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#190

岸田文雄総理が誕生 党役員と組閣に見る自民党内の力学

自民党の岸田文雄前総理大臣が総裁選に勝利し、第100代内閣総理大臣に就任しました。岸田内閣発足前夜の2021年10月3日『BS朝日 日曜スクープ』は、総裁選の舞台裏を特集するとともに、党役員人事や組閣から見える、自民党内の力学を分析。さらに、衆院選に向けた野党の戦略を議論しました。

■「麻生氏と宏池会が前に出る人事」

上山

あす(10月4日)の臨時国会で、自民党の岸田文雄・新総裁が第100代の内閣総理大臣に選出され、夜までには岸田内閣が発足する見通しとなっています。総裁選での勝利から人事の策定に至るまで、岸田新総裁の決断とキングメーカーの思惑を詳しく見ていきます。では本日のゲストを紹介します。元テレビ朝日政治部長でジャーナリストの末延吉正さんです。よろしくお願いします。末延さんには、先週に続いてのご出演となりますが、岸田新体制の陣容が少しずつ見えてきましたね?

末延

ちょっと惜しいのは、論功行賞一番手の甘利さんがバンと幹事長に座って、人事の電話を甘利さんがかけていると流れちゃって、岸田さんになったという新しさが最初にうまく出ない。甘利さんには「政治とカネ」の話がありますから、それがちょっと残念だなって感じが1点。もう一つは、安倍・麻生の影と言いますが、安倍さんの影、あんまりないですね。むしろ麻生さんですね。だから、きょう、後で、戦後体制の保守本流のことを(アンカーの)杉田さんと話したいと思っているんですが、二大潮流がある、その中の安倍さんがずっと前に来ていたのに対して、麻生さんの保守の宏池会系、これが前に出たような空気を感じさせる人事です。後で詳しく説明しますが、岸田さんがもう少し前へ出てこないと。

上山

岸田新総裁がもっと出てこないと。

末延

安全運転なのかもしれないけど、最初、一番目立つのが甘利さんなのはあんまりだよ、っていう感じですよ。

上山

もう少し岸田さんのカラーを出すべきだと。

末延

慎重な方だから、少しずつということ、総理になられてからということなんでしょうけど。

上山

そして、共同通信社・編集委員兼論説委員の久江雅彦さんです。久江さんが先週、この番組で紹介してくださった票読みの状況が投票までの3日間でどのように変化していったのか、後ほど、お話を伺います。よろしくお願いします。

久江

よろしくお願いします。

上山

自民党の新総裁となった岸田さんは、人事のポイントについて就任会見でこう話していました。「総裁選で争った河野、高市、野田の各氏は党内で能力を発揮してもらいたい」「中堅・若手を大胆に登用する」「老壮青のバランスを見直す」。この方針がどう生かされたのか、自民党役員人事から確認します。菅原さん。

菅原

党運営の中心となる自民党四役ですが、幹事長は甘利明税制調査会長です。早い段階から岸田支持を表明し、陣営の選挙対策本部・顧問を務めました。

政調会長は高市早苗前総務大臣です。総裁選の1回目の投票では3位でしたが、決選投票で岸田陣営と共闘し、岸田氏の勝利に貢献しました。総務会長は福田達夫衆議院議員です。当選3回で抜擢人事となりました。若手議員らと議員連盟「党風一新の会」を設立し、派閥一任ではない投票行動を訴えました。自身は1回目も決選投票も、ともに岸田さんに投票したと公言しています。そして選対委員長が遠藤利明元五輪担当大臣です。岸田陣営の選挙対策本部長を務めました。

■「安倍前総理は10年レンジで自民党の安定を…」

上山

岸田総裁の役員人事、その勝利を支えた安倍前総理や麻生副総理の意向が色濃く反映されていると指摘されています。久江さん、まず自民党ナンバー2の幹事長に麻生派の甘利さん、これはすんなり決まったと考えていいのでしょうか。

久江

まず副総裁に、麻生太郎さんが座ったっていうのが大きいんですよ、ここにはいないですけど。それ飾りの副総裁じゃなくて、昔の金丸さんとかですね、要は、無任所の副社長だけど全体を睥睨する、見渡す、グリップする。

現実的に、実際、岸田さんは、麻生さんに討論をしっかりやってくださいということで、今まで官邸一局集中で、政治が官邸で行われていたんですけども、この高市さんの政調会長含めてですね、これから党がちょっとよみがえりと言うか、活性化する。その善し悪しは別にして、そういう風になることがあると思います。その前提で、まずそのいわゆる「3A」ということの麻生さんが副総裁と、そしてこの甘利さんが幹事長ですよね。

高市さんもご存知の通り安倍さんが総力を挙げてやったと。この福田達夫さん、実はこれは岸田さんのサイドの人事だと思うんですね。形式で見ると細田派なので安倍さんということになるんですけども。

上山

ここは岸田イズムが、岸田さんカラーが出ている?

久江

そうですね。ただこれも、実は逆に福田達夫さん、非常に真面目で、お酒飲んでいる時でも必ずメモを取ったりですね、本の名前を言うと名刺の裏に書いてあるとかですね、非常に勉強家で、私も何度かご一緒しているんですけど。

上山

福田ノートがあるっていう感じなんですかね。

久江

ノートというか、すごい紙に書いている、すごい勉強家なんです。ただ一方でね、総務会は自民党の事実上の最高意思決定機関なんですよ。民主主義にある意味、最も近いところ、選ばれた人たちの、そこの選ばれた人。そこが当選3回生で一体この党の重みはどうなったんだということを言うベテラン議員もいるのも確かです。

全体の派権構造で言いますと、やはり先ほど末延さんおっしゃった通り、安倍さん麻生さんの中で、麻生さんの色が濃いということです。もう1枚皮をめくると、やはり甘利さんが意外とですね、いいとこ取ってるなと。もちろん幹事長もそうですし、実は甘利さんに近い山際さんが経済関係の閣僚で内定してますよね。あと甘利さんの下に、田中和徳さん幹事長代理、梶山弘志さん幹事長代行ということで、このお2人は経産関係の繋がり、あるいは神奈川の繋がりがあってですね、「3A」と言われたけど、結構、甘利さんがこのミクロの局面ではいいとこ取っちゃったよねと言う人が、ここのリンゴの芯棒の中ではそういうことを言った人がいます。

ただ一方で全体、大きなお皿の、5年10年を見渡したときに、派権構造は、麻生さんの年齢とか、今後の代替に考えますと、やはり安倍さんというのが根っこにあるということで、全ての道やはり、最終的に私は安倍さんに通じているんじゃないかなって感じがします。

上山

5年10年かけて安倍前総理に続くというか。

久江

5年10年の間、安倍さんの頭の中では、多分10年レンジだと思いますけれども、やはりこの自民党を安定させてやっていくということが中長期的に見ると、そこがやっぱり大きいかなと思います。安倍さんが勝利したということです、はっきり言ってしまえば。人事だけを見たら、麻生さん、甘利さんってことなるんですけど、もっと長い目で見たときには、そういう基本構造がある程度見えてきたかなというところですね。

■甘利幹事長起用と麻生副総裁の“重し”

上山

末延さんは甘利さんの幹事長就任はどのようにご覧になってますか。

末延

甘利さん、先ほど言ったように「政治とカネ」の話があって、力はあるけど表へ出られなかった。閣僚は難しいですから。但し、幹事長というのは政治家にとって最高峰ですから。最初から岸田陣営の選対を事実上仕切って、それで人事の連絡も一緒にするという。僕は安倍政権のときに組閣の取材をかなり細かくやってましたが、あれだけは総理が誰にも見せずやるもんなんですね。それがちょっと今回は異様な感じがして、そのぐらい甘利さんを岸田さんが信頼している。

その分の押さえというか、91年にスタートした同じ宏池会の宮沢政権の時に、小沢さんが3人の実力者(総裁候補)を面接のために呼びつけたと話題になった、あのとき小沢さんが強すぎたんで、途中からどうしたかと言うと、宮沢さんは金丸副総裁を入れることで、中和させた。おそらく、そういうアドバイスをした人がいて、麻生さんが重し的に(副総裁で)入ってバランス取るということが一点。

