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#157

感染力が強い「変異種」 日本の検疫でも確認 その正体は!?

ロンドンで感染急拡大を起こした、新型コロナウイルスの「変異種」。日本の検疫でも相次いで感染者が確認されています。この「変異種」の脅威とは!? 2000年12月27日の『BS朝日 日曜スクープ』は、海外からの「変異種」に、どのようなリスクがあるのか、最新情報を特集しました。

■ワクチンの優先接種は3段階で

山口

感染拡大を未だに止めることができない中、感染力が強い「変異種」の感染者が都内で確認されました。この「変異種」が感染拡大を加速させてしまう恐れがあるのか、詳しくひも解いていきます。では本日のゲストを紹介します。医学博士で白鷗大学教授・岡田晴恵さんです。よろしくお願いします。

岡田

よろしくお願いします。

山口

そしてもう1人、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバー・東京財団政策研究所・研究主幹小林慶一郎さんです。よろしくお願いします。

小林

よろしくお願いします。

山口

日本国内のワクチン接種についての動きです。厚労省の審議会で優先接種の対象を3段階に分ける方法が了承されました。最初に医療従事者、約400万人。続いて65歳以上の高齢者約3600万人。3番目が基礎疾患のある人約820万人と、高齢者施設等の職員ら200万人です。合わせて5000万人が優先的に接種を受けます。具体的には医療従事者への接種は早ければ2月から開始されます。そしてこの3番目の基礎疾患のある人ですが、対象は呼吸器、心臓、腎臓などの13種類の病気の人と、肥満度を示すBMIが30以上の人などです。妊婦については「ワクチンの安全性などが現時点で明らかではない」として、接種するかどうかも含め、今後決定ということです。岡田さん、ワクチン接種のこの方針どうご覧になりますか?

岡田

まずはこのワクチンは、発症もしくは重症化阻止なのではないかと。感染阻止ができるかどうか。重症化阻止とすると、やはり高齢者への接種を考える、また、基礎疾患のある人ですね。ハイリスク者を対象にということで、この人たちに優先順位がつくのは当然であろうと思います。医療従事者には、感染阻止ができるワクチンであれば、なお良いですが。ただし、これは新しいワクチンですね、メッセンジャーRNAやウイルスベクターをつかったワクチンです。どれだけ有効性があり、どんな副反応があるか未知の部分があまりに多い。生ワクチンや不活化ワクチンという、経験値の高い手法ではないわけですから、安全性も確認をよくよくしたい。mRNAワクチンは遺伝子と一緒に化学薬品も使っているのではないか、アレルギーは大丈夫か?ガス滅菌などのステップもあるのではないかとか。アデノウイルスベクターならば、アデノウイルスは50くらい型がありますが、このワクチンを打った場合、このアデノウイルスベクターを使った他のワクチンは接種して有効性があるのか?アデノウイルスには交差反応も当然あると思いますし。など、解決したい、納得したい点もあります。安全性と有効性の検証においては、今、海外で接種が広範囲で始まっていますので、その数十万人単位以上のデータを見ながら副反応と有効性、抗体上昇、液性免疫、キラーT細胞、細胞性免疫の誘導など、またその期間を確認しながら、順次行っていくことが必要です。想定外の副反応も怖いですから、しっかりやっていくことだと思います。また、長期的には、ワクチン接種者がこの新型コロナウイルスなどコロナウイルスに再感染を起こしたときの安全性です。抗体免疫増強反応の確認です。コロナウイルスの細胞のレセプターに結合するSタンパクをターゲットにワクチンを設計しているはずです。そのバインディングサイトの中でADE抗体免疫増強反応を起こしやすい部位はカットされているとは推察しますが、そのワクチン設計の詳細は公開されていませんので、長期的にも確認していく。ワクチンで獲得した免疫が時間経過で減衰、2年後3年後のスパンで低下したときに、コロナウイルスに暴露されたときにどうか?一番怖いのは、このときに若い人が肺炎を起こしたりすることです。接種直後の副反応だけでないのが、このコロナウイルスのワクチン問題にはあると思います。

