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#164

“コロナ禍”PCR検査の活用 「社会的検査」展開のために…

新型コロナ対策と社会経済活動を両立させるにはどのようにすればいいのでしょうか?PCR検査を目的によって2つの種類、自分の命や健康を守るための「医療的検査」と、誰かに感染させないことを確認するための「社会的検査」に分けて考えるべきという指摘があります。『BS朝日 日曜スクープ』2月21日は、感染防止と経済の両立でカギを握る、この「社会的検査」を戦略的に展開するために、最新研究で見えてきたPCR検査の活用法を特集しました。キーワードは「CT値」です。

■「医療的検査」と「社会的検査」 異なる目的

山口

感染を抑えながら経済をどう動かすのか?ワクチンが行き渡るにはまだ時間がかかる見込みです。そんな中、私たちの武器となりうるのが「検査」です。きょうは経済を動かすための「検査」について考えていきます。ではゲストを紹介します。慶応大学医学部教授・西原広史さんです。宜しくお願いします。

西原

宜しくお願いします。

山口

西原さんの専門は「がん」のゲノム診断なのですが、新型コロナの感染拡大した去年から、同じ「遺伝子」を扱う、PCR検査を約5000件、行ってきました。そうした中、PCR検査の有効な使い方を科学的に分析し、「経済を動かすための検査」を新たなプロジェクトとして進めています。じっくり話を伺います。そしてもうひと方、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバー、東京財団政策研究所・研究主幹の小林慶一郎さんです。宜しくお願いします。

小林

宜しくお願いします。

山口

ワクチンが行きわたるまでに経済を動かすため、再び注目を集めているのが「検査」なんです。分科会の尾身会長は「解除した後の都道府県で最も大事なことは、感染のリスクの高い所を中心に、無症状者に焦点を合わせた検査をやることによって、リバウンドを防ぐこと」。東京都医師会の猪口副会長は「保健所による積極的な調査、それから戦略的なPCR検査が今後の再上昇を防ぐための作戦として大事だと考えている」。やはり戦略的なPCR検査が必要だとしています。実際に全国では18の自治体などで、高齢者施設や障害者施設での「無症状者」への検査が始まっています。

この「無症状者」への検査が1つポイントです。これまで検査と言えば「医療的検査」でした。自分のための検査。つまり自分の命を守るために、対象者は症状がある人などで、医療として受ける検査です。一方で「経済」を動かすため、今、必要とされているのが「社会的検査」です。西原さんがプロジェクトとして進めているのがこの検査で、これはいわば、人のための検査。誰かに感染させないために受ける検査です。

対象者は「無症状」になります。どういう時に検査を受けるかというと、「結婚式などイベントに参加する時に受ける」「海外出張などビジネスで必要な時に受ける」。つまり「陰性証明」「人に感染させない証明」として受ける検査です。実は経産省も重要視しているんです、上山さん。

上山

経済産業省・生物化学産業課の田中課長です。「withコロナ時代と言われる中で、「今後、安心して社会経済活動を行うためには、無自覚のままに感染を広げるおそれのある「無症状感染者」見つけ出すことが極めて重要だと考えています。これを実現するためには、民間企業の力を最大限活用しながら、PCR検査をより手軽により効果的に活用した「社会的PCR検査」を積極的に進めて行くことが重要だと考えています。西原先生のプロジェクトのように、しっかりとした”科学的エビデンスに基づき、””検査の質が担保された”社会的検査がもっと手軽かつ効果的に利用できるような環境が整備されればと考えます」と経産省も社会的検査を重要視しているんです。西原さん、「社会的検査」の必要性、どうお考えですか?

