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#143

和本を商い330年 13代目の江古田の家

今回訪ねるのは、池袋から約5分、西武池袋線沿線の江古田。駅近くに3つの大学が建ち並ぶ学生街です。築35年のY邸は、古書店と自宅を兼ねた木造2階建て。書店の名前は「浅倉屋書店」。貞享年間(1684-1688)創業の古書店です。千葉・佐倉出身の初代が浅草で創業したことから、「浅倉屋」と名付けたそうです。明治期より以前の古文書や古地図、掛け軸など、文化的価値の高い古書を扱い、古くは赤穂浪士にも影響を与えたと言われる儒学者・山鹿素行や正岡子規、江戸川乱歩など多くの文人名士たちにも贔屓にされてきたそうです。13代目のYさんは奥様と長男の3人暮らし。元々この家で育ったYさんは結婚後、近くのマンションに住んでいましたが、2016年、お父様の他界を機に実家に戻ることに。しかし、以前から家の一部を店舗として使っていたため、家の中は古書や書類であふれ、仕事場と生活の場の区切りがありませんでした。そこで、仕事とプライベートのオンとオフの切り替えができる快適な住まいにリモデルすることに。設計はYさんの中学時代の先輩で、建築家の富永哲史さんに依頼しました。歴史ある古書店と住居をどんな風にリモデルしたのか―。
多くの古書や商売道具があり雑多な印象だった店舗部分には、壁を囲むように天井高の書棚を設置。また、部屋全体を光が反射しにくいグレーで塗装をすることで、主役である本のみが照明を点けると浮かび上がって見えるよう天井に光沢シートを貼りました。壁一面の書棚を映り込ませ古書が幾重にも積み重なっているように見せるデザインは、「浅倉屋書店」の歴史を表現しているようです。
また、住居部分は、元々あったモダンな構造を生かしつつ、玄関の一部の壁には大谷石を使い、高級感を演出。そして、Yさんが一番リラックスできる場所になったのは、以前の倍の広さにした浴室。ガラス張りの壁、半身浴がしやすい浅めのバスタブ、さらに庭も臨めるなど贅沢な空間になりました。建築家のこだわりが随所にあふれた見事なリモデルでした。
 
設計担当:富永哲史建築設計室  http://www.tomiarc.com

【平面図】

1F before

1F after

2F before

2F after