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#159

自民党・岸田文雄前政調会長が生出演「率先して政治家が行動を…」

緊急事態宣言発出後も、感染しても入院できない、急病でも救急医療の受け入れに時間がかかる、こうした事例が相次いでいます。2021年1月17日『BS朝日 日曜スクープ』は、自民党の岸田文雄前政調会長が生出演。コロナ禍の状況を受け、岸田前政調会長は「率先して政治家が行動で考え方を示すことは、大変、重要なポイント」と述べました。さらに、次期自民党総裁選について「総裁選挙が行われるとするならば、是非挑戦したい」と意欲を見せました。

■ワクチン接種 態勢作りが急務

山口

緊急事態宣言が1都3県に発出されて1週間、対象区域は11都府県にまで拡大されました。これで感染拡大が止められるのか、それとも対策強化が必要なのでしょうか?考えていきたいと思います。では本日のゲストを紹介します。自民党・前政務調査会長の岸田文雄さんです、よろしくお願いします。

岸田

よろしくお願いします。

山口

そしてオンラインで参加して頂きます。新型コロナの治療に最前線であたっている自治医科大学付属さいたま医療センター・副センター長の讃井將満さんです。よろしくお願いします。

讃井

よろしくお願いします。

山口

そしてもう一方、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバー東京財団政策研究所・研究主幹、小林慶一郎さんです。よろしくお願いします。

小林

よろしくお願いします。

山口

ワクチンにも注目が集まっています。ワクチン接種の遅れです。イギリスでは1か月で受けたのが約150万人、人口の2%程度にとどまっています。さらにアメリカでも約280万人と、トランプ政権が掲げた2000万人を大きく下回っています。一体なぜなのか?1つ目の理由が想定以上に接種を拒否する人が多いこと。2つ目がワクチンを打つ、医療現場の人出不足。そして3つ目が煩雑な事務手続き。こうしたことから思うように接種が進んでいないとのことです。

小林さん、先行していたアメリカやイギリスでワクチン接種が遅れているということですが、日本ではスムーズに接種が進められそうですか?

小林

これは今、厚生労働省が音頭を取って、各市町村のレベルで実際には現場を回していくということなんですね。ただ、今回、ワクチンはマイナス70度で管理しなくてはいけないとか、非常に技術的に難しい問題があって、その時に、うまく運んで配布するというロジスティックスを厚生労働省や市町村がうまく分担してできるのかどうか、非常に疑問というか、非常に心配です。要するに、これまでの日本の厚生労働省の「ロジ」っていうのは、あんまり上手な印象がない。今までの、ダイヤモンドプリンセスの時どうだったか、それから、PCR検査の拡充の時どうだったか、ということを考えますと、ちょっとこれからのワクチンのロジスティックスっていうのも心配にはなりますが、是非、ここは上手く事前の準備を進めてもらいたいと思います。

山口

杉田さんは、このワクチン接種をスムーズに進めるためには、どういうところが大切になると思われますか?

杉田

私は先週、世界で唯一、ワクチン接種が非常にうまく進んでいるイスラエルの保健省の方から色々、お話を伺う機会があったんですね。彼が言っていたのは、とにかくスピード感が大事であるということ。あと、中央集権的なシステムが必要です。イスラエルという国は4つの医療協同組合みたいな組織があって、いずれかに全国民が強制的に入っているわけです。保健省がワクチンを買って、そこを4つの組織に卸して、そこで4つの組織がITを使って国民全員に呼び掛けて、そこで必ず受けるように、ということをやるということです。その前提となる準備が凄く重要でして、そういう事を総合的にやれば、今、イスラエルは国民の25%が既に接種していますので、色んなハードルは乗り越えられるのかなという気がします。

山口

その準備というところですよね

杉田

イスラエルの保健省は去年2月から、ワクチンに頼るしかないということで、準備をしていたと言うんですよ。

山口

そうですか。岸田さんはいかがですか。このワクチンについては、日本はオリンピックも控えているので、本当に大事になってくると思うんですが、どのあたり注目されていますか?

岸田

新型コロナウイルスのワクチンは、マイナス70度で保管しなければいけないなど、取り扱い、かなり難しい部分あるので、おそらく一カ所に集めて、集団接種みたいな形で取り組んでいかざる得ないんではないか、そのように言われています。私たちの世代は、小学生の頃、集団接種というのをやった記憶がありましたが、日本の医療ではしばらく集団接種をやってなかったわけですから、久方ぶりに集団接種をしなければいけない。先ほど、小林先生から、市町村の対応が大事だという話がありましたが、私も年末に地方を回って、各地の首長さん方と話をすると、やっぱりワクチンの接種に備えて、それぞれ態勢を組まなければいけない、準備が大変だと。そんな話を随分、聞かされました。これから市町村中心に、そういった態勢をしっかり作ることができるか、スムーズなワクチン接種を進めるようなシステムを作れることができるかどうか。先ほど、3つ遅れるポイントが指摘されてましたが、それに加えて、そういったシステムの構築、これも大変、重要なポイントなのではないかと、このように思っております。

■医療ひっ迫「80%以上の確保病床が埋まっている状態」

山口

東京はきょう、日曜日としては過去最多になるわけで(1月17日1592人)、本当に気が抜けない状況になっていると思うのですが、緊急事態宣言が発出された11都府県の状況を詳しく見てみます。ほとんどが、ステージ4を示す赤になっています。直近1週間の10万人あたりの感染者数を見ても、ステージ4の基準を大きく上回り、2倍、4倍の地域もあります。讃井さん、埼玉県は病床使用率が65%を超えていますが、讃井さんの病院はどのような状況ですか?

