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#167

急拡大!!新型コロナ「変異株」全ゲノム解析“最前線”

全国で急速に拡大する、新型コロナウイルスの「変異株」にどのような監視体制が必要なのでしょうか。WHOのパンデミック宣言から1年余りが経過した2021年3月14日『BS朝日 日曜スクープ』は、変異をとらえる「全ゲノム解析」の最前線を特集しました。

■「国民に我慢…だけでは限界」「ワクチンは戦略物資に」

山口

全国に急速に広がり始めた変異株にどのように対応すればいいんでしょうか。ゲストの方々をご紹介いたします。まずは政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバー、東京財団政策研究所・研究主幹、小林慶一郎さんです。どうぞ宜しくお願いします。

小林

よろしくお願いします。

山口

そしてもう一方です。筑波大学・医学医療系 感染生物学部門分子ウイルス学分野教授、川口敦史さんです。どうぞ宜しくお願いします。

川口

よろしくお願いします。

山口

WHOがパンデミックを宣言してから3月11日で1年が経ちました。この1年で世界全体の感染者数はおよそ1億2000万人。260万人以上の方が亡くなっていますが、今も制圧したと言える状況ではありません。

こうした中、感染者数が世界最多のアメリカでは再びマスクをめぐる議論が沸き上がっています。ワクチン接種が進む中8日、CDCのワレンスキー所長が「ワクチン接種を終えた人同士の場合は、少人数であれば、屋内でマスクを着けず、ソーシャルディスタンスも取ることなく、会うことができます」と発言しました。さらに、テキサス州のアボット知事が「ウイルスから州民を守る、(ワクチンという)手段を得た」として10日からマスク着用義務の撤廃、商業活動の全面再開に踏み切りました。

こうした動きに対して、バイデン大統領は「何も問題はない、マスクを外そうなかったことにしよう」というネアンデルタール人のような考え方は何よりもしてはいけないことだと痛烈に批判しました。アメリカではマスク着用に今も抵抗感が強いようですが、小林さん。長期化する中で、人々が疲れて対策の実効性が下がるということが起きています。対応も難しいのではないですか?

小林

やはり、もう1年経ってますから、その国民がこの我慢をし続けるという作戦がもうちょっと限界にきているということは言えると思うんですね。もちろん我慢しなきゃいけないです。やはり感染症の対策としては、どうしても国民の行動を抑制するというところだけで、一本槍でやっていくというのがこれまでのやり方だったんですけど、やはり検査や疫学調査をもっと増やしていくなど、いろんな手立てを考える必要がある、そして、もし国民の行動変容を求めるのであれば、より大きな経済支援をつけて、そして、協力できるような体制を作るということが必要になってくるんじゃないかと思います。

山口

川口さん、WHOのパンデミック宣言から1年となりました。世界中でまだ感染が続いていますが、ここまで長引いている要因、新型コロナウイルスには何か特別な性質があるのでしょうか?

川口

いまサルでの感染実験など基礎研究も進んでいますけれど、今回のコロナウイルスの病原性が高いという研究結果は出ていないと思います。だからと言って、もちろん低いわけではないんですけれども、1つの要因として考えられるのは、これまで冬に風邪として流行していた従来の普通のコロナウイルスに対する免疫というのが、今回あまり役に立っていない。我々があまりにもナイーブであるということが1つあるのかなと思いますね。

山口

免疫がないウイルスだってことですか。

川口

そういうことですね。

山口

その辺りをこれからしっかり、私たち対応していかなくてはいけないということになると思うんですが、河野さん、やはり1年経ってきて、ワクチンを巡って自国優先という色んな国が出てきている。それから、国境の封鎖も続いているところも多いですよね。安全保障の観点からも色んな問題が出てきていると思うんですが、いかがでしょうか。

