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#171

日米首脳会談で「台湾」言及 中国はどう見たのか!?

2021年4月18日、菅総理とバイデン大統領初の日米首脳会談が行われ、その共同声明には52年ぶりに台湾をめぐる記述も盛り込まれました。『BS朝日 日曜スクープ』は、中国が今回の日米首脳会談をどのように見ているのか、そして、今後の米中覇権争いにどう影響していくのか、中国分析の第一人者・遠藤誉さんともに分析しました。

■「台湾海峡の平和と安全」の意味

上山

ゲストをご紹介いたします。中国問題グローバル研究所所長 遠藤誉さんです。遠藤さん、どうぞ宜しくお願い致します。

遠藤

よろしくお願い致します。

上山

きょうは遠藤さんとともに、16日の日米首脳会談を受けて、中国がアメリカの対中国政策をどのように見ているのか、分析をして頂きたいと思います。それでは首脳会談で出された共同声明、主に中国に関わるところをポイントで見ていきます。まず台湾をめぐる記述というのがありました。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに両岸問題の平和的な解決を促す」。そして東シナ海、南シナ海については「東シナ海での一方的な現状変更の試みに反対。南シナ海での中国の不法な海洋権益に関する主張や活動に反対」。そして人権問題についてもありました。「香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する」。

菅原

こういったポイントについて、菅総理大臣が共同会見の中でどのように表現したのか、発言を見ていこうと思います。まず一つ目、台湾に関しては「台湾海峡の平和と安定の重要性については日本とアメリカ間で一致しており、今回、改めてこのことを確認いたしました」。そして二つ目東シナ海、南シナ海については「インド太平洋地域と世界全体の平和と繁栄に対して中国が及ぼす影響について真剣に議論を行いました」。そして人権問題については、「新疆ウイグル地区の状況についても、我が国の立場や取り組みについてバイデン大統領に説明し、理解を得られたと考えています」このように話しています。

上山

まずはやはり、今回の首脳会談で一体どんな記述になるのかと、非常に注目されていた台湾をめぐる表現なんですけれども、遠藤さんは、言及したことについて、表現も含めて遠藤さんはどのようにご覧になっていますか?

遠藤

まず、台湾という二文字を共同声明に中に入れるということには、日本にとっては凄いプレッシャーがあったと思うんですね。しかし、アメリカからの強い要求があってですね、まるで踏み絵のような思いでですね、この台湾という文字を入れた。蓋を開けてみれば、「台湾海峡の平和と安定の重要性」と、この言葉はですね、中国が何十年にも渡って使ってきたんです。両岸問題を平和的に解決しなければならない。台湾海峡の平和と安定を重要視していかなければならないということで、和平統一、平和統一というのですが、それをずーっと、何十年もスローガンにして、大きなキャンペーンもやってきたようなものですので、菅さんはおそらく、それを知っているブレーンがいてですね、この表現ならば大丈夫だろうというところで、こういうフレーズを選んだのかなと思います。また中国から見れば、それは私たちがずっと言ってきたことであって、あなたに言われる覚えはないというか、あなたに言われる必要はないのだけれど、だけど独立というような文字は全く入ってないし。

上山

台湾の独立。

遠藤

そうです。台湾の独立をそそのかす様な言葉がほんのわずかでも一文字でも入っていたら、これは中国激しい反応するのですが、

上山

そのように見ていたんですね。

遠藤

はいそうなんです。ですから今回はそんな激しい反応してませんね。

上山

中国からするとそういう見方がされるということなんですけど…

遠藤

そうです。拍子抜けをしたというような感じですね。

■中国メディアが報じた菅総理のマスク

上山

今回の日米首脳会談について、中国のメディアはどのように報じたのか、少し意外なところに着目していたんです。

菅原

首脳会談の直後に中国共産党系のメディア「環球時報」が報じたのは、会談の中身ではなく、菅総理やバイデン大統領がそれぞれの場面でどんなマスクを着用していたかというものでした。例えばアーリントン墓地では日米の国旗が入ったマスクをする菅総理。ハリス副大統領と会談する場面では白黒の二重マスクをするハリス氏に対し、菅総理は白のマスクしか着用していなかったというような内容の報道でした。

ただし、菅総理の白いマスクをよく見ると、ウイルスの遮断効果が高いN95をしているように見えます。

中国外務省はきのう深夜、日米に「内政干渉の即時停止」を求め、「必要なあらゆる措置をとる」とコメントを発表しました。それより前に中国の在米、在日本の両大使館が「強烈な不満と断固たる反対」を表明していましたが、本国の外務省が改めて反発を示した形です。遠藤さん、深夜になってから中国の外務省がコメントを出す、これは、どのように受け取めれば良いでしょうか?