それから今、久江さんも言われた点、僕も同じなんですが、福田達夫さんがやった、90人を集めた「党風一新の会」、おじいさん(福田赳夫)が池田内閣を攻めたとき「党風刷新連盟」をやった、あそこから名前を取っているんですね。あの中には、若手の官僚出身の非常に優秀な岸田派の若手5人衆とかいう、財務省とか出身の若手がいて、その人たちがかなり入ってですね、あるいは岸田さんと同じ出身高校の開成高校出身とかね、そういう意味では福田さんは細田派なんだけど、細田派というのは安倍系、お父さんの安倍晋太郎さんに安倍晋三さんでしょ、福田赳夫さん福田康夫さん福田達夫さんと来る福田系、二つの流れがあるわけですよ。源流は、安倍さんのおじいさんの岸さん(岸信介元総理)が作ったものですが、福田達夫さんはもちろん細田派なんだけど、どっちかと言うと安倍さんとは距離があります。若手の会の中心も、割と岸田派の若手5人衆が中心みたいな感じはする。この人たちがグループのまとめ役だと思うんで、そういう意味じゃ岸田派には入ってないんだけど、福田達夫さんを老壮青の青で育てるという形で、総理の威厳みたいなものを岸田さんは示そうとしたのかとね。

もう一点は、河野さんね。河野さんは麻生さん流に言えば、やっぱりトップに立つにはすぐキレるし、ブレすぎると言うんで、みんなが不安に思った。(広報本部長という今回の河野さんのポストは)麻生さんからは「修行しなさい」と親心でしょうが、これは明らかに冷や飯ですよ。次もやるならちゃんと「イチからやりなさいよ」っていうことでしょう。これを表から見るか裏から見るか、どっちから見るかによって違いますね。

上山

やっぱり広報本部長というのはもう冷や飯。

末延

名前だけは「党8役」とか言いますから、位はあるようですが、実際には「党5役」と比べると全く実権はありません。(党の中枢から)外されたときに必ず付くポストがあのポストなんです。都知事の小池百合子さん、あの人は第1次政権で安倍さんに起用されましたたが、(その後の総裁選で)石破さんを支援して外されるんですね。その時はやっぱりあのポストについてる。広報本部長についた人は、その後どうするか。そのまま消えていくか、何か反乱を起こすかですね(笑)。

上山

反乱。捲土重来じゃないんですね。

末延

だから河野さん、本当に雑巾がけするのかどうなのか、ですね。

上山

就任会見で甘利幹事長は、2016年に金銭授受が問題になったことを問われ、「お騒がせしたことをおわびする。この事件に関して事情を全く知らされていない」とした上で、検察の捜査で不起訴処分となったことを説明しました。野党は国会でも追及する構えですが、岸田総裁には、それでも幹事長には甘利さんという、強い狙いがあるということですか。

末延

今度、経済安保の担当相を作りますね。これは甘利さんが議員連盟も作って、岸田さんをトップに据えて、政調会長のとき応援する形でやっていた。だから政権の看板になるんですね、特に経済ですから。経済を立て直す、特に安全保障を含めた経済安保は、NSC・国家安全保障会議の事務局(NSS)に経済班を作りましたし、担当大臣を置いてそこをやりたいということがあると思うんです。

ただ、幹事長は党の顔で、選挙が近いですよ。明らかにそれはプラスではないと思います。、来年夏の参院選までを俯瞰してずっと見ていったとき、このままずっといくのかどうかというのは、僕はちょっと疑問ですね。

上山

すっと行くのかどうかは疑問符がつくというのは…。

末延

それは、例えば国会が始まっていろんな審議の場になっていくと、いくら説明されていると言っても、野党は攻めますよ。メディアも攻めますから、そこら辺りをね。プラスマイナスどう考えておられるのか、これから始まってみないと、そう簡単に、はいOKです、という風にはならないんだろうとは思いますね。

■岸田内閣…官房長官は松野博一氏

上山

夕方になって、まさに岸田内閣、閣僚の顔ぶれというのが次々、明らかになっているんです。内閣としては、あす正式に発足になりますが、その陣容、速報を交えて菅原さん、お願いします。

菅原

はい、テレビ朝日で分かっている布陣を一気に見ていきます。

まずは官房長官、松野博一元文科大臣です。こちらの写真は松野さんがFacebookに上げている2ショットです。当選7回を数える松野さんですが、岸田総裁が政調会長時代に政調会長代理を務めていました。すぐ近くで岸田さんを支えてきた立場ということがよく分かります。

続いて、財務大臣が鈴木俊一元オリンピック担当大臣、麻生派、当選9回です。そして総務大臣が初入閣、金子恭之さんです、岸田派。法務大臣、古川禎久さん。初入閣です。外務大臣は茂木外務大臣が再任となりました。文部科学大臣が末松信介さん、初入閣、細田派。厚生労働大臣が無派閥の後藤茂之さん、初入閣です。コロナ対応に当たっていくことになります。


続いて農林水産大臣が初入閣、岸田派の金子原二郎さん、参議院で2回当選です。経済産業大臣は萩生田文部科学大臣がスライド登板となりました。そして国土交通大臣が公明党の副代表、斉藤鉄夫さん。環境大臣が二階派の山口壯さん、初入閣です。そして防衛大臣は細田派の岸さんが再任となりました。さらにデジタル担当大臣が無派閥、牧島かれんさん。初入閣、当選3回です。復興大臣が初入閣、竹下派の西銘恒三郎さんです。国家公安委員長も初入閣、二之湯智さん、参議院3回の当選です。


そして少子化担当大臣が今回、総裁選にも出馬しました野田聖子さん。そして岸田内閣の新たなポストとなっている経済安全保障担当大臣が二階派の小林鷹之さん、ここに入りました。初入閣、当選3回の抜擢となっております。ワクチン担当大臣が岸田派の堀内さん、当選3回初入閣です。経済再生担当大臣、麻生派の山際大志郎さん。先ほど甘利さんに近いという話がありました。初入閣です。そして国際博覧会担当大臣が竹下派の若宮健嗣さん、初入閣です。この布陣を見ていきますと初入閣が13人ということになりました。

上山

閣僚1人1人については後ほどしっかり確認したいと思うんですけれど、まずは岸田総裁が総理大臣となった時の、パートナーとも言える官房長官の人物像について、岸田さんですが総裁選期間中はこういった資質が必要だと話していました。「省庁について横断的に考える能力と聞く力が大事」。

久江さん、党と内閣の要、それぞれの人事を見てみますと、党の要の幹事長は甘利さんで麻生派から、内閣の方は官房長官が松野さん、細田派ということで、それぞれ麻生派と細田派で住み分けているようにも見えるんですけれど、この辺りに配慮があるのかどうか、どうなんでしょうか。

久江

当初は宏池会の中からも官房長官候補で上川さんの名前も出ていましたが、1つのパターンとして、例えば萩生田さんが官房長官であるとか、そのようないくつかの説は出ましたが、最終的には、松野さんは細田派の中で当選7回なんです。今、事務総長で、萩生田さんは当選5回ということで、萩生田さんとか西村康稔さんが6回で、どちらか言うと6回7回、上の人の中で同じ人間を使い過ぎじゃないかという不満が細田派を含めてあって、その中で派閥の総意としては松野さんを次の3役、もしくは重要なところにというのはあったんです。そこで松野さんが収まったということだと思います。

松野さんは千葉3区で、千葉県木更津市ご出身の方なんですけれど、物静かで、私の知り合いも結婚式で隣り合わせになって長時間話したと言っていて、結構、裏表がなくて実直で、政治家っぽくなかったんだよねという、色々聞くごとに岸田さんと似ているということで、タイプが似たような女房役かなという感じがします。そういう意味では、官房副長官に内定している木原誠二さん、実は一般ではあまり馴染みがないんですが、政務担当の官房副長官は政党、あるいは色々な根回しで、最も重要な潤滑油なんです。今の菅さんで副長官がどうとは言いませんが、やはりここが機能しているかしていないかで、政権の屋台骨が全く違ってくるんです。そういう意味では、森友の問題で文部科学大臣の時の松野さんが弾除けになったということもあって、答弁能力が高いのではないかという評価もあったようです。

■「安倍さんは『私の影はない』」

上山

どうなんでしょうか。末延さん、官房長官のポストを巡っては今、久江さんからお話がありましたが、萩生田文部科学大臣がなるのではないかということは、結構パーッと報道されますよね。ただフタを開けたら、同じ細田派だけれど松野さんになった。この辺り、末延さんはどのようにご覧になっていますか。

末延

これはもうはっきりしていて、安倍さんはこの選挙が始まった時から、自分の後を託すエース級は萩生田さんなんです。だから萩生田さんを党の幹事長か、官房長官に座ってもらう形で、安倍政治の継続をしながら協力するという、これが本心です。僕の情報では一旦、萩生田さんで1回座ったんです。

上山

1回、萩生田さんで決まったんですか。

末延

はい、今、久江さんが言われるような細田派内でのヤキモチとか、色々反発があったということが流れたんです。安倍さんの周りや安倍さんを取材してみたら、そういうことを流されているということが、いかがなものかと。つまり、萩生田さんを外す理由がいるから、だから細田派内の当選が上の人たちが色々言うからでしょうと言うけれど、僕の取材では、そんなことはなくて、萩生田さんを外したエクスキューズを総理とか甘利さん辺りがやっているのではないかという見方をしています。

上山

そうすると、安倍前総理としては、あれっ、という感じなんですか。

末延

番組の直前に電話で安倍さんに感想を聞きましたら「(人事に)私の影って言うけど、どこにも影はないよ」と。

上山

今回の人事に関してですか。

末延

ここから先は僕の見方ですが、麻生さんであり、麻生さんの派にいながら河野さんを抑えて岸田さんを最初からやった甘利さんの意向がかなり効いた人事と見るのが妥当かなと。冒頭に言いましたが、松野さんはやはり細田派の中の、安倍系ではなく福田系(あるいは無色)なんです。そこを含めて安倍さんが良かったと思うかどうかは微妙でしょう。

上山

今後、安倍前総理から岸田さんに対する支援というのは?