河野

ワクチンは明らかに戦力物資にもなってますよね。特に中国は中米、南米、それからアセアンASEAN等々に、ワクチンを提供してますが、当然、何も善意でやってるわけじゃなくて、その後のやっぱり、戦力環境という地図を自分たち優位にしようということだと思うんです。オリンピックに対してもアクセスやりましたよね、IOCに対して。逆にクアッド(日米豪印協議)の方も、今回、インドを後押しして、そしてインドでジェネリックですかね、後発薬、ワクチンを生産してもらうという対応をしたと思いますけども、このようにワクチンを巡って完全に戦力物資としてせめぎ合いが起こっているということだと思います。

山口

確かにクアッド、日米豪印で、そういうワクチンも大事にしていかなきゃいけないという、対中国も考えても色んなところでこの新型コロナの影響が出てきているということですね。

河野

そうですね、単なる医薬品じゃないです。もう完全に戦略物資と化してると思います。

■「緊急事態解除には検査や調査の態勢整備を」

山口

確認しておきたいのは菅総理が再延長のときに言った言葉です。「1都3県はほとんどの指標が当初目指していた基準を満たしている。しかし病床の使用率が高いなど依然厳しい人出が増加している地域もあり、いわゆるリバウンドの懸念も高まっている。2週間は感染拡大を抑え込むと同時に状況をさらに見極めるために必要な期間」と話していました。

総理が「状況を更に見極める」と言った2週間の折り返し地点、その病床の状況です。オレンジがステージ3相当です。1都3県全部これ病床使用率はステージ3のままということで、青の矢印は1週間前と比べてそれぞれ減ってきてはいるんですが、まだステージ3からステージ2に行くには20%下回らなくてはいけませんから、あと1週間でステージ2に行くかどうかはちょっと微妙なところだと思います。

小林さん、解除なのか再々延長なのか、今の状況からどんなことが言えると思いますか。

小林

病床の使用率については、ステージ3になったら解除しましょうと最初言ってたんですね。ただちょっと事情が変わってきているというのが2つあって、それは変異株が非常に増えてきたと。変異株は感染力が強いので、今までの基準の通りでやっていいのかという問題があると。それから、ワクチン接種をやるためには医療機関の負担を減らさなきゃいけない。そうすると、やっぱこれもステージ3で解除していいんだろうかという問題が出てくる。そこで病床の使用率を今、ステージ3の段階のものが多いわけですけれども、それでやっていいんだろうかという、解除していいんだろうかという問題。もうひと一つは、感染者の数がコントロールできなきゃいけないわけですね。やっぱり解除しても、また急に増えて「もう1回再宣言だ」ということになってしまったら、全く元も子もなくなってしまうので、解除するのであれば、ちゃんと感染者が低いレベルでコントロールされるという状況にならなきゃいけないんですけども、今の様子を見ると、すでに感染者が増えつつあるということ。変異株が流行ってくれば、またより一層スピードが早くなって増えてくんじゃないかということが懸念されます。

その両面から考えて、若干解除するのは問題があるかなという気はします。ただ、いろんな政治的判断もありますから、経済的な影響とか判断もありますので、やはり解除するのかもしれない。解除するのであれば、やはり検査をしっかりやって、感染者を抑えるという対策をしなきゃいけないです。これがまだ実は手ぬるいというかですね、手がしっかり出来てない。1つは高齢者施設を定期検査やるべきだという意見を分科会から言ってるんですけども、政府は「3月末までに1回は、高齢者施設の職員を検査します」ということを言っているんですけど、その後、定期的に検査やるのかどうか、はっきりしない。あるいは「民間の検査会社と協力して連携して検査体制を拡充しましょう」ということも、これも分科会から言っているんですけれども、政府は一応、連携しようという通知は出しました。でも、まだ紙が出ただけで、全然、連携の体制作りがちゃんとできてないんですね。そういう意味で、まだ手ぬるい感じがあるので、解除するんであれば、しっかりと検査や調査ができるように体制を拡充しなきゃいけないと、そういう問題があると思います。

山口

本当にそこが大事ですよね。

■季節ごとの感染者数から見えてくるもの

山口

確かに緊急事態宣言を再延長しても、この2週間で新規感染者数は下げ止まってしまった。多分、皆さんの気持ちに中でもやっぱりそろそろ疲れてきたとか、集中が続かないってところもあると思うんですよね。この下げ止まりを解消するには、川口さんはどんな対策が必要だと思いますか。