山口

そして世界ではワクチンを巡ってこのようなことが起きています。8日、韓国政府は国民の85%にあたる4400万人分のワクチンを確保し、来年2月から3月に接種を始めると発表しました。しかし、実際に契約が完了していたのはアストラゼネカの1000万人分だけと判明。最近になって12月24日、ファイザーなど2社と1600万人分を契約。しかしファイザー社のワクチンは接種できるのが早くて来年の7月以降だということで、「足りない」「遅い」と国民の不満が高まっているんです。政府の担当者は「ワクチンを世界で初めて接種するような状況はできるだけ避けるべきで、ワクチンを先に接種した国で発生する問題を1、2カ月観察する機会が得られたという点は非常に幸いだ」と、先にワクチンを接種した国の様子をみて摂取できるとアピールしたんですが、韓国メディアは「K防疫を過信しワクチン確保が遅れた」と政府を批判しています。片山さん、各国政府は、どこまで先を見て行動できるか、問われていますね。

片山

先を見るということは重要ですね。韓国では、ワクチンはいらないんじゃないかと、K防疫できちんとやって世界に範を示すと、取り敢えず抑え込みに成功したわけですよね。だから、それをちょっと過信してワクチンなんか要らないんじゃないかと思っていたのかもしれません。それにしても、どうして契約をちゃんとしてないのに、あたかもしているかのように国民に知らせるのか、そこのところがとっても不思議ですよね。不信感を増幅させるばかりですね。やはり正直に言われたほうがいいと思います。

■アビガン見送り「自宅療養のラストカードが…」

山口

そして、治療薬についてもこの1週間、動きがありました。すでに治療で使われていたシクレソニド、ぜんそくの治療薬ですが、国立国際医療研究センターは全国21か所の医療機関の新型コロナ患者に投与する臨床研究を実施しましたものの、有効性は示されなかったと明らかにしました。さらに、治療で積極的に使われたアビガンについて、10月、厚労省に新型コロナの治療薬として製造・販売の承認を申請がなされていましたが、現時点で得られたデータから有効性を明確に判断することは困難として、承認が見送られました。岡田さん、この判断、どうご覧になりますか?

岡田

現時点で得られたデータからということですね。W盲検(治検方法の一つ)ができなかった。倫理的にはそうかもしれません。日本では入院されて治療を受けている人は、ほとんどの人がアビガンを飲んでいる。日本では偽薬を使う二重盲検がなかなか出来なかったということもあると思いますすけども、それならば、先を見てやるということならば、海外でこの治験をやることもできたんではないかと。やはり先を、この冬の流行を想定して、対策を考える、状況を判断するならば、アビガンの承認問題の可否は結論を出せる状況にすべきだった。今後、感染者数、つまり患者数が爆発的に増えます。初めて日本で、市中感染が連鎖している状況になっての新型コロナウイルスと対峙する冬になる。感染者が激増すると連動してそうすると、一定の割合で重症の方も増えてくる可能性が極めて高いと想定すべき。ベッドはもう数が決まっている。医療従事者も増やせない。そういう中では、重症化させない、中等症以上にさせない、入院できないなら、医療崩壊を起こさないなら、重症化させない、自宅療養に留めるという政策、軽症で終わらせるということがすごく大事なわけです。その場合にアビガンは、「検査結果、陽性です、あなたは。あなたはハイリスクですね」「基礎疾患ありますね」「高齢ですね、じゃあこの薬を自宅から飲んでください」ということで、自宅で治療が開始できたはずなんですね。アビガンはタミフルと同じで、早期から飲ませないとダメです。ウイルスが増えきる前に服薬を始めることが勘所です。しかし、現時点で得られたデータが不十分でということで、ペンディングになった。この冬に間に合わなかった。十分に検証したけれども効かなかったということとは違うわけです。やはり、国民の自宅療養からの治療開始という、極めて大事なラストカードがこういう形で終わってしまったというのは非常に…、やれることは他にあったのではないかというふうに思っております。国民の生命のために、尽くせる手を尽くしていただきたかった。日本は高齢化社会で、このウイルスには特に手ごわい国だったはずです。アビガンの高齢者、ハイリスク者への限定承認を、再度検討をお願いしたい。でないと、この冬季のコロナウイルスの流行は乗り切れないと想定します。最悪の事態を想定し、健康被害を最小限度に抑える対策こそが、感染症流行、パンデミック対策の原理原則です。

