一方、ニューヨーク出身のトランプ大統領はこの動きを強く警戒した。自身のSNSで「共産主義者のマムダニが市長になれば、連邦政府からはニューヨークに対して、法的に必要最小限の資金しか拠出しない」と発信。共和党候補ではなく、民主党予備選で敗れ無所属で出馬したクオモ氏への投票を呼びかけるなど、異例の行動に出た。しかし、結果は、マムダニ氏がクオモ氏を退けた。マムダニ氏は勝利演説で、「今夜、逆境を乗り越えた。我々は王朝を打ち破った」と宣言し、「トランプ、見ているはずだ。『Turn the volume up(よく聞け)』、我々の誰かに手出しするなら、我ら全員を相手にすることになる」と、挑戦的な言葉で選挙戦を振り返った。物価高に苦しむニューヨーク市民の生活実感も、こうした変化を後押しした。食パン1斤半ほど(約500グラム)が日本円で700円超、卵1ダースは1000円を超える。トマト1キロはテキサス州ヒューストンの倍以上。生活費の高騰に加え、マンハッタンの家賃中央値は月70万円に達し、住民の負担は限界に近い。
『BS朝日 日曜スクープ』放送内容を動画公開します。
生放送でお伝えするニュース解説を放送終了後、ネットで動画公開します。
もう一度、ご覧になりたい方、見逃してしまった方、是非ともご利用ください。
■『BS朝日 日曜スクープ』11月9日の放送内容は現在、公開中です。
【激務外交から国会審議】高市補正で本格論戦“積極財政”基礎的収支の黒字化達成は
高市早苗総理は就任直後から日米・日韓・日中の首脳会談を立て続けにこなし、休む間もなく臨時国会に臨んだ。10月28日に日米首脳会談。30日に日韓、31日に日中と続いた歴訪を終え、高市早苗総理は11月1日、外交ラッシュを経て帰国の途に就いた。2日は「GREEN×EXPO2027」日本政府出展起工式、3日には「全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会」に出席。4日以降は衆参両院で代表質問、7日には衆院予算委員会に臨んだ。就任直後から、事実上の「休暇ゼロ」のまま論戦の只中へと突入した。首相公邸への転居もままならず、「荷造りの暇がないどころか、睡眠時間もほとんど取れていない状況で仕事をしている。どうかそこはご理解を」と現状を説明した。11月6日午前3時4分に、首相公邸では、高市総理による予算委員会に向けた勉強会が始まり、3時間21分に及んだ。午前8時からは経済安全保障推進会議、続けて閣議。9時からは午後5時過ぎまで、衆院予算委員会の答弁に立ち続けた。衆院予算委で「早すぎる出勤で、多くの方に影響を与えたのでは」との質問に、高市氏は「宿舎のFAXは10枚ほどで紙が詰まるタイプで、昨日の段階では答弁書を受け取る術がありませんでした。秘書官、SP(警護官)さん、ドライバーの方にご迷惑をおかけしました」と語った。10月4日の自民党総裁選出直後、高市氏は「嬉しいというよりも、これからが本当に大変。全世代総力結集で全員参加で頑張らなきゃ立て直せません。私自身、ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます。働いて、働いて、働いて、働いて、働いてまいります」と語っていた。
高市内閣が編成を進める2025年度補正予算は、物価高騰対策や防衛費GDP比2%達成への積み増し、医療・介護支援、地方交付金の拡充など分野は多岐にわたる。自民の小林鷹之政調会長は11月6日、「今置かれている状況を考えれば、相応の額になってくる。何かキャップをはめてやるものでもない。しっかり積み上げることが重要」と述べ、規模拡大に理解を求めた。自民・日本維新の会の両党は衆院で過半数に2議席、参院で6議席足りず、補正予算成立には野党の協力が不可欠。一方、与野党6党は11月5日、ガソリン暫定税率(1リットル当たり25.1円)を12月末で廃止することで合意。約1.5兆円の財源が失われる見通し。かつて自公政権は、代替財源の提示がないままの暫定税率廃止の審議には応じない姿勢を貫いてきた。
