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やがて消えてしまう氷。その儚い素材から、荘厳で、時に妖艶な立体を立ち上げる男がいる。氷彫刻師・小阪芳史(53)。
東京・品川のグランドプリンスホテル高輪に所属する会社員として、ホテルで行われる祝宴や式典、そのすべての氷彫刻を担っている小阪。
歴史的建造物から躍動感のある動物、さらに息遣いすら感じさせる人物――。
透き通る氷は、光を受けることで表情を変える。その一瞬の芸術に、人生を賭けてきた。
チェーンソー、のみ、電動研磨機――巨大な氷の塊に迷いなく刃を入れ、短時間で形を立ち上げていく。削りすぎれば終わり。戻ることは許されない。完成形を頭の中で立体として描き切る空間把握力と、倒れるか倒れないかの“限界”を攻める胆力こそが、小阪の真骨頂だ。
もともとは、料理人を志しホテルの調理部門で働いていた。
修業時代、宴席を彩る氷彫刻を目にした瞬間、その透明な美しさに心を奪われる。
「氷を彫るのが、ただ楽しくて仕方なかった」
その情熱はやがて国内外の大会へと向かい、数々の舞台でその名を轟かせる。
昨年行われた旭川冬まつり氷彫刻世界大会では最優秀賞・内閣総理大臣賞を受賞した。
2026年1月。ミラノ・コルティナ冬季オリンピック。大会のプレビューイベントとして開催された「世界氷彫刻選手権」に、小阪は日本代表として出場した。オリンピックという晴れ舞台で、どんな技術と表現力を見せたのか――。