■英国型と南アフリカ型の「変異種」

山口

そして今、最も注目が集まっている「変異種」です。後ほど詳しくお伝えしますが、日本でも「変異種」の感染者が確認されています。今、世界中が注目しているのがこの2つの「変異種」です。1つがイギリスで発見されたもの。もう1つが南アフリカで発見されたものです。まずイギリスでの「変異種」は9月20日、イギリス南部のケント州で初めて確認されました。そして、その存在が世界に周知されたのは、12月14日、イギリス・ハンコック保健相が下院で「変異したウイルスが飛躍的に拡大しており、一刻の猶予も許せない状況だ」と語ったことでした。その後、19日にジョンソン首相がロックダウンを表明しました。一方、南アフリカ型は10月半ばに発見。今月18日、南アフリカのムキゼ保健相が「現在の第2波はこの変異種により引き起こされている公算が大きいことを示す証拠が得られている」と明らかにしました。それぞれの国で、「変異種」が大きな問題となっています。特徴としてはイギリス型は感染力が71%強い、これは英政府の発表です。さらにロンドン大学も感染力が56%強いとしています。一方、南アフリカ型は感染力が強い、さらに若者でも重症化する可能性がある、証拠はありませんが、こうしたことが指摘されています。中国の武漢から広がったウイルスと何が違うのか?さらに詳しく見てみると、イギリス型では23箇所の変異があるということです。その中で、特に注目されている変異が2つあります。1つが「N501Yという変異」。これがあると人間の細胞にくっつきやすくなる可能性があると指摘されています。つまり感染しやすくなる恐れがある。さらに「HV69-70が欠失するという変異」。これがあると、実験では、感染力が2倍になり、さらに回復した血液から取った抗体の攻撃力を弱める可能性があるという指摘があります。つまり、私たちの免疫が効きにくくなる可能性があるということです。一方、南アフリカ型は、やはり「N501Yの変異」。これが南アフリカ型にもあるということです。さらに「E484Kの変異」。これは南アフリカ以外では0.02%未満しかない変異で、感染力を強めると強く懸念していると、南アフリカの疫学者・オリベイラ教授は話しています。そして、イギリス型にはあった「HV69-70の欠失はない」ということです。一言で「変異種」といっても、イギリス型と南アフリカ型で異なっていて、そして、どちらもワクチンが効くか不明だということです。岡田さん、2つの変異でどこに注目していますか?

岡田

まずN501Yって、これは何?っていう話になると思うんですけど、アミノ酸がずらっと並んでいるのが501番目ってことなんですね。これがアスパラギンからチロシンに変わっているってことです。HV69-70が欠失というのは何かって言ったら69番目と70番目のヒスチジンとバリンが欠失しているっていうことですね。ウイルスというのは変異を繰り返していくもので、変異が起こって当たり前なんですね。その変異はアトランダムに起こってくるんですけども、その中でも感染力が強かったり、ウイルスの増殖力が強い変異をたまたま起こしたウイルスが主流になって残って、それが主流、トレンドになって、他のウイルスが淘汰されていくんですね。この501っていうところは、ちょうど400番台、500番台前半ぐらいのアミノ酸っていうのは、ウイルスが細胞表面のレセプターにくっつくスパイクタンパクの結合する部分をコードしてるのです。この501番目がこうなると結合する力が強くなることがすでにわかっている。それから69番目と70番目が欠失すると、私たちの抗体の効きが悪くなる。これ免疫不全の患者さんのデータで、もう報告されているですね。尚且つ、69番目と70番目が欠失すると、スパイクタンパクの結合部位のところにどうやらリンクして変異していくっていう、二重の嫌な点も指摘されているのです。ですからここをターゲットに狙って見ていると、どうもそういうものが出てきて、そういうものが主流になっているのが南アフリカの変異株ですし、イギリスの変異も共通部分がある。。これが広がっていくと困る。そして一個のアミノ酸でも変わるだけでも、立体構造が変わってウイルスが細胞にくっつくときの結合力が強くなることがある。たった一個でも性質が変化しうる。これが嫌なところなんだと。現在、ワクチンが効くかどうかは不明と、ここは確かめてもらわなきゃいけないんです。大流行を起こすとウイルスも遺伝子が読まれる分、エラーが起こって変異ウイルスが出やすくなる。パンデミック状態ですから、変異ウイルスは覚悟しないといけない。

山口

岡田さん、死者とか重症者が増えるんじゃないか、強毒性というところになると思いますが、ここはどうなんですか ?