立憲民主の吉田はるみ代表代行は11月5日の衆院本会議で、「物価高対策としておこめ券の配布を補正予算に盛り込むのか」と質した。これに対し、高市総理は「地域の実情に応じた的確な支援をお届けできるよう、重点支援地方交付金の拡充などを検討するよう指示した」と述べ、具体策の明言は避けたものの、検討を進めていることを示唆した。この問題を巡り、鈴木憲和農水大臣は10月31日に、「経済対策の中で重点支援交付金を検討中。お米券を配ることで負担を和らげ、『もっと買える』という状況を作ることが当面できることだ」と説明した。国民民主の玉木雄一郎代表は、電気・ガス料金の支援水準について質問。高市氏は「寒さの厳しい冬の間、支援を行う」と述べたうえで、年収の壁引き上げに関しても「3党合意を踏まえ、年末までに令和8年度税制改正プロセスの中で基礎控除の物価連動による引き上げる税制措置を具体化する」と答弁した。
高市政権は、これまでの「単年度ごとのプライマリーバランス(PB)」黒字化目標を見直し、複数年単位で財政健全化を点検する方針を示した。高市氏は「単年ごとのPBという考え方は取り下げると考えていただいて結構」と明言。2025~2026年度を通じ、国・地方を合わせたPB黒字化を「可能な限り早期に」達成する方針を掲げた。積極財政を掲げるのは高市総理、片山さつき財務大臣、城内実経済財政担当大臣。財政規律を重視する麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長らの間には温度差もある。一方、立憲民主の本庄知史議員は11月7日の衆院予算委で、「高市総理は5月に『国の品格として食料品の消費税は0%にすべき』と述べたが、就任後の答弁は後退している」と追及した。これに対し、高市氏は「自民党と維新の合意文書にも検討項目として含まれており、選択肢として排除するものではない」と応じた。ただ、高市氏は11月4日の衆院本会議では、「レジシステム改修などの課題にも留意が必要」と述べた。
★ゲスト:林尚行(朝日新聞コンテンツ政策担当補佐役)、佐藤千矢子(毎日新聞専門編集委員)
★アンカー: 杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
(公開期間は放送から2週間です)
【州知事選など米民主3勝】NY新市長にマムダニ氏“政府閉鎖”トランプ氏の焦燥は
世界経済を牽引する米国の象徴的都市・ニューヨークで、政治の潮流を変える選挙結果が生まれた。11月4日のニューヨーク市長選で当選したのは、民主党のゾーラン・マムダニ氏(34)。アフリカのウガンダに生まれたインド系イスラム教徒で、自らを「民主社会主義者」と称する。妻のラマ・ドゥワジ氏はシリア系のアニメーター。マムダニ氏は選挙戦で、「最低賃金を時給30ドル(約4500円)に引き上げ」「無料バス、市営スーパーマーケットの導入」「家賃上昇の凍結」など、生活支援を前面に掲げた。財源は富裕層や大企業への課税強化で賄うとし、所得格差の是正を訴えた。
一方、ニューヨーク出身のトランプ大統領はこの動きを強く警戒した。自身のSNSで「共産主義者のマムダニが市長になれば、連邦政府からはニューヨークに対して、法的に必要最小限の資金しか拠出しない」と発信。共和党候補ではなく、民主党予備選で敗れ無所属で出馬したクオモ氏への投票を呼びかけるなど、異例の行動に出た。しかし、結果は、マムダニ氏がクオモ氏を退けた。マムダニ氏は勝利演説で、「今夜、逆境を乗り越えた。我々は王朝を打ち破った」と宣言し、「トランプ、見ているはずだ。『Turn the volume up(よく聞け)』、我々の誰かに手出しするなら、我ら全員を相手にすることになる」と、挑戦的な言葉で選挙戦を振り返った。物価高に苦しむニューヨーク市民の生活実感も、こうした変化を後押しした。食パン1斤半ほど(約500グラム)が日本円で700円超、卵1ダースは1000円を超える。トマト1キロはテキサス州ヒューストンの倍以上。生活費の高騰に加え、マンハッタンの家賃中央値は月70万円に達し、住民の負担は限界に近い。
