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#189

岸田内閣が発足 自民党総裁選とキングメーカーの闘い

自民党総裁選は、岸田文雄氏が勝利し、第100代内閣総理大臣に就任しました。総裁選投開票3日前の2021年9月26日、『BS朝日 日曜スクープ』は、自民党内の実力者、キングメーカーたちの闘いを特集し、合わせて、対抗する野党の戦略をお伝えしました。

■総裁選「自民党全体を底上げ」「野党の政策まで」

上山

自民党総裁選の投開票まであと3日となりました。新たな総理候補達の闘い。そして水面下で激しさを増すキングメーカーの闘いを見ていきます。では本日のゲストを紹介します。永田町や霞が関に独自の取材ルートを持つ、元テレビ朝日政治部部長でジャーナリスト・末延吉正さんです。よろしくお願いします。

末延

よろしくお願いします。

上山

そして、共同通信社 編集委員兼論説委員、久江雅彦さんです。よろしくお願いします。

久江

よろしくお願いします。

上山

4人の候補で争われている今回の自民党総裁選。投開票が迫る中、動きも活発になっています。今回、非常に目立っているのが「討論会」です。この一週間だけでもBSや民放のテレビ番組、さらにはオンラインという形も利用して、連日のように4人の候補そろっての討論会が行われています。末延さん、ここまでの4人の政策論争どうご覧になっていますか。

末延

8月8日でしたか、まだ総裁選の話が出ない頃、この番組に岸田さんがおいでになって、真っ当な、正当な政治へ戻せということを、つまり保守政治と言いながら忖度ばかりではダメだと、その話をされたでしょ。あの頃、もう一人仕掛けた人がいて、それは安倍さんと勉強会を積み上げていた高市さん、保守とはこういう事なんだというのを月刊誌に発表して、政局を仕掛けた。あのお2人は、だから政策を聞いていてもよくまとまっている。岸田さん、敗北から1年、覚悟を決めて出てこられたからコミュニケーション能力が凄く上がっている。

河野さんの場合は、緊急避難と言うか、菅さんがあそこまで追い込まれるという前提はなかったから。菅さんが裏で動く形で急きょ出てこられたから、昔おっしゃっていたことと、今回おっしゃることの、どちらの河野太郎で行くのかが少し荒っぽくまとめてあるかなと。野田さんがいいのは、子供とか女性とか障害者、そういうマイノリティの部分を自民党の中でちゃんと忘れないようにする、という存在感を示した。そういう意味では面白かったんですが、皆さんちょっと上品で、もうちょっと激しく、政策論争を激しくやって、政局はあまり激しくしないという、そっちの方がいいんじゃないですか。

上山

自民党内だと、ちょっとお互い遠慮して配慮してみたいなところはあるんでしょうか。

末延

やはり直ぐ後ろに総選挙がありますから、自民党全体の人気を底上げしたいという感じは合意点としてある。その辺は上手いと言うか、ずるいなという感じはしました。

上山

久江さんはこの4人の議論をどのようにご覧になっていましたか。

久江

予定調和じゃないでしょうけど、善人でいい人と言われている透明感のある岸田さん、一匹狼の河野さん、高市さんは嫌がるんでしょうけど、タカ派とも言われるし、保守のいわゆる右側の人、という事で行くのかなと思いきや、いわゆるハト女と言われている野田聖子さんが出たと。私、結構これが大きいと思っていて、鵺(ぬえ)って言えば鵺だし、バラバラと言えばバラバラなんですけど、多様性を結果としてアピールしたことになる。何よりも最後の野田さんは推薦人含めてなかなか広がりがないと言われてたんだけど、実はこれ、野党の政策と基本路線が丸かぶりなんですよ。だから衆院選をにらんだ時に、野田さんが出ると決まった時に、野党の私の知り合いは、結構がっくり来ていましたね。LGBT、女性障害者、枝野さんが訴えようとしていることを言ったので、そういう意味では、図ってやった訳じゃないんだけど、この自民党の鵺(ぬえ)的な、なんでもアリというのが結果としてウイングを広げてですね、強さを見せたなということだと思います。

末延

野党の「すぐやれる7つの約束」があったでしょ、あれみんな野田さんのところで出ている。だから、あれは確かに久江さんのおっしゃる通り、参ったって感じはあると思います。