西原

今、実際に感染が広がる時というのは、まさか自分は感染していないだろうと思って会食に行ったり、イベントに参加して、その時にもし感染していたとすると、周りの人に知らないうちに感染を広げてしまうと。そういう状態が一番、これから感染拡大を防ぐために、凄く大事になってきまして、無症状の方は本当に自覚症状がないので、全く分からないんですね。自分は誰とも接してないとか、会食してないからと。そういう方が知らないうちにクラスターの原因にならないようにするということが、特に感染者数が減ってきた状況において、やっぱりそういうことをしっかりとやっていくことが大事だと考えております。

■「経済を回すには、“検査で陰性”は価値ある情報」

上山

再拡大を抑えるためには、無症状の方への検査っていうのが必要だということですが、実は小林さんも去年、提言で「経済社会活動や日常生活の正常化に向けた前提となる安心の確保のため、従来の発想を転換して取り組むべきもの(検査)であると考える。ただし、医療のための検査を超えるため、保険適用外での対応となるのが基本と考える」と訴えています。さらに、経団連も「経済活動を再開していく上では、必ずしも陽性が疑われない場合においても、検査が受けられる体制が必要となる」としています。小林さんは、経済を動かすため「検査」、どうお考えですか?

小林

ここで言っているのは、医療の検査とは別に、経済活動の円滑化のための検査というのを提言の中で訴えているのですが、ちょっとその前に、分科会の中でどういう議論があるのか、ひとこと言うと、先ほど尾身先生の発言がありましたけど、あれは無症状者に対しても検査を拡充していこうということは、実は去年の7月から言ってたんですね。要するに、リスクの高い無症状者、濃厚接触者であるとか、あるいは高齢者施設の入居者、職員という人たちには重点的に検査をやろうということは、去年の夏から言っていた。これが今回、リバウンドを防ぐためにさらに拡充していこうと、何回も頻繁にやっていこうということを、尾身先生、分科会は言っているんですけども、ちょっと先週のモーニングショーなんかでも玉川さんから、尾身先生の発言、これは方針転換をしたんじゃないかと言われたんですけれども、これは決してそういうことじゃないんだということを強調しておきたい。前から方針は、無症状者もやろうと。ただ、結婚式に出るためとか、あるいはビジネスで出張するための検査、これは確かに分科会の方でも今まではやるべきだとあまり言ってなかったんですね。これは自費でやってくださいということだったわけです。なぜそういう風に、社会的な検査がなかなか医療の人に受け入れられないかというと、医療のための検査というのは結局、感染者を見つけるための検査ですから、陽性にならないと意味がないんですね。検査をやって、陰性だった結果は、無駄な検査をやっちゃったということになるわけです。それに対して、経済を回すためと言っている我々の発想からすると、検査をやって陰性だったというのは価値のある情報であって、陰性であったということは非常に良いことなんだから、陰性の結果を出すためにも沢山、検査をやったほうがいいと。コストを賄うことができ、あるいは、検査する人が十分いるのであれば、なるべく、陰性の確率が高い人に対しても検査をやるべきなんじゃないかというのが、経済を回すための検査という、そういう発想なんだと思うんですね。

山口

そうですね。ですから今ありましたけど、医療的な検査というのは陽性に意味があるんだけど、社会的な検査というのは陰性に意味があるんだ、そこが本当に根本的に違う、大事なポイントだと思うんですね。

■「しっかり行えばPCR検査はほぼ100%」

山口

この「社会的検査」は、これまでもありました。年末年始に帰省のため、自費で検査を受けた人もいると思います。ただ、課題が言われていました。1つが「精度管理」です。業者によって精度にばらつきがあり、結果が「陰性」だったのに、行政検査では「陽性」になったなどの指摘がありました。分科会の尾身会長も「民間の自費検査のニーズがものすごく多くなっている。国はしっかりとクオリティーコントロールに関与していただきたい」としています。

そして、もう1つの課題がPCR検査の精度が低いのでは?と言われてきました。例えば「検査精度が7割」「偽陰性・偽陽性が出る」ということで、そもそもの信頼性を疑問視する声が根強くあります。西原さん、PCR検査をこれまでおよそ5000件やってきて、信頼性をどうお感じになっていますか?