末延

戦後保守の体制は、それ自体は岩盤としてがっちり守って行くけれど、その中でそれぞれ、ホップ・ステップ・ジャンプする時に、誰が主導権を持つのかというのは権力闘争ですから、そこで少し岸田さんは、1年考えてきたから、麻生さんなり甘利さんなりのカードを使いながら、安倍さんの前に出て段々色を出していくということが見える感じがします。

■中曽根内閣の発足時は主要ポストを…

上山

閣僚の人事ですけれど、ゲストの末延さんは今回の岸田総裁の人事を見ていると、中曽根内閣の発足を思い出すとのことです。39年前のことになりますが、菅原さん、お願いします。

菅原

はい。1982年に誕生しました中曽根内閣ですが、当時、少数派閥だった中曽根康弘さんが自民党の最大派閥を有していた田中角栄元総理の支援を受けて、総理大臣に就任しました。すると、内閣と党の要職を田中派が占めたんです。

官房長官、大蔵大臣、自民党の幹事長などですが、当時、これを揶揄して「田中曽根内閣」と、こういう呼び方もあったということです。しかし、政権が発足しますと、行政改革や財政改革を推進。田中角栄元総理が1985年に脳梗塞で倒れた後は国鉄の民営化を成し遂げるなどして、総理の在任期間は4年11ヵ月にも及んだということです。

そして、今回の岸田新体制を見てみますと、官房長官、先ほどから話していますように細田派ということになります。それから財務大臣、自民党の幹事長が麻生派。末延さん、中曽根総理と同じように少数派閥ならではの戦略として、こういうポストにしたということになるんでしょうか。

末延

昔は、番頭さんだから官房長官だけは総理と同じ派閥の人が、という形でやっていたんですが、中曽根さんの時に、後藤田さんという田中角栄さん直系の警察官僚出身の人をドーンと置いたものですから、当時メディアはめちゃくちゃに論評しました。「田中曽根内閣」とか「田中角“影”内閣」とか。僕はちょうど政治部記者から、ニュースステーションという番組の政治担当になって、共同通信社の論説委員長の内田健三さんに出てもらって、僕が担当ディレクターでした。

国鉄民営化も取材した頃ですが、あの頃はとにかく、田中派が強くて、中曽根さんは戦略的に最初は頭を低くして、力を借りて政権を取る。そして最後は田中角栄離れをするんです。問題は、岸田さんがどこかで離れて、自分で完全に1本立ち出来るかどうか。宏池会(岸田派)座長の、No.2の林芳正さんが『頭を低くして、実ほど垂れる稲穂かな』とおっしゃってますよね。宮沢さん以来ですから宏池会が真ん中に来たのは。ここは我慢の子で手伝ってもらった人を立てて行こう、段々変わっていけばいいと考えていると思いますが、そこが幹事長の甘利さんを含めて、これから選挙が2回ありますから、そう上手くいくのかどうか、世論次第ということだと思います。

上山

杉田さん、夕方になって岸田内閣の閣僚の顔ぶれが見えてきましたけれど、この辺りも含めて、岸田総裁の人事をどうご覧になっていますか。

杉田

私は少し違った文脈で、結果論的分析になるかと思いますが、今、日本の置かれている国際的状況を考えると、中国というファクターがすごく大きくて、派閥の中の、それぞれ中国とどう付き合うかという考え方の違いも出てくると思います。やはり、二階さんが今回、こういう形になったと。それから菅さんも比較的アジア外交、中国外交をやりたかった方だと思うんです。この方々が外れている。それから河野さんがアメリカ留学ではありますが、安全保障について考え方、敵基地攻撃に対する発言も消極的だったりしていて、対中あるいは安全保障政策的で揺れているというか弱さが出たと思うんです。一方、安倍さんを始め甘利さんの経済安全保障の強化、こういった流れを見ていると、アメリカとの同盟関係をしっかり改めて構築して、その上で強い立場で中国と向き合うという方向性を出している人ですから、日本の置かれている中国との厳しい関係を考えるなら、ある意味こういう総裁選の結論、自民党と内閣人事がなされていくということは自然なのかなと思います。

■初入閣13人…新内閣の岸田カラーは!?

上山

岸田新総裁の閣僚人事、久江さんは、岸田さんカラーを発揮することができているのかどうかを含めて、閣僚で気になるところ、注目ポイントはいかがですか。

久江

岸田さんのカラーということで言えば、牧島かれんさんのデジタル担当大臣ですね。当選3回、女性であって、今、44歳ですか、党における福田さんと同じように若手で、女性を起用したというところでは、岸田カラーと言っていいと思います。

その他、現時点での顔ぶれから読み取れるのは、例えば鈴木俊一外務大臣、過去の定例だと、元々岩手県の海岸部というか、鈴木善幸さんの関係で全漁連とか水産が強い人ですから農水ですよね、あと社会保障。そういう意味においては、財政というのは私も知る限りあまり経歴的にないんです。なぜ財務大臣かと言うと、麻生さんが今の麻生派を鈴木善幸さん、その長男である鈴木俊一さんに、派閥を近い将来、移行するという、箔付け的な意味合いが大きいと思います。

上山

いずれ鈴木派になるということですか。

久江

そうです。だからこれは、財務大臣で箔を付けるという言葉はあれですけれど、いわゆる財政にも精通して派閥を鈴木俊一さんに渡す、パスするということの布石だということです。もう1つ、注目というのは、法務大臣の古川禎久さんです。彼はつい数日前に、総裁選の直後ですか、石破派を脱会して、石破派は今、15人になりました。この方は石破派としてカウントされていて、結局、最終的な投票行動はわかりませんが、当てつけというわけではないのでしょうが、石破派の人を取って、その直後に辞めているところが興味深い点です。

もう1つ、実は二階派から2人入っています。環境大臣・山口壯さんと経済安全保障・小林鷹之さん。普通に見ると、二階さんは今回、上手くいかなかったんだよね、何で二階派というのが一般の方の感覚だと思いますが、2人は最初からバリバリに高市さんをやっていたわけです。二階派と考えると何でなのと。これはもともと最初にいた10人の二階派から、結果として二階派から行った高市陣営の、山口さんは高市派の票をつぶさに分析してカウントした人ですから、そういう意味では高市さんを応援したということの論功行賞ということですね。

あともう1つ言えば、野田聖子さんです。結果、河野太郎さんは俗にいう典型的な冷や飯です。自民党のインターネットに出たり、場合によっては選挙とか色々やるんでしょうけれど、ほとんど祭り上げられたような状態なので、一応、形上は党の役員にしていると。野田さんは少子化担当でこども庁と言っていましたので、ある意味はまり役と。

菅原

もう1つ気になったのが、先ほどから私読み上げていて顔と名前を一致させるのが大変だったんですが初入閣の方が13人いらっしゃるんですが、これは岸田さんにどういう意図があると見ていらっしゃいますか。

久江

ざっくり言うと、そもそも安倍内閣から菅政権に至るまで、実は結構、同じ人を使い回すという言葉は失礼ですが、同じ人が繰り返しやっていたことが多かったんです。例えば、今回も官房長官候補として永田町の一部で、最終的には俎上に乗りませんでしたが、上川陽子さん、法務大臣です。

 

この方も菅政権の時にまた上川陽子さんが法務大臣っていい加減にしてくれということで、宏池会から妬み僻みではありませんが、いい加減にしてくれということで、法務大臣にもう1回しかけましたがダメで、それで森まさこさんにしたという経緯があるんです。同じ顔ぶれをずっと使っていたので、マグマのように溜まっていた人たちが沢山いるわけです。当選5回、6回、7回という人たちが、その人たちがどっと来たから、こんなに大きくなったということです。