遠藤

そうですね、非常に軽視している。マスクの報道があるように、軽く見ているという感じがして…

上山

軽く見ているんですか。

遠藤

そうなんです。17日の昼間、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVというのがあるんですが、そのCCTVの中に国際チャンネルというのがあって国際ニュースだけをやるんですけども、そこにかじりついてどう報道するかというのを見ていたのですが、30分番組なのに27分になってもまだ日米首脳会談のことを言わないんですよ。ずっと(18日から始まる)ボアオ・アジアフォーラムの話とか、他の事ばっかりやっていてですね、ようやく27分に日米首脳会談の話になったので、何を言うのか、かじりつくように見ましたところ、もう1分ちょっとで終わってイラン問題に入ってしまった。それぐらいですね、ここでどのように取り上げるかで、どれくらい中国が重要視して、これはけしからんという気持ちを持っているかが明確になりますので、私、何十年間もずーっと観察しておりましたから、そこのシグナルは嫌というほど分かっているつもりなんですけども、非常に軽視しているなと思いました。

■中国外交部のコメントが掲載されたのは…

遠藤

夜中になってからですね、突然、環球網とか、あるいは中国外交部、中国外務省ですね、Webサイトにちょっとしか載ってなくて、質問と回答という一組の問答が載っているだけで、ある記者が質問したのでそれに答えたというものなんですが、これは他のページを見ますと、ある記者が電話で質問してきたので、電話で回答したと書いてあるんですね。ですから果たして本当にその記者がいたのか、本当に質問したのかというのは非常に疑問で、自作自演じゃないかとさえ思えるんです。

16日の外交部のwebサイトをご覧ください。これはいつものwebサイトなんです、外交部かなんかがきちんと意思表示をした時にはですね、スポークスマンの写真が載って、そして、どの国のどのメディアが質問したというのが必ず書いてあるんですね。それがばーっと羅列して書いてあるのですが、17日のは、どこの国の何のメディアが言ったかというのも書いてないし、おそらく架空であって、本当はそんな記者はいなかったけど、電話があったことにして、自分が答えたい質問をしてきたことにした。つまり彼らが自作自演で自分で作ったものだろうとしか思えないのです。せめてこんなものでもやらないと怒ってないみたいになるのでやったっていう感じがにじみ出てるというふうに私には見えますね。

上山

ホームページ見ますと…

遠藤

今のホームページにそのように書いてあるわけですが、これは常套句ですよ。常に外務省、外交部が常に使っている言葉でこれはどんな時でも年がら年中使ってますから。

■中国が“制裁”に踏み出すとき

上山

ちょっと伺いたいところなんですけど、ただ深夜になったとはいえ、中国外務省が必要なあらゆる措置をとると言及したこと、これについてはもう一度、遠藤さんの見解をお願い致します。

遠藤

そうですね、必要なあらゆる措置というのは、これは日本の最大の貿易相手国は中国ですから、そうすると中国の水道の蛇口を捻りますよというようなことが、ちらちらとあちこちに書いてあるんですけども、水道の蛇口を捻るということは、なにかしらの経済制裁をする、あるいは、もしも彼らが本当に気に入らないと言うところに日本が踏み込んだ時には、例えばレアメタルの輸出を禁止するとかですね、それを制限していくとか、そういうような事をやる可能性も無くはない。でも日本が今の程度であるならば、まず何もしないと考えていいのかなと思います。その程度しかやってない、だから外交部は牽制球を投げただけだと思います。今は何もしません。

上山

この先の出方次第では、ということになるんですか。

遠藤

おっしゃる通りです。この先の出方次第では、可能な限りのあらゆる措置を取るので覚悟しておきなさいよ、分かったね、分かってるよねという感じですよね。「やらないよね」、という意味ですね。

上山

あともう1つ聞きたいのは、何をしたらその域に踏み込んだことになるんでしょうか?