■コロナ対策「科学的見地で、きめ細かく」

上山

ここで4候補の陣営をみてみます、菅原さん。

菅原

4人の候補ですが 河野氏が麻生派、岸田氏が岸田派、高市氏、野田氏は無派閥となっています。

菅原

それぞれの候補者を支持する主な議員ですが、河野氏を支持するのが、菅総理、石破元幹事長、小泉環境大臣、森山国対委員長らです。小泉環境大臣は支持の理由を「コロナで日本も世界も変わる時に、自民党も変わらなければいけない。そのときに誰が党風一新できるか答えは明らか」と述べています。

岸田氏を支持するのが、甘利税調会長、細田元幹事長、石原元幹事長。甘利税調会長は「党改革の『ファーストペンギン』は、紛れもなく岸田文雄さんに他ならない。あとから改革を述べることは誰にだってできる。勇気をもって危険を顧みず、最初に行動を起こすことに価値がある」と話しています。

高市氏を支持するのが安倍前総理、西村経済再生担当大臣です。安倍前総理は支持の理由を「コロナ禍の中、国民の命と生活を守り、経済を活性化するための、具体的な政策を示し、日本の主権は守り抜くとの確固たる決意と国家観を力強く示した高市早苗候補を支持する」と話しています。

そして、野田氏を支持しているのが浜田元防衛大臣、三原厚労副大臣です。三原厚労副大臣は支持の理由を 「有事である今の日本には、人の痛みに寄り添う温かさを持つ『日本の肝っ玉母さん』の包容力と決断力が必要」と話しています。

上山

4人は外交や安全保障、社会保障など議論していますが、誰が総裁、総理になったとしても、まず取り組む必要があるのが「新型コロナ対策」です。専門家からは秋冬に第6波がくる可能性も指摘されています。4候補の新型コロナ対策がこちらです。

第5波では入院できず、自宅療養中に亡くなる人が相次いだことについて、医療体制の強化策として、河野氏は「非常時の指揮命令系統の見直し」、岸田氏は「中核病院を指定し病床確保」、高市氏は「早めに治療薬を投与できる環境整備」、野田氏は「緊急時のホスピタルを国が設置」など掲げています。

上山

片山さんは4人の候補のコロナ対策をどうご覧になっていますか。

片山

 

第5派が今、ほぼ終息に向かっていますよね。そういう状況の中で、切迫感とか危機感が、社会もそうですけども、4人の皆様も薄れてきているのかなという印象があります。でも、いずれ総選挙が終わって自民党が勝てば、どなたが総理大臣になっていて、ひと月かひと月半くらい経つと12月が来るわけです。おそらく第6派ということに多分なるのだろうと思います。その時に、これまでの菅政権と同じことをやるとすると、また国民に協力してくださいね、自粛してくださいね、お酒だめですよ、みたいなことをやることになる。でも、いい加減、国民はうんざりしていると思うんです。今やらなければいけないことは、実はこれまでに既にやっておかなければいけなかったんですけれど、1年半の間に、感染経路としてはどういうところが一番リスクが高いのか、どういうところが自粛をお願いしたけれど、ここはあまり感染リスクがなかったとか、そういうことをもっと科学的に分析しなければいけないと思うんです。データはたくさんあると思うんです。

そういう意味で言いますと、最近になってやっと注目され始めたのが、換気の重要性です。今まで政府は、コロナは接触感染か飛沫感染だと言ってきたんです。空気感染といいますか、エアロゾル感染。閉じられた空間の中で微細な粒子が空気が滞留してそれが感染源になっている。政府はこのことをあまり言わなかったんです。したがって、お店の方も、感染対策としてアクリル板をつけています、手指消毒しています、だからうちは完璧にやっていますと言うところが多いんですけれど、実は換気をやらなければいけないんですね。そういう、換気も重点的に取り入れた、新しいというかこれまでとは修正した感染予防対策というものをきちんと打ち出して、それを元にして、どういうところはやはり自粛してもらわなければいけない、でも換気をしっかりしたところはいいですよとかですね、もう少し科学的見地に立って、きめ細かい政策を打ち出さなければいけないと思うんです。それをやる気があまり見えないなと思います。

■『菅総理の意趣返し』安倍前総理からの電話

上山

今回の総裁選では、菅総理が河野氏の支持を明言しました。末延さんはその理由に注目しているんですね。

末延

今度の総裁選に緊張感を持たせているのはこれではないかと思うんです。

上山

菅総理の意趣返し。

末延

横浜ショックの時もまさかと思っていた菅さんは、仕事はやってきたという自負がある。ワクチンも最後には、追いついていった。なのに自分が(総裁選に)出られないんですよ。現職の総理がああいう形で引かざるを得ないというのは異常なことなんです。さらに異様なことは、総裁選に出られなくなった現職の総理が後継の名前を言うということも、ちょっと、宰相の取るべき政治作法ではない、普通はあり得ないんです。こういう場合は引いて静かに見守る。菅さんは、かつて安倍さんの番頭さんだったわけです。なぜ自分が支持されなかったのか云々ということは後で説明しますが、このキーワード(菅総理の意趣返し)が緊張感を持たせている理由かなと思います。