西原

精度管理には二つの大きな要素がありまして、一つは単純に技術的な制度、つまり検体を取り違えたり、試薬の入れ間違いをしたというような、こういう技術に関しては、やっぱり熟練した検査技師がやるとか、指定された衛生検査所でやるということで、そういったところはしっかり担保できると思ってまして、我々のところでも、そういった精度管理はキチッと出来てまして、いわゆる単純ミスみたいなものは、ほとんどないんですね。ただ、今、世の中で議論になっている精度管理のもう一つの点というのが、その検出感度が悪いんじゃないかと。これについては偽陽性、偽陰性が出るということなんですが、これは結局、検査が何を検出しようとしているのかということを、しっかりと設定した上でやらないと、例えば、ウイルスがいるかいないかだけで検査しようとしているのか、感染力があるウイルスがいるのかどうか、見つけようとしてるのか。ここのところがごっちゃになったまま現場で行われると、偽陽性、偽陰性といったことになります。しかし、一般的にしっかりした検査をやっている所は、ほとんど、そういうミスはありませんので、実は検査精度はほぼ100%だと思ってます。

■ポイント① 「人に感染させない」を検査の目的に

山口

どこをターゲットにしてPCR検査をやるか。それによってだいぶ変わってくるということになると思うんですが、西原さんが考える、経済を安全に動かす「社会的検査」のイメージを図にしました。男性が新型コロナの中で娘の結婚式に出席したいとします。その時、男性は2日前に自宅から検体を送ります。これポイントです。検査は精度の高い施設で行い、そして、結果は迅速にスマホなどに返されます。これにより安心して娘の結婚式に参加できるということです。

西原さんが考える「社会的検査」の最も大きなポイントは「人に感染させない」ことをPCR検査の目的にするという点です。そのために知る必要があるのがPCR検査の「CT値」というものです。ちょっと難しいのですが、これがわかれば、新型コロナの特徴が非常にわかりやすくなります。上山さんお願いします。

上山

新型コロナウイルスは、唾液や咽頭液をそのまま調べても、見つけることはできません。なので、検体の中の新型コロナウイルスの遺伝子を増幅させて見つける必要があります。その時、何回、増幅させたら新型コロナウイルスが見つかったか、この回数を「CT値」といいます。ウイルス量が多いと、少ない増幅回数で検出でき、逆にウイルス量が少ないと、何回も増幅回数を重ねないと検出することができません。

山口

つまり、増幅回数が決め手になってくる。キーになってくるということなんですが、それを表にしてみました。

CT値というのは増幅回数を表現していますから、CT値が多いほど何回も何回も増幅させる。それでようやく見つかるというわけですから、ウイルス量は少ないということになるんですね。何回も増幅してようやく見つかるということです。逆にCT値が低いのは、つまり増幅回数が少なくてもウイルスを捕まえることが出来るわけですから、それだけウイルス量は多いんだということになってくるわけです。このCT値をどういう風に設定しているのか。実は国によって違うんですね。まず日本の陽性の判定のCT値は、実は40以下となっていまして、このCT値が40以下であれば日本は陽性だという判断なんですね。ところが、海外はどうなのか見てみましょう。アメリカの陽性判定のCT値は日本と同じくらい、40前後なんですが、中国は37未満、台湾はCT値34以下で陽性判定ということになるんです。例えばCT値が37の人は日本だと陽性になるんですけど、台湾は34以下ですから陽性にはならない。国によってやっぱり違ってきます。このCT値が小さい値になるほど、体の中のウイルス量は少ない増幅で見つかるということですから、ウイルス量はその分、多いということになるんです。つまり、表現を変えると、感染力も高いです。この感染力、CT値と突き合わせてみます。例えば、CT値が20.5とウイルス量が多い人はミスト程度の唾液で人に感染させる恐れがあります。さらにCT値が29だと、小さじ1杯くらいの唾液で人に感染させる恐れがあります。一方、「CT値が37」になると唾液がコーヒー1杯で感染。さらに「CT値が40」ではペットボトル1本分の唾液が入らないと感染しないと考えられています。

■CT値で大きく異なる感染リスク

山口

西原さん、ひと言で「陽性者」といってもCT値によって人へ感染させるリスクは大きく異なるんですね。

西原

その通りです。今、まず日本で受けるPCR検査の結果は、陽性か陰性しかなくて、CT40の人も陽性だし、20の人も陽性なんですね。ところが今、図にありましたように正直、唾液500ccというのを相手に与えるという状況は、まず一般的に考えられないですよね。一方で、ミストレベルは空中に浮いてくるような量、くしゃみをしたり、あるいは、ちょっと面と向かって会話するような中で飛んでくるミストでも相手に感染を起こしてしまうような状況です。そういう状況が違う方がみんな陽性というのは、やっぱりあまりにも大雑把すぎて、皆さんもどう行動していいかわからなくなるという、そういうことだと思います。