遠藤

そうですね、ウイグルの人権問題とかに関する制裁をやるというようなことを国会で決議するようなことがあったら、これは入ってきますね。すぐさま制裁というようなことで、報復制裁ということで入ってくる。それからもちろん、先ほど言いましたように、独立をそそのかすような言葉が1つでも入っているようなメッセージを台湾に関して発するというようなことをやったら、それもすぐさま来ますね。激しいのが来ます、その時は。

■アンカーの眼「日米に温度差あり」

上山

木内さん、経済の引き締めは、選択肢としては可能性があるよというようなニュアンスもあるという遠藤さんのお話だったんですけれども、木内さんはこの日米首脳会談、どのような目線でご覧になっていたのか、『アンカーの眼』お願い致します。

木内

私は「日米に温度差あり」と書きましたが、表面的には首脳会談も成功に終わって、共同声明でも両国の協調が特に中国に対する政策、協調が演出されたということですけれども、実際にはかなり温度差があるんじゃないかなというふうに思います。バイデン政権の方は、いわゆる同盟国の結束重視ですよね。これは安全保障もそうですし、貿易もそうですし、気候変動もそうですし、人権もそうです。ですから、そこで全部同じ価値観を持って、結束して中国に当たるという、中国に対して非常に強い影響力を持ってくるだろうというのはバイデン政権の言うことですよね。どちらかと言うと、価値を共有するという、理念を重視しているところもあるように思うのですが、一方で日本は、安全保障、特に尖閣諸島の問題ではアメリカと協調したいというのは当然ですけれども、しかしながらウイグルの人権問題などではですね、制裁には加わらないということで、その時には中国からの経済的な、日中の経済関係に悪い影響が及ぶということを非常に警戒しているということなので、制裁までは踏み込まないと。今回の首脳会談で、それはアメリカ側からそれで良いですと、多分そういうふうに言われたということだと思うんですけれども、ですから現状ではまだ中国側からの経済的な制裁はすぐには受けないかもしれませんが、将来的にはやっぱりそういうリスクもあるので、できるだけ中国を刺激したくないと。ですから日本の方が自国の利益というか、実利重視の政策になっているということだと思うんです。ただ、アメリカから見ると、良いとこ取りだろう、ということになるわけですけどね。みんな同じ考えでやっているんじゃないのかって。ですので、この先やはり、アメリカと中国の板ばさみみたいな局面が、相当出てくるのではないかなと、バイデン政権のもとはですね。

菅原

今回の声明でいうと、良い落としどころだったということになるわけですか?

木内

声明文自体はそうだと思いますけれども、台湾とかウイグルの文言は入りましたけれども、それほど過激なものにはなっていないですし、先般の2プラス2とほとんど同じものですから、そこまで中国を刺激はしなかったのかなと思うのですけれども、ただこれから先はですね、やっぱりアメリカ側も香港の問題もありますし、人権面でも日本も結束しようという要請をしてくる可能性があるので、そうすると、日本としてはやっぱり非常に厳しいですね。中国との経済関係はやっぱり維持したいというところなので、やっぱり板ばさみになってしまうんじゃないかなと思います。

上山

そういう足並みが揃っていないところを中国が見越しているような気もしないでもないですけどね。

■半導体をめぐる米中の攻防

上山

今回の日米首脳会談は、経済分野での脱中国も打ち出しました。

菅原

会談後の記者会見でバイデン大統領が経済の分野で脱中国をアピールする場面もあったんです。「安全で信頼できる5Gのネットワークの構築を推進し、半導体などの重要分野でサプライチェーンに関する協力を拡大する」と、先端技術で台頭している中国への対抗姿勢をにじませた形なんです。

上山

ここの部分ですよね、遠藤さんはバイデン大統領の経済分野での脱中国の動き、これは、どのようにご覧になっていますか?

遠藤

はい、そもそもアメリカはですね、バイデンさんの前にトランプ政権の時に、トランプさんが台湾になぜちょっかいを出したかと言いますと、反中であるということを、自分がどれほど対中強硬策を実施しているかというのを選挙民に見せる、選挙権を持っているアメリカの国民に見せるというのが目的の一つではありますが、もっと重要な目的は、中国のハイテク国家戦略『中国製造2025』というのがあるのですが、それをつぶしてやれということが一番大きくて、この中で特に、5Gに関してアメリカは非常に立ち遅れていて、ファーウェイが本当に1人勝ちみたいな形で最先端を走っていたので、何とかファーウェイを潰したかった。ところが、どんなに制裁を加えてもファーウェイがなかなか潰れない。