川口

最近の抗体検査で、どれぐらい市中に既に感染済みの方々がいるのかという調査がされていますけれども、諸外国が例えば10~20%で非常に高い割合を示していたのに対して、日本は1%前後と、これまでにある程度、感染を押さえ込むこと自身には成功しているのかなという印象です。現状、皆さんおっしゃっている通り、国民の疲弊も溜まってますし、これまで通り幅広く行動制限を強めても、効果は薄いのかなと思ってます。例えば、もう少し感染源になっていると考えられているところで、ピンポイントでPCR検査とか増やしていくと、やはりこれまでとは違う検査、宣言解除直後の導入を考えていく必要性があるのかなと思っています。

山口

それは、いわゆる攻めのPCR検査ということだと思うんですが、どういう所にやるべきだと思われますか。

川口

なかなか難しいところだと思いますけれども、例えば、去年も繁華街での検査の集中体制を作っていたかと思うんですけれども、それをやはり、もっと増やしてくということなのかなと思いますけどね。

山口

やはり街中、人が集まりやすい、例えば、飲食の場で特に声が大きくなってしまう、そういう場所ということですかね。

川口

だと思いますね。

山口

川口さん。それとご専門の立場から、これから暖かくなっていきますよね、この季節とこの新型コロナの感染の状況の関連は、どういうことが言えると思いますか。

川口

新規感染者のこれまでの年間の推移を見ていくと、いわゆる第一波、第二波、第三波と進んできたのが見てわかるかと思いますが、例えば世界でも多くの感染者を出しているアメリカとインド、それに日本を並べて見ると、季節のパターンが近しいアメリカと日本の新規感染者の増え方は非常に類似していきます。

山口

似てますね。

川口

はい。ここで見ることは、乾燥する冬にピークがきているということなのかと思います。一方、インドは、雨季にピークが来ていて、こちらは雨季に免疫が低下しているからだと推測されます。インフルエンザウイルスも同様ですけど、ウイルスは基本的に屋外で長く生存することはできませんので、夏場でも人に感染しなければ自然界で維持されることありません。なので、夏になって湿度が上がって、ある程度、免疫レベルも上がることで、あまり症状を出さない感染者が増えていくことが予測されます。なので、そういう無症候と言われるような人をちゃんとコントロールしなければ、夏の間にウイルスを各地に運んでしまいますので、最終的に今年の秋以降の感染の波がまた大きくなってくるというリスクが考えられるということなんですね。

山口

なるほど。ということはやっぱり今、ちゃんと対応しておかないと、また秋以降、大きな波がきますよ、ということですね。

川口

そういうことだと思います。

■対策は急務・・・急速に拡大「変異株」

山口

本当ですね。その専門家の方のデータとか、科学的な治験とかやっぱりそういう事を考えて、進めていかないといけないと思うんですけどね。こうした状況の中、「変異株」がここにきて感染急拡大しています。警戒感も強まっていて、田村厚労大臣は「変異株が継続的に各地で見られてきておりますので、それに対して十分な対策を打たなくてはならない」。分科会の尾身会長も「変異株については、間違いなく既存株にとってかわるプロセスが始まっていて、早晩 変異株が主流になると考えておいた方が良いと思います」と話しています。

注目されているのは「英国型」「ブラジル型」「南アフリカ型」の3つの変異株ですが、全国で今、このようになっています。昨日の段階でイギリス型が358人、南アフリカ型が19人、ブラジル型が8人です。例えばこちら一都三県なんですが、東京14人。青で囲ってあるのがイギリス型です。そして埼玉は40人と1人。40人がイギリス型で1人の緑がブラジル型です。そして神奈川21人がイギリス型で4人の黄色が南アフリカ型ということになるわけです。西日本を見ても、この変異株の感染がじわじわ広がってきて、次々と確認されているというところが見て取れます。