山口

そうですよね。ですからそのCT値によって取るべき対策も当然変わってくるということなんです。取るべき対応として西原さんは、CT値が低い、感染力が強い人たちは「即隔離が必要」。CT値が高い、感染力がほぼない人たちは「再検査」や「何もしなくていい」という対応ができると。したがって西原さんは、感染力を考え、「社会的検査」の基準は35以下で十分としています。

西原さん、日本の今の「医療的検査」の基準より緩くなりますが、問題はありませんか?

西原

必ずしも、例えば36、37の人が相手に感染を起こさないかというと、そういうわけではないんですね。ただ、今、実は既に色々な実験結果が論文で報告されてまして、ほとんどの論文報告ではCT値が33より低い値でなければ、そもそも感染が成立しないという実験結果が多く出てきています。そういうことを考えると、35以上の方は日常生活に気を付けながら、もし体調の変化が出た時にはすぐにまた再検査を受けるというような形で、用心しながら生活をしていただくことで、一般的な社会活動はしても問題はないというふうに思っています。

山口

なるほど。そして西原さん、CT値35以下に区切ることによって、PCR検査は精度が7割だという指摘もありましたけど、区切ることによって精度がぐっと上がってくることになるんでしょうか?

西原

そうですね。そういう「社会的検査」で、相手に高い感染力を持つ人を見つけるという目的においては、当然この精度が非常に高くなって、要するに、36以上の数値の人たちに対しては、今まではもしかすると偽陽性を出していたことになっちゃうんですね。本当は相手に感染力がない人に対して陽性を出していたことというのはありえますので、そこのところでも精度が上がってくるし、検査の体制をきちっと目標を設定して行うことによって、逆に偽陰性も減らせることが出来ると考えています。ですから精度は高くなると思います。

山口

この社会的な検査では CT 値を35以下に区切ってやることによって結果的に精度も高まる、偽陽性偽陰性も減らせるというお話がありました。西原さん、確認しておきたいんですけれども、今の CT 値が日本は40以下というのは、医療的な検査ではこの40以下にする意味もやっぱりあるということですよね。ここはいかがですか。

西原

もちろんです。例えば症状がある方で、退院前に本当にウイルスがいないかを確認するというような、その陽性を本当に判定することも目的にする検査では、ぎりぎりの精度まで求めた検査をやることは十分に意義があると思います。

■「CT値が低い=感染力が高くても無症状の感染者がいる」

山口

西原さんは研究の中で、新型コロナの本当の怖さを思い知ったことがあったそうです。それが、CT値が低い、ウイルス量が多い無症状者がいる。当然、感染力も強いわけです。西原さん、無症状者は体の中のウイルス量が少ないわけではない?

西原

その通りなんですね。私たちが今まで見つけてきた無症状で陽性の方では、20以下のCT値の方が実はいらっしゃいまして、本人全く症状がないですね。こういう方は本当に10分、15分、もしマスクなしで、そばで会話をしたりすると、それでもう相手に感染を起こしてしまうと。そういう方がいらっしゃって、ですからご自身の症状とCT値は必ずしも関係してないというのがやはり、本当に現場で難しいところだと思います。

山口

本当ですね。

上山

無症状なのに体の中にウイルスを持っている方を探し出す、人に感染させないということにフォーカスしたPCR検査の使い方というのは、木内さんはどのようにお考えですか。

木内

非常に価値があることじゃないかなと思うんですね。もちろん、これだけで完全に社会生活とか経済活動の正常化を一気にできるわけでは多分ないと思います。というのは、後で話が出てくるかもしれませんけど、すごい頻度で陰性証明しないと完全には正常化しないんですけども、そうは言っても、非常に重要な局面、その結婚式とかですね、あるいは企業で言いますと、出張とかですね、そういうところに有効に使っていくことで、経済・社会活動がやっぱり正常化していくための重要な一歩になってくるという気がします。西原先生にお聞きしたいんですけども、ワクチン接種の証明とこの「社会的検査」などを通じた陰性証明、将来どう組み合わせていくかというのは重要なんじゃないかと思っていますね。