岡田

まず一つ、大事なことは感染力が強くなった。それから基本再生産数がちょっと0.4ぐらい上がると言われる。ただ毒性だとか病原性が強くなったってことは報告されていない。ただ、大事なことは、感染力が強くなったっていうことは、私たちが同じような感染予防していたらかかりやすくなるわけですよね。そういう場合には患者さんが増えるわけですね。そうすると同じような割合で、もしかすると重症者も病原性が変わってないなら増えると。そしたら医療の間口は一緒ですから医療の負担が増えると。なかなか診てもらえない。患者さんが増えればそうなる。入院もできないかもしれない。そうなると必然的に医療が受けられなければ重症化する人や亡くなる人が増えていくと思われる。だから、医療体制確保、その前に検査体制の充実、無症状のキャリアを含めてコントロールしないと感染者数は減らせない。。病原性が下がってくるならいいんですけど、そういうことは現段階では言ってないわけです。同じでも感染力が増せば患者が増える。患者が増えることが問題だということだと思います。この冬をどう乗り切るのか、真剣に考えないといけない。これは春から言っている同じことですが。コロナウイルスは冬に流行るウイルスですから、四季のある温帯地方では。夏には感染者は減るけれど、ゼロにはならない。冬に急カーブで増える。

■感染力が強い「変異種」  英国で起きたこと

山口

まさに感染力が強いということが今の日本、ただでさえ病床が逼迫する中で大変な状況を迎えています。いま岡田さんからもお話し合ったんですけど、そもそもウイルスの変異は珍しくはないわけです。上山さん。

上山

これまでにイギリスでは新型コロナウイルスの4000もの変異が見つかっています。ただ、ほとんどは大きな影響を与えるものではなかったということです。一方、性質を変えるような変異もすでに見つかっていて、「D614Gという変異」は2月に出現し、現在世界中に広がっています。今、世界に広がっているのは、中国・武漢のウイルスではなくこの「変異種」とされています。さらに「A222Vという変異」ではスペインで夏休みに出現し、ヨーロッパ全体に広がったとされています。岡田さん、変異はパンデミックの対策として想定することなんでしょうか?

岡田

ウイルスは遺伝子が読まれればそれだけエラーがおこるのです。だから、感染者が増えれば変異が起こってくるのは当たり前ですよね。ですから原理原則というのは感染者を増やさないということだと思うんですね。ですから中国の成功例というのは本当に無症状もいるんだよと。ですから徹底的に検査をやって早期に封じ込めをやって、そして感染者そのものを抑えて、流行をコントロール、抑えるという対策が有効。大流行して、ウイルスも変異が出てくるっていうようなことになってくると、いろんなファクター、問題が出てくると。感染症は早く、強く、短く対策を打つ、そういう事だと思います。遅く、緩く、すると流行が大きく、長引く、そうなる。経済への打撃が大きくなる。そういうことです。

上山

なるほど。ということは小林さん、日本の分科会でもやはりこの変異というのはかなり意識されているという事でしょうか?

小林

感染症の専門家の皆さんの中では大変意識されていると思いますね、特にこういう感染力が非常に大きく増えるというような変異については、これまでの感染対策がかなり効かなくなってしまう。そういう意味でゲームチェンジャーになってしまうかもしれないという、そういう懸念を抱いている方もいらっしゃるので、やるべき事は今まで通り手洗いして距離を取ってという事以外にないわけですけど、ただ感染対策の強さというか度合いをもっと大きく厳しくしないと、今まで通りにやってたのでは感染の拡大が防げなくなると。そういう意味では状況が全くガラッと変わってしまう可能性があると、そういう危機感というのは今非常に高まっています。