上山

だから見ていて馴染みがない方が多いなと。

末延

それはメディアの責任です。進次郎さんとか石破さんとか河野さんとか、タレントっぽい人が地方に行けば人は来ますよ。ただ、政治家は仕事をして評価される存在ですから。そういう意味では今回、新しい人を入れているということは、すごく可能性があるし、久江さんがおっしゃられた上川さんはすごく優秀で仕事ができるんです。しかも彼女の親戚関係というか旦那さんは山口なんです。だから安倍さんとも非常に近い。ヤキモチと同時に、安倍さんと近いから外れたのかなと思っているくらいです。

■安倍前総理側との調整は…今後の政権運営の焦点に

末延

僕の気になるところを言っておくと、松野さんは細田派だけど安倍さんにとっては決して良かったとはならない。萩生田さんで決まらなかったというところで、どうして、というのが強いと思います。

鈴木俊一さんは、僕は鈴木善幸首相の総理番でしたから、お父さんが出てきたのかというくらいそっくりです。お姉さんが麻生夫人ですから、義兄弟です。

上山

麻生副総理の義理の弟になるということですね。

末延

そうです。財務省は麻生さんがしっかりこのまま一緒に見ていく。つまり、霞が関のど真ん中ですから、そこは離さないということで、将来(麻生派を)鈴木派にするということもあるから任せたと。

上山

後ろには麻生さんがいて、しっかり見ていくという。

末延

セットになっているんだろうと思います。僕がもう1つ気になっていたのは、安倍さんが先ほど、どこに入るかと言っていた萩生田さんがなかなか決まらなかったでしょう、最後まで。それから(安倍さんの)弟さんで、台湾カードという意味では対中国への重しになっている岸防衛大臣。この2人の入閣は昨日、最初にチョット速報(で名前)が出たけれど、すぐ消えたんです。その後、きょうまでずっと出なくて、皆どうなるんだろうと思ってました。そこは甘利さんが人事をやる中で、安倍さんに本当に配慮したのか疑問だなと。メディアが言うほど配慮はしてなくて、最後はこの二人くらい入れておかないとまずいだろうということで入ったのではないかと思います。

上山

萩生田さんと岸さんが入ったことが?

末延

入り方が問題です。入り方と発表の仕方があって、経産大臣は最後に残っていた主要閣僚、重要閣僚ですから、もしあそこで入っていないくらいだったら大変な問題になって、むしろ安倍さんと距離を置くのではないかという解説を書こうかなというくらいでしたから。そういう意味では、すんなりと安倍さんサイドがOKでしたと言うほど影はないと思います。

もう1点、言っておきたいのは、堀内詔子さん。彼女のご主人は富士急の堀内さん(堀内光一郎・富士急行社長)、僕はお父さん(堀内光雄・元自民党総務会長)の担当をしていましたが、宏池会の流れを汲む今の岸田派で一時、堀内派といった時代もある。この間、投票する時に加藤鮎子さんと堀内さんの2人が岸田さんの横に座っておられた。これはやっぱり見ると、思い出してください、宏池会伝統のお父さんたちが派閥を率いた人のお嬢さんでありお嫁さんですよというのを見ていたので、おそらく、どちらかを若手として起用されるだろうと思っていたら、堀内さんがお入りになったので、ここは宏池会らしいPRの仕方。若返りであり女性、そういうことでこれはピッタリ当たりました。

上山

なるほど、杉田さん、いかがですか。

杉田

末延さんのお話は納得できることなんですが、なぜ安倍さんとの調整がすんなり上手くいかなかったのか、なぜ安倍さんに不満が残るようなことになっているんですか。

末延

2点あって、戦後体制の2大潮流の、講和の吉田茂さんから、一方で日米安保の不平等条約改定の岸信介さんに行く、このタカ派部分ですね。ここのバランスが、安倍さんがずっと前を一強で行っていたのを、麻生さん、それから宏池会で変わっていくというのがあるのかなということが1点と、ズバリ言えば、選挙の論功行賞で久しぶりに陽が当たった甘利さんがかなり自分の思いを出したが故に、安倍さんサイドとの調整がすんなり行かなかったのではないかと思います。このことを安倍さんサイドがどう見ているかというのは、今後、政局を見る時に気にしておいたほうがいい点だと思います。

■投開票日の2日前に決まった総裁選の行方

上山

今回の党役員、そして閣僚の人事ですが、大きな影響を与えているのがやはり総裁選で票がどう動いたかということだと思います。その辺り菅原さんお願いします。

菅原

はい、水曜日に行われました総裁選の投開票の結果です。1回目の投票は、岸田さんが国会議員票146票、党員党友票110票、合計は256票で1位。河野さんは国会議員票86票、党員党友票169票、合計は255票で2位。高市さんは国会議員票114票、党員党友票が74票、合計が188票で3位。野田さんは国会議員34票、党員党友票が29票、合計が63票で4位となりました。

誰も過半数である382票に達しなかったので、1位と2位、岸田さんと河野さんで決選投票に突入、その結果、岸田さんが257票、河野さんが170票で岸田さんが新総裁となりました。1回目の投票では、河野さんが1位になるという見方が強かったのですが、1位になったのは岸田さんでした。さらに国会議員票では、高市さんが河野さんを上回りました。

岸田さんの圧勝だったと言う人もいますが、末延さんは、投開票2日前のこの動きに注目しています。「岸田さんを支持する甘利さんが安倍前総理と面会。さらにその後、甘利さんが麻生財務大臣とも面会した」ということです。ここで何があったのでしょうか?

末延

一部の新聞が報じていました。確認を取りましたが、要するに、2位・3位連合が言われたじゃないですか。

菅原

岸田さんと高市さんの連合ですね。

末延

河野さんが伸び悩んできた週末に、高市さんがずっと保守がひとりと言うんで。

上山

随分、伸びましたよね。

末延

伸びましたよね、僕も地方講演に行ったら、高市さんの質問ばっかりだったんですよ。スッキリして分かりやすい。コミュ力もあるし、女性であるというんで。結構、僕はえっ!て思ったわけですよ。あの人、あまり人付き合いがいい方ではない、宿舎でお勉強されているタイプの人ですが、それが意外と伸びた。その時に永田町に走ったのが、高市さんが抜いて2位になったらどうするんだと。

上山

そういう話ありましたよね。

末延

ありましたよね。そのために河野さんサイドが、票を動かしたと。某テレビ局(の解説委員)が質問して、河野さんがブチ切れるというのがありましたよね。それで、確認に走るわけです、甘利さんが安倍さんと会って。どっちが上にになっても2位・3位連合は、やるんですねっていう。もちろんやりますと。分かりましたということで、安倍さん返事するわけですよ。それで、とって返して麻生さんところに行って、こういうことで安倍さん2位・3位連合どっちが上になっても2位を推すんだと、2位になった方を3位が推すんだということで、確約だなということで、あの日に甘利さんがメッセンジャーすることによって、2位・3位連合が固まった。その情報が流れて、これで河野さんはちょっときついだろうと言うんで、岸田さんが多分、本命になってくだろうというのは、あのあたりから空気が出てきて、僕はあそこで岸田さんの勝ちだろうと思ってました。

上山

と言うことは、総裁選の投開票日の2日前には、この岸田新総裁で行くと。

末延

世論調査のトレンドと一緒で、永田町の空気というのは、何回か変わるんですが、あの時、大きく変わった。失速河野に対して、伸びてきた高市、じゃあ、どうするの、2位3位が逆転したら混乱するんじゃないのという情報が流れた時に、どっちがなっても2位を推すと。この確約があそこで出来たという情報が流れたことが、やっぱり決定打になったんじゃないかと僕は見てました。

■安倍前総理が高市氏を支持した理由

末延

安倍さんの狙い、なぜ、高市さんを立てたかったか。横浜ショックの時を見ても、自民党が保守の岩盤票を逃がしてるんですよ。だから総選挙を考えた時に、もう一度、自民党の岩盤の保守票を集められる候補を立てて、それはやらなければいけないと、安倍さんがすごく言ってましたね。ただし政局全体を見れば、だからと言って『高市Who?』でしたから、最初。世間全般で言うと、誰なんだと。これは安倍さんも言ってました、最初はそんな感じだったでしょと。でも、保守の候補、右派がいないじゃないかってことで、立ててみたらスッキリ分かりやすかったということですね。

杉田

私も今回、保守の候補として一人で出た高市さんという人がどれくらい票を集めるのか、ものすごく関心持っていました。保守というのが、日本における保守、バリバリの保守というのは、どれくらい自民党の中で力を持ってるのか、数字が出てこないと分からないので。