山口

そこは西原先生、いかがでしょうか。

西原

はい。ワクチンにしろ、例えばこのコロナ検査で陰性だっていうことにしろ、もちろんやっぱり100%それで抑えられるものではないので、当面、世界的に感染が収まるまではですね、やはり皆さん自粛、色んな生活の自粛、あるいは、マスクの着用という一般的な予防はしなきゃいけないと思うんですね。ただ、ワクチンを受けている、あるいは、 PCR で少なくとも3日前は陰性だったということがあれば、やはり、自分の行動にある程度自信を持つことができると思いますので、そういった予防効果は非常に高いと思います。

上山

小林さんは、こういったPCR 検査、いかがですか。

小林

CT値の話というのは、私は聞いたことなかったので非常に分かりやすいと言うか、そういうところである種、境界線を設けるというのは、合理的な考え方のような気がしますので、やはり感染症の専門家の学者の方々ともオープンに議論して頂いて、ある程度、厚労省とか感染症の研究者の間でのコンセンサスを是非作って頂きたいなと思いますね。どうしても、厚生労働省は検査について、なるべく使うことについて消極的であり、やはり基準についても保守的に考えているんだろうと思うので、こういう社会的な検査が目的であれば、ここまでは使えるとか、そういう事を医学界として是非、コンセンサス作りをしていただければいいなと思います。

上山

今後、分科会で提案するとかそういうことは・・・?

小林

そうですね、ちょっと私は専門ではないのでなかなか難しいですけども、こういうアイデアがあるということは是非、一度聞いてみたいと思います。

■ポイント② 検査で「人に感染させない日」を作る

山口

経済を動かすための「社会的検査」。西原さんは、有効に使うためには「タイミング」が重要だといいます。検査を受けて、2~3日後にイベントがある、このタイミングが重要だということです。検査の結果が「陰性」だった場合、万が一、翌日に感染したとしても、新型コロナは感染から5日程度は人に感染させないことがわかっていると言います。こうしたことから、西原さんは「誤差を考慮して検査から2~3日は人に感染させるリスクはない」と考えていいということです。西原さん、タイミングが重要なんですね。

西原

その通りです。さらに正確に言うならば、その2、3日、イベントの2日前に受ける検査より、さらに4、5日前にもう1回受けておくと、さらに安全にイベントに参加することができると思うんですね。その感染するタイミングというのはいくつもありますので、そういった形で必要に応じて2回ぐらいイベントの前に検査を受けていただくと確実かなと思います。

山口

なるほど。そうしますと、例えば高齢者施設などで働く方々、やっぱり定期的な検査も必要になってくると思うんですね。定期的な検査の場合には大体、頻度どのくらいやればいいと思いますか。

西原

私自身は実は1週間に1回やってます。1週間に1回で絶対、大丈夫ということでは決してないんですが、やはり仮に途中で私が感染したとしても遡れるんですね。どこまでは大丈夫だったということになりますので、その後の調査等にも非常にポジティブな影響があると思いますので、1週間に1度ぐらいやればいいのかなと思います。

山口

なるほど。つまり理想は2、3日に1回だけど、ある程度それは柔軟に運用していいんじゃないかっていうことでしょうか。

西原

そうですね。

上山

それから西原さん、費用がちょっと気になるんですけれども、自治体にとっては社会的検査行うとしたら費用も問題になってくると思います。これズバリ、いくらぐらいでできるようになるんでしょうか。

西原

そうですね。私たちがこの精度管理された自費診療の唾液検査で、目標は4000円から4500円ぐらいでできるようなものを今、準備しようと企業と一緒に頑張っております。

上山

意外と安いのかなって気がしたりするんですけど、小林さん、自治体にとってはやっぱりコストって必要だと思うんですけど、例えばこの広島県では最大80万人の検査に10億円を超えるコストがかかるという話があって、批判されたりもしてますけれども、こういった検査はこの価格でというのは有効な気がしますね。