そして、ブラジル型をめぐってはクラスターも起きているんです。埼玉で18人がブラジル型の変異株に感染した疑い。このようなクラスターの可能性が指摘されているわけです。さらに、イギリス型も神戸でこういうことになっているんです。3月4日時点でイギリス型に感染した人が74人に上っている。これは新規感染者の中での割合を示しているんですけど、そのイギリス型の変異株の割合はどんどんどんどん増えて来ていて、一番新しいデータですと38.8%。その時ごとの新規感染者の内4割近くがイギリス型の変異株になって来てしまっているわけです。

小林さん、分科会ではこの変異株の急速な拡大、どのように皆さん、見ているんでしょうか?

小林

2つ言うと、1つは急速な感染力、感染力が非常に高いということですから、これまでの、そもそもステージの判断というものを変えなきゃいけないんじゃないか、そういう議論が少し出てきていますね。要するに、ステージ3とかステージ4の段階、ある種、感染者数で基準を決めていたわけですけど、それをもっと感染者を抑えておかないとコントロールできないので、感染力が変異株は1.5倍くらいあると言われてますから、そうするとステージの基準となる感染者の数を1.5で割った数、要するにもっと少ない基準でステージ3、あるいはステージ4と判断しなければ対応できなくなって来るんじゃないかと。そういうようなことを言われています。それが1つ。もう1つは変異株は一応、海外から来るものなんですね。問題があったなと私思うのは、やはり海外からの侵入を防ぐ、ある種、危機管理だと思うんですけど、その危機管理をやる、その基本的な心構えというのが、ちょっと政府の中で共有されていないのではないかと思います。どうなっていたかと言うと、変異株について情報が足りない時には国境を開いたままで、様子を見ようと、そういう判断をこれまでしてきたわけですね。それはある意味、外からの侵入を防ぐという目的と全く合致していないのではないかと私は思うんですけども、そういうことが今もされていると、これはもうちょっと、危機管理の専門家が入って、もう少し判断を変えていく必要があるんじゃないかと思いますね。

■下水調査で判明 去年12月4日には「変異株」

上山

変異株については、このような研究が発表されました。北海道大学大学院工学研究院の北島正章助教などの研究チームは、去年4月から国内で下水を採取して新型コロナの感染拡大を調査してきました。その中で、去年12月4日に採取した下水を調べたところ、「変異株」が発見されたということです。日本で感染者が確認される前から「変異株」の感染が広がっていた可能性を示しているのですが、川口さん、表面化している数字以上に変異株が広がっていると考えた方がよいのでしょうか?

川口

この下水疫学の結果は、確かに驚く結果で、かなり早いタイミングで変異株が日本に入っていた可能性を示唆するものだと思います。現段階で、感染例の10%ぐらいをランダムで抽出して変異株かどうか検査をしておりますので、実際の感染者数は先ほど出てきた発表者数よりも圧倒的に多いのかなと思います。そうは言っても、まだ主流ではないということは確かであって、今後さらに増えてくるという可能性が一番、課題なのかなということです。

上山

心配なのは、神戸で起こっているようなことが各地で起こっているっていうのは考えすぎだということで、いいんですかね。

川口

少なくても、10%のランダム抽出で、ある程度の傾向自身をつかむことは可能だと思いますね。

上山

今の数字自体は信じていいという事なんですかね?

川口

はい。パーセントとしては。

■「変異株」が重要な理由① 今年秋以降の感染の中心に

山口

川口さんは、この変異株についてなぜ変異株がこの非常に重要になってくるのか、こういう分析をしているんです。まず一つ目、今年の秋から冬の感染拡大は変異株が中心である可能性があるんじゃないかということですね。川口さん、これはどういう事でしょうか?