末延

これはアメリカと一緒で、メディアはどうしてもリベラル系になりますから、皆さん、なかなかおっしゃらないんだけど、実は僕もずっと取材している間で思うことは、自民党の、やっぱり岩盤部分は、地方に行ってもある種、土着社会の中の、右派的な部分とか、伝統的な部分、保守という部分は、やっぱりあるんだなと。

杉田

そこはだからメディアっていうのはやっぱり弱いんですよね。保守に親しみを持つ人々を理解してすくうところが弱い。

末延

全国メディアの記者が地方支局に行っても、3年か4年くらいですよ。地方の本当の姿をグリップできない。その辺が僕は基本的にメディアの一番のウイックポイントじゃないかとずっと思っていました。今回そういうことを思いました。

上山

ですから、高市さんは誰なんだっていうところから、安倍さんが支持をして、支持を伸ばしていったところがあるんですけども、ちょっと伺いたいのは、その安倍前総理のそこまでのパワーの源は何でしょう。その影響力の強さの源というのは何でしょうか。

末延

これは、人の面倒をよくみてるということなんです。若手だったら選挙応援に来てほしいわけです。資金面なんかも含めて、応援をこまめにやっていく、そうやって育てている。今回もそういうことですね。それから、ベテランの方とか引退する方の中には、長期政権だったでしょう、7年8カ月。その間に色々なポストを安倍総理につけてもらったと、その恩返しをしておきたいというような投票行動もあったそうです。要するに人事権ですよね。それを権力の真ん中にいる時に、ちゃんと人の世話をしている。

先ほどの人気の話に戻るけど、1人でメディアに向かって自民党は変わらなきゃいけないと言っていても、党内では人気が出なくて、党内の仲間の面倒を見た人が評価されるというとこが一番、僕はキーワードだと思いますね。

上山

やっぱり最終的にはチームワーク、チームだっていうこと?

末延

会社でもそうでしょ。

■4候補に分散…二階派はどう動いたのか!?

上山

そしてもう一人、キングメーカーと言えば注目されていたのが、二階前幹事長です。実は安倍前総理と二階さんの間で、総裁選の直前に、ここも攻防があったということなんです。菅原さんその辺りお願いします。

菅原

先週の放送の時点では、久江さんの票読みは、このようになっていました。1回目、1位になるのは河野さん、議員票が110票余りということでした。しかし、放送から3日後の投票では、86票と24票ほど減らしました。久江さん、この3日間にどんな動きがあったのでしょうか?

久江

まず、私も選対に入ってるわけじゃないんで、私の情報も1日2日、結果を振り返ると、遅れているわけです。そもそもこの戦いは、最初は、1着は河野さん、2着岸田さん、3着高市さんで、2位3位連合というのは誰もが思っていたし、そういう数字だったわけです。最初、高市さんは議員で40か50か60かなっていうのが続いたわけですから。ところが、世論調査を含めて高市さん、結構いけるんじゃないかっていうことで、安倍さん含めて高市陣営の中枢部が、私の取材では9月22日の水曜日辺りから一気にアクセルを踏み込んで、もう2位に目指していこうと、ぐっと踏み込んだんですね。その結果、私は、その中で100超、超えると書いているのは一番勢いがあったので、そう書いたんですけども、それが26日の時点なんですが、実際、その票は、21日、2日前ぐらいに大体そんな感じにはなっていたんです。むしろその時に実際、水面下で行われていたことは、この河野さんの票の取り崩しなんですよね。結果86票になったんで約20何票減りましたよね。その20何票どこに流れたのかと言うと、私の取材でおそらく10票近くが岸田さんに流れました。従って一時的に、瞬間風速的に、岸田さんが150票ちょっと超えた時期があるはずなんですよ。最後はそうやって読んでた人もいるかもしれません。じゃあ残りの15票ぐらいどこ行ったのということになると、これは実は二階さんのところにいた票なんですよね。これが最終的に野田さんと高市さんに、ほぼ半数ぐらいずつ分かれたんです。従って野田聖子さんは、それプラスして岸田派から5票くらい取ったので、今、言った150ちょっとからさらにもう1回5票くらい獲ったので146になったんです。

菅原

久江さんが取材した内容について、ご紹介していきます。今回、注目されていたもう1人のキングメーカー二階幹事長と二階派の動きです。47人いる二階派ですが、久江さんの取材では、総裁選当初から支持が分かれていたといいます。態度が不明だったのが二階幹事長、林幹事長代理ら15人前後でした。2人が二階幹事長と対立していた岸田さんを支持。武田総務大臣らおよそ12人は河野さんを支持。衛藤さんら10人は高市さんを支持。鶴保さんら8人は野田さんの推薦人となっていました。支持がバラけていますが、当初は二階さんがあえて分散させて、影響力を残しておくという見方もあったわけですが、これはどういうことだったのでしょうか。

久江

私もバラけ方を見て、最終的には勝ち馬に乗るのかなと見ていたんですけどね。二階さん確かに力があった時期もありますし、二階派47人でカウントしてるんですけども、まず、高市さんをやった10人、これはで二階さんのテーブルの中から一本、柱が、10人抜けているわけです。岸田さんをやった2人も抜けてるわけです。ということで12がそもそも二階さんと一緒に行動を初めからしてないに等しいんです。

菅原

残りは35という。

久江

そうなんです、そうなんです。その35のうち、おそらく12人くらい、武田良太さんところ8人がチームだと言われているんですが、外周円を入れると、おそらく12人ぐらい。この武田さんが河野さんをやるということで、二階派は結構、河野行くんじゃないのと思われていて、ところが河野さん、どうも雲行き怪しいなとなった時に、この武田良太さんは投票日の二日前、安倍さんが甘利さんと会った後の4時から5時の間ぐらいに安倍さんと会って、高市さんの支持をどうも匂わせたと言うんですよね。

菅原

27日、甘利さんが安倍さんと麻生さんに会った同じ日ということになりますけれども、武田総務大臣が安倍前総理と面会をしていた。これが投開票の2日前の情報として、久江さんの取材で入っているということですね。

久江

そうですね。今さら高市さんに来られても、というのもあるし、何よりも二階さんが自分の和歌山で、自分の選挙区を脅かすかもしれない世耕弘成さんが、高市さんについているわけです。自分の和歌山の政敵である世耕弘成さんが高市さんについているわけで、そんなところ行けない。

上山

二階さんの政敵である世耕さんが高市さんについている。

久江

そうです、そうです。そもそも河野さんは負けそうだよねと。今さら岸田さんにも行けないよね、もうお腹一杯だと。キャスティングボードも何もない。そしたら野田さんとこ行くしかないわけですよ。

菅原

最後は野田さんのところですね。

久江

そうです。二階さんの近い周辺の、おそらく7~8人ぐらいが、野田さんに行くわけですよ。そうこうしているうちに、衛藤さんだとか山口さんだとか片山さん、元々、高市さんをやっていた10人は、そこの(二階さん周辺の)15人、そこの半分ぐらいが野田さんに行くようで、ここの残った部分を一生懸命、高市さんに持ってこようと、それで成功したわけです。それが6~7人になるわけですね。

菅原

結局…。

久江

高市さんが114票になったのは、最初、私は101票から103票、多くて105票と読んでいたんですけれども、101票、二階派で6~7人と言っても数人足りない。それは無派閥とか他のところで、岸田さんを支持していた数票を乗っけて114票になったと。

■菅総理の再選断念“カード失った”二階氏

久江

ここで私が二階派の細かい分析をなぜしているかと言うと、つまり二階さんというのはイメージ論で、キャスティングボードを握って二階さんが全部、決めているんだみたいなことが一般的には思われてきましたよね。ところが今回は、始めから、一番大きなところの10人が抜けている、さらに2人が抜けている。

しかも武田良太さんのところの12人が全体を体現するような振る舞いというか、受け止め方もされたので、二階さん二階さんということだったんだけど、実際はもう中で割れていて、どこにも行けなかったようなグループを高市さんところで引っ張ってきたと。残ったところが野田さんに行ったと、こういう結果なんですね。つまり、これから言えることは、二階さんはですね、安倍・麻生・二階と言ってましたけども、正直申し上げて、かなり影響力落ちますよ。逆に言えば、ここで最初から一生懸命やっていた小林鷹之さんと山口さんは堂々と入閣しているじゃないですか。だらか二階派がどうのこうのと言う主語がそもそも間違いなんですよ。

上山

どうなんですか、今のお話にあった、その27日は結構、肝だったような気がするんですね。武田良太総務大臣が安倍前総理に会いに行った。

末延

あれはほとんど成果がなかった。

上山

その時、それはどうなんでしょう。二階さんの指示で行ったんですか。

末延

違いますね。

上山

違うんですか。

末延

武田さんは、元々、(二階派の)後を継ぐんじゃないかという実力派で、(地元では)麻生さんとバチバチやってるんですよ。菅さんと組むことで動いてきた人で、山っ気があるから行ったんです、安倍さんのとこへ。ここはうまく成立してない、色んなこと武田さんおっしゃったようだけど、これはあんまりうまくいってないんです。今、久江さん言われた通り、大事なポイントは、二階派という形では動けてないんです、今回は。