上山

菅総理大臣ですが、安倍前総理を官房長官として7年8か月支えました。後継者として支援を受けるなど、2人の間には強い絆があるように見えたんですけれど、ここまでのいきさつを改めて見てみたいと思います。菅原さんお願いします。

菅原

総裁選断念までの流れを確認していきます。まずは先月8月30日のことです。菅総理が二階幹事長に幹事長交代を申し入れたんです。そして翌日、総裁選を先送りしまして党の役員人事を行った後、先に解散をしまして衆議院選挙を行うという動きが報じられました。しかし、翌日9月1日に菅総理、総裁選の先送りについて否定したんです。そして翌2日、菅総理が二階幹事長に再出馬、総裁選に出るという意向を伝えたと報じられたんですが、その翌日、一転して再出馬しないことを表明したんです。末延さん、まさに激動の5日間で、菅総理の発言が二転三転してしまったということがあったのですが、この背景で何があったんでしょうか。

末延

(8月)30日から4日間、小泉進次郎さんが連続して菅さんのところに行った。口の悪い人は、他の人が誰も行かなくなったからだと言っていました。最後に小泉進次郎さんが涙を流して「名誉の撤退を」と言って、若手の声を伝えに行っていたという解説もあるんですが、一番大きいのは、まず二階さんに支えられていたことで、麻生・安倍と二階・菅の力関係。この番組でやりました「赤坂議員宿舎4人組」、あそこに森山国対委員長も入れて毎晩毎晩、相談しているわけです。

これと第1派閥、第2派閥の安倍さん、麻生さんとの力の均衡の上に乗っていたのが、菅総理だったわけです。ところが追い詰められて、二階さんのほうが強すぎるから切れという声が伝わってきて(二階さんを切った)。二階さんを切った段階で菅さんから見れば、言われる通り切ったんだから、あそこでもう一度、安倍さんと麻生さんは菅再選支持と言ってくれると思っていたけれど(言ってくれなかった)。何が起きたかというと、31日夜に毎日新聞電子版で解散説が一気に流れた。総裁選をぶっ飛ばして、9月中旬解散という話。ボクあの夜忙しくて寝られなかったですけど、安倍さんが電話で最終的に、自民党が絶対に負けることになりますから、それ(解散)はあり得ないということを菅さんに伝えたんです。

上山

それは末延さんの取材で、そう出たんですか。

末延

間違いないです、それは。そういう意味で言うと、解散というカードでぶっ飛ばしてくということも出来なくなった。あの時、次に出てきたじゃないですか、週明けの(9月)6日に党改革人事をやって、異常なことだけれど、選挙の前に党改革人事をやるといった。

上山

人事を刷新すると。

末延

その時に受ける人がいなかったと言われていて、人事権も使えなくなった。二階切り、解散で総裁選回避、人事で最後の転換を図ろうとしましたが、3回とも失敗しているわけです。その流れの中で最初の話に戻ってくる。安倍さんや麻生さん、特に安倍さんは自分が支えてきた人です。安倍さんを支えた名官房長官ですから。あの2人の関係は面白いですよ、喧嘩をしたりする関係ではないんです。

上山

どういう関係なんですか。

末延

パイプが繋がっているんです。だけど後見をどうするかというときに、やはり間違えたのは、菅さんたちが二階さんと組んで、石破さんという麻生おろしとか安倍批判をやった人とわざわざ組んだことで、敵対関係の亀裂が大きくなったということが今度の総裁選で緊張感、ある種の恨みみたいな、そういう感情論を呼び起こしてしまったんだと思っています。