川口

まず、分科会の文献でもあったものでございますが、一例として、インフルエンザのケースを考えてみるとよいかと思っています。こちらのスライドでも書いてありますけども、インフルエンザウイルスは、秋から感染が広がり、それに伴ってウイルス変異が進行していきます。なので、そのシーズンの終わりのゴールデンウィーク頃ですかね、春ごろには違うウイルスになって進化していると。この春に誕生したウイルスが夏を越えて、その年の次の秋に流行する新しい株になると考えられています。なので、現在、主流になろうとしているイギリス型、ブラジル型、南アフリカ型のうち、どのウイルスが次のシーズンメインになるのかを精査するとということが1つ、大事だということですね。

山口

春。今をちゃんと見ておけば、この後の秋にどういう変異型が出てくるのか、主流になるのか、それが分かってくるということですよね?

川口

そうですね。

■「変異株」が重要な理由① 今年秋以降の感染の中心に

山口

そして川口さんが、もう一つ変異株が重要だと指摘しているポイントがこれなんです。ワクチン接種によって新たな変異株が現れる可能性があるんだと。これは川口さんどういう事でしょうか?

川口

まず、最初にすべてのワクチンがダメというわけではございませんが、今回のファイザーとかのワクチンは、基本的に筋肉注射です。そうすると誘導される抗体というのは血中に出てくる抗体です。一方、コロナウイルスというのは粘膜から侵入しますので、感染の防御には血中免疫じゃなくて、粘膜にできる免疫、粘膜免疫という事になります。そのため、まだ可能性の段階ではございますけども、今回のワクチンによって重症化は抑えられる。これは血中免疫によるもので、例えば重症化しない場合でも、非常に少ない量でも、ウイルスは生産され続ける可能性ということが考えられています。すると、このワクチン作られた免疫から逃れようとする変異、逃避変異と言いますけども、そのような変異がワクチン接種者の中で感染を繰り返すことで誘導されていく可能性があって、その結果、また変異株が増えていくという予測が立つようになっていきます。

山口

つまり、ワクチンができることはいいことなんだけど、それによって新たな変異が生まれていくということですよね?

川口

そういう事ですね。例えばですね、鳥インフルエンザウイルスの例が1つありますけど。こちらこのスライドの見方としては、横軸が時間で、この線がどれくらい細いかっていうのがどのくらいウイルスが進化したかという進化系統樹と呼ばれるものです。例えば、2000年より前は鳥インフルエンザウイルス大きな変異ほとんど見えてないんですけども、2000年に動物用のワクチンが開発されて、それ以降、様々な変異が起きて、多様性が爆発的に増加したということが知られています。こういう事が今回どれくらい出るかが1つの問題ということですね。

■「変異株」監視体制の現状は…

山口

では、この変異株をどのように見つけ出すのか。どのようにとらえるのか、その監視体制が非常に重要になってくるわけです。現在の体制を確認します。まず保健所でPCR検査をして、陽性の方が出ます。その場合に、大体5%~10%分の検体を送るところもあれば、一部の自治体ではすべての検体を送るところもありますが、送り先というのは全国にある地方衛生研究所です。この地方衛生研究所で変異株を見つけるPCR検査を行います。数時間で結果が出るということなんですが、これで変異株の疑いが出れば、仮に地方衛生研究所で解析ができないという時には国立感染症研究所に送ってゲノム解析をして確定する。それぞれの地方衛生研究所で、自分のところで出来ますよという場合には、そこでゲノム解析を行って、その結果のデータを送付して最終的に国立感染研で確定するということなんです。

変異株の監視体制を強化する中、重要なのは、1つが「英国型」「ブラジル型」「南アフリカ型」、すでに危険性がわかっている変異型を見つける検査。そして、もう1つが新型コロナウイルスの全ゲノムを解析し、3つの変異型以外も調べる検査です。今後、重要になるのはこの「全ゲノム解析」とも言われています。その最前線を取材しました。

■「変異株」監視のカギ 全ゲノム検査“最前線”

新型コロナウイルスの「変異株」とどう戦うのか?その研究の最前線がこの部屋です。

筑波大学 プレシジョン・メディスン開発研究センター 佐藤孝明センター長

「ここが次世代のシーケンサーの部屋でして…」

「これは遺伝子を解析する「シーケンサー」という機械。新型コロナウイルスのおよそ2万9千ある遺伝子情報全てを解析しどのような変異が起きているか見つけることができます。」