外交舞台では存在感を誇示するトランプ大統領だが、国内では政治、経済で異例の停滞に直面している。11月4日に行われた2州の知事選挙で、民主党が相次いで勝利を収めた。ニューヨーク市長選では、民主社会主義者を自称するゾーラン・マムダニ氏が勝利。一方、東部のニュージャージー州とバージニア州では、いずれも中道派の民主党候補が共和党から州政を奪還し、トランプ政権に対する明確な「民意の審判」となった。ニュージャージー州知事選では、元海軍パイロットで中道派の民主党、マイキー・シェリル下院議員が勝利。米CNNによる出口調査の分析によると、注目されたのはヒスパニック系有権者の動向だった。昨年の大統領選でトランプ氏が46%の支持を得たのに対し、今回シェリル氏は64%を獲得。共和党候補のチャタレリ氏は32%にとどまり、保守層への浸透に失敗した。
一方、首都ワシントンに隣接する東部バージニア州では、民主党中道派で元CIA職員のアビゲイル・スパンバーガー前下院議員が知事選を制し、州初の女性知事に就任する見通しとなった。バージニア州は連邦政府職員が多く居住する地域。スパンバーガー氏は、政府機関の一部閉鎖による雇用問題を鋭く追及した。トランプ政権による「解雇・再編」が逆風となり、共和党の牙城を崩す要因となった。同じ民主党でも、ニューヨークのマムダニ氏が「急進左派」と位置付けられるのに対し、シェリル氏とスパンバーガー氏はいずれも現実的な政策運営を重視する中道派とされている。トランプ大統領自身も、敗北の要因に「政府機関の閉鎖が共和党に大きなマイナスだった」と言及している。実際、10月1日から始まった政府閉鎖は11月9日で39日目を迎え、史上最長に。上院は11月4日、共和党主導の「つなぎ予算案」を否決し、14回目の不成立に陥った。
影響は広範に及んでいる。全米の空港では、航空管制官の無給勤務による欠勤が相次ぎ、11月7日には約1000便が欠航。米運輸省は「最大20%の削減」を検討している。さらに、低所得者向けの食料補助も中断され、農務省は11月1日から給付停止を発表。トランプ大統領は「民主党が政府再開に賛成票を投じるまで援助を止める」と強硬姿勢を崩していない。経済統計の発表も遅れ、「雇用統計」や「貿易収支」は未発表のまま。例外的に発表された「9月の消費者物価指数」も10日遅れとなった。米国大使館の公式サイトには「政府の予算失効により、業務再開まで更新は限定的」との告知が掲示された。
★ゲスト: 前嶋和弘(上智大学教授)、津山恵子(NY在住ジャーナリスト)
★アンカー: 杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
(公開期間は放送から2週間です)
■『BS朝日 日曜スクープ』11月2日の放送内容は現在、公開中です。
【日中首脳が初会談】戦略的互恵は再確認も“歴史認識では・・・応酬”中国の対日警戒は
10月21日に召集された臨時国会で、内閣総理大臣に選出された高市早苗氏が、就任からわずか数日で国際舞台に立った。24日の所信表明演説を経て、25日から東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議出席のためマレーシアを訪問。就任後初の外遊となる「外交デビュー」では、立て続けに各国首脳と会談し、矢継ぎ早に国際関係の構築を進めた。25日、高市氏はマレーシア滞在中に、大統領専用機で移動中のトランプ米大統領と初の日米首脳電話会談を行い、約10分間にわたり、インド太平洋の安全保障や経済連携について意見を交わした。翌26日には、フィリピンのマルコス大統領、マレーシアのアンワル首相、オーストラリアのアルバニージー首相と相次いで会談した。28日には、東京で日米首脳会談を開催し、同日インドのモディ首相とも電話で会談。30日からは韓国・慶州でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に臨んだ。31日には同会議の合間を縫い、日中首脳会談を実施。就任10日余で、米国・中国・韓国をはじめ、ASEAN主要国と接触する異例の外交日程をこなした。
