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#64

壁構造のマンションをラフに仕上げた見通し抜群の家

渋谷と吉祥寺を結ぶ人気の路線、井の頭線。都内有数の繁華街を結ぶその沿線には、緑豊かな街並みも広がり様々な表情を見せてくれます。
今回はそんな世田谷区の羽根木公園に近い低層マンションの一室を訪れます。
住宅街の中に建つ3階建てマンションの最上階にお住まいのIさんご夫妻はともに建築家です。以前は1LDKの賃貸マンションにお住まいでしたが、リモデルすることを前提に、中古マンションの購入を検討。将来的に不動産の価値が下がりにくい、都心にも最寄り駅にも近いエリアで物件探しを始めました。そんな中で見つけたこのマンションはお二人が求めていた条件にぴったりのものでした。しかし、その造りは「壁式RC構造」という、柱や梁を使わず壁によって構造を支えるものになっていたため、間取りを自由に変えることができない物件だったのです。そこでIさんご夫妻は、壁式RC構造の特徴をいかし、限られた間取りの中で、自分たちのライフスタイルに合った快適な空間を実現すべく、リモデルすることにしたのです。
壁を壊しての間取り変更ができないI邸。既存の壁を使うにあたり、壁紙を剥がしてみると、下処理として使うパテ塗りの跡が出てきました。それをあえて残し、その上からさらにパテで上塗りすることで、大胆にもパテの塗り跡をデザインに変えてしまったのです。まだらな模様が自然の石のような風合いを出し、引き戸に使ったラーチ合板の木目と調和して空間に温かみを与えています。
 以前台所があった場所は、フローリングの真ん中に畳を敷いて和室にしました。壁に取り付けた飾り棚や、天井から吊るされた照明は、畳に座った時に寛ぎやすいよう、低い位置に調整されています。大勢の来客時には、ご夫妻手作りのちゃぶ台を広げて、皆で囲むそうです。
 浴室の木目壁には透明FRPを塗り防水加工を施し壁に浮かぶ木目を鮮やかに引き立てています。
 限られた条件を楽しむというリモデルならではの魅力を再認識させられたとおっしゃるIさんご夫妻。今後はバルコニーでのガーデニングを計画するなど、まだまだ楽しみが広がっていきそうです。
 
設計担当:苅部寛子建築設計事務所+成瀬・猪熊建築設計事務所
http://www.narukuma.com/

【平面図】

before

after