佐藤孝明センター長

「フローセルが2つ入るんですけども、この1つのフローセルでコロナウイルスの遺伝子が12時間で1500検体、生データを取ることができます。」

この部屋には3台のシーケンサーがあり、12時間で9000検体の全ゲノム解析を行うことができるといいます。

佐藤孝明センター長

「AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)のプロジェクトですでに数百検体解析を行っていますし、今月の末までは数千検体の解析をします。」

この研究で、驚くべき事実が判明しました。これはゲノム解析の結果を示す表。縦のマス目が1人1人、陽性者を示し、横のマス目が新型コロナウイルスのおよそ2万9千の遺伝子を示しています。

赤く記されているのは、中国の武漢で広がったウイルスと比べ変異していた個所。日本人が感染したウイルスの遺伝子は、すでにこれだけ変異をしているのです。

佐藤孝明センター長

  

「今イギリス型とかブラジル型とか南アフリカ型とか、言ってますけれども、日本発の変異型というのも考えられるので、しっかり全部遺伝情報はとっておくべきだ。」

変異を詳細にとらえることができる「全ゲノム解析」。これを大規模に行うため、重要な役割を担っているのがこのロボットです。

汎用ヒト型ロボット「まほろ」。人間が使う道具を使って、生命科学の実験などを行うことができる国産のヒューマノイドです。この「まほろ」が担っているのが、「前処理」と呼ばれる作業。実は、ゲノム解析では唾液などの検体を解析できるように処理する作業が複雑で時間がかかり、人間にとっては難しい作業でした。

 

RBI取締役 夏目徹CSO

「工程数がすごく多いのと、かなり訓練を受けた人が調整しないと、非常に難しい作業になります。人の熟練者よりこのロボットが行うと、だいたい1,5倍くらい有効率があがるというデータが出ています。精度と再現性、ヒューマンエラーがない、こういうことが大切。」

 

「変異株」の監視視体制を拡充するには、まほろのようなロボットの活用が不可欠だといいます。

夏目徹CSO

「人海戦術でやったら膨大な人件費がかかるので、検査を拡大する、解析を拡大するというのは非常に難しいと思う。ロボットは夜も働ける、週末も働けるので、人よりもたくさんできます。」

■「他のサイエンスの力も結集して対策を」

山口

新型コロナの変異型を見つける「全ゲノム解析」。筑波大学のベンチャーでは1日約6000検体、6000人の陽性者のウイルスを全ゲノム解析することができます。これまで1日の過去最多の感染者数は7949人ですので、かなりの数をカバーできる可能性があります。

佐藤孝明センター長は「ある自治体の陽性者数百検体を解析したところ、予想以上に遺伝子の変異があった。『日本型』という深刻な変異株ができる可能性もある。しっかり遺伝情報を集めるべき」「重症・無症状といった症状の違いも遺伝子解析でわかる可能性もある。敵をよく知るために必要」こう話しています。川口さん、全ゲノムを解析する重要性、どうお考えですか?

川口

これから一般市民にワクチンが接種されるのに合わせて、変異がもっと進む可能性があると思います。来期、現状のワクチンのままでいいのか、マイナーチェンジが必要なのか、考える上でも、日本独自の、こういった変異株のトラッキングというのは非常に重要な調査だと思いますね。

山口

そうですよね。そして何故これだけ大量の検体をゲノム解析出来るのか、その秘密がこちらなんです。汎用ヒト型ロボット「まほろ」です。人間と同じ道具を使って、全ゲノム解析の前処理作業を効率的に行えると。今、人が前処理作業をやると非常に時間がかかる、非効率だということなんですが、ロボットでやると非常にスムーズにスピーディーに出来るということです。このロボット「まほろ」を開発しましたRBIの夏目さんは「遺伝子解析の前処理は工程数が多く難しいが、「まほろ」は人間の熟練者よりも1.5倍くらい効率が上がる。高精度で、人のようなミスがなく、何回も同じ精度で行うという再現性も高い」ということです。

こういう国産のロボット、日本は非常にレベルが高いと思います。日本と言えば、やっぱりロボットを始めとして技術力が非常に高いと思うんですよね。小林さん、どうでしょうか。このコロナ対策として日本の技術力、本当はもっと生かせるものもあるんじゃないかなということも見えてくるんですが、いかがですか?