讃井

うちの病院は、重症・中等症を受け入れる病院で、少なくとも常に80%以上の確保病床が埋まっている状態、最近はほぼ100%。ですから、例えば1人重症の患者さんを受ける場合には、中等症の方を他の軽・中等症病院に移して中等症の病床に空きを作り、重症の方で最も軽い方を中等症の病床に移して、重症の患者を受け入れられるというような、そういう玉突きのような形で何とかやりくりしているという状況です。結果的に重症病床で人工呼吸患者を収容できず、軽・中等症病床に留まる方が増えています。

山口

つまり、ほぼ満床っていうことですよね。

讃井

おっしゃる通りです。多くの病院はそうだと思いますね。

山口

そうですか。やはり厳しい状況があるわけです。実は11都府県以外にも、状況が厳しい地域があります。沖縄県では、病床使用率や直近1週間の感染者数など、5つの項目で緊急事態宣言の対象となるステージ4の基準を超えています。さらに熊本県でも4つの指標でステージ4。宮崎、群馬で3つ、滋賀県で2つとなっています。緊急事態宣言の対象がさらに拡大される可能性があります。

■“準”緊急事態は!?「予見可能性を考えると…」

山口

こうした中、このようなことがありました。木曜日(1月14日)、政府は広島市を「緊急事態宣言に準じた対策」をとる地域として扱う方向で調整に入りました。さらに、広島県は、広島市の、特に感染者が多い4つの区、全ての住民と働く人、最大でおよそ80万人を対象に大規模なPCR検査を行う方針を発表しました。何とか感染拡大を食い止めたいということです。しかし、きのう政府は「広島市を現時点では準じる地域に該当するとは判断できない」と広島県に伝えました。理由として「ここ数日の広島市の感染状況が該当しない」ということです。感染者が減ってきていました。これによって飲食店に対する協力支援金が126万円から84万円に減額されることになりました。岸田さんの、まさに地元でのことです。この事態、混乱も広がるのではないのかと思うのですが、いかがですか?

岸田

新たな感染者の数がここ3日ほど低く抑えられているということ、このこと事態は歓迎するべきことだと思うのですが、今、説明の中にありましたように、支援金の額、これは国の支援がないわけですから、県独自で努力しなければいけない。きょうも知事と電話で話をしたんですが、当面は県で努力をするということですが、こうした心づもりというか、予見可能性ということを考えると、この“準”緊急事態宣言に該当するかどうか、ある程度の目安みたいなものが事前にあったならば、地元の方もある程度、心づもりもできる、混乱を抑えることもできる、こういったことなのではないかなと。まだ予断が許されませんし、今後の推移はわかりませんが、ひとつ、そういうことは感じています。

山口

岸田さん、地元の意見としては、やはり緊急事態宣言に準じた措置を取ってほしいという声もあったんじゃないかと思うんですよね。そういう思いがある中で、結局、決めるのは国になってしまう。自治体と国の関係も議論になると思うのですが、どうですか?

岸田

もちろん、今回のケースにおいても、西村大臣と広島県の湯崎知事と、よく連携した上で判断したということなんだと思っていますが、おっしゃるように、地元、関係業界からしてみれば、期待する向きも大変大きかったのではないかなと想像します。そういったことを考えても、先ほど言いましたように、ある程度、予見可能性を高めるためにも、目安みたいなものがあった方がよかったのではないかなとは思います。今後の一つの参考にしなければならないと思っております。

上山

それから広島県については、もう一つ動きがありました。広島県は広島市4つの区、最大で80万人を対象にしたPCR検査を行う方針も公表しましたが、広島県で今、行われている検査は1日2000件前後、確保病床数は474床で、宿泊療養施設の確保数は819室。80万人をどう検査し、陽性になった人にどう対応するのか。費用についても「県の予算だけでは無理」ということです。小林さん、国の支援があってもハードルが相当、高そうですが、こういった検査については分科会では話し合われているのでしょうか?

小林

そうですね。ロジスティックスがうまくいくかどうか、若干、問題があるかもしれませんが、感染が蔓延している地域では、その地域を区切って、地域の中で大規模検査をやろうということは、夏の段階から分科会でも議論されていましたし、広島県の湯崎知事は、積極的に検査をやって無症状の感染者を囲いこんでいこうと戦略を取られているのだと思いますので、うまくできれば、非常に日本の中での先進的な例を作るということにはなったんじゃないかなと思います。例えば、クーリング検査とかを効率的にやる方法なんかも試して、そういうことを使えば、80万人、ちょっと難しいかもしれませんが、ある一定の地域であれば検査できるのかなと。それから、陽性者の数はそんなに、おそらく出てこないだろうという見込みの下で計画を立てるのであれば、今、確保している病床とか宿泊療養施設で、何とか回っていくということなのかもしれません。そのあたりは詰めた議論が必要なんだろうと思いますね。

■行動変容の要請「病床確保の努力も最優先で」

山口

今、最も感染者が多い東京都の状況も詳しく見ていきたいと思います。金曜日(1月15日)2001人、きのう(16日)1809人、そして、きょう(17日)が1592人です。

