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#229

30代で都内に持ち家 アイデア溢れる建築家夫妻の家

東京都世田谷区砧。「砧」の語源は「衣板」。古代から使われてきた、布を柔らかくしたり伸ばしたりするための道具のことです。世田谷区最大の広さを誇る砧公園は、昭和30年から41年までゴルフ場があり、日本のゴルフ黎明期を支えました。その後、公園となり、園内には美術館も造られ、区民の人気のエリアとなっています。
今回はこの砧公園の近くに築42年のマンションを購入しリモデルされたO邸を訪ねます。Oさんご夫妻は、建築家夫妻。以前は都内に賃貸で暮らしていましたが、長男の誕生を機に家探しを開始。当時、ご主人は独立したばかり、建築設計事務所に在職の奥様も育休中のため予算に限りがありました。そこで、およそ60平米の中古マンションを購入し、建築家夫婦ならではの独自のアイデアとDIYを駆使してコストを大幅にカットし、仕事と家事・育児を両立できる間取りに挑戦したのです。
元々は、リノベーション済みの一般的な2LDKだったO邸。そこで、既存の壁を取払いワンルームに。新たに、通常よりも3分の1ほどの厚みにした薄い壁で仕切り直し、真ん中に子ども部屋や寝室などを並べた“箱のような空間”を設けました。そうすることで、コンパクトなマンションに、ワイドな八の字型の回遊動線を実現したのです。回遊動線では、子どもと愛猫がぐるぐる追いかけっこをしている姿が微笑ましいと話す奥様。幼い子どもにとっては楽しい遊び場にもなっているようです。
壁や扉で空間を完全に仕切らないことで、日々の営みが連続的につながり、また、薄い壁で区切られた空間ごとに、暮らしのリズムが生まれ、ワンルームながらも生活にメリハリがつく住まいとなったのです。
近年、住宅価格だけでなく物価の高騰も相まって、子育て世帯にとって都心はますます住みにくくなってきている中で、「30代で都内に家を持つ」という現実にも挑戦したかったというOさんご夫妻。約60平米という、比較的に手に入れやすいマンションの一室で、いかに自分たちの暮らし方に合った住まいを実現できるかが今回のテーマでもありました。住む人それぞれのライフスタイルから家を設計するという、柔軟さを活かしたリモデルとなりました。
 
設計担当:小田切駿/ハヤオオダギリアーキテクツ
https://hayaoodagiri.com

【平面図】

before

after