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    #56

    昭和を生き抜いた白い廊下の光る家

    荒川と隅田川に挟まれた足立区は、かつて東京の米倉と呼ばれるほど農業が盛んでした。現在は住宅街が広がる綾瀬にも、まだまだ多くの水路が残り、涼を求める人々を癒しています。今回はそんな綾瀬で生まれ育ったMさんが暮らすお宅を訪ねます。
    茅葺き職人だったMさんのお父様が建てたというこの家には、Mさんと奥様、そして99歳になるお母様の3人がお住まいです。増改築を重ねながら大切に受け継がれてきたM邸でしたが、長い年月を経て壁は痛み、夏の暑さや冬の寒さはかなりのものがありました。また、家を支える基礎も傾き、耐震面でも大きな不安を抱えていました。家族の思い出がたっぷり詰まったこの家をなんとか残したかったというMさん。そこで、現代の素材を使い、快適で安全な住宅を実現しながら、新旧の空間がそれぞれを引き立てあい、激動の昭和を生き抜いた日本家屋に新たな価値が生まれるよう、リモデルすることにしたのです。
    見事な庭が来客を迎えるM邸。玄関を入って正面、お父様の友人であった宮大工が作ってくれたという立派な仏壇の残る仏間は、そのまま残すことにしました。仏間の襖を開くと、そこには真っ白に輝く廊下が現れます。白いビニルシートが床に貼られた白一色の空間の向こうには、新たに作られたLDKが。このLDKを取り囲むように伸びる廊下は、それ自体が空気層の役目を果たし、室内の温度を調整してくれるのです。その廊下とLDKを仕切る壁には、構造用合板を選びました。通常は耐震補強のための下地材として使われるこの素材ですが、木片が圧縮された表面の模様をデザインとしてうまく活かしました。
    二間の和室がならんでいたところは、LDKに変えました。以前はキッチンとダイニングが離れた場所にありましたが、ひとつにまとめたことでご主人も食事の支度を手伝いやすくなりました。また、2階の部屋を一部屋減らしてLDKの一部を吹き抜けにすることに。リビングに座れば2階の窓を通して月が見える、奥様お気に入りの場所となりました。家族構成や生活スタイルの変化に合わせ、思い切って減築することで、より快適な空間を手にしました。
    新しいものと古いものが見事なバランスで調和したM邸。大切に住み継がれてきたこの家は、これからもMさんご家族を優しく見守り続けてくれることでしょう。
     
    設計担当:納谷建築設計事務所
    http://www.naya1993.com/

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