こうして見ると、先週より少し減ったように見えるのですが、さらに詳しくカレンダーで確認します。大晦日に初めて1000人を超え、1337人になりました。そして1月7日、過去最多の2447人が確認されて、そこからさらに2日間、2000人台となりました。この1週間は先週と比べて減っているように見えるのですが、2週間前と比べると、かなり増加しています。 先週について、は専門家から「異常な増え方」という指摘もありましたが、お正月など特殊な状況で感染者が一時的に多く確認されだけで、決して減少局面ではないことが推察されます。

小池都知事は「もうこれまでとはまったく違うんだと新たなステージ、異なるステージに入ったんだということ」国立国際医療研究センターの大曲医師も「(新規感染者が)これまで経験したことのない速度で増加している。爆発的な感染拡大を疑わせる水準となっている」としています。

そして、大きな問題となっているのが病床です。東京都は日本で一番多くの病床を確保しています。しかし、入院患者数が3058人、重症患者が136人となっています。東京の確保病床は入院が4000床、重症病床が250床なので満床が見え始めています。こうした状況の中、東京都は都保健医療公社が運営する都立広尾病院など3病院を専門病院とすることを発表。それによって720床、病床が増えるということです。

ただ、14日に行われたモニタリング会議では、このような推計が示されました。「現在の増加比で経過すると、2週間後には新規の入院患者だけで、確保した4000床を超える」。結局、このまま感染者が増え続けると、3病院を専門病院にして絞り出した720の病床も一瞬で消えてしまうというわけです。小林さん、病院で受け止めるという方法は、感染拡大している状況では限界がありそうですね

小林

やはり感染爆発の局面に今、入ってますから、そういう意味では、外出を自粛して、24時間、夜だけではなく外出を自粛して、会食をやらないと。そして移動、県の境をまたいだ移動、こういうのもやらない。政府が繰り返し言っているような、そういう行動変容が必要だということがあります。そしてもう一つですね、やはり病床は720床作ったとしても、やはり、あっと言う間に使われてしまう。全くその通りなんですが、今、私たちは、国民は、ものすごい私権の制約といいますか、行動の制約を政府から求められているわけですね。そうした国民の納得を得られないと、必要な行動変容というのは起きません。その中で、一番、国民が納得することというのは、政府が必死になって病床の確保をしている。そして、医療スタッフの確保をやろうとしている。こういう姿勢を政府が示すことによって、初めて、信義のある政治というか、政策ができるわけで、その結果としては国民の納得を得て行動を変えてもらう。そういう風にしなければいけないので、病床の確保という努力は、引き続き、最優先でやる必要があると思いますね。

山口

病床が埋まっていく中で、今、とても心配になっているのが自宅にいる感染者が増えているということです。東京都の自宅療養者は8431人。そして入院・療養等調整中が7531人と過去最多となっています(1月16日現在)。

こうした中、50代女性と80代の男性が自宅療養中に相次いで亡くなりました。2人とも入院相当だったということです。東京都の担当者は「適切に入院ができていればこういう事態を招かなかった可能性がある」と話しています。

入院の判断はどのように行われているか。検査で陽性になった人に保健所が1人1人電話で連絡し、入院・宿泊療養・自宅療養を判断しています。病床が埋まっていく中、受け入れ先を探すのが非常に難しくなっています。保健所の方が、本当に厳しい中で調整しています。こうした中で、入院を希望する感染者から保健所の職員が責められるケースがかなり出ています。持病があったり、熱が下がらなかったり、入院したいという感染者の不安もわかるし、入院させてあげたいけど、病床がなく、自宅療養にせざる負えない保健所の方も気の毒です。岸田さん。入院したくても入院できない、亡くなる人も相次いでいるというのは、とても深刻な状態だと思うのですが、やはり、こういう風にならないためにも政治の力は事だと思します。いかがでしょうか?

岸田

そうですね。まず保健所、最前線で頑張っている皆さま方、大変なご苦労をされていると思います。本当に努力には、心から敬意を申し上げたいと思います。しかし、それでもおっしゃるように厳しい現実がある。それに対して、政治の立場から、応援態勢を充実させるとか、外部への発注を進めるとか、あるいは、予算においても増員、確か1.5倍は人数を予算として確保するとか、そういった取り組みを進めていく、これは大事なことだと思うのですが、あともう一つあるのは、この保健所の現場においては、入院の調整だけではなく、PCR検査、あるいは疫学的な調査等を、様々な役割を担っておられるわけです。ご指摘があったような現実を前にしますと、やはり保健所においては、この入院調整の部分により集中してもらえるような体制を作らなければいけないのではないか。ですから、検査とか調査の部分については、できるだけ機能を分散することによって、この保健所の皆さんが入院調整に、よりしっかりと取り組んでいける、そういった役割分担も考えていく。これも政治としてやらなければいけない役割なのではないか。こんなことも思います。

■“重症者受け入れ”悲痛すぎる現場での口論

上山

医療現場の方々に負担がいっている中で、実は、番組にもご出演頂きました埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭教授、こんなことがあったそうなんです。「先日、県から重症者を受け入れてくれないか?とお願いされたが、病床がいっぱいのため断った。ただ、その時に「患者を見殺しにするんですか?」と言われたので、さすがに文句を言った。もちろん県の人も必死に病院を探しているので、気持ちはわかるが、我々医療現場だって、毎日コロナ重症患者を救命できるように、必死でやっている。それを、わかってもらいたい」。