小林

検査の値段が益々安くなってくれることを願いますけれども、4000円というのは高いと、個人では高いような気もしますが、ただ自治体であれば、ある程度出せる金額かもしれませんし、ただ、おっしゃるように本当は2、3日に1回とか、あるいは1週間に1回っていうペースで、頻繁にある地域を区切って検査をやらないと、なかなか蔓延が防止はできないということだと思いますので、感染がくすぶり始めたところをピンポイントで検査をやるとか、そういう戦略的な使い方というものを上手く自治体の方では考えていただきたい。今、広島そういうことをやろうとしてるんだと思いますけど、80万人っていうのはちょっと多すぎると思いますので、なんかもう少し狭い地域を区切ってやるとか、タイミングを見てやるとか、そういったことがコストを抑えるためにも必要なのかなっていう風に思いますね。

上山

目的を持って検査するっていうのは大事なんだと思うんですけど、木内さんはこの費用については、誰が負担するといいのか、どのようにご覧になっていますか。

木内

企業とか個人の都合で「社会的検査」を受けるということだと、なかなか公的な支援を受けるのは難しいかなとは思うので、やっぱり自費でっていうことになるんだと思うのですが、毎週4000円か5000円だと、ちょっと高いなって感じですけども、本当に重要なイベントの時であれば、多くの人は負担できるのかなという気がします。そして、できればもっと下がるように技術革新が進めばいいのかなと思いますね。

山口

ちなみに西原さん、もうちょっとコストって下げられそうですか。どうですか。

西原

下げられると思います。実は、どうしてもその検体を郵送で送ったりするんですけども、ここに対して、やはり非常に今、社会的に過剰な反応が正直あってですね、相当がっちりした安全対策がとられてますので、その費用が下がればもっと検査の費用が下がってきます。

■ポイント③ 検体の選択で検査の精度向上に

山口

西原さんの研究によってもうひとつ、新しいことが分かってきたんですね。精度が7割で信頼できないとも言われるPCR検査ですが、検体によって、精度に影響があるといいます。まず唾液を検体とした場合、感染の初期はウイルスが検出されるんですが、発症から9日後から検出されにくくなる傾向があるそうなんです。一方で、この検体が「鼻咽頭液」鼻の奥を拭って取る場合には、逆に感染初期にはウイルスが検出されにくい。発症数日後に検出される傾向がある。つまり、初期の頃は唾液で検出されやすい。時間が経ってくると鼻咽頭液で検出されやすいということがあるそうです。

ですから唾液か鼻咽頭液か検体の選択が要は偽陰性の原因になっている可能性がある。つまりタイミングをうまく、唾液か鼻咽頭液で選択すれば、PCR 検査の精度をより高めることができるんじゃないかと考えられますよね。西原さん、いかがでしょうか。

西原

まさにその通りです。まだ実は世界的な研究でしっかりと、そのウイルスがどこから入ってくるかってことが確定はしてないんですけども、どうやらこのコロナウイルスは、味覚障害が出るというところとも合致するんですけど、口の中の粘膜から入ってくるんじゃないかと言われてます。ですから、感染の初期はやはり唾液が適した検査の検体になると考えられています。

■オリンピックにPCR検査の活用どこまで

山口

これを、日本がこの夏を迎えようとしている東京オリンピック・パラリンピックの検査に使えないだろうかという話が出てきてるんです。まず東京オリンピック・パラリンピックでは選手は、大会期間中少なくとも4日に1回、選手村でPCR検査を受けるという方針が示されています。選手の人数を確認しておきましょう。オリンピック・パラリンピック合わせますと、だいたい1万5000人くらいということなんです。

ちなみに他のスポーツでは、PCR 検査、こんなに使われてるんです。NBAでは2日に1回、NFLでは毎日使っているということなんです。西原さん、このオリンピックでは今、4日に1回という想定になってるのですが、いかがですか。

西原

観客を入れて、本当にフルに開催するという場合にはですね、その観客の方々がクラスターにならないようにすることが大事でありまして、そうすると観客の方って毎日ずっといるわけではありませんので、その方が出入りをする時に集中的に検査することで、クラスターの発生を防げるんじゃないかと考えてます。ですから4日に1度というよりは、その参加するスタジアムに入るときに検査をやるということです。