山口

それではですね感染力が強いっていうのが特徴になるわけですが、このイギリス型で感染力がどのくらい強いのか見ていきます。こちらロンドンの感染者のグラフですが青が従来の新型コロナウイルス。オレンジが変異種です。9月に発見され、11月には感染者全体の4分の1。12月には3分の2と、従来のウイルスにとってかわるような勢いで感染が増えています。さらにこちらをご覧ください。

上山

こちらはイギリスの地域別の10万人あたりの感染者数を表した地図です。12月21日時点のものですが、濃い青、紫になるほど感染者が多いのですが、感染が南東部のロンドン周辺に新規感染者が集中しているのがわかります。さらにグラフでみますと、11月5日からのロックダウンが終わった12月2日から、ロンドンで感染が一気に拡大しているのがわかります。このロンドンの新規感染者の6割以上が変異種だったんです。

山口

すごい伸びを示しているわけですが、具体的な感染力についてジョンソン首相は、実効再生産数を0.4ポイント引き上げる可能性があると示しています。これがどういうことなのか?まず実効再生産数が1.1の場合、これは12月3日ごろの東京の状況ですが、感染者は100人が110人になり、110人が121人になる。このように増えていきます。これがもし「変異種」で実効再生産数が0.4プラスされ1.5となります。すると100人が150人になり、150人が225人になる。だいたい2度感染が伝わると、だいたい倍くらい感染者数が増えるということになります。

片山さん、イギリスでは12月2日までのロックダウンで新規感染者が約30%減ったのに、解除した途端、一気に増えた。その原因が「変異種」だったわけです。ジョンソン首相の会見から「変異種」への危機感を感じましたね。

片山

それはもう当然ですよね。そんなに感染力が強くなれば今までやっていたことをかなり変えなければいけませんよね。もう一つはですね、イギリスでジョンソン首相が危機感を表明された後ですね、ちょっと日本は対応が遅かったのではないのかなと。直ちに水際対策をどう変えようかとか、そういう事はやってしかるべきだったと思うんですが、それから1週間ぐらい間が開きましたよね。ちょっと緊張感が足りなかったのかなという懸念をもっています。

■日本でも「変異種」確認 検疫さらにパイロットも

山口

日本でも変異種があいついで発見されました。おととい、5人の感染が確認されました。18日~21日にイギリスから到着して空港検疫で感染が判明、羽田空港2人、関西空港3人、4人が無症状、1人が倦怠感があるということです。さらに昨日、2人の「変異種」への感染が確認されました。この2人は、場所が空港ではなく、東京都内です。東京都内在住のパイロットの男性で、16日にイギリスから帰国。21日に咳や頭痛の症状があり、23日には濃厚接触者の女性が咳、頭痛、倦怠感を訴えました。そして24日、2人とも入院したということです。入国してから入院まで8日間、どのような行動をとっていたのか、非常に気になりますが、不特定多数との接触はないということです。

国立感染症研究所の脇田所長は「変異株の症例が今後も増えてくる可能性はある」ということです。岡田さん、日本で「変異種」が広がっている可能性、どう推測されていますか?

岡田

当然増えてきます。というのは実効再生産数のずれを見ていただければわかるように、圧倒的に増えるのが速いわけですね。そうすると旧来の株を駆逐してこっちの株の方が増えてくるっていうことは十分にあるわけです。イギリスのロンドンがそのようになっていますね赤いラインで。

ですから今後は増えてくるだろうと。ただ、今後の流行を変異株のせいにだけはしない方がいいと思うんですね。ですから乾燥と低温の普及だという、いわゆるウイルスの伝播しやすい長生きする環境があるわけですね。そして、そもそも市中感染率が上がってしまっている、これは変異株ではなくとも。プラス変異株なんだということと、すでに10月11月12月とイギリスから変異株が出てから期間がある訳ですけど、その間、入国緩和ということもありましたので、だからもうこういう変異株が入って来ていてもおかしくはないと。それが主流になるかどうか可能性はあるというのは所長がいう通りだと思っております。