■菅総理と二階幹事長「反岸田で一致」

上山

今回の総裁選の告示、当日17日には菅総理は河野氏支持、河野さんを支持するという形で表明しましたけれど、こういったことは異例なことなんですね。

末延

ちょうど1年前、去年の4月頃です。菅さんを取材していた時に、まだ安倍さんが病気、退陣ということは分からない頃です。もうそろそろ河野っていうカードで、自分は勝負してもいいと思っているとおっしゃっていました。自分は出ないとおっしゃっていた頃、去年の春頃です。なぜそういうことが出たかと言うと、当時は安倍さんの後継は岸田さんであると。霞が関を挙げて(岸田さんを)やるということで、出身校が開成高校で開成会という集まりがそこのホテルであって、安倍さん側近の北村さんとかですね、内閣情報官からNSS国家安全保障局長やられました、ああいう人が音頭を取って霞が関を挙げてやると。開成出身の読売新聞のナベツネさんもそうじゃないかみたいなことで。その頃、菅さんを取材したとき、なぜ岸田さんなんだと、改革派でもないのに、みたいな批判をしていて、決定的に評価がないんです。二階さんと菅さんが一致していることは、反岸田というところ。二階さんは選挙区でぶつかっていることもあるのですが、この2人が唯一、一致しているところはそこですよね。

久江

そうです。

末延

去年くらいに話をずっと戻して。菅さんは最初から河野カード。ただし、河野さんというのは、形は麻生派なんです。だから麻生さん、安倍さんが推す、割と正統派のオーソドックスな候補で出てくるのか、そうするとまた流れが違ったけれど、菅さんが後ろで力を持つことによって出てきた河野さんは、石破さんや二階さん側に行ってしまった。反安倍、反麻生の改革派とくっついていますが、政局的に、真っ二つに割るような形で河野さんが出てきたところに、この先の政局がかなりガタガタするんじゃないかというような状況が出てくる原因になっていると。それは、やはり名官房長官としていい仕事をして、喧嘩もしない、パイプも繋がってはいるけれど、なぜあの時、安倍さんは私の支持ではなかったんですかという感情があるんです。

菅原

実際に菅総理の中で安倍前総理の言葉が今も残っていて、遺恨という形にはなってしまっているんでしょうか。

末延

いえ、それだけだとは言いません。政治家の難しいところは、1つの政局で1度判断を間違えた場合に次に打つ手が逆に出てしまう。今回はそういうことだったのではないかと。菅さんは特に政局にもの凄く自信を持っている人です。第2次安倍政権も自分が作ったという自負があったわけですから。それが故に過信とは言いませんが、政局の、目の前の読みは間違いないと打っていった手が全部外れていったと、僕はそういう風に見ています。

上山

菅総理の意趣返しという形がしますね。

末延

安倍さんや菅さんサイドを取材してきて、あえて言葉にすればこういうことかなということで、安倍さんにぶつけてみたら、「いやいや(菅さんの)気持ちはわかるよ」と、おっしゃっていました。

■「小指と小指をからめた関係」

上山

今回の総裁選ですけれども、河野さんについては、いわゆる「小石川連合」を組んだということが言われています。河野さんが石破さんそして小泉進次郎さんと手を組んだということなんですけれども、ただ、この石破さんは、河野さんが所属する麻生派のトップ、麻生さんとは因縁があったわけですね。菅原さんお願いします。

菅原

2009年のことです。麻生政権の時に農水大臣だった石破氏が内閣の一員にも関わらず、当時の麻生総理に退陣を迫りました。以降、麻生氏は石破氏に不満をもっていて、2018年にも「“派閥を解消する”と言って無派閥の会を作り、それを石破派に変えた。言っていることとやっていること違うのは、あんたじゃないかと全員もれなくそう思ったと思いますね」と発言しています。久江さん、今回、河野氏が石破氏と手を組んだこと、世論の人気を集められる一方、決選投票での麻生派の協力に影響しませんか?

久江

石破さんと河野さんの連携はですね、メディアを通じて実相とややずれているところがありましてね、河野さんがやっぱり石破さんの議員会館の部屋を訪ねて、サシで「石破さんお願いします」じゃなくて、午前9時から衆議院第一議員会館全部の議員を回って、その中のONE OF THEMとして、石破さんの部屋を訪れているわけですよ。しかも、当初予定されていたテレビカメラもスチールカメラも麻生さん側の意向で無しになったわけ。 つまり、世間で見るとすごくハグして抱きしめ合っているようだけども、小指と小指を絡めたぐらいなんですよ。河野さんは、麻生さんの家から家出して勘当されたんじゃない。総裁選という旅に出ているんです。だから戻ってくるわけです。だって勘当しちゃって家出しちゃったら、麻生派は真二つになっちゃうじゃないですか。何にもいいことない。だから逆に、石破さんの方にしてみれば、多分、河野さんが完全に家から出てきてね、「僕と一緒に新しい自民党作っていこう」と言うように必ずしもなっていないところで、多分、100点ではないと思います。70点か60点くらいかもしれない。そこは、どうしたって進次郎さんと3人でやっているとみんな横一線で見えるけれども、じゃ麻生さんのもと、河野さんが別に背を向けてきているわけではなくて、まだ本籍麻生派にあって、今、総裁選の旅に出ている途中、また戻るわけですから。