杉田

二階派は、これまでもメディア報道が悪かったんだろうけども、非常に力を持っていると思われたと。これが何で今回、二階さんが、これだけグリップを失って派閥がガタガタになって分解してたのか、それは二階さん的なものが、もはや今の自民党の中で、二階さんの考え方とか、そういうことがダメになったということでしょうか。

末延

それは杉田さん、横浜ショックからターゲットは二階さんだったんです、若手の。あのイメージの自民党で、選挙どうするんですかと、やりすぎでしょというのがあって、それよりもメディアは、いつも二階派は強いという幻想の中にいたし、菅さんが二階斬りをして、あそこがブチッと切れた段階になったとき、菅さんも落ちたけど、僕は二階派も行き詰まって、後はばらけて動くしかなかったというのが実態だったと思いますね。

久江

菅さんも、要するに、後ろにいたのが二階さんなわけですから、要するに、菅さんを支えていたのが二階・安倍・麻生氏です、ざっくり言ってしまうと。でも結局、二階派、菅さんがダメになったけど、こちらには岸田さんというカードがあるんですよ。簡単に言えば。二階さんはもうカードないんですから。

上山

これじゃ菅さんも二階さんも、今後としてはなかなか。

末延

それはしばらくいいって感じ、休憩でしょう、やっぱり。

■「戦後政治の保守本流」と「したたかな鳩」

上山

安倍前総理と麻生財務大臣にちょっと話を戻したいと思うんですけれども、その狙いというかどうして岸田さんを勝たせようとしたのか、そこには二人を読み解くこのキーワードのようなものがあるそうです。末延さん、そのキーワードをフリップでお願いします。

末延

いま、政治家の皆さんの聞き取りをしながら戦後(政治)史をちょっと整理しているのですが、僕が自民党を見るとき気にしているのは、この「戦後政治の保守本流」。これでよく言われるのは、麻生さんのおじいさん、吉田茂が講和条約で単独講和です。全面講和でなくて、共産圏とはやらない反共産主義。それでアメリカ中心に組む、それで豊かになる。

そしてスタートしましたが、安保条約は不平等条約です。これは杉田さんがご専門の、ダレス国務長官と吉田さんが51年に結ぶけど、安保では、ほとんど日本はもう全然半人前以下の扱いですから、その部分で安保条約の不平等性をなんとか改めたいというのが岸信介さん、60年の安保改定をやりました。戦後の2大潮流として守ってきた岩盤は、やっぱり戦後政治の反共産主義であり、自由主義、資本主義。この価値を守りながら、日本を豊かにする。

このことを麻生さんや安倍さんは総理経験者としていつもこの辺のことを俯瞰して考えながらやっているんで、だから、この盟友関係が大きく崩れることはないんです。ただし2題潮流のどっちがリードして前に出るかという、やじろべえみたいなとこがあって、今までは安倍一強ですから、タカ派的なものが前に出たけど、今度は、ヨーロッパの安保評議会(の日本専門家)だったかな、面白い言葉を使ってます。『したたかな鳩」と言っていました。つまり鷹ではないけど、宏池会とか岸田さんのことをそう表現しているんですね。対中国政策(で言った言葉ですが)。。後で杉田さんの解説を聞きたいんですが、岩盤はこういうところにあって、二階さん的政治家とか、菅さん的政治家は、目の前の権謀術数です。それに対して、この総理経験者2人というのは、保守の、戦後体制の中の反共産主義であり自由主義で豊かさ(を求める)と。そういう共通の目標の役割分担をしながら上がってきたという見方です。これをキーワードにして、この政局も俯瞰して眺めた方がいいいというのが、きょう一番申し上げたいところです。

杉田

そうすると、菅さんと二階さんは、いわゆる末延さんが言うところの、戦後政治の保守本流的な潮流ではないということですか。

末延

田中角栄さんもそうでしたが、そういう認識とか国家観のない人ですよね。つまり、目の前の利害調整とかをやることで力を見せつけるという剛腕ではあるけど。佐藤栄作長期政権の後に、田中さんが出たけどダメで、結局、福田さんが出てくるという。やっぱり日本のような国家リーダーは、こういう政治哲学とか国家観、歴史観を持った人でないと、最終的には耐えられないだろうというのが、今回、政局を見ながらそのことがあるから、岸田さんを麻生さんも安倍さんも基本的には応援するんだけど、人事を見ると、少し麻生さんの方に偏って、少し『したたかな鳩」が前に出るのかなと、こういう感じで見てます。

上山

どうなんでしょう、今回の総裁選を見てると、本当にその保守本流の動きというのが目に見えてきた、顕在化したという感じはありますが、その流れに死角がないのかどうか。その保守本流に回帰することは、自民党にとって、もろ手を挙げてプラスなのか、この辺りはどうですか。

末延

山口で、安倍さんとライバル関係にある林芳正さん、今度、衆院選に出る。この方は例えば、日中友好議連の会長です、お父さんもそうでした。それから大平さんが日中国交やって、宮澤さんは天皇訪中、あの時やってます。これは実は、裏でアメリカが(対中国で)動いていたという意味では、右派の人が言うほど、僕はひどい判断だったと思わないのですが。ま~、安倍さんたちから見ると、やっぱり岸防衛大臣を残しておいてもらいたい。その意味では、対中国政策のバランスと手法ですね、これはTPPの問題も出てきましたから、この辺りをどういうバランスでやっていくのかというのが実は、この新政権が一番問われるところになると思うんです。

上山

それからやっぱり気になるのが今回、世襲議員の登用が多いと思うんですけど、そのあたりは…。

末延

結果としてね。自民党を倒した民主党政権はやっぱり世襲の鳩山さんだったですよね。鳩山由紀夫さんのおじいさんが、日本民主党で岸さんとやっているわけですから。世襲だけではダメだということで、やっぱり優秀な、世襲でなくても、その昔よく言いましたね、安い国立大学に行って勉強すれば、良い仕事が出来ると、そういう人材も出てきてるんですが、世襲の良さも弊害もあると。これは他の公明党や、色んなところも二代目三代目。共産党でもお父さんが共産党員だったという形で、代を重ねて戦後の時間の経過の中でなってますから。

上山

自民党の抱える課題も含めて、久江さんはどのようにお考えですか。

久江

末延さんのおっしゃる通り、保守本流とかですね、そう言うのは根っこにあると思います。でも、目の前の政治で言いますとね、二階さんが一定の、中国とのバランスを取っていた側面もあると思いますし、そこに菅さんも乗っていたところもあると思います。私、先ほど二階さんの説明をしたのは、誰がどっちで、どうなって、その数の先にあるやっぱり政策、もっと言うと、外交、アジア、対米関係、対中関係も、よくコロナ禍の嵐とか派閥のなんとかと言う人もいますけれど、結局、それが結果として、日米とか日中とか、日本の世界の中の位置づけとかに大きく影響してくるんですよ。

具体的に言いますと、例えば二階さんが今、言った中国、あるいは、高市さんの敵基地攻撃能力、これは日本の戦後の日米関係、アメリカを矛として日本が盾になる、そこのところの転換を迫られる可能性があって、これはもう、勢いとか精神論でやったときには、非常に大きなリスクを背負うんですね。つまり、アメリカからしてみれば、この人たちは一体何なんだと思う人もいるかもしれない。だから本当は、なんか中国けしからんみたいな、そういうはしゃぐような感じでやってしまうと、アメリカは非常に不安に思う。中国に対しては、誤ったメッセージを送る可能性もあるんですね。

敵基地攻撃能力というのは、簡単に言うと、よく抑止力と言いますよね。抑止力は2つあるんですよ。「拒否的抑止」と言って、剣道で言うと防具みたいな感じ、やっても無力だよと。もうひとつ、「懲罰的抑止」というのがあるんです。やろうとしたらやっちゃうよって。日本は基本的に守ることしかできない、「拒否的抑止」しかできない、防具しか持ってない。でも攻撃能力を持つということは、相手に対してすごく抑止力を持たせることになるわけです。それは今までアメリカが担ってきたんです。ところが、9.11以降、アメリカが、やはり自分のことは自分でやってくれっていう流れになっていて、やはり、このままでいいのかということが敵基地攻撃論の背景にあって、その流れというのは、ある程度やっぱり止められない部分もある。しかし、それをあまり声高に言って、アメリカとの調整がなく、あるいは中国との神経戦というかメッセージを誤ってしまうと、米中ともに不信感を抱かせる可能性があるので、これは、日本が戦後政治の中で、安全保障とかそういう問題をですね、一般の学校、大学で教えてこなかったことがあって、ものすごく平和とかね、やればいいんだと、両極に日本は行きがちなんですよ。

■「AUKUSは70年ぶりの軍事同盟」

上山

この岸田新総理が直面する課題として、外交と安全保障をしっかり見ていきたいと思います。インド太平洋地域では、今、新たな動きが出てきています。

菅原

新たな安全保障の枠組みが誕生しました。先月15日、アメリカ、オーストラリアにイギリスを加えた、3か国によるAUKUSが発足しました。この枠組みを巡って、オーストラリアはフランスと結んでいたディーゼル式の潜水艦の建造計画を破棄。アメリカとイギリスが支援する形で原子力潜水艦を導入することを決定しました。

杉田さん、インド太平洋地域には安倍前総理が提唱したQuad(日米豪印戦略対話)がありますが、新たな枠組み、どのような狙いなのでしょうか?

