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#154

南側の20mの窓を活かした1人暮らしの建築家の家

東京・渋谷。代々木公園のすぐ隣町、富ヶ谷。この辺りは2つの川が合流した地域で昔、地下から貝の化石が見つかり「留貝」と呼ばれたことが富ヶ谷という地名の由来となりました。
その川のひとつ、河骨(こうぼね)川は明治45年に発表された童謡「春の小川」のモデルと言われ今は暗渠となっていますが、この辺りは都心の中では徒歩圏内に代々木公園があり、のどかな地域になっています。

今回はこの街で、100㎡の築50年のマンションを購入された建築家・日高さんのお住まいを訪ねました。
かつて、この部屋は日高さんの母方の祖父が家族のために新築で購入した住まいでしたが、引っ越しして数か月で祖父が他界。残された祖母は住む事はなく、外国人用に建てられたこのビンテージ・マンションを賃貸に出し、生活の糧にしたそうです。近年は古くなり賃料も下がってきましたが、祖母にとっての大切なこの部屋を独立して間もなかった孫の海渡さんが受け継ぐことになりました。海渡さんは自分の事務所兼住宅として仕事でもプライベーとでも人を
招き易い住まいにリモデルしたのです。

4部屋に分かれていたファミリー向けの間取りを、一部の壁を取り払い、開放的な間取りに変更。縦20Mの部屋の南側に窓がすらりと並ぶ、贅沢な間取りになりました。
大学院時代「窓」の研究をしていたこともあり、窓際にモルタルで造作した海外では良く見られる「デイベッド」を設けました。仕事の合間に昼寝をするそうです。また、幼い頃から海外に暮らした経験がある海渡さんは、学生時代から東南アジアや中東に出かけた際に少しづつ民芸品を集めてきました。その民芸品を集めたオープンストレージを作り、リラックスできる場所にしました。

祖母の愛したマンションで、自分の好きなものに囲まれて暮らすーそんな素敵なリモデルでした。

 
設計担当:日高海渡 株式会社swarm
https://www.swarm-inc.com/

【平面図】

before

after