そこで、ファーウェイの半導体を作っている台湾のファウンドリ(受託生産)企業であるTSMCっていうのがあるんですね。台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニーって言ってTSMCっていうんですけれども、このTSMCを中国大陸から切り離してしまえということで、台湾に色々とエールを送ってですね、そして一緒にハイテクを前進させていこうということで、協力しながらやりましょうと蔡英文総統に言ったところ、ものすごく蔡英文総統が嬉しくて喜んで…。そこでTSMCが台湾の工場で製造している最先端の半導体チップをファーウェイなど中国大陸の企業には提供しないということになったのです。そして今後はアメリカのアリゾナ州に工場を持っていくということで話がどんどん進んでいきまして、少し建設費が高いからというので滞りましたが、結局2024年から生産開始が決まりました。今年2月には、日本のつくば市ですね、筑波研究学園都市がありますが、そちらの方にも研究開発のための拠点を作ろうということでTSMCは動いています。

TSMCは世界最強の半導体ファウンドリですから、これを中国からひっぺがしさえすればですね、それはもうアメリカのものと言いますか、日本、日米こちら側、西側の人たちが半導体において勝つというぐらい凄まじい存在なんです。バイデンさんもハイテクにおいて、もしもアメリカが中国に立ち遅れるようなことがあったら、それはアメリカという国家が中国という国に敗退することになるということをわかっているので、何としてもハイテクを強化するということで、特別に予算を組んだり、力を注いでます。したがって、そういう意味で台湾がバイデンさんにとってもすごく大事で、脱中国サプライチェーンっていうのは台湾を中国大陸から引き離すことができるか否かで決まってきます。その意味でアメリカにとって台湾が重要なのです。台湾というのは大したものだと思いますよね。ハイテクだけでこれだけの存在感を示せるっていうのは。日本は学ばなければならないと思います。

上山

ということは、いわゆるトランプ大統領の時代から、いわゆるデカップリング(切り離し)というのは着々と行ってきたということなんですね?

遠藤

そうです。その通りです。トランプ政権時代からデカップリングを行ってきて、TSMCと中国企業との切り離しだけでなく、アメリカに引き揚げてきたアメリカ企業には、補助金をあげますよというようなことで、がんがんやってましたよね。なかなか企業は言うこと聞かなかったりということもあったりしますが、でもこれからはハイテクを制する者が世界を制するわけで、ハイテクには半導体は不可欠ですから、半導体こそが国家の命運を分ける勝負になります。ですから、世界最強のTSMCを持っている台湾が大事で、その最先端技術の中国とのデカップリングが分岐点になります。

■バイデン政権が打ち出す競争力強化策

上山

この辺り、木内さんはどのようにお考えですか。

木内

トランプ政権からデカップリングは着実に進めてきているということで、アメリカ経済が中国に痛いところを握られないように、ということがあるんで、結局は、デカップリングはイコール中国と対峙していくというか、対決していくという、そういうことだと思うんですね。特に、遠藤さんがおっしゃられたように、ハイテク分野では、中国に5Gとかで抜かれてしまっているという現実があるので、それに追いつくということですね。ただ私は、トランプ政権とバイデン政権は違うと思っていてですね、トランプ政権は、中国による例えばファーウェイに抜かされそうになると制裁をして抑え込むということをしてたと思うんですが、バイデン政権は、制裁が中心の対策ではなくて、自分の国でも頑張ろうってところがあるんですね。先般、バイデン政権、2兆ドルのインフラ投資計画を発表しました。すぐに成立するわけじゃないんですけども、その中には環境対策も入っているんですが、先端分野でですね、政府が支援をして競争力を高めるという、そういうのが入っているわけですね。アメリカは、もともと国家は企業の活動にできるだけ介入しないという、資本主義の国なので、私はそこも、むしろ修正してですね、国が支援する形で、まさに中国がやっていることですけども、先端分野では競争力を高めて中国に競合していこうということで、政策自体はやっぱり結構変えていると思います。

これ自体はですね、強くなった相手を制裁で叩くよりは、自分の国も中国に真似してではありませんが、お金を使って支援してと、先ほど、中国製造2025というのはまさに、中国は製造業、特に半導体などで世界の強国になることを目指す計画なわけですが、バイデン政権が打ち出したように、インフラ計画というのは、まさにそれに対抗するようなですね、アメリカ側のハイテク企業の振興策みたいなですね、ですから私は、制裁で叩くだけよりは、ずっとましな政策なんじゃないかなというふうに思います。