讃井さん、県の方々も、それから岡さんもそうですが、思いは一緒なんですよね、命は救いたいという。でも、切迫した状況の中で、こういったやり取りになってしまう現状、讃井さんは同じ医師として、どういう風にお感じになりますか。

讃井

そうですね。同じ県内で頑張っている仲間と言っていいと思いますけれども、この埼玉医科大学総合医療センターの果たす役割、ひっ迫の程度も十分、存じ上げております。人間、基本的に自分の目に見える範囲、半径30mくらいしか想像力が及ばないので、僕自身も県内で、県の調整本部、入院の調整本部で仕事に関わらせていただく3月以前は、なんで他の病院は受け入れないんだろう、なんで県や保健所は効率的に調整してくれないんだろう、頑張ってるのは自分のところだけなんじゃんないかという感覚でいました。だけど、お手伝いが始まった4月以降、どこも医療機関も保健所も、それから県庁の方々も、あまねく皆さん頑張ってらっしゃる。できる力、できるリソースを使って頑張っていらっしゃる。それがちょっと見えにくいんですね。そういうコミュニケーションの分断と言っていいと思いますけど、それが容易に起こって、今、まさに皆さん、殺気立っているような状況です。また、ベッド逼迫の状況もすぐには改善しない。それを憂慮して埼玉県では、コミュニケーションの分断を軽減すべく、軽・中等症病院向けに、呼吸器の勉強会などの講習会を開いたり、ウェブベースで治療、酸素療法、感染対策をテーマに月に1回か2回くらい勉強会を開いて、できるだけ皆さん、一致協力しましょうというような姿勢で、やっています。

上山

現場では命に係わる苦渋の選択が迫られる状況になっている中で、杉並区の田中区長は「誰が先に人工呼吸器をつけるかなど、トリアージの議論を始めるべき。きれいごとでは済まない」と、現場の医師が何の指示もなく生命の選択を強いられる状況になる前に、ガイドラインを作るよう、小池都知事に緊急要望を出しました。讃井さん、医療現場でもこういうガイドラインが必要とお考えですか

讃井

自分の医師としての決断に対して、完全な自信を持って臨まれる方というのは、やはり多くないと思うんですね。そういう意味では、こういうガイドラインのような保証といいますか、そういうものがあっても良いかなと思います。しかし、コロナ以前から、例えば人工呼吸のような、患者さんの肉体的・精神的負担がすごく大きい治療を行っても元の生活に戻れるかわからない場合、事前に患者さん、ご家族とよくお話をして、医療チーム、家族、患者さんが一つのチームとして、どこまで積極的に治療を続けるか決めてきたわけです。本来、入院してから、それに則って決めるんですけど、今、医療リソースが限定されていて、軽症・中等症の病院に入院し状態が悪化しても、重症病院に移って人工呼吸できるとも限らない。だから、入院前にどこまで積極的に治療を行うか、あらかじめ決めてくれないと入院させられないという病院も出てきています。そういう医療リソースが限定されているということを、やはり患者さん、ご家族も理解して頂く必要があると思います。

山口

本当に、この厳しい状況の中で、どの立場にいる方も苦渋の決断、難しい判断を迫られているということになるんだと思います。この医療現場の最前線が非常に難しい判断を迫られている現状を見てきたんですが、杉田さんはどうご覧になりますか。

杉田

政府を含めて、日本全体、国民全体がですね、危機感がやっぱり足りなかったですよね。どうも全体的に、楽観的なシナリオを元に動いてる気がします。コロナが始まってから、大体6月くらいか5月にいったん収まって、夏の間があって12月まで来て今の感染爆発があるわけですけど、かなりの時間があったんですよね。この間に、今、出てきている問題は、想像できたわけですよね。それを連携して解消していくようなところに思いが至らなかった。GoToキャンペーンは必要だったと思うんですが、そこでやはり国民全体がそういうモードになって動きだした。そこで今回、また急に緊急事態宣言が出たわけです。岸田さんが先ほど、事前の目安がもうちょっと欲しいということをおっしゃって、私もまさにそう思うんですけど、ある意味、予想予想を早めにするような危機モードというのは、常に持ってなくちゃいけないんだなと思います。

■対応の遅れに批判「謙虚に受け止めねば…」

山口

そうなんですよね。岸田さん、どうでしょうか。この医療現場のひっ迫、冬になるとコロナが大変な事になるんじゃないかというのは、専門家の方がずっと言ってきたと思うんですけど、私たちから見るとやっぱり政治の動きがやや楽観的だったんじゃないか、もっと備えることが早くできたんじゃないかという疑問はどうしても出てきてしまうんですよね。いかがでしょうか。