高市氏と各国首脳との握手にも、微妙なニュアンスが表れた。10月28日の日米首脳会談で高市氏は、トランプ氏と18秒間の握手を交わし、笑顔で見つめ合う場面が報道陣に公開された。30日の日韓首脳会談では、李在明大統領と約15秒間、やや緊張感を帯びた握手を交わした。31日の日中首脳会談では、習近平国家主席と固い表情で、10秒間の握手を交わした。APECの首脳会議では、高市氏は、隣席となったインドネシアのプラボウォ大統領に自ら声をかけ、モニター画面を見ながら笑顔で歓談する姿がカメラに捉えられた。控室でもニュージーランドのラクソン首相、フィリピンのマルコス大統領らと打ち解けた様子で談笑するなど、初の国際舞台ながら堂々たる振る舞いを際立たせた。高市氏は記者団に対し、「ASEANでご一緒した首脳も多く、『この間ありがとうね』と声を掛け合った。就任後、まだ直接お話していない国々の首脳とは、すべてご挨拶できた」と語り、短期間での信頼関係構築に自信をのぞかせた。
10月21日、高市早苗氏の総理誕生を受け、世界各国が祝意を表する中、習近平氏は祝電を送らず、沈黙を保った。これまで菅義偉氏、岸田文雄氏、石破茂氏ら歴代政権誕生時には、いずれも就任当日に習近平国家主席から祝電が寄せられていたが、今回はそれが見送られた。高市氏の総理就任から2日後の23日、中国外務省の郭嘉昆副報道局長は会見で、「日本が本当に専守防衛と平和的発展を堅持しているのか、強い疑問を抱かざるを得ない」と述べ、高市政権の安全保障政策に警戒感を示した。24日の所信表明演説で高市氏は、「中国は日本にとって重要な隣国であり、建設的かつ安定的な関係を構築していく必要がある」と述べる一方で、「経済安全保障を含む安全保障上の懸念が存在することも事実」と語り、対中姿勢では対話と抑止の両立を強調した。これに対して、郭副報道局長は同日、再び「日本が平和的発展を進めているのか強い疑念を抱かざるを得ない」と発言。中国側の不信感が根強いことを印象づけた。また、26日、マレーシアで開かれたASEAN首脳会議において、高市氏は演説の中で、「東・南シナ海において挑発的な軍事活動が継続・強化されており、深刻な懸念を表明する」と述べ、中国の動きを念頭に牽制した。28日、東京で日米首脳会談が行われたが、中国外務省の郭副報道局長は、「日米の二国間関係と安全保障協力は地域の平和と安定に役立つものであるべきでその逆であってはならない」と警戒感を表明。郭副報道局長は29日、31日開催の日中首脳会談を目前に、「高市氏が日中関係を非常に重視し、中国とデカップリング(経済切り離し)する気はないと日本側が表明した」と語った。
10月31日、韓国で開催されたAPEC首脳会議で、高市総理と中国の習近平国家主席による日中首脳会談が実現した。両首脳の対面会談は高市政権発足後、初めて。約30分間にわたり、東シナ海や経済安全保障を含む幅広い課題について率直な意見交換が行われた。会談冒頭、習主席は「中国は日本の重要な隣国であり、建設的で安定的な関係を築くべきだ」と述べたうえで、「両国の戦略的互恵関係を全面的に推進することは、新しい内閣が中日関係に抱く認識を反映している」と語った。これに対し、高市総理は「中国は日本にとって重要な隣国であり、戦略的互恵関係の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係の構築という日中関係の大きな方向性を改めて確認したい」と応じ、双方が関係安定の必要性を共有する姿勢を示した。