山口

日本では28日から来年の1月末までの全世界から外国人の新規入国を拒否することが決まりました。これまで行われてきた水際対策ですが、イギリスからは4月3日、新規入国禁止。南アフリカからは5月27日、新規入国禁止にしていました。ただし10月1日から、防疫措置を確保できる受け入れ企業・団体がいることを条件として、原則全ての国、地域からの新規入国を許可していました。つまり10月1日からは、イギリス、南アフリカからビジネスなどでは入国できる状況でした。ではどのような対策がとられていたのか? 入国時の検疫は抗原検査、陽性の場合はPCRで再検査を行います。さらに陰性であっても入国した次の日から数えて14日間、検疫所長が指定する場所で待機することが決められていました。ただし11月1日からは「日本人及び在留資格保持者を対象に、全ての国・地域への短期出張からの帰国・再入国時に、防疫措置を確約できる受け入れ企業・団体がいることを条件に14日間待機を緩和」していました。日本人や在留資格があれば11月からは14日間、待機しなくても入国できるようになっていました。「変異種」が出始めた時期と重なっています。今回、都内で感染が確認されたパイロットの男性は入国時に検査を受けていませんでした。なぜなら、パイロットは帰国後に健康観察などを行うことを条件に、空港検疫での検査の対象外となっていたということです。岡田さん、ただパイロットや乗務員は感染リスクが低いわけではないですよね?

岡田

そうだったんだというところなんですけども、これは航空会社としてやはり自前で検査できますので、それをルーチン化して定期的に課していくという事をしていたんじゃないかと思うんですけども。しないといけなかったはずです。

山口

なぜパイロットが免除になっているか、国土交通省の下、航空機の運航乗務員は公共交通機関の航空便の運航に支障が出ないように、航空会社の責任において海外での行動制限や帰国時の監察経過等の一定の条件を前提に、空港検疫の対象外となっていたということです。片山さん、仕方ないということになるのでしょうか?

片山

やはりパイロットなどを同じように扱うのは無理があると思うんですね。みんなと一緒に14日間待機ですよとなったら飛行機の運航できなくなりますから。だから特例は当然あっていいと思うんです。このたび明らかになったのは、ちゃんと自主検査って言いますかね、航空会社での検査がちゃんとできていたのかどうか。今もこれを教訓にして検査体制のチェックのようなことを国としては考えられたらいいと思います。

山口

この方の場合は、空港通り抜けて都内で体調悪くなって分かったっていう経緯ですからね。

■「変異種」食い止めるためには…

上山

政府が昨日決定した来年1月末までの全世界からの外国人の新規入国拒否なんですが、この11の国と地域について短期滞在者を2週間待機免除で受け入れ、さらに駐在員や技能実習生などの中長期滞在者は2週間待機付きで受け入れるという枠組みについて維持することになっています。ただ、シンガポールや香港では「変異種」の感染者が確認されています。小林さん、正直なところ大丈夫なのかなと思ったりもするんですけど、どういう風にお考えですか。

小林

私も同じように思いますね。要するに政府の危機への対応の仕方が少し現状維持にややバイアスがかかっているという感じを受けます。このケースもそうですけど、シンガポールとか中国とこれ二国間で協定になっているので、すぐには日本の判断だけで閉じる、やめるって事は出来ないと、そういう事情はあるんですけれども、それだったらすぐにシンガポールと今すぐ交渉始めればいいと思うんですが、まず様子を見ようということになってしまっていると。これは23日に分科会があってですね、あの時は、今のように、明日から全世界を対象に入国拒否するとなっていなくて、24日からイギリスだけを対象に入国拒否をしようという話が分科会で議論されたんです。その時にも他の地域オーストラリアとかヨーロッパでも他の国でもすでに変異株の感染者が出ているというニュースが流れている、確認されていたわけです。感染研で確認されていたんですけれども、そこに対してはとりあえず様子を見ましょうという、そういう議論になってしまったと。なかなか今の政府の水際の危機に対する止め方というんですかね、やや甘いなと。本来であれば、まず全部止めて、その後、様子を見て徐々に緩和していくのが多分、水際の正しい対処の仕方だと思うんです。今のところ止めないでまず様子を見て、それからもし危なかったら追加で止めていこうと、こういうやり方になっているので、ここは是非、政府の姿勢として変えてもらいたいと思います。