山口

今、もしオリンピックを開けたとしても無観客でやるんじゃないかと想定されている方も多いと思います。でも、今の話を伺ってると観客を入れることも可能になってくるかもしれない。そういう選択肢を考えられるんじゃないかってことなんですね。では具体的に見ていきましょう。期間中の観客・スタッフは今、想定されているのは約1010万人。1日最大92万人と大変な人数になります。一方、1日あたりの PCR 検査の最大能力は、日本は15万3466人ということで、今の状況ですと、フルにお客さん入れようとすると、到底足りないということなんです。このオリンピックの期間というのは、オリンピックは19日間、パラリンピックは13日間あるわけです。

西原さん。これから仮の話ということで伺いたいんですが、もし観客を入れるということを考えた時に、もちろん移動ですとか、食事というリスクが付随してきますので、そういうことも検討する必要があるんですけれども、単純に、スタジアムに観客を入れるということだけを考えた時に、検査で観客を入れて安全性の確保、どのようにお考えになりますか。

西原

はい。可能だと思ってます。移動式の検査車、PCR検査車というプロジェクトを今、私たちの方で考案してまして、スタジアムに臨時で検査室を作りまして、1日に可能であれば1万人ぐらい、先ほどの3日間 PCR 検査の有効性があるとすれば3日間、そこに滞在して3万人やってしまえば、そのスタジアムに出入りする方の検査をすべて行うことができるんじゃないかと思ってますので、そういう企画案を今、ちょうど作っているところです。

■「観客受け入れには医療確保、感染抑制が必要」

上山

小林さん、今後、無観客なのか、観客を入れる、半分だけ入れるとか色々な選択肢があると思うんですよね。もちろん感染の状況も見なきゃとは思うんですけれども、そういった中で、どういう選択肢が良いとお考えですか。

小林

もちろん、観客フルに入れられるのなら、その方がいいと思いますけれども、ちょっと気になったのは、もし陽性が出た場合に、医療の現場が受け入れなきゃいけないと。病床がどうなのかとか、あるいは、お医者さんの数が足りているかとか、そっちの医療側の能力がちゃんと足りてるかどうかということも問題だと思いますから、それはやはり感染の状況が相当程度抑えられて、感染が収まった後で検査を沢山やればうまくいくだろうということだと思うんですね。そこは、これからの日本の中の国内の感染状況でかなり違ってくるのかなと思いました。

山口

そうですよね。だからこそ感染をなるべく抑えて次へつなげていくということは、大事になると思うんですけれども、木内さんいかがでしょうか。オリンピック・パラリンピックをやるかやらないか、その判断が段々迫ってると思うんですね。でも、そういう中で今、見てきたような、積極的な社会的な検査を展開していくと、例えばワクチンがない状態でもオリンピックを開ける、観客を、当然人数はフルにいかないにしてもある程度人数を入れられるかもしれない。こういう選択肢が見えてくるというのは大事だと思うんですが、どのようにお感じになっていますか。

木内

そうですね。お話を聞いてますと、やはり観客を入れるのと入れないのとの間で、感染対策の点からすると、各段の差があるなというのは正直思うわけですけども、ただフルではなくても、できるだけ多くの観客の方が入ってもらうように西原先生も取り組んでらっしゃいますので、まだ時間がありますので、是非そういった取り組みによって、できるだけ多くの人が観客として入れるようになればいいなとは思ってます。

山口

この辺り、小林さんいかがでしょうか。

小林

そうですね、ぜひ観客の数を入れられればいいなと思うんですが、なかなか感染の状況は予断を許さないところがあって、もしこれで下げ止まって、またリバウンドしてくるようなことがあると難しいかなと思いますので、是非、今の、この感染を下げる努力を我々、一生懸命やる必要があるんだろうと思いますね。

山口

西原先生、最後にお伝えしたいこと、どうでしょう。

西原

先ほど申しそびれたんですけど、プール法というのが今、少し注目されていると思うんですが、私たちの検査法ではプール法と組み合わせることによって、本当に1日に、1万人2万人という数が検査できると思ってますので、やはり、そうした体制を強化すれば、観客を入れてのオリンピックも可能になるかと思ってます。基本的に皆さんがやはり、普段から感染予防するというのは大前提ではあるんですが、今、感染数が減ってきた時こそ、この「社会的検査」を拡充すべきだと思ってます。

(2021年2月21日放送)