会談では、尖閣諸島を含む東シナ海情勢や、レアアースなど戦略物資の輸出管理、邦人拘束問題など、両国間の懸案が取り上げられた。習主席は、「歴史や台湾といった重大な問題で、4つの政治文書が定めた明確なルールを守り、中日関係の基礎を揺るがせないようにすべきだ」と強調。さらに、「村山談話は日本の侵略の歴史を反省し、被害国に謝罪したもので広めるに値する」と言及し、歴史認識問題で釘を刺した。会談後、高市総理は記者団に対し、「かなり中身の濃い、充実した議論ができた。まず確認したのは、日中間の戦略的互恵関係、そして建設的かつ安定的な関係を構築していくという大方針」と述べ、実務的かつ対話重視の外交姿勢を強調した。
★ゲスト: ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト)、柯隆(東京財団主席研究員)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
(公開期間は放送から2週間です)
【トランプVS習6年ぶり会談】関税とレアアースに焦点“台湾問題は沈黙”のワケは
アジア歴訪の最終盤となった米中首脳会談で、トランプ米大統領は10月30日、「会談は素晴らしかった。10点満点中で12点だ」と満足感を示した。焦点となったのは、世界の供給網を揺るがすレアアース問題。双方は激しい対立の末、規制と関税の応酬を一時的に見送り、懸案解決は先送りされた。中国は今年4月、ジスプロシウム、テルビウムなど7種のレアアース輸出規制の強化を発表。以後、米国が申請した輸出のわずか25%しか認可されず、米国ではSUV(スポーツ用多目的車)工場の一時停止など生産現場への影響が広がっていた。中国は10月、輸出管理の対象を加工技術にも拡大し、海外の防衛・半導体企業への輸出制限の方針を発表。世界市場は再び緊張に包まれた。しかし、今回の会談で、中国がこの追加規制を1年間見送ることで合意。対抗措置として米国が表明していた100%の追加関税も発動を見送ることとなった。また、両国は経済協力の再構築に踏み出し、中国は米国産の大豆輸入を即時再開。米側も合成麻薬「フェンタニル」の流入を理由に課していた関税を、20%から10%へ引き下げた。トランプ氏は来年4月に訪中する予定。
レアアースは、ハイテク製品や防衛装備に不可欠な戦略資源とされ、中国は世界の採掘量の約70%、精製では約90%を占め、圧倒的な支配力を持つ。輸出規制の対象となったジスプロシウムはジェットエンジンに、イットリウムは高周波レーダー・システムに不可欠。米国の戦闘機「F35」1機には約400キロのレアアースが使用され、原子力潜水艦では4600キロが必要とされるという。10月28日、東京で行われた日米首脳会談では、重要鉱物・レアアースの供給確保に向けた新たな枠組み創設で合意。両首脳は、「日米両国の国内産業にとって極めて重要な原材料および加工済みの重要鉱物、並びにレアアースの供給を支援する」と表明した。さらに、両政府は「エネルギー」「AI」「レアアース」を中心とする21の投資プロジェクトの共同文書を発表。日本企業の投資関心総額は60兆円規模となる見通し。トランプ大統領の今回のアジア歴訪は、さながら「レアアース対策の旅」であった。10月20日、米国で行われた豪州首脳との会談では、採掘・加工協力で合意。26日のASEAN首脳会議では、タイ・マレーシアとの間でレアアース協力覚書を締結。そして、28日の日本での合意、30日の日中首脳会談。資源確保を軸とする新たな経済安全保障の枠組みが、アジア全域に広がりつつある。
