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#119

減築で出現した玄関ポーチが世代を繋ぐ川崎の家

神奈川県川崎市の南東部、幸(さいわい)区。北に多摩川、南に鶴見川に挟まれたこの地域は、
かつては梅の名所として有名でした。1884年に明治天皇の行幸がありこれを記念して「御幸村」と名付けられたのが区の名前の由来になっています。また、区の北西にある夢見ケ崎動物公園には、レッサーパンダやペンギンなど、子ども達に人気の動物が沢山いて、人々の憩いの場所となっています。
今回は、木造2階建てを2世帯住宅にリモデルされたTさんのお宅を訪ねます。Tさんは奥様と3人のお子さんの5人家族。4~5年前にTさんのご両親と祖父母らが住んでいた現在の敷地内に、Tさん家族の家を新築で建てようと計画していた中、祖父母が相次いで亡くなるなど、家族構成の変化があり、新築をやめて2世帯住宅にしようと再計画。設計は、奥様がHPを見てひと目ぼれをした建築家に依頼。Tさんの祖父が出身地である福島県から大工さんを連れてきて、住み込みで建てたというT邸。家族の歴史が刻まれた家を残したいという思いが今回のリモデルに繋がったそうです。
以前は駐車場が狭く、車が停めにくかった玄関周りは減築しました。屋根は以前のままなので、庇が長くなり、2世帯住宅でも1つの屋根の下で家族皆が暮らす象徴のような存在になりました。また、大屋根に覆われている玄関ポーチに、親世帯・子世帯共用のベンチを設けました。ここは玄関が別々なので、一家で出かける時の待ち合わせ場所となっています。屋根の裏側には無垢のフローリング材を貼り、明るさや柔らかさを演出しています。
Tさんが小さい頃は、1階に祖父母、2階にTさんと弟、両親が住んでいましたが、今回は1階を母の居住スペース、2階をTさん一家5人の住まいとしてリモデルしました。1階は、天井が低く、圧迫感があったため廊下の天井をあえて下げることで、くぐり抜けてリビングに入った時に高く感じられるようにしました。リビングは祖母から受け継いだ鎌倉彫の家具を生かしたデザインに。廊下や梁を家具の色に合わせて茶色く塗装し、既存の神棚を上部に組み込みました。
Tさん家族が住む2階は、以前はリビングに親の寝室、2人の子どもの部屋と細かく分かれていましたが、南側を増築して壁を取り払い、下に住む母親も含めて家族が集まる広いLDKに。また、既存の天井を取り払い、天井高3.4mの開放的な空間になりました。むき出しになった祖父の代から使われていた梁はグレーで塗装。ロフトや階段の手摺りと同じ色にして、親世帯の1階との違いをつけました。子ども部屋は、天井・壁の全面に構造用合板のOSBを使用して、他の部屋と区別しました。画鋲の後や傷が気にならない素材なので、子ども達が自由に遊べます。また、天井 を撤去した後の空間を利用して子供部屋の上部をロフトにしました。ロフトの両側から、下の部屋が見下ろせるので、色んな視点から家族のコミュニケーションが取れる楽しい空間になりました。祖父の代からの思い出も残しながら、これから成長していく子ども達や、母親も含めて皆が楽しく快適に過ごせるリモデルとなりました。
 
設計担当:アトリエ スピノザ
http://www.atelier-spinoza.com/

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after