上山

片山さんはここまで、いかがですか。

片山

私は一つはね、派閥の力がやっぱり落ちた、派閥の長の力が落ちたなっていう印象は一つありますよね。ひと昔前ですと、今回のように派閥の構成員がそれぞれ「自主投票です」なんていうのは、長としては非常にみっともないですよ。派閥の長の力が落ちたのは、それはやはり資金も昔のように派閥の親分が面倒を見るというわけでも必ずしもないし、それから選挙の顔になると、派閥のトップはあんまり選挙の顔ならなくて、むしろ党首の顔ですよね、総裁の顔ですから、そういう意味で派閥の力が弱くなると言うのはそうだろうと思います。

片山

もう一つの印象はですね、今、日本は企業改革の一環で、コーポレートガバナンスコードを作って、企業統治改革を政府が進めているんです。その中で、悪い企業の例としてですね、前の社長とか会長とかが相談役なんかに就いて、依然として権勢を振っていて、現役の取締役とか管理職の人たちが、社長の方を向くんじゃなくて、相談役の方を向いて相談に行っている。こういう企業ではダメですよ、ガバナンスがなっていないということです。そうした観点から自民党を見ますとね、企業統治改革で大掃除をされなければいけない組織の典型例のような気がするんですね。やは総理をやったような人は、もう自分は権力闘争から身を引き、後は、淡々と後進を指導したり、相談にのったり、それを自分の権力欲からではなくてやってですね、あとは回顧録を書いたりして余生を過ごす。歴代のアメリカの大統領がそうですけどね、自民党の重鎮のみなさんもそういうことをやったほうが私はいいような気がしますけどね。

上山

アメリカではそういう話し、聞かないですよね。日本ならではですよね。

片山

トランプ大統領がどうするか分かりませんけれどもね。

上山

今回の総裁選の注目点、久江さんにもフリップをご用意いただきました。久江さんが注目する政局キーワード、「安倍・麻生 VS 菅・二階」です。

久江

これは先ほど末延さんがおっしゃった通り、菅さんと二階さんが正面切って別に握ってるわけじゃなくて、敵の敵は味方的な要素があるんですよ。要するに、菅政権とはざっくり言うと、安倍・麻生のAA同盟と2Fこと二階さん。この上に成り立ってきたわけですよね。今回は二階さんも色々推薦人も散らしているし、河野さんとも別に明言してるわけでもない。安倍さんも高市さんで、多分、麻生さんは岸田さんでしょうから、なんかバラバラに見えるけども、根っこの部分は、安倍さんと麻生さんで、やっぱり良きにつけ悪しきにつけ批判もあるでしょうけども、自民党のある意味、屋台骨とか柱だった部分があってですね、その大きなところを崩さないようにするという流れと、派閥は持っていないけれども、敵の敵っぽい感じで結果、結ぶ形になりそうな菅さんと二階さんが、世間的に人気の高い石破さん、小泉進次郎さん、そして総裁候補の河野さんというところで、最終目標を目指して対抗している構図なんですね。だから、二階さんの派閥あるいは菅さんの菅グループ含めて、数の上では劣勢だけど、そこをやっぱり世論の浮力と言うか、リニアモーターカー、磁場を、下からぐっと上げて、そこでなんとか行けないかなと言うのが菅さんと二階さんだと思うんですよね。そこはもう考え方で、要するに家に例えると、安倍さん麻生さんというのは、長年やっていて柱がしっかりした日本家屋、いわゆる家の柱ですよ。やっぱり菅さんと二階さんというのは、今の石破さん進次郎さん河野さんのところは、家というよりもグランピングの、キャンプと言うか、世論の風で膨らんでいる感じがあってですね、ちょっと一見見栄えがいいんだけど、ちょっと風吹いちゃったりすると、もしかしたら飛んじゃわないかっていうのがあって。

上山

大本はテントだっていう。

久江

要は柱がない。今、それは選対を見れば明らかで、やっぱり石破さん進次郎さん河野さん、非常に受けもいいし、頑張ってらっしゃると思うんだけれども、なにぶんその選対の中の櫓がですね、ちょっととても権力闘争やってきたような人たちがいないなって言うような。菅さん一応、総理やってますしね、必ずこういう時には、いわゆる政治偏差値が高い人たちがですね、権力闘争に長けた人たちがですね、助さんやったり、角さんやったり、弥七が出てきたりしてですね、大体この勢力を拡大してくもんですけども、簡単に言うと、将棋で言うと、何となく王将っぽい人がいるんだけど、みんな歩兵みたいなイメージでですね、少し空中戦のほうに重点が置かれ過ぎていて、足場、柱がちょっと固まり切れてないかなという印象を受けますね。

■3候補に推薦人…二階派の実情は!?

