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#123

父が建てて息子がリモデル 打ちはなしの浦和の家

埼玉県の行政機関が集まる浦和は、かつて江戸と京都を結ぶ中山道の宿場町として栄えました。この地では古来より月を信仰する風習があり、2千年前に建てられたと言われる【調(つき)神社】には、「ツキ・(月)」という名にちなみ、狛犬ではなくコマウサギが祀られています。そこからか、今ではウサギが浦和のシンボルになっているそうです。
今回は、建築家の父が建てた築38年の鉄筋コンクリート造の二世帯住宅を、建築家の息子さんがリモデルされた、Tさんのお宅を訪ねます。1階はTさんと奥様、2人のお子さんの4人暮らしで、2階はお父様とお母様が暮らしています。元々お母様の実家で平屋だったT邸は、設計会社に勤めていたお父様が33才の時にコンクリートの家に挑戦したいと設計し、その当時では珍しい鉄筋コンクリート住宅にリモデルした家。1階に祖母、2階にTさんら家族4人が暮らしていました。25才の時に結婚したTさん。結婚後は奥様の実家近くのマンションに賃貸で暮らしていましたが、長女が生まれ、祖母が老人ホームに入ったのを機に実家の1階で暮らすことに。しかし、コンクリートの壁は断熱性が低く、冬の底冷えや結露に悩まされていました。そして今回、父の設計を生かしながら家族が快適に暮らせる住まいにリモデルしたのです。
玄関は、南向きから東向きに変え、増築して間取りを広げました。開口部を大きくし、強靭な防犯ガラスを扉や壁一面に使うことで、光を部屋に取り込みやすくしました。また、以前は庭との間に大きな段差があり、洗濯物を干すのが大変だったため、庭にデッキを敷き詰め、リビングとひと繋がりの空間に。四季折々の自然を感じられる場所になりました。冬の底冷えが厳しく、フローリングの上にこたつを置いて過ごしていたリビングの床は、空気を多く含み、足触りが温かい桐の材に変えました。
2階は、建築家になりたての頃にTさんがリモデルしました。南側はかつて、リビングと子供部屋に分かれていましたが、広く使えるよう、間仕切り壁を撤去し、天窓の光が差し込むおよそ17帖の広い空間に変えました。以前はリビングとダイニングが繋がって、広くて寒かったため、強化ガラスのパーテーションで仕切ることで、天窓からの光を遮ることなく冷暖房の効率を上げました。キッチンのダイニングテーブルは、建築家の修行も兼ねて、Tさんが自ら造作しました。収納と一体化でスライド式になっており、座る人数に応じて天板を広げられるようになっています。父と同じ道を選んだTさん。建築家の親から子へ、長く住み継がれていく家族の温もりを感じるリモデルとなりました。
 
設計担当:田所裕樹建築設計事務所
http://www.ht-archi.com/

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after