番組表

放送内容

#122

箔工芸作家 裕人礫翔

伝統工芸・西陣織に織り込まれる、きらびやかな金箔。現代では建築素材や食べ物まで幅広く用いられている。箔とは、金や銀などの金属類を、およそ1万分の1ミリまで薄くのばした、きわめて繊細な素材。その伝統技術を受け継ぎながら、現代アートへと昇華させているのが、裕人礫翔(63)だ。
 
礫翔は独自の技法で箔を自在に操る。
銀箔を変色させて彩りを生み出す「焼箔」。通常はドライヤーやアイロンなどで温度を調整するが、礫翔は日光や外気温といった自然の力で色を変化させる。
さらに金箔の経年劣化を再現するという礫翔の高度な技術は、国宝・風神雷神図屏風の複製品にも用いられた。
 
京都・西陣に生まれ、箔を手がける父を見て育った礫翔。美術大学を卒業後、父の工場で箔の技術を徹底的に学んだ。しかし、西陣織需要の減少に直面し、箔工芸の存続の危機を感じる。文化を絶やさないために、弟に工場を任せ、礫翔は箔を新たなジャンルへ広めるべく独立した。箔を使った現代アートの制作を開始し、礫翔の作品は次第に世界からも評価されるようになった。
 
そんな礫翔が2年以上の歳月をかけ、高さ3メートル、幅13メートルにおよぶ自身最大の作品を完成させた。箔の伝統を守りながら、新たな挑戦を続ける男の日々に迫った。