杉田

これはですね、私が見るところ、いわゆる古くなりますけれども、アジア太平洋地域では日米同盟とかアンザス条約、つまりオーストラリアやニュージーランドをアメリカが中心になってつくった同盟枠組みや軍事協定、これらが戦後まもなくできて以来、つまり70年ぶりに新しいマルチの軍事同盟の枠組みができたと認識すべきだと思います。これが将来ヨーロッパのNATOみたいな形になるかどうかはまだわかりません。それで今、日本が入ってるQuadの違いですが、Quadというのは、日本では軍事的な対中抑止力みたいな位置づけになっているのですけれども、アメリカの認識ではQuadっていうのは、サプライチェーンを中国に頼らずに作っていこうという、いわゆる”通商外交”の枠組みなんです。軍事ではないのです。軍事は、アメリカはQuadでは全く足りないと思ってるんですよね。ですので、このAUKUSっていうのを作ったということですね。

上山

AUKUSというのはこの軍事同盟だけ?

杉田

そうですね、まだそうですね。

上山

Quadは正確には?

杉田

通商ですね。通商経済ですね。貿易ですね。ですから、Quadっていうのは、要するにTPPじゃないんですけれども、経済枠組みで、4カ国で作っていると。インドと日本とアメリカとオーストラリアです。

末延

半導体とか、マスクないとか、みんななかったですから。ああいうものは中国・台湾がやると。

杉田

半導体ですね。

上山

でも、QuadとAUKUSがいずれ一緒になるという話はないんですか?

杉田

それはインドが軍事協定に入るのはすごく消極的ですから、なかなか難しいですね。

末延

インドは上海機構の方にも入ってますもんね。上海機構の方にも…。

杉田

そうですね。向こうにも入ってますね。

末延

バランス取ってますよ、インドは。

杉田

アメリカのある識者なんかは、日本は事実上AUKUSのメンバーであるという言い方してるんですよね。これはやっぱり日本としてはなかなかこう座視できない見方であって、日本が入っているなんていつ決めたんですかということになるんですよね。

上山

中国の海洋進出に対しては、ヨーロッパまで巻き込むような大きな動きになっている中で、杉田さん、岸田新総裁に求めることとして『アンカーの眼』で提示して頂きたいと思います。

杉田

私は、この「バイデン・ドクトリン」というのが、もう明らかになっていると思うのですね。これはアフガニスタンからの撤退もそうなのですけれども、要するに「自分の国は自分で守ってくれ」ということなんです。これは先ほど、久江さんもおっしゃってましたね。それでオーストラリアになぜ米国が原子力潜水艦出すんですかということになると、オーストラリアは自分の国でその技術を買って、自分の国で作ると。7兆円ぐらいでフランスのディーゼル潜水艦で使うはずだったんですけど、それにプラス3兆円ぐらい足して、アメリカから技術を買いますと。つまり10兆円ぐらい使うと。10兆円と言うと、日本のGDPが大体約450兆円ですから、これの大体50分の1ぐらいは使うわけですよ。オーストラリア、日本よりはるかに小さい国ですよね。にもかかわらずそのぐらいのコストを払って、自分の国を守りますということで、初めてアメリカが核兵器やミサイル技術と並ぶぐらいに重要な機微の技術である潜水艦、原子力潜水艦の技術を提供するということなんです。

現地の軍事パランスは今、この地域では中国の方が米国より有利です。ただ唯一アメリカが強いのは水中なんです。水中を制するのは原子力潜水艦なんですよ。だからこの時期に、アメリカはオーストラリアにお金を払わせて、配備させたいというのは非常によくわかる話ではありますよね。

上山

そういった中で今、提示してくださった「自分の国は自分で守る」は、日本に当てはまるいうことですよね?

杉田

そうですね。ですから先ほどまでに出てる敵基地攻撃能力をどうするのかと。原子力潜水艦というのは、攻撃ができますから、究極の敵基地攻撃能力、水中にいるので、どこにいるかわからないので、非常に強い抑止力を持っているものですよね。こういうものをどうするのか、あるいはアメリカが非公式に、いろんな場で言っている中距離弾道ミサイルの配備を日本はどうするのかと。こういった問題が待ったなしで来るわけです。同時に、先ほどまで出ているように、そんなことをしたら中国はどういう反応をするかということですよね。日本の多くのビジネスは中国に展開していますので、場合によっては、日本のビジネスマンが人質に取られてしまうかもしれないと。そんなことまで考えて判断しなくてはいけないというわけです。

■「自分の国を自分で」日本が迫られる決断

上山

決断が迫られているというのはわかるんですけれども、「自分の国を自分で守れ」というのは、どうしたら良いですか?

杉田

一つは、アメリカとの同盟関係はしっかり築いていくということは、当然ながらあるのですけれども、同時に、中国と明らかにパイプがないので、二階さんもいなくなるということでパイプがなくなるので、中国とのパイプをもう一回、築き直すということが必要ですよね。明らかにAUKUSができたことによって、中国は、ちょっと次元が違ったところに米中の軍事関係が入ったということで、中国も戸惑ってると思うのです。ですので、このアメリカの対中軍拡の流れを止めるには、中国が一旦、自分で始めた軍事拡張主義をストップするというのが、誰にとっても一番良い策になるわけです。その辺の話を日本がきちんと中国とできるかどうかというところが大事になると思います。

上山

末延さんはこのあたり、どういうご意見をお持ちですか?

末延

日本人が一つ忘れているのは、中国はアメリカと戦ったことがないんですよ。今、米中は緊張していますが、日本はアメリカと戦争しました。そこでやっぱり今、イギリスやヨーロッパがなぜこっちに出てくるのか、イギリスは生き残りをかけて、旧英連邦を使う形でオーストラリアとかに原潜をアメリカが提供すれば、明らかに軍事的にもう位相が変わるわけですから。今まで中国が一気に来たものですから、ヨーロッパもアメリカも本気になってきた時に、日本は日本で日米同盟が基軸なんですが、Quadで囲みますが、中国と日本はどの戦略、どういう距離でやるのかっていう、ここがね、僕が先ほど言った『したたかなハト」なのか『タカ」なのか、ここのところの戦略戦術が実はすごく難しい。ここを上手くやらないと、アメリカだっていつも面倒を見てくれるわけではないんですよ。ちゃんと外交戦略を、国を守る形を作りながらやっていかないと、そこは難しいので、特に今、サイバーセキュリティとか(IT)イノベーションが進む中で、(憲法)9条の話だって昔の神学論争の形でやっていては、実際の判断はできないところに来ているということを、これは野党も含めて十分話さなくてはいけないところに来ている。もっと具体的に現実の話をしなくてはいけない、僕はそう思ってます。

杉田

先ほど久江さんが言っていた、日本の中の国民的な議論が両極に割れてしまうのがあって、これをどうすれば良いのかっていうのが大きな問題なんです。昨日発表された米中関係についての世論調査を見ると、日本人を対象に調べた調査ですけれども、これを見ると、米中関係対立の不安を感じるというのが87%と高いんですよね。同時に中国に対して、親近感を持ってるっていうのは9%なんですよ。中国はけしからん国だと言っている人々は91%と。これはおそらく国民世論として、中国に対する不満がどんどん溜まってて、良くないんですよ。つまりマグマが溜まってるんですよ。こういった中で、当然ながら敵基地攻撃能力を持つべきだとか、日本も原子力潜水艦を入れよう、弾道ミサイル入れようとか、そういうような極論を言ってしまう可能性があるんですよね。一方、それと逆に、やっぱり日本は平和主義だから中国と話し合いましょうという人々もいる。しかし、こうした弱い姿勢では、中国は弱い相手には足元を見て攻勢にでてきますから、平和が達成される実現性や効果はあんまりないということになってしまうと思うのですよ。

末延

杉田さん、その真ん中を埋めた議論をしないと、習近平の中国は明らかに変わってきているわけですよね。そこのところはやっぱり親中派と言われた人も、今までのような議論の立て方ではダメだと思うんですね。

上山

久江さんはこのあたり、どのようなご意見をお持ちでしょうか?