岸田

まずそれについては、謙虚に受け止めなければならないと思います。病院支援についてはですね、これまで3兆円の支援が行われてきた。第3次補正についても1.5兆円、病院支援の予算を確保した。さらにはコロナ病床1床につき450万円の補助金の加算を行うとか、様々な取り組みを進めてきたわけですが、それに加えてあともう1つあるのはですね、よく言われるのは、日本は世界的に見て病床の数は決して少なくないはずではないか。一方、アメリカやヨーロッパに比べてコロナの感染者の数は少ないのではないか。その日本で、何でこの病床がこれだけひっ迫しているのか、こういった疑問が随分あちこちで指摘をされています。その部分に関して言うと、やはり、この日本の病床の在り様、7割8割は医療機関において、民間の医療機関ですが、民間の機関、小規模であったり、あるいは経営上の問題があったり、コロナ病床の受け入れ限界があります。一方、公的な大病院においては、病床を移すことによって、コロナ病床を一か所に集める等によって、全体を動かしていく、こういったことも可能な規模を持っている。そういった現実の中でですね、全体をしっかり見たうえで、その配分をコントロールできる仕掛けが日本にはちょっと足りないんではないか。知事さんにおいても、先ほど東京都の都立病院や公社病院の話が出てましたけど、コントロールできる範囲は限定されている。厚生労働大臣においても、コントロールできる範囲が限定されている。全体を見て、その配分をコントロールできる、こういった仕掛けを考えなければいけないんではないか。多分、後ほど出てくると思いますが、感染症法の改正は、まさにその部分にかかる部分ですが、こうした全体の状況を見て適切に配分する。こういった仕掛けについても、よりしっかり考えていかないとならない、こういった部分もあるんではないかと思います。

山口

その部分を本当はこの大きな波がやってくる前に、皆さんにやっておいていただきたかったという思いは、本当に多くの国民の方持っていると思うんですね。

岸田

それはもう、おっしゃる通りです。謙虚に受け止めなければなりません。

山口

今、実際にこの危機は進行しているわけで、さらに深刻な事態が起きているんです。東京都医師会の猪口副会長は「救急救命センターを含む救急受け入れ体制がひっ迫し、多くの医療機関で受け入れが困難になっている。新型コロナ以外の病気やけがでも、重症者の受け入れが困難になり、多くの命が失われる可能性がある」と話しました。さらに、愛知県医師会の柵木会長も「自宅で待機していて、すぐに入院が必要な人でも入院先が確保できず、容体の急変後に救急車を呼ぶことが常態化している。まさしく災害医療の状況になっている」。自宅療養の増加によって、救急医療への負担が増していると話しています。

実際、東京都では1週間の救急搬送困難事案が1384件と前年に比べて倍増。ちなみに、この救急搬送困難事案とは、医療機関に受け入れが可能かどうかを4回以上照会。救急隊の現場到着から搬送開始まで30分以上かかった事例のことです。一刻を争う治療で、生命に関わる可能性があります。

神奈川県でも出動件数そのものは減少しているのですが、救急搬送困難な事例は倍増しています。消防の担当者に話を聞いたところ、横浜市の担当者は「救急困難事例数が昨年と比べて倍増しているが、まだ80%以上は1回の紹介で搬送先が決まっている」と影響は出ているが、救急体制は保てていると話しています。そして横須賀市の担当者は「保健所の依頼で出動する場合は受け入れがスムーズだが、自宅療養中の人が直接119番した場合、少し病院の受け入れが難しくなっている」と、自宅療養中の新型コロナ患者からの要請では病院の受け入れに影響が出ているということです。

神奈川県立循環器呼吸器病センターの丹羽内科医長は「保健所や県の調整本部を通してではなく、救急隊から病院に連絡がくるケースが1月6、7日あたりから急増した」「(この病院が)十何件目です」と言われることもある。軽症者は運ばれず、自宅に置いて帰られるような事態になっている」と、新型コロナ患者を診察する医療機関では、救急医療がかなりひっ迫しているようです。

讃井さん、入院が困難になると、今後、自宅療養から悪くなったら119番という流れが増えると思います。これは救急医療体制にとって大きな懸念ではないですか?

讃井

まさに深刻な事態ですね。既に病院に入院されている方の転院に関しては、もうそこで留まってくださいと言わざるをえない状況です。一方で自宅、あるいはホテルにいらっしゃって急変した方は、これどこかの病院が絶対に受け入れなきゃいけません。ですけれども、どこの病院もいっぱいいっぱいということで、搬送困難、すごく時間がかかるっていう状況が続いています。一朝一夕ですぐ直るものではないという風に思いますけれども、何とかして協力して臨むしかないかなと、そんな印象持っていますね。

■病床確保「勧告」の罰則に賛否

山口

本当に厳しい現状があるわけですが、感染者が増え続けていますので、何とか、病床を確保する必要があります。東京都のモニタリング会議では「現状の新規陽性患者数の急増に対応する病床を確保するためには、通常の医療をさらに縮小せざるを得ない」と話しました。さらに厚生労働省の専門部会では、感染症法改正案が話し合われ、16条2項で「厚生労働省と都道府県知事が感染症の発症を予防、まん延を防止するため、緊急の必要があると認めるときは、医師や医療機関に必要な協力を求めることができるとしている」という、この「協力」の部分を「勧告」に見直し、勧告を拒んだ場合に病院名などを公表できる規定を盛り込むようになっています。