政府は、11の国と地域を対象に入国の要件を緩和する「ビジネストラック」「レジデンストラック」について、1月14日午前0時から緊急事態宣言の解除まで停止しました。

山口

そして先ほど片山さんからご指摘あった、この時間軸のことを考えてみたいんですけれども、 イギリスの変異種に注目が集まったのが今月14日のハンコック保健相の発言です。日本政府が対策を示したのが23日。この間にイギリスの専門家と連絡を取り合っていれば、もうちょっと早くイギリスに対しても水際対策を強化できたかもしれない。この辺り、片山さんいかがですか。

片山

政府がイギリスとどういう連絡を取り合っていたのかいなかったか分かりませんが、私は一つ気になりますのは、第1波の時に、その中国武漢由来のウイルスではなくてヨーロッパから持ち込まれたウイルスが随分拡大した。そういう話がありましたよね。これはやはり水際対策の一つの失敗ですから、教訓とすべきですよね。その反省に基づけば、今回はより迅速に対応して良かったと思うんです。ちょっと気になりますのは、一昔前から忖度ということが言われているじゃないですか。やはり官僚の皆さんの間には今も忖度があると思います。そうしますと、菅内閣では経済優先だということが自ずとわかる。すると、こういう水際対策を強化しようなんて話を官邸に持ち上げると、せっかくビジネスの人たちの往来を緩和してきているのに水を差すと言われかねない。ちょっとまずいかな、それなら言うのをやめておこうと。もしそういう忖度があったとしたらとんでもないことなんですよね。そういうことはないようにぜひそこは点検していただきたい。これは上に立つ人が、もう忖度なんかいらないから必要なことはどんどん言ってくれと、いう姿勢をやはり示されるべきだと思いますよね。

山口

確かに今、危機の時期ですからね。それでは。国内での「変異種」をどうとらえるか、日本ではウイルスの遺伝子解析が行われている症例は全体の1割程度です。これはイギリスと同じ水準です。こうした分析の結果、12月22日段階でN501Y変異株は未検出でした。つまり、感染しやすい「N501Yという変異」があるイギリス型、南アフリカ型どちらの「変異種」もこの時点では見つかっていなかったということです。岡田さん、国内でこの「変異種」を食い止めることは可能でしょうか?

岡田

テクニカルの問題としては一定の部位だけを見ているだけでしょうけれども、非常に難しいと思いますので、1割程度っていうのは現実的にはラボ的にはこのくらいだろうと思うんですね。ただ例えば、ロンドンでの変異種の割合のグラフを先ほど山口さん、示ししてくださいましたけども、12月の初旬の頃ではかなりの部分が赤い部分が占めているわけですよね、この段階で科学研究者の間では、このウイルス株は感染力が強いんだということは、もう既知の情報としてあったと思うんですね。ですからジョンソン首相が言う前にこれは察知して、早めに水際の入国緩和をどうするかとか、規制をどうするか、対策はとれたのではないかと。未検出であったけれども、ないということではなくて、全部を見つけることはできないし、結局、私たちが今、何をできるかって言ったら、変異株だけではなくて従来の株でもいいから、とにかく感染するのを予防していくっていうことが大事なことだと思うんです。それしかない状況になっている。医療を守るためにも。

山口

そうですね。小林さん、ちなみに分科会に対しては国立感染症研究所からこうしたゲノム分析ですねこれを増やしてほしいという話はきているんですか。

小林

各地方自治体からですね、データ、そういう検体が感染研の方に送られてきてないという問題が今あります。今、忙しすぎるので、なかなか現場の都道府県から送られてこない。そこはちゃんと送ってもらって分析をしなければ感染対策を上手作れないので、そこはこれから強化していこうという話は出ています。

■“大都市から染み出し”感染拡大

山口

日本全国で感染が今どんどん拡大しているわけですね、そこをしっかり見てきたいと思います。まずこれは昨日の全国の感染者数なんですが、昨日で3880人これまた過去最多を4日連続で更新しました。重症者も昨日の段階で654人、今日さらに5人増えて659人になったということですね。そして、赤ベースになっているところは今週一週間で過去最多になったところ。特に東京が949人になりました。神奈川も480人。24日に495人が感染したということになるわけです。そして気になります今日の感染者の状況は上山さんからです。