上山

二階さんですけれども、今回、大きく目立った動きが見えてない中で、各候補に対する推薦人のばらけ方ですね、見てみたいと思います。菅原さんお願いします。

菅原

各候補の推薦人、色んな派閥の議員が混じり合っています。この中で注目すべきは二階派です。河野氏、高市氏、野田氏には推薦人を出していますが岸田氏には出していません。キングメーカーとされる二階幹事長は岸田氏を絶対に勝たせたくないとも伝えられています。久江さん、二階幹事長がどのような動きを見せているか。

久江

二階さんもさることながら、二階派を継ぐと言われている武田良太総務大臣とか含めて活発な動きをしてるんですが、結局、数字を見ると、岸田さんところ以外に、別に保険というわけでもないし、個人で行っている人も実はいるんですけど、結果的にちょっと保険をかけての形になっていると。武田良太さんなんかは誰でやってるかと言えば、河野太郎さんなわけですよね。今の流れで行っちゃうと、色々、張ったはいいけれども、岸田さんになってしまうと、昔で言う非主流というかですね、もう過半数取ってる上から、おんぶお化けみたいに乗っかっても別に来なくていいよという話になっちゃうので、ちょっと数の上だけ見て岸田さんになる場合には、二階派は勝ち馬に乗る云々という話にはなくなっちゃうかもしれませんね。

上山

末延さんは二階派の動き、どのようにご覧になっていますか。

末延

僕が注目していたのは、小泉進次郎さんと石破さんが揃って会見した時、自民党改革しなきゃいけない、じゃあ誰を倒すんだって。悪いのは安倍さん麻生さんのところ、敵はそっちだみたいなニュアンスでしたよ。あれは僕は違うんだと思っていてね。要するに、若い人が選挙が危ないと思ったのは、二階さんがもう、田中角栄さんを超える歴代最長の幹事長で、辣腕でなんでもありで、二階大幹事長になったわけです。菅さんがそれに乗っかってやり過ぎて、それで人気がない。だから二階さんも菅さんも全部含めて、もし長老を批判するんであればそっちにターゲット行かなきゃいけないのに、どこと組んだかって言ったら、石破さんは、二階さんのところにいちいち説明に行って、最後まで出馬するか明確にしなかった。しかも河野さんは、石破さんに何かお願いに行ったような形でメディアでは流れたわけですよ。そうすると何か政局的に動いている人たちだなという部分が出てきて、すごく反発を呼んだというのが僕の見方なんですね。改革をやるときに、例えば小泉純一郎さんなんか、もっと単純にど真ん中を突いてきて、自民党をぶっ壊すって言うんですから。

もう一つは、テクニカルにはコロナで地方の演説ができなかったでしょ、街頭の。演説の画が繰り返し繰り返し流れていると、もっとわーっと相乗効果になったんですが、ネットの中でやってますから、ネットの中で世論はできますが、増幅効果はあまりないんですよ、コミュニケーション論の話から言うと。その部分は菅さんたちが考えたほど、人気者が力を発揮できてないということになってね。二階さんは、久江さんがおっしゃるように、今回もし岸田さんだったら終わっちゃうんですよ。でも、河野さんは死なないんですよ。なぜかって言ったら河野さんは、お父さん(洋平さん)が息子を頼むって言って麻生さんに預けていますから、麻生派としての河野は残りますから、今後のやり方によっては、修復はいくらでもできていくということがあるんでね。ここは大きく自民党がひとつになって、今後、総選挙から来年の参議院選を迎えるか、それともかなりガタガタした形になるのかは、今回の結果によって相当分かれると思いますね。

上山

確認なんですけれども、今、巷で言われているのが、二階さんは、岸田さんを決選投票に残らせないように、1回目の投票で高市さんを二階派がごっそり応援するという話もちらっと出ていたりしますが、久江さんはその可能性、どのようにご覧になっていますか。