小林さんはどうでしょうか、病院に勧告する、それでも病床を作らない、受け入れない病院に対しては、名前を公表するという案なんですが、どのように思われますか。

小林

これは、ある種の最終的な抑止効果として、こういう規定を組んだんだろうと思うんです。基本はやはり、病院に協力をしてもらうこと事が原則なんだと思います。ただ、2つ言いたいのは、まず通常の医療が今、ひっ迫して、それを減らさなきゃいけないということなのかと言うと、そもそも今、コロナの蔓延によって受診控えが増えていると聞いてますので、上手く医療資源をやりくりすれば、今、通常の医療も自然に減ってるはずですから、病床を何とか作れるんじゃないかという風に思いますし、あと感染症法の話はまだだいぶ先ですよね。法律が成立するのはおそらく2月くらい。(緊急事態宣言の期限の2月)7日より後になってしまうことを考えますと、今、私たちが直面しているのは、これから今週、そして来週、重症者が増えてくる。その人たちを収容する病床が無いという問題ですから、そこは、今の制度を前提に、都知事や県知事が病院長と直接、交渉するとかですね、積極的に説得をすると。そして、お金の問題あります。今、非常に補助金、病床に対する補助金も大きくなってきてますので、私の聞いた話では、病院の性質によっては、コロナ対策に病床やスタッフを出した方が経営が黒字になるケースというのも現に出てきていると聞いていますので、是非、そういう金銭的なインセンティブを上手く使って、今週、来週の病床の確保というのを最優先でやっていく必要があるんじゃないかと思います。

上山

罰則については、様々な議論があると思うんですが、岸田さんは、この対策というものは国民を分断させないようにするべきだということも以前、お話になっていたかと思うんですけれども、こういった罰則が国民を分断させてしまうようなことに繋がらないかとも思いますが、いかがですか。

岸田

まず先ほど小林先生もおっしゃっていたように、こうした体制を作るにあたって、やはり協力が基本であるということ。これは、やはり日本方式と言うか、日本の良さとして大事にしなければいけない部分だと思います。ただ、抑止力ということで、この罰則も考えなければならないんではないか、こういった議論がありますし、そして、勧告をするとしても、その勧告が理不尽なものであっては、これは当然受け入れられるはずがないですから、その勧告自体がしっかりとした根拠に基づく、理解できるものでなければならない。だからこそ、全体をしっかり把握したうえで、この病院には、こういったお願いをさせてもらうと、勧告をさせていただく。こういった仕掛けにしていかなければいけないんではないか、このように思います。

山口

讃井さんは、現場にいらっしゃって、こういう勧告をする、従わない場合は名前公表するって話が出ていること、どのように思われますか。

讃井

一定の効果があると思います。特に、今までコロナ患者さんを受け入れてきた病院で、色んな理由で、例えば看護師さんの不足、あるいはコロナ以外の患者さんが多いと言う理由で、確保病床を全部使ってこなかった、そういう病院に関しては、このような勧告は大きな効果あるんじゃないかなと思います。ただ、確保病床を増やすために、今まで受け入れ実績がないが新たに参加していただくような病院は、すぐに厳格な感染対策が取れない可能性があります。そのような病院には、あらかじめ十分に教育活動を行って、新たなクラスターになってしまってかえって負担になる、そのような事態は絶対に避けなければいけないなと思っています。

山口

そうですね。ですから体制もちゃんと組んで行かないと、逆に感染が広がってしまう恐れもあるわけですよね。杉田さんはどうですか。今回の、この改正案なんですけれど、例えば、こういうことをやると名前が出た病院に対してSNSで誹謗中傷も広がる恐れもあると思うんです。このあたり、いかがでしょうか。

杉田

私自身は罰則というのは、やはりやり過ぎじゃないかなと思っています。抑止効果としては意味があるんでしょうけども、どうも罰則、要するに、先ほど讃井先生も、殺気立ってるというお話しをされてて、結局、もう1年経ってですね、人々が不満を高めているところがありますので、どうしても、悪者を探すというですかね、そういうマインド、心理になりがちだと思うんです。これまでは、例えば飲食店の問題が取り上げられていました。飲食店を悪者にするのは、僕はひどい話だと思うんですけども、今になって出てきているのは民間病院が受け入れていないんじゃないかということです。ですので、岸田先生がおっしゃるところの分断、あいつが悪いんだ、我々はちゃんとやっているという心理に陥りやすい。ところが、讃井先生が岡先生のお話をすると、皆さん、それぞれの病院の医療関係者の方が一生懸命やっていると、それをたまたま我々は知らないから、なんかやってないんじゃないかというように思ってしまう、そういう目で見てしまう。ですので、罰則主義あるいは悪者探しみたいなところに陥らないようにするには、どうすればいいかということを、真剣に考えないといけないと思うんですよ。

■「とにかく感染者を減らすしかない」

山口

今、病床を増やすにはどうすればいいのか、現場の3人の医師の方々のご意見を伺いました。埼玉医科大学総合医療センター岡教授は「とにかく感染者を減らすしかない、これに尽きると思う。それ以外で言うと、医療現場の事務処理を助けてくれる職員を増やすのはありかと思う。医師や看護師は患者を診ることにもっと集中できるかもしれない。もう1つは診療を実際に行った実績に応じて払われるインセンティブ報酬をつけること」神奈川県立循環器呼吸器病センターの丹羽内科医長は「とにかく感染者数を減らすこと。みんなが短期集中でいいので他人と会わずに家族・パートナーだけといることを徹底すれば、絶対に減ることは目に見えている。これは病床を増やすより早くて確実だ」やはり、とにかく感染者を減らすことだとしています。さらに、きょうのゲストの讃井さんも「とにかく患者を減らすこと。できないなら受け入れ病院を増やすしかない。中小で新型コロナ患者の受け入れ実績がない病院が受け入れていくと、かえってクラスターを多くしてしまうのではないかという懸念がある」

