。この緊急事態宣言、木内さんはどのように考えていらっしゃいますか。

木内

もちろん今後の感染の拡大ペース次第だと思いますけども、早ければ年内にも、と私は思っているんですけども。ただ緊急事態宣言はですね、出しても多分、春のような効き方にはならないんじゃないかなと思うので、そうすると多分、特措法を改正して、緊急事態宣言を出した時に、もっと強制力を持った措置をですね、来年度の通常国会になっちゃいますけども、やはり考える必要があって、その時は一気に全部出すんじゃなくて、やはり、何段階かで許可できるような、そういう仕組みを作っておいて状況を見ながらですね、小出しではないんですけども、段階的にやはり強化していくと、最終的にはかなり強制力を持つようなところまでですね、本質としては、伸びしろをとっておくような形が必要なのかなと思います。

山口

なるほど、実行力を担保しとかなきゃいけないわけですよね。とはいえ、改めて確認なんですが、今、4つのステージが用意されていて、ステージ4になると緊急事態宣言が発令される、そういう段階になっています。先週もお伝えしましたが、この分科会でステージ3をさらに3つに分けてシナリオ1、2、3と分ける。特にこのシナリオ3の段階ですと、様々な対策が厳しくなってくるわけですね。例えば、この時間短縮を前倒しするとか、それから、県境を越えた移動を自粛する。かなり、この厳しい措置も取られるようになってくる。このつまりステージ3のシナリオ3というのが、ある意味、こういうのが出されることによって緊急事態宣言に至る前の、最後の砦のようなそういう扱いになるかと思うんですが、この辺りは小林さんどのように今認識してらっしゃいますか。

小林

今、まさにそのシナリオ3の感染拡大状況になってきているので、そこは強い措置をやるべきだろうと思いますね。私個人的な意見ですけれども、やはり感染を抑え込んで、春の緊急事態宣言の後の、要するに、5月6月ぐらいのところまで感染を抑え込むとクラスター対策でクラスターを潰していくことができるということなので、ただあの時は、夜の街対策がうまく回らなかった。これは法的なその権限とかいうものは、少し足りなかったと思いますので、そこは法改正をしてその強い権限の下でクラスター対策をするという形が整えば、年明け、春以降の感染押さえ込みながら経済も正常化させていくということがシナリオとしてかけるんじゃないかなと、より個人的には思っております。

山口

法改正というのは具体的にどういうことですか。

小林

やはり知事の権限を強化する。あるいはその色々なその営業自粛とか時間の短縮とか、そうしたことに対する強制力をつけるとか、あるいは接触者調査に対してその協力を義務化するとかですね、いくつか強い権限というのが知事に与えるということが、私個人としては必要になってくるんだろうと思います。

山口

分科会として、すぐやるべきことなんだと思いますか。

小林

分科会はまだちょっと法律のことについては意見がまとまっていないんですけども、とにかく20代から50代の若い世代の行動が変わらないと、この感染というのは広がっていく。ですので、そこで20代から50代の世代に対するメッセージをどうやってしっかり心に届くメッセージを出すかっていうことが今、非常に重要な政府や分科会がやるべき大きな課題になってくるというふうに思います。

■「政府は国民に強いメッセージを!!」

上山

小林さん。そういった意味では振り返ってみますと、例えば、今週は菅総理の8人程度の会食とか、西村大臣も一律にそれに対して5人以上は別にダメではないと言ったり、分科会は一生懸命、呼びかけているんですけれども、何かそれに食い違うような言動というのも出てきているんです。小林さんとしては、その若者に対するメッセージも含め、政府は年末に向けて、どんなメッセージを出してほしいとお考えですか。

小林

やはり若い人も皆が、国民皆がすぐに理解できる、わかりやすい数値目標のようなもの。例えば、その接触は6割あるいは5割削減しましょうとか、あるいは外食する場合は食事は5人までとか4人までという、何か明確な数字を出して、わかりやすく国民に伝えていただくということが大事なんじゃないかという風に思いますね。

山口

相澤さんはいかがでしょうか。あの政府に対して、この年末に向けてどんなメッセージ出してほしいかいかがですか。

相澤

今、政府は明確なメッセージを私は出していないと思っています。4月の頃のような人との接触を8割やめなさいとか、あるいは、もう会社に来るのはなるべくやめてテレワークでやれといったメッセージは今、私は全く出てないのではないかなと思ってます。それをきちんとまず出すこと。それが大事だと思いますし、出した限りは政府がきちんと自分たちもそれをやると、自分の背中を見せて「どうだ」と国民に言う。そういう強い姿勢を持って頂きたいなと私は思っています。これはどこかの会議が言ったのではダメなんです。国が政府として強いメッセージを、そして具体的なメッセージを出さなきゃいけない。これは、僕は明白だと思うんですね。 きょうにも出して頂いきたいと思います。

山口

言葉と行動ですよね。そして年末年始、各医療機関、非常に不安を抱えているわけです。栃木県の足利赤十字病院の小松本院長は「地域で唯一500床規模の中核病院なので、コロナ患者だけではなく、それ以外の患者も全面的に診なければいけない。年末年始は内科系、外科系の当直を普段通りやりつつ、全科オンコール(待機)で担当の科が出勤するような体制を固めている」。そして大阪府の森ノ宮病院の大道院長は「我々の病院は、医師を何人か増やして対応するとは言っても、空のベッドを増やしても、スタッフがついてこなければ全く機能しないから限界がある。あとは、何とか休みが明けて普通の診療をするまで、つなげるかどうかが勝負かなと、結構、綱渡りをするような気がする」としています。相澤さん年末年始の医療体制、どのようにお考えですか?

相澤

医療の大変さは、コロナ感染の対策だけをすればいいというわけではないんですね。通常きちんと守らなければいけない医療、その中でも緊急に治療を必要とする医療を守らなければいけないです。感染症に対応していたために、こちらの医療ができなくなると、これは非常に大変な状況になるわけで、そこのバランスをどう取っていくのかというのは、年末にやっている病院が普段の外来や手術、そういうのは減らして対応しようとしているんですが、本当にそれで間に合うのかどうかということが多分、一番皆さん心配されているんだろうと思います。

山口

全国の病院は、年末年始、当然休むところも皆さん大変ですから出てくると思うんですけれども、その体制というのはどうなりそうですか。

相澤

多分、地域で病院が役割分担をしてなんとか、その医療を守っていけるように地域ごとに、今、話し合いをしていると私は聞いています。ですから、その話し合いで、この地域を面で病院がきちんと守っていくと。そういうことを構築して、年末は、そこでなんとか凌ぐということしか今、方法がないんだろうと思います。

山口

小林さんは今、一番訴えたいこと、いかがでしょうか。

小林

やはり医療の提供体制をまず財政支援をより拡充してより広げていくということ。そしてやはり、今はどうしてもその感染者を減らすしかないという、そういう時期になってしまいましたので、そこはある程度、強いメッセージを国から国民に、明確な強いメッセージを出すということが必要なんだろうというに思いますね。

山口

年末に向けてしっかりと政府も対応をとっていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

(2020年12月20日放送)