久江

それはあまり正しくないかもしれないですね。二階派が丸ごとと言っても、二階派47人いるんですけれども、私の計算だと、そもそも7人くらいが高市さん。もうがっちり行ってますので、もちろん河野さん支持する人もいます。野田さんもいるので、ごっそりと言ってもね、そんなにごっそりじゃないんですよ。

上山

それほどのパワーを持ちえないということですか。

末延

そうですね。武田良太さんなんかは河野さんなんですよ。

久江

もう岸田さんをやると言う人もいるわけ。むしろ二階派の一部、それが10人か十何人か分かりませんけども、もし党員党友で高市さん、伸びてきそうになった時に、場合によっては我々が乗れば、高市さん2着にできるぞというのは、二階派が丸ごとではなくて、今、言った通り一部であって、その時にむしろポイントになるのは、竹下派の参院とか、あるいは野田さんを支持した20人のうち8人が二階派なんですけど、それ以外の12人とかね。二階さんが丸ごとと言うのは、なんか二階さんが全部キングメーカーっていうイメージで作られちゃった話で、数字で見たら単純で、ポイントは竹下派、とりわけ参院の20人と野田さんを支持する20人とみたいな、そのONE OF THEMに二階派がいるというわけですよ。

上山

そう言ったお話だったんですね。

末延

もう一緒に動くということ、二階派はないですから、すでに。

■対抗する野党は!? 衆院選へ動き加速

菅原

総裁選後の衆院選挙に向けて、各党が新たな政策を打ち出しています。立憲民主党は低所得世帯への住宅手当、消費税率5%への時限的な引き下げ。公明党は18歳までの子供に1人一律10万円給付。日本維新の会は生活に必要な最低限の金額を一律に給付するベーシックインカムの本格検討。共産党は生活が困窮している人に一律10万円給付。そして国民民主党はすべての国民に一律10万円給付。立憲民主と同様、維新、共産、国民民主も消費税引き下げに言及しています。新総裁が率いる自民党と闘うことになる野党について久江さんはどのような所に注目していますか?

久江

結局、この総裁選もそうですけども、バラ色お花畑で終わってしまったら何の意味もなくて、言ったことをやってくれるかどうかというところなんですよね。そのためには、野党が共闘して一定の議席を取る。もっと言えば政権を取ることなんですけども、今回の総裁選を機にして、野党共闘が結果として加速する形になったというのは私、非常に良いことだと思っているんです。他方ですね、とりわけ、その核心部分であるところの、いわゆる共産党とどうやるのか、組むのか云々というところで、最も日本で大きい組合の団体である連合、かつ、そこが支持している国民民主党、ここがいわゆる市民連合の野党政策協定に加わらなかったりして、バラバラ感と言うか、原発、自衛隊、天皇制、その他のところで連合と共産党に少し揺らぎがある。そこが心配と言うか、アキレス腱が見えた部分があるんですけど、とはいえですね、実は結構、安倍政権、菅政権以来、野党が出していた政策を先食いしてやったのが物凄い多いんですよ。だから、どうせ野党が言っていることだからってことは、私は決して馬鹿にできないと思っていて、野党の政策にあるもので良いものは、どんどん、このコロナの状況なんで、やっていくべきものはどんどん進めていって欲しいなと思ってます。闘いはもちろん、あるんですが。

上山

今回の総裁選では、やはり新型コロナ対策も含めた菅政権への不満というのは、国民にあったわけで、そうすると、その受け皿というのは、通常考えますと末延さん、野党になるのかなと思ったんですけれども、今一つ、そこが流れ切ってないような気がするんですけれども。

末延

平成の30年かけてやった政治改革の結果が2大政党だと言った。だから普通なら、上山さんがおっしゃるように、ここで野党はどういう政策だという話になるのが普通なんですが、どうしてもばらけたままの、小池さんの前回の、希望の党騒動で割れたまま修復が完全に出来ていない。選挙戦術を巡って、選挙に勝つには共産党含めて全部共闘しなきゃ勝てないんですよ。だけど政権を取りに行くときには政策でどう分けるかという、その仕分けの部分がなんかすっきりしない。菅さんでいてくれれば勝てるからみたいな空気がずっとあっただけなんですよね。