久江

アメリカの政府関係者含めてですね、いわゆるプロの世界で見ているのは、多分、高市さんの政策を結構、見ていると思いますよ。要は岸田さんがそっちの、いわゆる保守的な敵基地含めてですね、靖国参拝含めて、そっちの方にどれだけ引っ張られるのかどうかというのが、おそらくアメリカの情報関係者、最も分析しているところだと思います。現実、そういう動きが起きていると思います。そういうこともあるので、やはり岸田さんが敵基地も含めて、靖国参拝その他含めて、アメリカとか中国にどれだけの配慮をして、うまく外交・軍事をやっていくかということ、実は極めて重要であるし、日本政府は中国をいわゆる脅威という言葉は使っていませんけれども、そういう動きが出てきて、日本の世論の中でもそういうことがあると。

ただ一方で、ネット社会で現実以上にそれが増幅されちゃって、なんかすごい親の敵みたいになっちゃって、僕はそういうのがあるから、逆にアメリカも怖がってる部分があると思うんです。だから杉田さんがおっしゃった通り、やはり地形、経済を含めて日本という国は引っ越しはできないわけですから、ただ、こぶし上げるだけではなくて、一方で対話もしなくてはいけないという、そこのバランスをどう取っていくかということが大事だと思いますね。

■衆院選へ…与野党攻防のポイント

上山

自民党が岸田新体制になりましたけれども、その後の臨時国会の会期も含めて政治日程を確認しておきましょう。

菅原

まず、あす4日に首班指名選挙、それから岸田内閣の組閣が行われまして、8日に所信表明演説があります。そして翌週11日から13日まで、各党の代表質問です。

10月4日、岸田内閣発足後に記者会見した岸田総理は、自らの内閣を「新時代共創内閣」と名付け、コロナ禍の影響がある経済を立て直し、ポストコロナ時代の経済社会を国民とともに創り上げていくと語りました。さらに、岸田総理は、今国会の会期末となる10月14日に衆院を解散し、同19日公示―31日投開票の日程で衆院総選挙を実施する考えを表明しました。

菅原

自民党と連立政権を組んでいる与党の公明党は、子育て支援として0歳から18歳まで一人10万円相当の支援を発表しました。そして野党7党のうち立憲・共産・社民・れいわは共通政策をまとめていまして、コロナ対策の強化や消費税減税などを訴えています。それ以外の3党を見ていきます。維新は身を切る改革を訴えて、政権に対して「是々非々」で提案していく方針です。国民民主は消費税の減税や教育予算の倍増などを主張しています。NHK党はNHKのスクランブル化を訴えています。

上山

そして立憲民主党と共産党なんですけれども、先月30日の党首会談で、衆議院選挙で政権交代した場合には、連立を組まずに政策ごとに協力する閣外協力とすることで合意をしました。あす首班指名選挙行われますけれども、その時には共産党は枝野氏に投票することが決定しているということです。

立憲民主党は社民党、れいわ新選組とも協力体制を進めています。どうなんでしょうか?野党はこのままで良いのか、今、取るべき戦略みたいなものは?

末延

僕はもうはっきりしてます。野党野党って言われているうちに野党ボケするんです。どこにいるのかって言ったら、ウェイティングサークルにいて、ピンチヒッターで出ると。そのためには、何の政策をやるかと言ったら、安全保障、アメリカなんか民主・共和両党は安全保障はあんまり本質は変わらないですよ。問題は平等か自由かというマクロ経済の政策、価値観。マクロ経済の政策を反アベノミクスというのはこうやりますと、コロナはこうやりますというのを掲げて、それで自分らはこうやると、コロナパンデミックはこういう風にやりますと言う。そこをはっきり言って、自民党は変わらないとか、同じパターンの批判とか、揚げ足取りはみんながもう辟易しているということを、もういくら何でも理解して、頑張ってもらいたいです、野党はね。

杉田

イギリスには影の内閣っていうのを野党が作ってて、各省庁の閣僚を任命して、一つ一つのイシュー、政策課題が生じた時に、我々だったらこういう風にするんだということを、かなり細かく、与党よりも良い政策案を出してきて、国民に提示する。我々には案がありますと。

末延

かつて民主党は、『明日の内閣』と言ってやってたんです。あれをいつの間にかやめちゃって、あれは絶対に必要で、このリーダーがこの政策を担当ですということではっきり見せてね、そういう形で提示すれば、政権選択ですから国民がわかりやすくなる。今からでも遅くないと思いますけどね。

上山

与党の逆張りの政策ということではなくて、野党の理想像、国家像みたいなものを…。

末延

経済と安保、これをどうやると、皆さんの生活はこうなりますと。我々はこうやりますっていうのをあんまり綺麗事ではなくて、リアルに現実的に、今やれる中でこれをやりますというのを、はっきり示すべき。ウェイティングサークルにいるということです。野党と言ったら遠くにいる感じがするじゃないですか。

杉田

経済も「新しい資本主義」という言葉を岸田さんが使って、これってやっぱり格差とか分配と言っているじゃないですか。ここにおいて、政府と違う、より説得力ある、具体的な政策案を出せるのかどうかっていうのが私は野党の一つの勝負所だと思うんですね。

■岸田新体制に望むこと

上山

岸田内閣、新体制に注文したいポイントを伺います。久江さんはどんなことを注文したいですか。

久江

私はやはり国会での議論とか立法府をもう一度復権させるような形で、やっていってほしいなと。安倍政権、そして菅政権ということで、官邸主導、政治主導、それ自体は決して悪くないと思うんです。それが行き過ぎた結果、今回の菅政権のコロナ対応も含めて、結構、中で一部の人の意見を聞いて、霞が関が受け身になっていると。自民党の政調とか総務会を含めて、党内での議論もないまま、全部もう、ぬかに釘って素通りしていってしまう。当然のことながら、与野党の議論だって活発化するわけありません。しかも、答える総理が同じことをテープレコーダーのように繰り返すと。国民に一番近いのは憲法で、国権の最高機関がそれは立法府なんですよ。みんな気づいてないですけど、立法府がここ10年ぐらい本当にもう空洞化してしまっている、だから、これは元々国会議員の中から与党になって、そして選ばれた人たちがこうやって閣僚を組成しているのだけど、我々に一番近いのは実は党であり、そして国会なんですよね。従いまして、やっぱりそれが野党の議論も活発化させることになりますし、野党で良いことを言っているのであれば合意しようとか、そういうことに結びついてくる。やはり今の弊害というのは行き過ぎた官邸一極集中なので、何とか党の方でですね、政策の議論、そしてそれが与野党の議論に戻るような形で、立法府の復権をさせるような、そういう内閣であってほしいなと思いますね。

上山

末延さんはどんなことを注文したいですか?

末延

はい、僕は今、勤めている東海大学で『平和戦略国際研究所』というのをやっています。何をやっているかというと、ヒューマンセキュリティ=人間の安全保障をやっているんです。どの分野が一番大きいかと言うと、公衆衛生なんですよ。このパンデミックが起きて、一番、日本がダメなのは、医療世界一と言って、何もできなかったことです。菅さんがお一人で頑張ったけど、組織として(対応)できず、医療と公衆衛生は別物ですから、いくらクリニックや病院がいっぱいあったって、パンデミックの公衆衛生には対応できないということが、スタッフも病院も。そのことが1年半経って、東京都も国もできてないです。これを是非スタート、スピードを上げてですね、(臨時の)野戦病院を含めて、何か起きた時には公衆衛生をここで対応する。これを新政権にやってもらいたい。そうすれば落ち着いて、経済の回復軌道の動きが取れるようになる。そのことを是非お願いしたいと思います。

上山

まずは新型コロナということなんですけれども、杉田さんはどんなことを注文したいですか?

杉田

はい、私はやっぱり岸田さんが言った「新しい資本主義」というのを徹底的に追求してほしいなと思うんですね。資本主義の歪みっていうか矛盾は、先進資本主義国でどこも決定的になっていますから、その歪みを政治が解決できないから、民主主義に対する人々の不信も政治不信も強まっている。やっぱりそこの部分を、格差の問題、分配の問題、この部分について英断をふるってですね、積極的に切り込んでほしいと思います。

(2021年10月3日放送)