10月30日、韓国・慶州で開かれたAPEC首脳会議の場で、トランプ大統領と中国の習近平国家主席が6年ぶりに対面で会談した。会談時間は1時間40分に及んだが、両国関係の最大の火種とされる「台湾問題」には一切言及がなかったという。米中が経済と安全保障の微妙な均衡を探る中、米国内では「中国との関係改善を優先しているあまり、台湾を犠牲にするのでは」との懸念が高まっていると、米「ブルームバーグ」が報じた。また、台湾の頼清徳総統は、米国の保守系ラジオ番組に出演し、「台湾が併合されれば、中国は米国と世界の舞台で競い、ルールに基づく国際秩序を変える上でさらに強力になる」と発言。米中に対し、強い危機感を示した。また、米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、頼総統は8月に中南米3カ国を歴訪する際、米ニューヨークへの立ち寄りを希望していたが、トランプ政権は「中国との会談に集中するため」として訪問計画の取り消しを求めたという。さらに、米紙「ワシントン・ポスト」は、複数の政府関係者の話として、トランプ大統領が「米中首脳会談の可能性を優先するため、台湾への4億ドル規模の軍事支援の承認を一時的に拒否した」と報じた。政権発足以来、トランプ氏は今年2月に、台湾有事への介入を問われて「コメントしない。そうした立場には立ちたくない」と発言していた。
★ゲスト:ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト)、柯隆(東京財団主席研究員)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
(公開期間は放送から2週間です)
■『BS朝日 日曜スクープ』3月23日の放送内容は現在、公開中です。
【中国に対峙する台湾・金門島】戦跡が物語る“砲撃の記憶”防衛拠点の現実と島民生活
中国福建省の廈門(アモイ)から約5キロの距離に位置する台湾・金門島。人口は約14万人、面積は150平方キロメートルの小さな島で、基幹産業の観光と漁業で発展を遂げてきた。金門島は長年、中国との緊張関係の中で、重要な軍事拠点として機能してきた。最盛期には、約14万人が駐留していたとされる軍隊は、約3000人まで縮小されたが、現在も、島の重要な防衛を担っている。
かつては、砲撃戦が繰り広げられた歴史がある。金門島は1949年の古寧頭戦役、1958年の金門砲戦という2つの戦いの舞台となった。古寧頭戦役では、中国・人民解放軍が金門島に上陸し、蒋介石が率いる国民党軍と激しい戦闘を繰り広げた。この戦いで、国民党軍が防衛の成功を収めた。金門砲戦では、人民解放軍は、金門島に44日間で47万発超の砲弾を撃ち込んだ。島内には、防空壕、砲弾の残骸などの軍事遺構が数多く残されており、戦争の記憶を今に伝えている。
★ナレーター:佐分千恵
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
■『BS朝日 日曜スクープ』2024年11月17日の放送内容は現在、公開中です。
【熊谷6人殺害その後】遺族が警察の対応を問う裁判“最高裁も上告棄却”不受理の決定
「熊谷6人殺害その後」司法はまたも遺族の訴えを退けた。家族3人の命を奪われた加藤裕希さんは、当時の警察の対応を問題視して裁判を起こしていたが、最高裁が加藤さんの上告を棄却した。
事件が起きたのは2015年9月。ペルー人の男が埼玉県警の熊谷警察署から逃走し、その翌日、熊谷市内で50代の夫婦を殺害した。さらにその後の2日間で、80代の女性を殺害した後、加藤さん宅に侵入し、妻と2人の娘を殺害した。男は一審の裁判員裁判で死刑を言い渡されたものの、控訴審で減刑され無期懲役が確定している。
加藤さんが自ら起こした裁判では、最初の殺人事件が起きたときの埼玉県警の対応を問題にした。県警は熊谷署から逃走中だったペルー人の男を「参考人」として全国に手配していた。しかし、県警は男の逃走を公にせず、防災無線などを用いての注意の呼びかけもないまま、連続殺人に至った。