上山

はい。こちらの日本地図でまとめました。今日の感染者の数です。北海道は85。そして東京が708。今日は過去最多という赤字のところが実はなかったんです。ただ、東京については先週の同じ曜日より多いという状況です。さらに愛知で216。大阪で233。などとなっている状況があるんですけども、小林さん、こういった地方の感染の広がり、分科会ではどういう風にウォッチしているのでしょうか。

小林

分科会の感染症専門家は、やはり東京や大阪のような大都市圏からの染み出しと言うか、やはりそこからあふれ出してると。東京からの人が地方に行ってそこで飲食などで感染が広がっているんだろうと。こういうような見方をしていますので、やはり大都市部での感染の押さえ込みというのが一番重要だということで、そういう意味で東京での営業時間の短縮を今22時までですけど、それをできれば21時とかで20時早い時間にしてもらって、夜の会食を全面的、全般的に減らしてもらおうと。そのためには、これから出てくる特措法の改正の話もありますし、その前にやれることとしては、その協力金をしっかり支払うと。多分、都道府県の財政も今、厳しくなってますから、その国が財政支援を自治体にやってその協力金を払う。あるいは増額。今、足りなければさらに増額して支払うと。そういう形で時短の営業に協力してもらえる。そういうお店を増やしていくと、これが重要だというふうに考えているところです。

山口

日別の新規の感染者数、確認しておきます。「勝負の3週間」「GoToトラベルの停止」の後も、増加し続けています。重症者も増え続けています。

重症者について、埼玉医科大学総合医療センター・岡秀昭教授は「第2波の時は、実は自分もコロナは風邪みたいで、指定感染症であることがかえって負担かもと感じていた時もあった。でも、第3波の光景は一変。入院する患者はみんな肺炎、みんな病人、当初の軽症者も3~4日で呼吸が悪化して重症化していく」と、非常に厳しい状況に現場があることをおっしゃっているわけです。そして岡田さん、自宅療養者もここにきて急激に増えている。この辺りの増加についてどうご覧になりますか。

岡田

当然感染者が増えてくればベッドの数は限りがあるので自宅療養、だから調整中っていう方が増えてくると思うんですね。今、年末年始でクリニックが閉まっております。いつもより閉まっているということです。ですから、なかなか検査もできにくい、自宅療養にできるような準備をしていくことが大事だと思うんですね。やはり熱が出る方もおられるし、そういうことなんですね。重症な方だけが大変なんではないと、私の友達も50代で軽症でしたけど、38°以上の熱が出て大変だった。だからそれを自宅で乗り切るんだという、乗り切らなければいけないんだっていうことを私たちが認知しなきゃいけない。自宅療養の準備をしないといけない。

山口

その通りですね。その厳しい状況の中でまさに年末年始を迎えようとしているわけですね。では医療体制がどうなっているのか確認します。東京では12月29日から1月3日、新型コロナの感染が疑われる発熱患者を診察する医療機関がおよそ1300機関が対応にあたるということです。発熱等の症状が出たら、かかりつけ医か東京都発熱相談センター、これは24時間対応です。ここに電話をして疑いありとなると、新型コロナ外来を紹介されるという流れになっています。まずは電話するという手順は、全国同じです。

医療現場からはこんな声があがっています。日本医師会の中川会長は「医療については間違いなく緊急事態です。このままコロナを年越しさせてはいけない。なんとしても感染者数を減らさないといけない」とにかく感染者を減らすことが医療現場への最も大きなサポートになるということです。さらに埼玉医科大学総合医療センターの岡教授も「現場の感覚としては、日本人は大丈夫、ではなく、今までの死亡者が抑えられていたのは、単に重症化しやすい人たちへの感染が抑えられていたからではないか、重症例も適切な集中治療が提供できて救命されていたからではないか。欧米同様に感染が広がれば、同じように死者が増える。特に集中治療キャパシティがオーバーすれば救える人も救えなくなる。そう肌で感じざるをえない。」やはり感染者を減らすことが、医療現場、医療の質を守る最大の方法だと訴えています。

(2020年12月27日放送)