小林

本当にそうだと思います。こういうテクノロジーを使って、要するに医療の専門家だけじゃない、こういうエンジニアリングとか、他のサイエンスの専門家の力も結集して、このコロナ対策っていうのを作っていく、そういう必要があるんだろうと思いますね。

山口

川口さん、南アフリカ型やブラジル型にはワクチンが効きづらいという報告があります。変異株とワクチン開発、今後どうなっていくのでしょうか?

川口

いざ変異株が出た時に、もちろん、変異に合わせて、ワクチン作り変えていく準備が必要であるということになると思います。その際に、もし日本で流行したものが、欧米諸国と違っていたというときに、海外の生産者がどのくらい日本のために作ってくれるのか、それが未知数なのかなと思います。なので、やはり国産のワクチンの供給体制ということを構築するのが必須なんだと思っております。

山口

国産ですね。

川口

はい。

■「ワクチンは軍事的な面が…」国産化の重要性

上山

こういったお話を伺っていると、河野さん、思い出すのが、マスクや消毒液というもの当初はやっぱり輸入に頼っていて問題になっていたんですけども、今、お話にあったワクチンの国産化も、国策としてやっていかなきゃいけないような気がしますけどもね。

河野

ワクチンについてはですね、日本において過去に医療過誤等々で製薬会社が躊躇している、という背景もあって、こういう状況になっているということなんですけど、もっと根源的な話はですね。いわゆるワクチンというのは、ある意味の軍事的な面を持っているんですよ、細菌戦への対応ということで、例えばアメリカとか中国もそうだと思いますが、軍と民の共同プロジェクトで、ワクチンというのは要するに作戦遂行上の必要性もあって、そういう観点なんですよね。日本は全くそういう観点が抜け落ちてますから、したがってお金を投入する面でも、そういう観点がないので、ちょっと優先順位落とすとかですね、そういう事になりかねないと思うんですけども、だから、現実は、世界はそういう事だということなんですよね。やはり日本においては考え方がなかったので、ただ、今、こういうことに直面してますから、ワクチンの重要性、国産、これは是非進めてほしいと思います。

山口

国の戦略としていかなければいけないということですよね。川口さん、最後に、ウィズコロナとかゼロコロナとか色んな言葉があります。私たちはこれからコロナとどう向き合っていけばいいのか、どう思われますか?

川口

台湾などでゼロコロナを実現していますけど、それは地球全体で見れば、ゼロコロナではなく一部地域のみのゼロコロナです。それは短期的に見れば実現可能なのかもしれませんが、インバウンドや外国人労働者といった経済活動、社会活動との兼ね合いで考えると、それを維持するために非常にタフな水際対策が必要になってしまい、簡単ではないのかなと思っております。なので、ワクチンや抗ウイルス薬の開発というのが重要になってくると思っています。

山口

最後に小林さん、今おっしゃりたいこと、どんなことですか?

小林

やはり国民の我慢に依存するような対策は、もう限界来てますので、やはり色々な調査や検査、そういったものを拡充するということが必要になってくる。その時に問題は、今まで公衆衛生の政策というのは全部、医療関係者だけが決めようとしていた。医療ムラというか医療の世界だけで全部やろうとしていたところに無理があったと。やはり、先ほどのロボットのような、色んなサイエンスの知識も使うし、他の分野の社会科学など、他の分野の専門家も入って公衆衛生の政策というのを考えていく。そういう、システムを変えていく必要があるんじゃないかと思います。

山口

国を挙げて国の戦略として向き合うことが大事なんじゃないかということが見えてくると思います。では、小林さんと川口さんはここまでということになります。どうもありがとうございました。

小林 川口

ありがとうございました。

(2021年3月14日放送)