まったく別々に話を聞いた3人が、まずはとにかく感染者を減らすことだとお答えになりました。小林さん、3人のご意見どのように受け止めますか。

小林

全くその通りだと思います。感染者をまず減らす。そのための行動変容が最大の処方箋だと思うんです。ただ、先ほど言いましたように、仮に今週から感染者が減ったとしても、重症者の患者さんはまた少し遅れて増えてくるということなので、今週、来週はまた重症者が増えて、その患者さんたちをどこに収容するかという問題は引き続きあると思います。ですので、一つの私のアイデアというか提案はですね、例えば、色々な公的な機関の病院があるんですね、JRの病院とか、あるいは警察病院とか、逓信病院とか、自衛隊病院とか。そういったところに、それぞれの組織や母体から働きかけてもらって、病床やスタッフを出してもらう。例えば自衛隊、あるいは警察から警察病院に働きかけるとかですね。何か働きかけのやり方を、ちょっとルートを変えて、そういう公的病院にもう少し参加を促すというようなことも、これから緊急の対策しては考えられるんじゃないかなと思います。

山口

そうですね。そして、この感染者数を減らすということで考えますと、私たちの行動もやっぱり変えていく必要があるわけですよね。そこで気になるのが緊急事態宣言から1週間が経ったわけですが、外出状況がどうなのかなんですね。

上山

ソフトバンクの子会社「アグープ」によりますと、きのう午後3時台の都心の人出は、1週間前と比べて渋谷センター街で10.2%、秋葉原で5.2%、浅草で2.7%増加しました。東京はきのう、緊急事態宣言が出てから2度目の土曜日でしたが、これを去年春に行われた前回の宣言の場合と比べても、渋谷センター街は5.7倍、秋葉原は2.9倍、銀座は4.4倍、人出が多い状況です。緊急事態宣言の対象に後から加わった地域では、大阪駅が-5.1%、名古屋・栄で-2.3%、福岡・天神で-5.4%。わずかな減少にとどまっています。こちらも前回の宣言に比べると、2倍から3倍の状況です。

山口

こういう状況の中、分科会の尾身会長は「時短、営業時間短縮は、夏の頃から一定程度効果があったことは明確だが、今の状況では、それだけで感染を下火にすることはできない。最悪の場合、もっと強い時短、休業要請ということも選択肢としてはあり得る」と休業要請にも踏み切る可能性を示しました。日本医師会の中川会長も「緊急事態宣言の全国的な適用も、ぜひ検討の中に入れてほしい。検討を始めてほしい」対象地域を広げるよう求めました。

今回の緊急事態宣言と前回の緊急事態宣言を比べると、対象地域は11都府県と全国、商業施設も、前回は美術館やパチンコ店などに休業要請をしていました。イベントも、前回は開催の自粛要請が行われました。政府は対策を小出しにしているという批判があります。

岸田さんは以前、感染拡大期にはとにかく感染爆発を防止することに全力を注ぐべきだと話されていました。今の緊急事態宣言、十分だとお考えですか。

岸田

まず今回の緊急事態宣言、今までの様々な経験を踏まえて、対象とか地域を絞り込んだという形でスタートしているわけですが、緊急事態宣言というのは、今の法律の体型の中にあってはですね、最後の伝家の宝刀でなければならないわけですから、そういったことを考えると、少なくとも数字を見る限りですね、その引き締めについて、十分この実績が上がっていないのではないか、こういった指摘は、しっかり受け止めなければならないんではないかと思います。やはり対策において、これからですね、さらに締めていく、厳しくする議論も行われるんではないかと想像しますけれど、そうであるならば、やはり最初に締めて徐々に緩めた方が結果的には良いケースも多いのではないか、こんなことも考えます。これはなかなか判断の難しいところですが、今の緊急事態宣言、数字から見るとそんなことを感じています。

■「協力をお願いする以上、国会議員が率先して…」

山口

明日(1月18日)からの国会で罰則について話し合われます。1つが特措法の改正によって、時短・休業要請に従わない事業者への罰則。もう1つが感染症法の改正案で、入院に応じなかったり、入院先から逃げ出した場合、刑事罰。保健所の調査を拒否したり、虚偽の申告を行った場合の罰則ということです。岸田さん、これもなぜ国会が明日からなのでしょうか?もっと早く国会を開いて議論できなかったのですか?

岸田

あの特措法の改正の議論、また感染症法の改正の議論。これは去年から私が政調会長を務めていた時代からあった議論です。それを考えますと、その後、夏から秋の感染の状況を見て、この政治の議論も緩んでいたということ、これは反省しなければならない部分ではないかと思います。是非、今、そうした反省ももちろん大事ですが、現実に一日も早く取り掛からなければなりません。明日からの国会、全力で取り組むことを、皆で力を合わせて進めていきたいと思っています。

上山

こうしたコロナ対応が政府への支持率に影響しています。共同通信社が今月、9日と10日に実施した全国電話世論調査によりますと、菅内閣の支持率は41.3%と、12.7ポイント下落した12月の前回調査からさらに9.0ポイント下落しました。不支持率は42.8%で、政権発足からおよそ4か月で支持と不支持が拮抗する状況になりました。

もっとも気になるのは「国民への呼びかけ」です。岸田さん、国民に協力してもらう必要がある中で、政治からのメッセージのあり方どうお考えですか?