上山

遠藤さん、でもこれは、中国に対してはアメリカがデカップリングを進めていくと、中国としては、気に触ると言うか、これ中国に対しては厳しいメッセージになりますよね。どう受け止めているんでしょうか。

遠藤

中国はですね、だからこそ内需と外需、両方2つの路線でやっていくという「双循環」というのを進めています。14億も人間がいるので内需を高めていこうということと、外需に関しては「一帯一路」(中国主導の広域経済圏構想)、国や国際組織も含めれば200以上もその中に含まれていますので、アフリカ諸国との連携もありますので、そういったところとの交易を盛んにさせていくと中国は考えていますね。特に今、アメリカから制裁を受けているような、トランプ政権の時に制裁を受けたような中東の国々などと連携することによってですね、さらに人民元で色々と石油の取引をするというようなことも出来るようになるので、逆に中国は、メリットを生かして人民元を強くしていこうとしています。というのは、制裁を受けたところは米ドルを使えないという側面もあるものですから、そういうのを逆に利用して、人民元取引とか、人民元と相手国の通貨で石油の取引を行えるっていうメリットがあり、人民元の国際化につなげていこうとしていますね。トランプ政権時代に制裁をする国を増やしていきましたから、その分だけ中国に有利になっているわけです。

■台湾周辺で動く米中両国の軍

上山

その一方で、今回の首脳会談の直前には、アメリカ軍とそれから中国人民解放軍の慌しい動きがありました。

菅原

はい。軍事的な緊張です。まず南シナ海ではアメリカ中国双方の海軍が同時に展開し、睨み合う自体があったと4日に写真が公開されたんです。それについて中国メディアは、アメリカが中国に対抗する決意を示したと報じたんですね。さらに12日には、台湾の防空識別圏に中国の戦闘機が25機進入してきた。これは、去年9月以降最大規模だということなんですよね。あくまで現状ではこれ威嚇だと思うんですけれども、遠藤さん、将来的に中国が台湾に対する軍事的な行動、この可能性というのはどう見てらっしゃるんでしょうか。

遠藤

そうですね。台湾が独立を叫んだが最後、つまり台湾政府として独立を宣言するというようなことがあったら、これは2005年の反国家分裂法というのがありますので、これを発動して武力攻撃をするということをやると思います。しかし、独立を叫ばない限りは、中国は平和統一をしたい。平和統一にしないと、その後で統治はしにくくなると。2049年、つまり1949年に中華人民共和国が誕生しましたが、建国100周年記念までには、どんなことがあっても台湾を中国大陸と統一すると、これは平和統一でやるというふうに考えてますので、色んな手を使ってくるのではないかなと思いますね。そもそも戦争をやる、今の時点で短いスパンで考えますと、今の状況ですと確かに昨年、アメリカのペンタゴンが9月に中国軍の強さと米軍の強さを比較して、中国軍の方が、ミサイルとか造船技術においてアメリカ軍よりも強いというようなリポートをペンタゴン自身が出している、アメリカの国防総省自身が出しています。

「えっ」と思うような報告書がございましたけども、しかし、やっぱり軍事力全体で言ったら、何と言ってもやっぱりアメリカには今の時点では、まだ勝てない。それから非常に短いスパンで言って、コロナが影響しているとなると、その期間にっということがあるかもしれませんが、全然総体的な、全体的な軍事力から言ったら、まだまだ勝てないので、そうすると100%勝てると計算された戦争でないと、中国は絶対にやらないと思いますので、まずやらないだろうなと。6年以内に必ず攻撃するというふうにアメリカが煽ってる感じがありますが、それはちょっと違うと思いますね。それと中国はですね、もし戦争したら社会は不安定になります。中国共産党は、一党支配体制を維持することが最大の目的でございますので、目標ですので、国家課題ですので、だから一党支配体制が乱れるようなことは絶対にやらないという側面もありますから、なかなか戦争に踏み込むということはしないだろうと私は思っております。