加藤さんは「最初の殺人事件が起きたとき、埼玉県警が『逃走犯による無差別殺人の可能性がある』と広報していれば、私も妻も警戒を強めて、犯行を防ぐことができた」と訴えた。しかし、1審、控訴審ともに、加藤さんの訴えを退けた。そして今回、最高裁も加藤さんの上告を受理せず、棄却した。
加藤さんは、最高裁が上告を受理しなかったことについて「闘う土俵にも上れず、悔しい」と話している。ご家族の3人には、「気持ちの整理がつかず、裁判の結果を報告できない」という。
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
■『BS朝日 日曜スクープ』2023年9月10日の放送内容は現在、公開中です。
【熊谷6人殺害国賠訴訟】上告理由書を提出“警察裁量”不当性の存否◆日曜スクープ◆
2015年に埼玉県熊谷市で男女6人が殺害された事件で、妻と娘2人の殺害は県警の近隣住民への注意喚起が不十分として、遺族の加藤裕希さん(50)が5日、最高裁判所に上告審として受理することを求める理由書を提出した。今年6月、加藤さんが県に約6400万円の損害賠償を求めた国家賠償請求は、控訴審で棄却されていた。最高裁で上告が受理されて審理の対象となるのは2022年の場合、1.3%の狭き門だった。
訴えによると、当時、埼玉県警は熊谷署から逃走中だったペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン受刑者を、最初の殺人事件の「参考人」として全国に手配していた。ジョナタン受刑者の逃走については、加藤さんの事件が起きるまで、埼玉県警は明らかにしていなかった。1審のさいたま地裁は昨年4月、埼玉県警の情報提供に違法性はないとして、原告の訴えを棄却。昨年10月に始まった控訴審では1審と同様、事件の発生について予想可能かどうかという、警察が予め知り得る「予見可能性」、また、その「予見可能性」に基づく「結果回避義務」の存否が争点となったが、東京高裁は今年6月、危険の切迫性を認めながらも、重大事件が発生した初期段階で捜査の状況に応じて、地域住民にどの程度の情報を提供するかは警察の裁量に委ねられている」と判示し、控訴を棄却していた。
加藤さん側が提出した理由書によると、埼玉県警幹部は「屋外の通り魔事件であれば1件発生しただけで連続発生を想定すべきであり、屋内事件であれば2件続けて発生しない限り連続発生を想定できない」とする、いわゆる「1件2件論」を主張する。しかし、加藤さん側は「1件2件論」は警察庁が否定しており、また、裁判例や法律文献もなく、その主張の信用性を吟味することなく、埼玉県警幹部の証言を鵜呑みにした控訴審の判決理由に不備があると訴えている。今回の理由書の提出を受けて、加藤さんは「どうにか公正な判断を司法に求めて、勝訴に向けて頑張っていければとは思います」と現在の心境を語った。
▽埼玉・熊谷6人殺害事件
2015年9月に、住宅3軒で男女6人が殺害された事件。強盗殺人などの罪に問われたナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン受刑者は2018年3月、1審・さいたま地裁で死刑判決。東京高裁は19年12月、心神耗弱を理由に1審判決を破棄、無期懲役を言い渡した。検察側は上告を見送った。最高裁が20年9月、無罪を主張する弁護側の上告を棄却、無期懲役の高裁判決が確定した。
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
■『BS朝日 日曜スクープ』2023年8月13日の放送内容は現在、公開中です。
【玉本英子ルポ破壊された街】砲撃の連続で“民間人犠牲”戦禍の現実◆日曜スクープ◆