岸田

こうした感染症にどう対応していくのか。これは誰がやっても大変難しい課題ではあるとは思いますが、やはりだからこそ、国民の皆さん1人1人の協力が重要である。そして、だからこそ政治の言葉が大事になってくる。こういったことなんだと思います。政治の説明責任、あるいは国民の皆さんに対する呼びかけ、政治の言葉、この部分については、これからも引き続きこれでいいのか、これで十分なのか、これをしっかりと振り返りながらですね、より充実させていただければならない。政治にとって最も大切な課題なんではないかなと思います。

上山

今回、国民への呼びかけが今ひとつ届かなかった一つの理由として、国民の不満としては、政治家の方々の、やはり会食というのがあったと思います。情報収集ということも非常によく分かるんですけれども、これが良くないとなった途端に、永田町でスパッとやめようという雰囲気にならなかったのかどうか。こういうところはどうなんでしょう。

岸田

国民の皆さんに協力をお願いする以上、お願いする政治家、国会議員が率先して、この対応を行動として示さなければいけない。これはもう当然の事だと思います。国民の皆さんに色々なお願いをする。例えば、この事業者の方々に対する支援と、それから過料、罰則の議論においても、公平性というのが大事だということを、私は前々から申し上げていますが、この公平性というのは、対策の中だけではなくして、政治と国民の皆さんとの間においても大切なポイントなんではないか。その政治、政治家と国民の皆さんとの間の、この公平性、しっかりと大事にすることによって、政治の信頼をしっかりと確保する。こういった姿勢は極めて大事だと思います。あの会食について、当初いろいろ指摘を受けました。批判を受けました。本当に残念なことですし、私も含めて、政治家が反省しなければいけない部分であり、率先して政治家が行動で考え方を示す、こういったことは、これからも大変、重要なポイントになってくると思って、努力をしなければならないと反省しながら思っています。

山口

政治家の方の行動、メッセージ、言葉、本当に大事だと思うんです。小林さんにも伺いたいんですけど、国会で議論される、これから罰則をつけていくという話ですが、この罰則をつけることによって感染者数を減らすことに繋がっていくのか、このあたりは分科会ではどういう議論になってるんでしょうか。

小林

分科会ではですね、これは両論ありまして、やはり罰則が最後の抑止力として必要だという議論もあれば、やはりそういうものに頼らない社会をつくるべきだと、そういう議論もあって、なかなか、ここについては、まとまった意見というのは、なかったというか、できていないところだと思いますね。

山口

讃井さんも現場で今、大変な状況にあるわけですが、きょう、岸田さん、いらっしゃっているので、政治に対して、どういうことをお伝えしたいですか。

讃井

現場の意見としてはですね、一刻も早く人の往来を4月程度まで減らして頂いて、一気に感染者を減らしていただきたいと強くお願いしたいと思います。やはりそれが一番、即効性があると思うんですよね。そうでなければ、もう高止まりする状況が私は見えていると思うんです。ですから、くれぐれもお願いしたいと思いますね。

■自民党総裁選「行われるならば挑戦したい」

山口

コロナの感染が深刻になる中で、今こそ政治のリーダーシップが求められると思うんです。こうした中、9月末に自民党総裁の任期がきれます。岸田さんは、ずばり出馬はされるわけですよね。

岸田

はい、9月どんな政治状況になっているか分かりませんが、総裁選挙が行われるとするならば、是非挑戦したいと思っています。前回の総裁選挙でも、分断や格差の問題、あるいは持続可能性の問題、さらにはデジタル田園都市構想、地方創生の問題、こういったものを訴えてきましたが、コロナとの戦いの中で、こうした課題の重要性、ますます高まっていると思います。私自身やりたいと思うこと、やらなければならないと思うこと、まだしっかりあります。是非チャンスがあれば挑戦したいと思っています。

山口

一方で岸田さんの地元を見ると、実は公明党の斎藤さんが出馬の意向ということで、広島3区ですね。そうすると岸田さんの地元で自前の候補立てられないのではないかという恐れが出てきていると思うのです。ここはいかがですか?

岸田

自民党と公明党、連立を組んで20年以上経つわけですが、政治のみならず、選挙においても協力してきた実績、信頼関係があります。是非、次の選挙においても、信頼関係は大事にしていかなければならないと思います。これは党と党の関係ですから、今、党本部において調整をお願いしていますが、是非しっかりとした合意を得た上で、協力できる体制をまず作るべく努力をしていかなければいけない。このように思っています。

山口

最後に、今、本当に大変な時期なんですが、どういうリーダーシップが大事になると思いますか?

岸田

これは前回の総裁選挙でも訴えましたが、国民の協力なくして結果を出すことのできない課題ばかりであると思います。ぜひ国民の協力を引き出せる政治、これを実現したいと思います。そのために信頼、あるいは国民の声を聞く、そして国民に対する声をしっかりと大事にする。こういった態度が大事だと思っております。

(2021年1月17日放送)