■「2024年の台湾総統選が分かれ目に」

上山

ただ、台湾の方々は中国との統一に関してはかなり反発もなさるんじゃないかと思うんですけれども、その中で中国はどう統一のアプローチをしていくつもりでしょうか。

遠藤

そうですね。それは難しい話ですが、おっしゃる通り、非常に統一というものに関しては、今どんどんどんどん絶対嫌だという人たちが台湾の中で増えてきています。というのは2019年の元旦に習近平が台湾もいずれ1国2制度で統一していくと言ったんですね。そのために、ものすごく台湾の人たちが反発いたしまた。というのは1国2制度の香港であれだけ激しい民主化デモがあってですね、あれだけ可哀想なぐらい弾圧を受けているという状況の中で習近平がそんなことを言ったので、1国2制度なんかが実施されたら、私たちは第2の香港になってしまうんだよ、と言って、どんなことがあっても1国2制度なんかは反対だと。だから統一は反対だというふうに、台湾の人たちは呼びかけ合ったものですから、2020年の民意調査っていうのがあったんですが、台湾を独立させるという民意がそれまでは15%だったのに2020年では27.7%にまで増えたんですね。これは過古最大の値なんですよ。

一方、国民党というのは、今の政権、蔡英文さんは民進党ですが、国民党というのは中国と1つになりましょうと、統一しましょうというのを掲げておりますので、国民党が主張するところの統一を支持するという人は5.1%しかいなかったんですね、2020年の民意調査で。ということは、あとは現状維持とか色んなのがあるんですけども、少なくとも統一するということに賛成してない人たちが95%もいるという状況がある。だからこんな状況の中ではですね、独立を叫んでいるのとほとんど同じになるので中国は軍事行動を活発化させて、台湾を威嚇していると。選挙がありますから、2024年に総統選、その時に国民党が勝てば、威嚇は無くなるでしょうけど、ここのところがすごく分かれ目になるかなと思います。

上山

ただ中国としては、今すぐではないとしても長期的な視野で台湾を統一へということは念頭にはあると思うんですけれども、そういった状況に対して、例えば日本ですとかアメリカとかはどう向き合っていけばいいと遠藤さんは思われますか。

遠藤

そうですね。やっぱり台湾にエールを送っていくと。台湾とタイアップしながらハイテク分野、例えば先ほどのTSMCなどともですね、一緒にやっていったりとか、友好的にやっていくのは、何も中国から責められる話ではありませんから、そういう交易をどんどん増やしていくといいかなと思いますね。と言うのは、台湾経済の40%は大陸頼みですので、そこを中国は利用して民意をコントロールしようとしてますから、そこのところに手を差し伸べていくということが必要なんじゃないかなというふうに考えます。

■人権問題と「西側の価値観」

上山

遠藤さん、改めてになりますけれども、今後日本としては、アメリカとの狭間で苦労しているところがあるんですけれども、中国とはどういうふうに向き合って行ったらいいというふうにお考えでしょうか。

遠藤

そうですね。もちろん中国から制裁は受けるでしょうけれども、日本にも高い技術がありますから報復制裁をすればいいわけで、その意味では人権問題ですね、ウイグルの人権問題に関して超党派の議連の人たちが横に繋がって、人権侵害制裁法というのを通そうとしてますね。これを何としても今国会で通して日本は西側の価値観の中の国なんだということを見せていく、ということが大事なのではないかと思います。

上山

なるほど。制裁があったとしても人権についてはきちっとものを言っていくべきだという事なんでしょうかね。

遠藤

はい、そうです。菅さんは言うべきことはちゃんと言いますとおっしゃったわけだから、それは言ってくださいよ、というふうに思いますね。

上山

木内さんはこの辺り、制裁があったとしてもこういうことをきちっと言っていくべきなのかどうか、どのようにお考えですか。

木内

やっぱり譲れない価値観というのはあると思うので、今、アメリカが言って譲れない価値観はあまりにも広すぎてですね、もう少し価値観で共有できる部分を探していくような努力も必要なんじゃないかなと思うんですね。人権問題を許さないというのは、それはその通りだというふうに思います。

上山

アメリカがデカップリングをしていく中で日本としては中国について行くのか、アメリカについて行くのか、この辺り、どのようにお考えですか。

木内

もちろん政治的にはアメリカ、経済的には中国につければ良いんですが、そう上手くはいかないですよね。やっぱり日本の役割というのは、私はやっぱり仲介役だと思うんですね。アメリカは不変の価値観があるということで、中国側はそれには相容れないと決めつけてる感じがしますけれども、実際やっぱりもっと協力できる部分を探していくことによってですね、世界が本当に2つに割れていかないようにするという、そういう重要な役割を日本は担っているんじゃないかなと思っています。

上山

わかりました。遠藤さん、きょうはありがとうございました。

(2021年4月18日放送)