遠方から砲声が鳴り響き、砲弾が降り注ぐ街で、殺戮と破壊の連鎖が続く。ジャーナリスト・玉本英子氏(アジアプレス)は、今年5月初旬にウクライナに入った。ザポリージャ州南部の戦闘地域から約7キロ離れたオリヒウ市内は、ロシア軍による砲撃と大型爆弾の投下で、住宅や学校などが無残に破壊されていた。約9割の住民が避難で街を離れたが、約200人が避難する学校を取材した玉本氏は、戦争の理不尽に耐えながら生活を余儀なくされる住民の苦難を目撃する。玉本氏が取材した翌月、ウクライナ軍は、このオリヒウを拠点に、大規模反転攻勢に着手した。また、昨年8月、玉本氏は南部ヘルソン州での取材で、ウクライナ軍の隊長と出会った。だが、今回の取材中、玉本氏に悲報が届く。激戦地バフムトに転戦した隊長は、塹壕で砲弾を受け亡くなった。ジャーナリスト・玉本英子氏は今回の取材を通じて、戦禍の日常と現実にどう向き合ったのか。ロシアの侵略により、市民が受けた痛苦と不条理を伝える。
★ゲスト:玉本英子(ジャーナリスト/アジアプレス)
★アンカー:杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
【ウクライナ玉本英子ルポ①】南部“最前線の街”激化するロシア砲撃◆日曜スクープ◆
ジャーナリストの玉本英子氏(アジアプレス所属)が戦禍のウクライナを現地取材。南部ザポリージャ州のオリヒウでは今年5月、ロシア軍による砲撃が絶え間なく続いていた。戦闘地域から7キロの“最前線の街”だ。取材の翌月には、ウクライナ軍がこのオリヒウを拠点に、反転攻勢に着手している。玉本氏が取材した時点でも、学校や住宅など、至るところに砲撃の跡があり、高齢者ら、避難できなかった住民が、数少ない残った建物に身を寄せていた。そこで住民たちが祈っていたことは…。さらに玉本氏は、複数のウクライナ軍の検問所を通過し、戦闘地域により近いマラ・トクマチカにも向かった。
★ゲスト:玉本英子(ジャーナリスト/アジアプレス)
★アンカー:杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
【ウクライナ玉本英子ルポ②】ヘルソン州“奪還”後も苦難…庭に砲弾◆日曜スクープ◆
ジャーナリストの玉本英子氏(アジアプレス所属)が戦禍のウクライナを現地取材。ヘルソン州のドニプロ川西岸からロシア軍が撤退したのは去年11月。玉本氏は今年5月にヘルソン市内を訪れたが、ロシア軍からの砲撃が続き、市内の人影は少ない。玉本氏は、ロシア軍撤退前の去年8月、ヘルソン市郊外の集落を取材しており、今年6月に再訪すると、避難していた住民の一部が帰還していた。しかし、庭先には砲弾が残り、電気や水道などのインフラも復旧はこれからだ。さらに、取材中の玉本氏に悲報が届いた。去年8月の取材を受け入れたウクライナ軍の隊長が激戦地バフムトに転戦し、戦死したのだ…。
★ゲスト:玉本英子(ジャーナリスト/アジアプレス)
★アンカー:杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH
【ウクライナ玉本英子ルポ③】集合住宅まで崩壊…起きなかった奇跡◆日曜スクープ◆
ジャーナリストの玉本英子氏(アジアプレス所属)が戦禍のウクライナを現地取材。ウクライナ中部の都市ウマニは今年4月末、集合住宅がロシア軍のミサイル攻撃を受けて崩落した。午前4時の攻撃で、子ども6人を含む23人が命を奪われている。その翌月、玉本氏が現地を訪れると、犠牲者23人の写真が掲げられ、多くの子どもたちが友達の写真を見つめていた。6階に住んでいたヘレナさん(53)は、娘夫婦と暮らしていたと言う。ヘレナさんは、別の部屋で寝ていた娘夫婦の無事を祈り、奇跡を願ったのだが…。
★ゲスト:玉本英子(ジャーナリスト/アジアプレス)
★アンカー:杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)
放送内容の動画はこちらからご覧いただけます。
⇒ テレ朝NEWS
⇒ ANNnewsCH