久江

最後まで菅さんの最大の影の応援団は野党だったわけですから。

末延

そういう電話をもらったりすると、冗談なのかと思ったら、本気なんです、結構。それでは駄目なんで、やっぱり政権を担える体力を、まずこの解散総選挙で養う。都市部ではやっぱり野党は行けますからね、そこをやっぱりしっかり、みんなで1つになってやっていかないと。優等生的な、その都度その都度きれいな正しいことを言おうと思うんじゃなくて、骨太に、我々に任せてもらって大丈夫だよという安心感を皆さんに与える。そういうメッセージの発し方、整理の仕方が大事だろうと。野党は特に頑張らないと、国会も開いてない状況ですから、これはあんまり良くなくて、おそらくどこかで本当は、大連立してもいいぐらいの国難なんですよ。僕は大連立の話が出ればいいのになと思ったけど、与党からも野党からも出てこなかったんで、まずは選挙で民意を問うて、そこからそういう事も含めて国民のためにもっと切実感を持ってやってもらいたいです。

上山

片山さんは野党の戦略について、どのようにお考えですか。

片山

先ほど久江さんが言われましたが、選挙については4党で政策協定結んだりして着々とやられてるんですけどね、では、もし政権が取れた時に、共産党とはどういう間柄になるのか。そこが非常に不透明で、これは心配のタネです。心配と言うのは、共産党も政権に入ってもらいたいと思う人もいれば、入ってもらいたくないと言う人もいると思うんですね。ただ私なんかは、仮に立憲民主党が中心になって共産党抜きで政権を作ったとして、その時の内閣の顔ぶれはどうなるんだろうか。今の立憲民主党中心の中でちゃんと揃うんだろうかと。ドリームチームが出来るんだろうかという、別の観点での心配もあるんですよ。

上山

人材が本当に揃っているのか。

片山

ええ。だから過去の経験も踏まえますと、ある程度、主要閣僚はこの人がやるんですというようなことを示した方が、示せるかどうかわかりませんが、でも示した方がいいと私は思います。もう1つは、立憲民主党は、今回の政権公約でも赤木さんのファイルの問題とか全部出せと、こう言っています。それはいいんです。ただ、過去の経験に照らしますと、では自分たちが政権取った時に、自分たちに都合の悪いこともちゃんと出しますかということが問われるわけです。赤木さんの件は自公政権がやった事だから、出せとは容易に言えるんですね。

上山

もちろんその覚悟は持っていて欲しいですよね。

片山

そうです。立憲民主党は自分たちのやったことも全部さらけ出すという覚悟が出来ていますか、というところが私なんかはとても気になるし、その点は見ていてまだ確信が持てないですね。

■「少子化対策は最優先」「統治機構のあり方を」

上山

いよいよ3日後には新総裁が決まる事になりますけれども、皆さんにはそれぞれ新総裁、ゆくゆくは総理になるわけですけれども、どんなことを期待するのか伺っていきたいと思います。久江さんはどんなことを期しますか。

久江

まず目の前のコロナとかですね、あるいは給付金、経済、生活再建とか、これはもう当然のこととして、やはり今の少子化、日本が2050年代に1億人を切って、最終的には2100年に6000万とも8000万とも言われていて、もう地方に行ってしまうと商店街どころか空き家だらけになっていますし、これはやっぱり選挙と言うと、どうしても目の前のこと、特に今、コロナですから仕方ありませんけれども、やっぱり一国の宰相、リーダーには、この50年後。100年後とは言わないです、30年後、50年後、田舎では祭りも出来ないし消防団も集まらない、自衛隊の一兵卒以下、Cクラスっていうんですけど、ここはもう充足率70%。もうこういう現状にやっぱり目を向けて、もうちょっと中長期の視点でこの国をどういう形の、どんなような国に持って行くのか。昔のように脅威対抗型や、ただ伸びてマッチョ型、ちょっとそれはもう、現実問題おそらくこのまま行くと難しいと思います。そういう意味で少子化に最も力を入れて、なるべく抑制的に減らしていくという政策を期待したいと思いますね。

上山

長期的な国の在り方を見せてほしいですね。末延さんはどんなことを期待していますか。

末延

僕は、政治と官僚制度の関係を正常化してもらいたい。例えばイギリスなんかは、同じ議院内閣制ですが、官僚の中立性を守るっていうのが法律であるんですね。だから政治主導のゆがんだ形はいけなくて、政治が主導するのは良いんですが、政と官の関係、日本の統治機構改革です。これをどういう形でちゃんとすれば向こう30年、40年、50年が組み立てられるか。そのことをトップに立つ人は分かりやすく語ってもらいたい。記者会見で2回質問がダメだとか、そういうのは止めてもらいたい。怖がらずに、堂々とトップとして国の形、自分のやりたいことを、はっきりと自信を持って言ってもらいたい。やっぱり最高指導者としての誇りというか威厳を持ってやってもらいたいと思います。

(2021年9月26日放送)